眠る騎士は眠り姫たちのキスで目を覚ます。1

三宅 大和

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β:キス→α:目覚め

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「ほんとに近いのね。」
「ほんと驚きだよな。」
 二件の住宅を前にそう言葉を交わした。
 駅からここまでの十五分、結局その間に名案が浮かぶことは無かった。
 そういうことで、とりあえず基本的なことを試してみたのだが・・・
 ピーンポーン・・・
『・・・』
 ということで、早速手詰まりとなった。せめて家族の方が出てはくれやしないだろうかと言う期待もあっけなく切り捨てられた。
「どうするの?」
「ちょっと待て。」
 ポケットから出したスマホを操作する。
 プルルルルル・・・プルルルルル・・・
しばらく待ったが結局自動的に終了された。 
 チャットルームでスタンプを二十個くらい送りつけてからそっとスマホをポケットにしまった。
 現代の技術を駆使しても、引きこもりを家から引き釣りだすのはやはり至難の技であることに変わりは無かった。
 そもそもまだ家に帰っていないのかもしれないという可能性も浮上してきて、俺はこの状況を打破する方法をなかなか見いだせずにいた。
 しかしそこでうちの皇女殿下が口を開いた。
「あ、私天才かも・・・」
 少女が自意識過剰になる理由を俺は訪ねた。
「だって、ようは彼女と話が出来ればいいんでしょ?」
 そうだけどそれが出来ないんじゃないか。それでも、俺は少女の顔が自身に満ち溢れているのを見て単純に気になった。
「で、その方法ってのは?」
「簡単よ。敦也、そこに立って目を閉じて。」
「はっ?」
「いいから。」
 全く意味が分からないが・・・まあとりあえず愛花に任せよう。
「これでいいか。」
 当然のごとく、目の前は真っ暗になっている。
「うん。いいよ。開けちゃ駄目だからね。」
 心なしか、いつもより声が耳に響く気がする。多分気のせいではない。目に回っていた神経が目をシャットアウトしたことで耳に回ったのだろう。
「・・・」
ん?
「なあ、今どうなってるんだ?」
「・・・」
 おかしい。さっきまで話していた愛花の声がしない。もしかして俺をからかっているのか?
 そう思って軽く薄目になったと同時に気付いた。目の前に愛花の顔があること、そして・・・
「んっ!?」
 唇に、柔らかい感触があることに。
 ・・・またか。
 それから間もなく、視界と意識がフェードアウトしていく。俺は再び眠りに就いた。



 真っ暗だ・・・
 視覚は何も捉えていなかった。ただその反面で、俺の聴覚は、微かに鳴り響く声を確かに感じていた。
「・・スラ!」
この声は・・・
「・・・アスラ!」
 俺の名前を呼んでいる。
「起きなさい、アスラ!」
 それではっとなった。
「愛花・・・か?」
 少しづつ目が開いていき、やがて俺はそんお少女の姿を確認した。
「残念。愛花じゃなくて、アシアよ。」
 頭に団子を乗せた少女は答えた。あとそういえばメイド服だった。
「ってことはここは・・・」
「そう、あんたの部屋よ。アスラ。」
 なるほど、そういうことか。大体何をする気かは理解したよ。
「相変わらずいい膝だな。」
「・・・ふんっ!」
「いってぇ、何しやがる!」
「キモかったから・・・」
「でもお前、俺のこと好きなんだろ?」
「それとこれは別よ。」
 そうなのか・・・っていうか床かてえな。
 じゃあ、そろそろ本題に入るか。
「こんなことしたってことは、居場所分かってるんだよな?」
もしNOって答えたら今度は俺が無理矢理にでもキスしてやる。
「うん。」
 それを聞いて安心した。流石にそこまで馬鹿じゃなかったか・・・というかよくこんな方法思い付いたな。俺は今、少し関心している。参謀として少し悔しいとも感じている。ちょっと手荒な気もするがこれ以上無い名案だ。なにせ、ここでならアシアの言うことはほぼ絶対になるからだ。
「前、アスラのお父さんが連れて来た捕虜のこと覚えてる?」
 ああ、そういやそんなことあったな。確か、街に近い山を根城にしていた山賊だったか・・・
「アスラ、詞弥ちゃんに逃げられた後に言ってたよね?詞弥がシヴァだった時、その父親がアスラのお父さんに殺されたって。だからシヴァにとってアスラは親の仇みたいなものだって。」
「ってことはその父親ってのが今回の山賊の頭なのか?」
「まだはっきりはしてないけど、多分そうかなって・・・」
 でも、話も噛み合っているし、あながち間違っていない気もする。そうだとしたら、俺があっちで再開してすぐの詞弥に対する見解は正しかったのだろう。
「今あいつは牢屋か?」
「多分捕虜として捕らえていたと思う。でも・・・」
「お父様の配下ってことか。」
「そう、それが問題なの。」
 確かにな、この前捕らえたばかりの捕虜を何の理由も無く開放して欲しいというのは、いくら娘の願いでも難しいだろう。
「何か良い策無い?」
「ちょっと待てよ。」
 すきを盗んで連れ出すか?いや、それだと今後会うのに困る。じゃあ・・・
「なあアシア、もう一人くらい側近欲しくないか?」
「あ~ん。」

地下牢。
一面コンクリートと鉄格子で囲まれたこの場所では街の罪人や、外から攻めて来た敵を収容している。その中でも、今俺が訪ねてきているのは数所少ない女牢で、第一皇女の騎士ともなると、入るのは容易かった。
目当ての人物にはなかなか会えない。重苦しい雰囲気の中を奥へと突き進んでいると、
「おい、お前。」
 誰かが俺を引き止めた。
「なんだ、今俺は人を探しで忙し・・・」
「やっぱりか・・・」
本当にここにいたんだな。
 そこには、腰のあたりまで髪を伸ばした詞弥(ここではシヴァと呼ぶべきか・・・)の姿があった。
「凄い格好だな。」
 ワイルドと言えば聞こえが良いかもしれないが、実際、胸を隠しているのはさらしだけで腰から足首にかけて麻で織ったような灰がかったスカート状の物にも、所々に穴やほつれがあって、正直危ない格好だ。 
「でしょ・・・だからあんまりジロジロ見ないでもらえる?」
「あ、すまない。」
 顔をそらした。
「はあ、やっぱり夢じゃなかったんだね・・・」
 シヴァが呟く。
 そう言えば、前にあっちの世界で再会した時、詞弥は今までが夢だったという風なことを言っていた。
「なら、夢じゃないならどうしてこんなことに・・・さっきも、家にいたのに急にふらっとして、気付いたら牢屋の中だったし・・・」
 それは俺がアシアとキスしたからだけど・・・
「だから、そのへんのことを話しようと思ってさっきも家を訪ねたんだけど・・・まあ訳あってこっちの世界に・・・」
 その話は後にして、とりあえずここに来た目的を果たさねばならないな。
「とりあえずここから出るぞ。」
「えっ、でもどうやって・・・」
「俺がこっちの国で何をしているかは知ってるよな?」
「あ、確かお姫様の騎士・・・」
 それでハッとしたような顔をした。
「この世界が夢じゃないってことは、あなたは私の父の・・・」
「やったのは俺の父だ。それに、争いを収集するには犠牲も出る。それも族長ともなると真っ先に狙われるだろう。それに、調べたところによると、他に犠牲者は出ていないみたいだ。皆んなこの場所に集められている。」
「でも、皆んなの自由は奪われているのよ。」
 本来、戦と言うのはそういうものなのだから仕方がない。勝って得られるものがあるならば、負けて失うものも当然あるのだ。だから必死になって戦う。そういうものなのだ。
 だが今回は少し特例になる。国としてではなく、俺ら個人の都合でだが・・・
「そこで提案がある。それに応じればシヴァ自身も他の人達も自由にしてやれる。うちの国民として歓迎しよう。」
「で、何をすればいいの?」
「多分シヴァが得意なことだよ。」
 俺は提案の中身を具体的に語った・・・
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