転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟

文字サイズ
特大
238 / 296
第13章 懐かしい旅路

第28話 別れとテンプレ

朝からランガ達とダンジョン村を出発して、今は開拓村とロンダの町への分かれ道に到着したところだ。

ランガはサーシャさんを迎えに行くので、俺達と一緒にロンダの町へ行く。グストも一緒だがここでジートとズラタン、それに他の冒険者達とはお別れすることになる。
俺はロンダの町でドロテアさん達と合流して、王都で他の仲間とも合流する予定だ。ジート達とはこれでしばらくは会えないだろう。

分かれ道には広めの草原があり、拠点としていた滝へと続く小川が横に流れている。そこで馬を休めながら、ジート達と別れの挨拶をしていた。

「ジートこれをもらってくれ」

俺は準備していた指輪をジートに手渡す。指輪には『研』を意匠にして彫ってある。

「これを俺に?」

「ジートは俺と一緒に訓練した最初の仲間だよね。その証として渡したいと思ったんだ。嵌めてから魔力を流せばジート専用の魔道具になる。ステータスや収納、それに文字念話も使えるはずだ。大切にしてほしい」

ジートは目を大きく見開いて受け取った指輪を見つめていた。そして指に嵌めると魔力を流した。指輪の『研』の意匠が淡く光り、使用者登録が終わったようだ。

「収納の中にはジートのための装備も入っているはずだ。収納にあるの冒険者用の衣装を意識して『トラジション』と言うか考えれば一瞬で着替えられるはずだ」

ジートは驚いた表情で俺を見つめて、すぐに意識を集中した。

「……トラジション!」

彼がそう言うと、ジートとの装備は新しい装備に変わった。それまで着けていた装備や武器も以前に俺が渡したものだったが、だいぶ使い込まれていた。自動洗浄なども付与していたので、それほど汚れてはいなかったが、今のジートの実力には物足りない装備だったはずだ。

ジートは装備をペタペタと嬉しそうに触って確認していた。そして武器のショートソードを鞘から抜いて手応えを確認していた。

「ジートも強くなったから、前の装備では辛くなっていたんじゃないか。新しい装備で頑張ってくれよ」

「ば、馬鹿野郎! 前の装備でも簡単には手に入らない装備だったんだぞ……」

えっ、そうなの!?

少し驚いたが、ジートは涙目で嬉しそう笑っていた。喜んでもらえたなら俺も嬉しい。

「ああ、それと収納に奥さん用の腕輪も入っている。収納と文字念話、それにクリアも使えるはずだ。ついでに奥さんが喜びそうな下着ものをジジに選んでもらって入れといたからな」

ジートは俺に近づいてきて手を握り締めてきた。そして真剣な表情で俺の目を見つめながら話した。

「あ、ありがとう! 俺だけこんな凄いものを貰ったら、あとで女房に責められるところだったよ!」

近い! 近い!

ジートは顔を近づけて話してきた。あまりにも真剣な表情で怖いくらいだ。

お、俺の身近にいる男共はみんな奥さんに頭が上がらないみたいだぁ~!

ジートの手を振り払い、ズラタンにも同じように指輪を渡した。ズラタンは涙を流して抱きついてきた。

お前は抱き着くんじゃねぇーーー!

ズラタンの装備はジートの動き重視の革製ではなく、防御力重視の金属製の鎧だ。そんなのに抱き着かれてはたまったもんじゃない。

俺のステータスなら怪我はしないが、痛いのことは痛いのだ!

泣いて抱き着くズラタンを引きはがし、物欲しそうな視線を向ける他の冒険者達を強引に開拓村に出発させる。

彼らの姿が見えなくなるまで見送ると、俺達も出発の準備を始めた。


   ◇   ◇   ◇   ◇


馬車でここまで移動してきたが、シルが歩きたいと言い出してたので馬車を収納して馬をD研に入れる。

D研から戻ってくると、シルはミーシャと草原を走り回り、ジジはそれを笑顔で見ている。ランガとグストは近づいてきて話しかけてきた。

「テンマ、もちろん俺達の分もあるんだろ」

二人はニヤニヤとしながら言ってきた。

もちろん用意してある。だが二人の顔を見たら意地悪をしたくなる。

「えっ、何を言っているんだよ。二人にはそれぞれの奥さんに、どれほどの品を渡したと思っているんだ?」

グスト「そ、それは俺とは関係無いだろ!」
ランガ「そうだぞ。それに俺こそ最初の仲間だろ!」

「いやいや、ここでお前達が装備や魔道具を俺から貰ったら、サーシャさんやルカさんが何て言うか、二人ともよく考えてくれよ。たぶんそれは返すからその分は他のものをくれと言ってくるんじゃないか?」

そこまではサーシャさん達は言わないと思うが、ランガ達は俺の話に反論できないようだ。

おいおい、そこまでサーシャさん達のことを恐れているのかよぉ~。

そんな二人のことが気の毒だと思う。ジジはともかく他の女性達に、俺も振り回されているのも事実だ。

俺は意地悪をやめて、用意していた指輪を二人に渡そうと思った。だが草原に四人の男達が騒ぎながらやってきた。

「私達が一番乗りのようだな」
「なんで貴族の我々が走って移動なんだ?」
「それより獣人に命令されるのは我慢できん!」
「待て、そこに素晴らしい女性がいる!」

ランガ達にも声は聞こえているようで、彼らに視線を向けた。だが話の内容まで分からないようだ。俺は聞き耳スキルもあるのでハッキリと内容が聞こえていた。

一人はグストを一回り小さくしたような体格の男だ。もう一人は細身だが動きは良さそうなジートタイプの男で、もう一人は魔術師のような装備をしていた。そして最後の一人は優男だが機能的にはそれほどでもない、派手な見た目だけの装備を付けていた。
派手な優男はジジと舐め回すように見つめていた。

会話や装備から貴族だろう。

優男が先頭になりジジに向かって歩き出した。彼らがジジに近づくと、それに気付いたシルが彼らの前に立ちふさがった。

「お姉ちゃんに近づくな!」

おおっ、俺の弟であるシルがカッコいいじゃないか!

モフシルなら警戒してうなっている感じかな。

「無礼者、このおかたを誰だと─」

「よさないか。そんな大きい声を出したら、そちらの女性を怖がらせるではないか」

グストもどきが大きな声でシルを怒鳴りつけた。しかし優男が止めに入った。

ただジジは怖がっていないし、シルもひるむ様子はない。ミーシャはいつの間にかシルの後ろに立って彼らを睨んでいる。

「おっ、そこの彼女は獣人にしては可愛いいね」

今度はジートもどきが話した。

ミーシャちゃん、嬉しそうに尻尾を振るんじゃありません!

それにしてもこんな場所でテンプレかよ……。

「下品なことを言うんじゃないよ。お嬢さん、驚かしたようですみませんね。私は─」

「おい、俺達の連れに何か用か!?」

優男がジジ達に話しかけている最中にランガが彼らに声をかけた。

「我々は王都から特別研修に参加している貴族、ギャァーーー!」

魔術師タイプの男が話している最中に聞き覚えのある叫び声を上げて、頭を抱えて転がり始めた。

「ふぅ~、あなた達は研修に参加しているんだろ? 研修中の身分は平民と同じだ。そのことを覚えていないのか?」

グストが呆れたように頭を抱えて転がる男を見ながら話した。

「無礼なことを言うんじゃない! 下賤な、ギャァーーー!」

馬鹿じゃね!

今度はミニグストが頭を抱えて転げまわり始めた。

優男も困ったように転げまわる二人を見たが、すぐに視線をジジに向けると話しかけた。

「お嬢さん、仲間の失礼な言動をお許しください。私は身分など関係なくあなたを幸せにしますよ。冒険者のように不安定な生活を気にすることもありません。必要なら多額な準備金も用意しましょう。私のもとで幸せな人生を過ごしませんか?」

おうふ、この状況でも女性を口説こうとするのか!?

ある意味、優男君は凄いと思う。
だが俺の婚約者であるジジを口説くのを許せるわけない。

俺は間に入ろうとしたが、先にジジが答えた。

「お断りします。私には婚約者がいて、あなたでは太刀打ちできないほど素敵な人です!」

う、嬉しいよぉーーー!

ジジにそんな風に言ってもらえて、俺は、俺は、幸せ者だぁーーー!

「あなたは勘違いしているようですね。私ほど将来有望な男はいませんよ? 好きな金額を言ってください。いくらでもご用意しますよ?」

うん、彼はやっぱり凄いかもしれない

婚約者がいると言われ、ハッキリと断られたのに、まだ口説こうとするとは信じられない。昔同じような馬鹿を、いや馬鹿親子を見た気もする。

いい加減やめさせようと前に出ようとしたら、さらに十人ほど草原にやって来た。その一人が声を上げる。

「あっ、テンマ様!」

んっ、誰だ?

何となく見覚えはあるが、俺は思い出せなかった。


感想 441

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略 表紙

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

祝 書籍化決定!! あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ファンタジー 連載中 長編
文字数:413,497
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます 表紙

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。
ファンタジー 完結 長編
文字数:609,294
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました 表紙

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
恋愛 完結 短編
文字数:52,731
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~ 表紙

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。
恋愛 完結 ショートショート
文字数:9,943
貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし 表紙

貴族令嬢、転生5秒で家出します。 目指せ、ソロ活山暮らし

【祝・書籍化】第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 2026年7月発売です。4万字以上エピソード追加しました。 感想もありがとうございます! なかなか返信できておりませんが、全て拝読させていただいております。 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元宮廷魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ファンタジー 連載中 長編
文字数:210,794
元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜 表紙

元大学生の異世界辺境伯ライフ-1-〜神のミスで全加護を得た俺、ステータス偽装で目立たず別世界の神の侵略を食い止める冒険記〜

平凡な大学生だった俺は、ある日突然、神のミスによって命を落としてしまう。 そのお詫びとして異世界へ転生することになったのだが、なぜか二度目の神のミスまで重なり、世界中の神々から"ありえない数の加護"を授かってしまった。 転生先は、辺境伯家の少年・アッシュ。 六歳で加護を授かるこの世界で、俺は規格外すぎる力を手に入れることになる。 しかし、その力はあまりにも危険だった。 だからこそ俺は、ステータスを偽装し、「少し優秀な六歳児」を演じながら、平穏な辺境伯ライフを送ることを決意する。 ……そのはずだった。 王都への旅、個性豊かな仲間との出会い、次々と巻き込まれる騒動。 そして、この世界の裏で静かに動き始める、誰も知らない大きな脅威。 目立ちたくない最強少年が、知らぬ間に世界の運命へと巻き込まれていく――。 これは、最強なのに平穏を望む少年・アッシュが紡ぐ、爽快異世界ファンタジー。
ファンタジー 連載中 長編
文字数:394,256
『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた 表紙

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。
ファンタジー 完結 短編
文字数:9,553
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~ 表紙

真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~

皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。 だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。 しかし彼女は知らなかった。 帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。 これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
ファンタジー 完結 短編
文字数:22,384