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第13章 懐かしい旅路

第21話 ダンジョン村

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俺とジジが御者になり久しぶりに馬車で移動している。道も整備されているので心地よい揺れを感じながら森を抜けていく。

ロンダの町は囲い込み作戦が浸透してしまった。俺は町から逃げ出すようにダンジョンへ向かうことにしたのだ。

馬車にはランガとミーシャ、それにグストとザンベルトさんが乗っている。

ランガは最初からダンジョンに一緒に行く予定だったから当然一緒だ。ミーシャは囲い込み作戦に興味はなさそうだった。それどころか町でお祝いを言われるたびに、面倒臭さそうな顔をしていた。俺は脳筋って素晴らしいと思ったくらいだ。

ザンベルトさんはダンジョン村にある冒険者ギルドのギルドマスターだ。だから一緒に移動することにした。グストは久しぶりにダンジョンに行きたくなったようでついてきたのだ。

ドロテアさんも一緒にダンジョンに行こうとしたが、魔術師や錬金術師に懇願され、研修施設で講師をするためにロンダの町に残ることになった。少し残念そうにしていたが、魔術や錬金術の話をするのは嫌いではないで問題ないだろう。エアルもそれを手伝うようだ。

ピピ達もダンジョンに来ようとしたが、メイはさすがに無理だ。上目づかいで懇願されて危うく連れ行きそうになった。
ただ土地神様フリージアさんはダンジョンに入れない。よく分からないがダンジョンは国内にならないから入れないらしい。寂しそうな表情をする土地神様フリージアさんを見て、メイとピピはダンジョンを諦め町に残ったのだ。

アンナはソフィアさんやサーシャさんと何やら始めたようで、町に残ることになった。職人を集めて新たな研修を始めるらしい。数年後にロンダは下着、ゲフン……女性服の生産地になるかもしれない。

「シルちゃんも楽しそうですね」

ジジは馬車の近くを走り回るシルを見て話してきた。

シルもロンダの町で人気者になっていた。それでもダンジョンへ行くと話すと、久しぶりに俺と一緒に来ると言ってくれた。町中では走り回れないからストレスが溜まっていたのかもしれない。

ロンダの町とダンジョン村は、ダンジョン素材を運ぶため、毎日のように馬車が行き交っている。そのせいなのか魔物はほとんどいなかった。それでもシルは森や林を走り回れるのが楽しいようだ。

「こうやってジジと二人で旅をするのもいいなぁ~」

思ったことが自然に口から出た。ジジは頬を少し赤くして笑顔で頷いてくれた。

「おい、俺達のことを忘れてんじゃねぇ」

「そうだぞ、それより前に見えるのがダンジョン村だ。石の壁で囲まれていてすごいだろぉ!」

いやいや、その壁造ったのは俺だから……。

ランガがジジとのひと時を邪魔してきて、グストが見当違いの自慢をしてきた。それをザンベルトさんが苦笑いして、ミーシャはダンジョンが見えないか必死に前を見ていた。

俺は二人の話を無視してダンジョン村へ馬車を進めるのであった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


ダンジョン村は屈強な獣人族の兵士が門番をしていた。ザンベルトさんも一緒なので素通りして村に入った。

建物が増えたなぁ~。

ダンジョン村を囲う壁や基本的な建物は数年前に俺が作った。当時は隙間だらけだったが、今は隙間なく建物があり、何となく男くさい臭いが漂っている。村に滞在する大半が冒険者だ。荒くれ者の冒険者を管理するため、冒険者より屈強で男臭い兵士が多いからだろう。

ダンジョン村の冒険者ギルドに到着して、全員でギルドに入る。受付が男のギルド職員だったことに俺は驚いた。

そんな俺を見てザンベルトさんが説明してくれた。

「ここは乱暴な冒険者が多いから、ルカがこんな場所に女性職員を派遣できないと言われてね。本当はルカにこちらのギルドマスターをお願いしたかったんだけど、拒絶されてね」

だからザンベルトさんがダンジョン村のギルドマスターになって、ルカさんがロンダでギルドマスターをしているのか……。

「ルカをこんな所で働かせるのは俺が許さない!」

ザンベルトさんが苦笑しながら話すと、グストも当然とばかり話した。

ランガは仲間を探しに行くと言って別れ、ザンベルトさんが奥に進みながら、さらに詳しく状況を話してくれた。

ダンジョンができたことで、一獲千金を目指して移住してくる冒険者も多かったらしい。中には王都や他の町で厄介者とされていた者や、辺境だからと犯罪者まがいの冒険者もいたようだ。
そんな冒険者を相手にするため、研修で力を付けた兵士がダンジョン町に多く配置され、治安はそれほど悪くはならなかったようだ。それでも力の有り余った冒険者も多いので、ケンカなどは毎日のようにどこかであるという。

「ロンダ家が獣人族の兵士をたくさん採用したから何とかなったんだ。ロンダ子爵様の先見の明は素晴らしい!」

おいおい、それは俺が勧めた事じゃねえか!

グストは相変わらず単純だ。騎士団に入って前よりロンダへの思いが強くなった感じだ。

奥の部屋の前に到着するとザンベルトさんが先に入っていく。グストに続いて俺達も部屋に入ると、中には見覚えのある人が待っていた。


   ◇   ◇   ◇   ◇


「テンマ様、お久しぶりでございます!」

「お久しぶりです。ラソーエ様」

そこにいたのは俺と揉めたことのあるラソーエ様だ。俺と揉めたことで男爵位を息子に譲り、人手の足りなかったロンダのために、アルベルトさん預かりになった人だ。

「この町の代官を務めていますが今は平民です。ラソーエと呼び捨てにしてください!」

それはさすがに無理!

元貴族で俺よりずいぶん年上を呼び捨てなどできるかぁ。

「私も平民ですいぶん年下です。さすがに呼び捨ては……、それならラソーエさんと呼ばせてもらいます」

ラソーエさんは困った表情をしていた。それを見たザンベルトさんが話した。

「テンマ君は堅苦しいことは嫌いなんですよ。ラソーエ殿もテンマ君と呼んでも問題無いでしょう。そこのグストなんかは、昔からテンマ君を呼び捨てですよ」

「お、俺は元々冒険者だから、お互いに呼び捨てにするのは普通なんだよ……」

「クククッ、テンマ君がランガを呼び捨てにしていて、それを生意気だと言って、制裁しようとしたのは誰だったかなぁ~」

「ギ、ギルマス、それは言わんでください!」

グストはザンベルトさんに昔のことを持ち出され困った表情になっている。

「今思うとグストはテンマ君に殺されても不思議ではなかった。そうなればルカはテンマ君の嫁に立候補していたんじゃないか?」

「なっ、お前はやっぱりルカに手を出したのか!」

おうふ、なんでそんな話になるぅ~。

「ハハハッ、いやぁ~、私もテンマ殿に殺されていても不思議ではありませんでしたからなぁ。男爵位を息子に譲ってこの地に来て、毎日を楽しんでいるのが驚きですなぁ」

ラソーエさんは楽しそうに話していた。昔より元気になっている気がする。

「え~と、昔のことは忘れましょう。俺はルカさんに手を出していないぞ。手を出したらどれほどむしり取られるか……」

「おい、俺の嫁を侮辱するな!」

どうせいっていうねん!

「侮辱ではなく本当の話だぞ。グストも持ち金の全部をむしり取られたじゃじゃないか?」

「それはお前が次々と色々な魔道具を見せるからだろ!」

「いや、魔道具を見せて破格の金額を提示したのに、ルカさんは買わなかったぞ。結局買ったのはアンナの下着ばかりじゃないか!」

「あ、あんな下着を見せるのが悪い!」

「おいおい、お前も喜んでいたじゃねえか?」

「そ、それは……」

「テンマ君、私も妻にせがまれたよ。あれは……、私もしばらく節約しないとダメだな……」

アンナの下着は女性達に大好評だった。お土産として渡したのに、それで足りなかったのか次々と追加注文を女性たちはしていた。さらに下着のための研修施設まで……。

なんだかなぁ……。


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