7 / 18
第1章 ーオー・レーモンと隣国ー
西の大国オー・レーモン
しおりを挟む
徐々に城下町には騒がしさが戻りつつあった。
「オンディーヌ、よく聞いてください。」
王宮に私だけの声が響く。
オンディーヌは真っ直ぐな眼差しで私はの瞳を見つめる。
緊張が張り詰める。
この発言が正しいのかどうかはわからない。しかし今の私にはこれしか思いつかない。
私は肺のかなの空気を読む入れかれるように深呼吸した。
「オー・レーモンの王位は、貴方に譲ります。」
私ですら、時が止まった様に感じた。
オンディーヌの表情は一拍遅れて豹変した。困惑や焦りが読み取れる。
「……なっ……なにを言っておられるのですか?!オー・レーモンの王女は貴方でしょう?!王族である貴方は奇跡的に生きている……有り得ません、なぜ私の様な召使いという身分の者が国の王を務めなければいけないのですか?」
オンディーヌの反応や思考回路は正しかった。
「オンディーヌ、しかし私は、レイラを放ってはおせません。」
正直な気持ちだった。
オンディーヌの表情はまた一変する。
悔しさの色が増す。
「それなら……私がサリア王女の代わりに…… ……」
俯いたオンディーヌの瞳から、満月の光を含んだ美しい雫が垂れた。
「…… ……私では、力不足です。」
声と肩が震えている。
私の唇も震えてくる。
「貴方の意志に添うのならば、私は貴方の望み通りこの国の女王となりましょう…… ……」
しかし、とオンディーヌは言葉を続ける。
「お願いです。生きて帰ってきてください……!!」
「……っ!!!」
私はオンディーヌの手を取った。
そして、固く握り震える唇から言葉を振り絞る。
「……っもちろん、私がこの名にかけてその願いを叶えるわ……!!」
オンディーヌは人間だ。
彼女の魔力は私に劣る。
けれども、私はオンディーヌだからこそお父様や先代の血族が築き上げてきたオー・レーモンを託すことができる。
私は目を瞑った。
虚無を描く、翼のない背中にはもう痛みはなかった。
私はドレスでは街を歩けないので、包帯だらけになった体に、召使いの服を纏う。
本来ならば、角と翼が一対となって成り立つエルザの姿も、今は滑稽ー
角だけとなった歪な姿を完全に隠蔽するため、オンディーヌは私の長い銀髪を角の周りに巻き付けお団子にしてくれた。
14歳の誕生祭のとき、国王から頂いた剣を革で出来た鞘に刺した。
満月は沈み、朝日が差し込んできた。
全体が明るくなり、王宮の壊滅状態が浮き彫りになってくる。
しかし、私とオンディーヌの決心は依然として変わらない。
城下町はかなり騒がしくなってきた。
当然だろう。
謎の魔力により突然眠らされ、目覚めると王宮は半壊、王族は『全滅』ー
私は最後にオンディーヌに「王族は全滅した」と国民に伝えるよう言った。
オンディーヌは無言で頷いていた。
「サリア王女、これを。」
差し出されたのは赤い宝石のペンダントだった。
細い鎖の左下には金色の金具が付いている。
「……これは?……」
私がその金具を指で触るとパチン、と乾いた音がした。そして、ペンダントは2つに分かれる。
「サリア王女とレイラ女王の幼い頃の写真です。……今までは私が持っていましたが、このペンダントがサリア王女をまもって下さると信じ、貴方に預けます。」
徐々に強くなっていく朝日に照らされたオンディーヌの顔は、昨夜とは違い、晴れやかなものだった。
「ありがとう、オンディーヌ。」
召使いの服の襟のしたからペンダントの鎖を通す。
「それでは、行ってきます。」
「オンディーヌ、よく聞いてください。」
王宮に私だけの声が響く。
オンディーヌは真っ直ぐな眼差しで私はの瞳を見つめる。
緊張が張り詰める。
この発言が正しいのかどうかはわからない。しかし今の私にはこれしか思いつかない。
私は肺のかなの空気を読む入れかれるように深呼吸した。
「オー・レーモンの王位は、貴方に譲ります。」
私ですら、時が止まった様に感じた。
オンディーヌの表情は一拍遅れて豹変した。困惑や焦りが読み取れる。
「……なっ……なにを言っておられるのですか?!オー・レーモンの王女は貴方でしょう?!王族である貴方は奇跡的に生きている……有り得ません、なぜ私の様な召使いという身分の者が国の王を務めなければいけないのですか?」
オンディーヌの反応や思考回路は正しかった。
「オンディーヌ、しかし私は、レイラを放ってはおせません。」
正直な気持ちだった。
オンディーヌの表情はまた一変する。
悔しさの色が増す。
「それなら……私がサリア王女の代わりに…… ……」
俯いたオンディーヌの瞳から、満月の光を含んだ美しい雫が垂れた。
「…… ……私では、力不足です。」
声と肩が震えている。
私の唇も震えてくる。
「貴方の意志に添うのならば、私は貴方の望み通りこの国の女王となりましょう…… ……」
しかし、とオンディーヌは言葉を続ける。
「お願いです。生きて帰ってきてください……!!」
「……っ!!!」
私はオンディーヌの手を取った。
そして、固く握り震える唇から言葉を振り絞る。
「……っもちろん、私がこの名にかけてその願いを叶えるわ……!!」
オンディーヌは人間だ。
彼女の魔力は私に劣る。
けれども、私はオンディーヌだからこそお父様や先代の血族が築き上げてきたオー・レーモンを託すことができる。
私は目を瞑った。
虚無を描く、翼のない背中にはもう痛みはなかった。
私はドレスでは街を歩けないので、包帯だらけになった体に、召使いの服を纏う。
本来ならば、角と翼が一対となって成り立つエルザの姿も、今は滑稽ー
角だけとなった歪な姿を完全に隠蔽するため、オンディーヌは私の長い銀髪を角の周りに巻き付けお団子にしてくれた。
14歳の誕生祭のとき、国王から頂いた剣を革で出来た鞘に刺した。
満月は沈み、朝日が差し込んできた。
全体が明るくなり、王宮の壊滅状態が浮き彫りになってくる。
しかし、私とオンディーヌの決心は依然として変わらない。
城下町はかなり騒がしくなってきた。
当然だろう。
謎の魔力により突然眠らされ、目覚めると王宮は半壊、王族は『全滅』ー
私は最後にオンディーヌに「王族は全滅した」と国民に伝えるよう言った。
オンディーヌは無言で頷いていた。
「サリア王女、これを。」
差し出されたのは赤い宝石のペンダントだった。
細い鎖の左下には金色の金具が付いている。
「……これは?……」
私がその金具を指で触るとパチン、と乾いた音がした。そして、ペンダントは2つに分かれる。
「サリア王女とレイラ女王の幼い頃の写真です。……今までは私が持っていましたが、このペンダントがサリア王女をまもって下さると信じ、貴方に預けます。」
徐々に強くなっていく朝日に照らされたオンディーヌの顔は、昨夜とは違い、晴れやかなものだった。
「ありがとう、オンディーヌ。」
召使いの服の襟のしたからペンダントの鎖を通す。
「それでは、行ってきます。」
0
あなたにおすすめの小説
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる