ーwaterー

あざまる

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第1章 ーオー・レーモンと隣国ー

西の大国オー・レーモン

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徐々に城下町には騒がしさが戻りつつあった。
「オンディーヌ、よく聞いてください。」
王宮に私だけの声が響く。
オンディーヌは真っ直ぐな眼差しで私はの瞳を見つめる。
緊張が張り詰める。
この発言が正しいのかどうかはわからない。しかし今の私にはこれしか思いつかない。
私は肺のかなの空気を読む入れかれるように深呼吸した。
「オー・レーモンの王位は、貴方に譲ります。」
私ですら、時が止まった様に感じた。
オンディーヌの表情は一拍遅れて豹変した。困惑や焦りが読み取れる。
「……なっ……なにを言っておられるのですか?!オー・レーモンの王女は貴方でしょう?!王族である貴方は奇跡的に生きている……有り得ません、なぜ私の様な召使いという身分の者が国の王を務めなければいけないのですか?」
オンディーヌの反応や思考回路は正しかった。
「オンディーヌ、しかし私は、レイラを放ってはおせません。」
正直な気持ちだった。
オンディーヌの表情はまた一変する。
悔しさの色が増す。
「それなら……私がサリア王女の代わりに…… ……」
俯いたオンディーヌの瞳から、満月の光を含んだ美しい雫が垂れた。
「…… ……私では、力不足です。」
声と肩が震えている。
私の唇も震えてくる。
「貴方の意志に添うのならば、私は貴方の望み通りこの国の女王となりましょう…… ……」
しかし、とオンディーヌは言葉を続ける。
「お願いです。生きて帰ってきてください……!!」
「……っ!!!」
私はオンディーヌの手を取った。
そして、固く握り震える唇から言葉を振り絞る。
「……っもちろん、私がこの名にかけてその願いを叶えるわ……!!」
オンディーヌは人間だ。
彼女の魔力は私に劣る。
けれども、私はオンディーヌだからこそお父様や先代の血族が築き上げてきたオー・レーモンを託すことができる。
私は目を瞑った。
虚無を描く、翼のない背中にはもう痛みはなかった。

私はドレスでは街を歩けないので、包帯だらけになった体に、召使いの服を纏う。
本来ならば、角と翼が一対となって成り立つエルザの姿も、今は滑稽ー
角だけとなった歪な姿を完全に隠蔽するため、オンディーヌは私の長い銀髪を角の周りに巻き付けお団子にしてくれた。
14歳の誕生祭のとき、国王から頂いた剣を革で出来た鞘に刺した。
満月は沈み、朝日が差し込んできた。
全体が明るくなり、王宮の壊滅状態が浮き彫りになってくる。
しかし、私とオンディーヌの決心は依然として変わらない。
城下町はかなり騒がしくなってきた。
当然だろう。
謎の魔力により突然眠らされ、目覚めると王宮は半壊、王族は『全滅』ー
私は最後にオンディーヌに「王族は全滅した」と国民に伝えるよう言った。
オンディーヌは無言で頷いていた。
「サリア王女、これを。」
差し出されたのは赤い宝石のペンダントだった。
細い鎖の左下には金色の金具が付いている。
「……これは?……」
私がその金具を指で触るとパチン、と乾いた音がした。そして、ペンダントは2つに分かれる。
「サリア王女とレイラ女王の幼い頃の写真です。……今までは私が持っていましたが、このペンダントがサリア王女をまもって下さると信じ、貴方に預けます。」
徐々に強くなっていく朝日に照らされたオンディーヌの顔は、昨夜とは違い、晴れやかなものだった。
「ありがとう、オンディーヌ。」
召使いの服の襟のしたからペンダントの鎖を通す。
「それでは、行ってきます。」
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