勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ

文字の大きさ
9 / 43
物語

8話 白鷺の初陣



 アリアが加わって三日。

 白鷺拠点の空気は、わずかに変わった。

 レイナは前衛指揮。

 セツナは近接支援。

 アリアは後方支援と魔導制御。

 そして俺は全体統括。

 たった四人。

 だが編成としては完成形に近い。

「役割分担、安定」

 アリアが静かに報告する。

 声は柔らかいが、抑揚はまだ薄い。

「魔導補助の展開速度は良好です」

「ありがとう、アリア」

 一瞬、彼女の視線がわずかに揺れる。

「感謝を確認。内部記録します」

 まだぎこちない。

 だが確実に積み重なっている。



 ギルドでの空気は、さらに変わっていた。

「Dランクの中でも上位相当らしい」

「白い拠点を持ってるって本当か?」

 白鷺の名も、少しずつ広がっている。

 受付嬢が真剣な顔で言った。

「緊急依頼です。北方の小村がオークの群れに包囲されています」

 単独ではない。

 群れ。

「推定数は?」

「最低十五」

 ざわめきが走る。

 Dランク単独では厳しい数だ。

「他のパーティーは?」

「編成中ですが、間に合うか……」

 俺は三人を見る。

 レイナは静かにうなずく。

「戦術上、奇襲なら可能」

 セツナ。

「村の被害拡大前に制圧可能性六割」

 アリア。

「魔導支援により成功率上昇見込み」

 六割。

 高くはない。

 だが放置すれば村が壊れる。

 俺は決めた。

「受けます」

 ギルド内が一瞬静まる。

「本気か?」

 誰かが呟く。

「白鷺が行く」

 自分で言って、少しだけ背筋が伸びた。



 村は森に囲まれていた。

 簡素な柵の外に、オークの影。

 確かに十五以上。

 中にはさらに大きな個体もいる。

「上位種確認」

 レイナが低く言う。

「指揮個体」

 つまり、統率されている。

 正面突破は愚策。

「三方向分断」

 俺は指示を出す。

「アリア、視界阻害と魔導支援。セツナは左側撹乱。レイナは俺と中央突破」

「了解」

 魔導装置が淡く光る。

 霧が発生。

 視界が歪む。

 オークの咆哮が混乱に変わる。

 セツナが高速で側面へ。

 数体が釣られる。

 レイナが俺の前に立つ。

「中央、突破します」

「行け」

 爆発的な加速。

 刃が閃く。

 アリアの魔導弾が遠距離から正確に急所を撃ち抜く。

 連携は完璧だ。

 だが数が多い。

 一体が俺に迫る。

 巨大な棍棒。

 恐怖が走る。

「悠真!」

 レイナが間に入る。

 衝撃。

 地面にひびが入る。

「損傷軽微」

 だが余裕はない。

 俺は歯を食いしばる。

「指揮個体を落とせ!」

「了解!」

 アリアが魔導照準を固定。

 セツナが道を開く。

 レイナが一直線に突き進む。

 上位オークが振り上げた斧を、紙一重で回避。

 懐へ。

 一閃。

 深く、確実に。

 巨体が崩れる。

 その瞬間、残りが動揺した。

「今だ!」

 一気に畳みかける。

 数分後――

 森は静まり返った。

 倒れ伏すオークの群れ。

 村は無事だ。

「……やった」

 膝が少し震えている。

 レイナが振り向く。

「成功」

 セツナ。

「被害最小」

 アリア。

「支援完遂」

 村人たちが柵の内側から出てくる。

 泣きながら礼を言う老人。

 子供が俺たちを見る。

「白い人たちだ……」

 その言葉に、胸が熱くなる。



 王都に戻ると、騒ぎはさらに大きかった。

「群れを殲滅!?」

「四人で!?」

 Dランクでこの規模。

 異例だ。

 支部長が重い声で言う。

「……君たちは何者だ」

「冒険者です」

 俺は真っ直ぐ答える。

 嘘ではない。

 だがそれだけでもない。

「白鷺、か」

 支部長が小さく呟く。

「名が広まるぞ」

 もう広まっている。



 夜。

 白鷺拠点。

 四人で静かに座る。

 戦闘後の整備を終えたばかり。

「悠真」

 レイナが静かに言う。

「本日で評価が大きく上昇しました」

「分かってる」

「依頼増加、接触増加、監視強化予測」

 セツナ。

「組織的対応が必要」

 アリアも続ける。

「拠点防衛強化を推奨」

 俺は目を閉じる。

 冒険者として村を守った。

 それは誇っていい。

 だが同時に、俺たちは“力”として認識された。

 もう目立たない存在ではない。

「……まずは防衛強化だ」

 レイナが静かにうなずく。

「了解」

「了解」

「了解」

 四つの声が重なる。

 白鷺は、ただの拠点ではなくなった。

 村を救い、

 群れを殲滅し、

 名を持つ戦力となった。

 これはまだ、小さな波紋だ。

 だが波紋は、やがて広がる。

 俺は夜空を見上げる。

 冒険者として始まった道。

 それは今、確実に別の形を帯び始めていた。

 白鷺の初陣は、

 静かに、しかし確実に、

 世界へその存在を刻みつけたのだった。
感想 1

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

畑の隣にダンジョンが生えたので、農家兼ダンチューバーになることにした件について〜隠れ最強の元エリート、今日も野菜を育てながら配信中〜

グリゴリ
ファンタジー
 木嶋蒼、35歳。表向きは田舎で農業を始めて1年目の、どこにでもいる素朴な農家だ。しかし実態は、内閣直轄の超エリート組織・ダンジョン対策庁において「特総(特別総括官)」という非公開の最高職を務める、日本最高峰の実力者である。その事実を知る者は内閣総理大臣を含む極少数のみ。家族でさえ、蒼が対策庁を早々に退庁したと信じて疑わない。  SSSランクのテイムスキルと攻撃スキル、SSランクの支援スキルと農業スキルを18歳時に鑑定され、誰もが「化け物」と称えたその実力を、蒼は今日も畑仕事に注ぎ込んでいる。農作物の品質は驚異的に高く、毎日の収穫が静かな喜びだ。少し抜けているところはあるが、それもご愛嬌——と思っていた矢先、農業開始から1年が経ったある朝、異変が起きた。  祖父母の旧宅に隣接する納屋の床に、漆黒に金の縁取りをしたゲートリングが突如出現したのだ。通常の探索者には認識すらできないそれは、蒼だけが見えるシークレットプライベートダンジョン——後に「蒼天の根」と呼ばれることになる、全100階層の特異空間だった。  恐る恐る潜ったダンジョンの第1層で、蒼は虹色に輝くベビースライム「ソル」と出会い、即座に従魔として契約。さらに探索を進める中でベビードラゴンの「ルナ」、神狼種のベビーシルバーウルフ「クロ」を仲間に加えていく。そしてダンジョン初潜入の最中、蒼の体内に「究極進化システム」が覚醒する。ダンジョン内の素材をエボリューションポイント・ショップポイント・現金へと変換し、自身や従魔、親しい者を際限なく強化・進化させるこのシステムは、ガチャ機能・ショップ機能・タスク機能まで備えた、あまりにもチートじみた代物だった。  蒼は決める。「せっかくだから配信もしよう」と。農家兼ダンチューバーという前代未聞のスタイルで探索者ライセンスを取得し、「農家のダンジョン攻略配信」を開始した彼の動画はじわじわと注目を集め始める。  そんな中、隣のダンジョンの取材にやってきたのが、C級探索者ライセンスを持つ美人記者兼ダンチューバー・藤宮詩織だった。国際探索者協会の超エリート一家に生まれながら自らの道を切り開いてきた彼女は、蒼の「農家なのになぜかとても強い」という矛盾に鋭い鑑定眼を向ける。  隠れ最強の農家配信者と、本質を見抜く美人記者。チート級の従魔たちが賑やかに囲む日常の中で、二人の距離は少しずつ縮まっていく。ダンジョン攻略・農業・配信・ガチャ・そして予期せぬ大事件——波乱と笑いと感動が交錯する、最強農家の新米配信者ライフが、今幕を開ける。

仲間を勇者パーティーから追放したら、実は有能だったらしい。俺が。〜ざまあされて隠居したいのに、いつの間にか英雄にされていた件〜

果 一@【弓使い】2巻刊行決定!!
ファンタジー
 ラルド=ヤメタイーナは勇者を辞めたい。魔王討伐の使命とか正直面倒くさいし、魔族と戦うのだって怖いし。  しかし、勇者に選ばれてしまった以上、魔王討伐に動かねばならない使命があって―― 「だったら、有能な仲間を追放して、無能勇者としてざまあされればよくね?」  さっそく理由をつけて有能な仲間を追放し、パーティーメンバーの反感を買ってパーティー解散を狙うラルドだったが。  実は追放された有能な仲間は、潜入して命を狙っていた魔族で。  反感を買うつもりが、有能な勇者と勘違いされて周囲からの好感度がどんどん上がっていき――!?  これは、勇者なんて辞めたいダメダメ主人公が、本人の意図せぬ結果を出して最強の勇者に上り詰める、勘違い英雄譚である。 ※本作はカクヨムでも公開しています。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら、訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み