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第2章 エルマイスター領
第10話 採取と子供たち①
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今朝もメイドさんに体を揺すられて目を覚ます。
寝惚けて変なことを話したりしなければ、こんな感じで目を覚ますのも悪くないと思う。
昨日のメイドさんはお休みかな?
メイドさんはもうすぐ朝食になると伝えると部屋を出て行った。スマートシステムで時間を確認すると7時14分だった。
昨日と全く同じ時間だ。メイドさんマジで凄い!
ベッドから起き上がり自分に洗浄《ウォッシュ》を使う。口にも洗浄《ウォッシュ》を使う。
コップに昨晩の失敗アプルポーションを少し入れ飲む。やはり効果は劇的で目が覚め非常に体が軽くなる。
これは確実に朝のローテーションに確定だな。
すぐにメイドさんが朝食に呼びに来たので食堂に行く。朝食もハロルド様とレベッカ夫人、アリスお嬢様にシャルとミュウも一緒に食べる。スープとサンドイッチが出たが相変わらず味はイマイチだ。
「アタルは今日どうするのじゃ?」
「今日は周辺で薬草など採取できる場所を見てこようと考えています」
「そうか、ならクレアに護衛を頼んでおこう」
「少し見てくるだけなので、護衛はいなくても大丈夫ですよ?」
「何を言っておる! 門の出入りには検査もある。我が家の客人に護衛もなく送り出せるわけなかろう?」
「あ~、確かに……」
そのとおりだと反省して部屋に戻る。
暫くするとメイドさんが呼びに来てロビーに行くと、クレアさんとカルアさんが来てくれていた。
挨拶して、薬草などを安全に採取できるところを相談すると、東門から出た所にある草原がお勧めと聞き見に行くことにした。
来た時に通ったのは西門だったらしく、あと南門があるようだが、そこを出て道なりに1時間ほど行くと迷宮があるらしい。
東門を出ると確かに草原が広がっている。道は斜め左に続いておりその先には農村があるとクレアさんが教えてくれた。
取り敢えず門から真っすぐと草原の中へ入っていく。
暫くは踏み荒らされたのか採取できそうな物は無かった。途中から普通に草花は生えていたがヒール草は無い。
更に進んでいくと、水量の少ない川に出てしまった。ここまでに採取できたのはヒール草2本とシュガの実が少しだった。
「あまりヒール草は無いんですね?」
「この辺は比較的安全なので、住人も採りに来ますし新人の冒険者も採取に来ます。仕方ありませんね」
あ~、そういうことかと納得してしまう。
すると頭の中に警告音が響く。すぐに地図《マップ》を確認すると、右の川沿いの辺りに魔物がいるようだ。
視線をそちらに向けると、見覚えのある半透明の楕円形の姿が見える。よく見ると砂地がある場所に何匹も居るみたいだ。
ゆっくりとそちらに歩いて行く。綺麗な砂地をみて考える。
確かガラスの材料って川にある砂だったような? ネットで確認できれば!
そんな風に考えながら、スマートシステムの画面を出すと叡智アプリにインターネットが追加されていた。
えっ、いつの間に!
「アタル様! 何かありましたか?」
アタルがスマートシステムを見て固まっているので、クレアさんが何かあったのか心配して声を掛けてきた。
もちろん護衛のふたりにはスマートシステムの画面は見えていない。
「すみません。考え事をしていたので。少し待ってもらえますか?」
「「わかりました。」」
叡智アプリのインターネットを開くと、見慣れたインターネットの検索サイトが表示される。
すぐにガラス製造を検索する。ガラスは珪砂、ソーダ灰、石灰があればできるようだ。
川辺の砂であれば、錬金アプリで珪砂(石英)は抽出できると思うが、それ以外の入手については自力では難しそうである。
ハロルド様に相談してみよう!
でも、急ぐ必要はないと考え直す。
ガラスはポーション容器の為に、必要だと考えていたが、スライム溶液で既にポーション容器が完成しているので急ぐ必要はない。
「すみません。あのスライムを倒してスライム溶液を採取したいのですが、良いですか?」
クレアさん達は不思議そうな表情をしたが頷いてくれた。
3人で砂地になっている水辺に下りて行く。スライムは本当にゆっくり動くだけで特に逃げたりもしなかった。
私はスライムに近づくと核を狙って微魔弾を撃つ。
前の時と同じく、核の潰れたスライムは、重力の重みで潰れたように平らにデローンと伸びたが、中の体液は漏れてこない。
最終的には、8匹のスライムを採取できた。
「ありがとうございます」
ふたりを見ると砂地で足元が濡れていた。
アタルはふたりに近づくと、順番に洗浄《ウォッシュ》を使用する。ふたりは気持ちよさそうな表情を見せる。
「アタル様、洗浄《ウォッシュ》を使って頂いたことは嬉しいのですが、外であまり使われないほうが宜しいかと思います」
クレアさんの指摘に、アタルは生活魔法ぐらいでと不思議に思う。
「洗浄《ウォッシュ》は生活魔法ですよね? 何か問題があるのでしょうか?」
「確かに洗浄は生活魔法です。ですが洗浄が使える者はあまり居りません。使える者でも、服や装備まで一緒にできる者となると、更に少なくなります。それに連続で使うとなると魔力が多い者でないとできません」
「そうなんですか? でもアリスお嬢様は普通にお願いしてきましたけど?」
「辺境伯様のお屋敷にいるメイドは、非常に優秀な者が多くいます。普段からそのような環境にいるアリスお嬢様だから、普通にお願いしたと思います」
なるほど~。
「全く知りませんでした。いや~、本当に気を付けないとダメですねぇ。ちなみにクレアさんは使えますか?」
「私は使えません。騎士団に入ると水生成までは皆練習するのですが、洗浄まで使える者は隊にはいません」
「それは驚きですね。女性には必須のスキルだと思うのですがねぇ」
「確かに私もそうは思うのですが…。街中で洗浄を商売にしている者もいます。確か銀貨3枚します。その者達も1回使うと魔力が回復するまで暫く休憩するようです」
商売になるほどなのかぁ。
あれっ、銀貨3枚という事は3000円!?
「そうなんですねぇ。気を付けるようにします。でも周りに人が居ない時は遠慮なく声を掛けてください」
「本当ですか!」
「カルア!」
「あっ、すみません!」
やはり女性は嬉しいようだ。カルアさんの表情を見て思わず笑ってしまう。
アタル達は再び採取作業を開始した。川を南方向に下りながら草原を歩いて行く。
しかし、相変わらず採取は捗らず、シュガの実ぐらいしか採取できなかった。
少しすると前方に複数の人影が見えてくる。10人ぐらいは居るようだが、体格は小さく子供のような感じがする。
もう少し近づくと、やはり子供のようだ。こちらに背を向け、横に1列に並んで地面から採取しているようだ。
「もしかして彼らが採取し終えた所を、我々は歩いて来た感じですかねぇ?」
そう言いながらふたりを見ると苦笑していた。
子供達も我々に気付いたのか採取を止めて1か所に集まり出した。よく見るとアリスお嬢様より幼い少女が殆どで半分近くは獣人に見える。凄く我々を警戒しているようだ。
少し体格の良い獣人の男子が2人と人族の少女が皆の前に出てくる。
話ができそうな距離に近づいたので話しかけようとしたら、先に向こうの獣人の男子に声を掛けられる。
「なんか用かよ!」
いきなり喧嘩腰なのぉ!
「いや~、今日初めてこの辺りに薬草とか採取に来たんだけど、全然採れなくてね。
それで探しながら進んでいたら、君達が採取しているようだったから。もし良かったら、この辺りのことを教えてくれないか?」
声を掛けてきた獣人の男子が、不満そうに我々に話しかけようとしたのを、少女が手で抑えて話しかけてくる。
「あ、あの何を教えれば?」
「何を採取しているのか、どれくらい採取できるのか教えてくれないかな?」
少女は少し考えると、他の子達が集まっている所に行き、バレーボールぐらいの随分くたびれた袋を持って戻って来た。
「これは私が朝から採取したものです」
そう言って袋を開いて、中を見せてくれる。
「おー、やっぱりヒール草が採れるのか。10本で束にしているのかぁ。でも朝からだと少ないのかな?」
中を確認しながら独り言のように話す。
休息所の近くでは1時間ぐらいで、この束だと5、6束は採取できていた。袋の中には1束と束にしていないヒール草が4本ほど入っていた。今は午前10時過ぎぐらいだが朝から数時間はあると考えると少ないと思った。
「私達は毎日採りに来てるし、他にも採りに来る人はいるので、これくらいでも採れていると思います。川を渡れば沢山採れます。ただあっちは魔物が多いので」
ふむふむ、なるほどなぁ。
「こっちに魔物はいないんだ。川向こうはどんな魔物がいるの?」
「こっちにも蹴りウサギやスライムはいますが、襲われることは滅多にないので。向こうは角ウサギが良く襲ってきます。本当にたまにフォレストウルフが出てくると聞いたことがあります」
「そうなんだ……ウサギはともかくウルフも出るのかぁ」
「なんだよ、おっちゃんいい年してウルフが怖いのか!」
「タウロ!」
「な、なんだよシア?」
「失礼なこと言わないの!アンタだってこの前、角ウサギに襲われて泣いたって聞いたよ!」
「なっ!キジェンのアニキが話したのか! 内緒にすると言ったのに」
アタルは「おっちゃん」と呼ばれたことに凄くショックを受けていた。
地球では仕事関係の付き合いがほとんどで、おじさん扱いされたことは人生で初めてだったのである。
よく考えてみると彼らから見ると「おっちゃん」と呼ばれても仕方ないと思う。しかし、
「アタル様、大丈夫ですか?」
クレアさんが放心した様子の自分を見て心配して声を掛けてくる。
「い、いや大丈夫だよ。これまで『おっちゃん』と呼ばれたことが無かったので…」
『『『そこっ!』』』
周りの皆は思わず心の中で突っ込んだ。
「アタル様、彼らから見れば仕方がないかと」
クレアさん、そんなことは理解できています。しかし、
「ではクレアさんも『おばさん』と呼ばれて仕方ないと?」
クレアさんの目が光って背後に炎が燃え上って見えた。
「何言っているんだよ! そっちの2人はお姉さんに決まっているだろ」
タウロがそう言うと、クレアさんの背後の炎は消え、どや顔に表情が変わる。カルアさんもニヤニヤ笑っている。
あれほど綺麗だと思っていたクレアさんが少し憎らしくなってきた。
そのとき神の言葉を聞く。
「タウロ! アタルお兄ちゃんに失礼だよ!」
頭の中に『お兄ちゃん』が何度もリピート再生される。
街中で自分にケモナー属性があることを気付いたが、ここで妹属性まであることに気付いてしまった。確かに妹の美優が可愛くて仕方なかった。幸い異世界もの定番のロリ属性は無いようだ。
何とか冷静になり話を聞いてみる。
「薬草は売るんだよね?いくらで売れるの?」
「冒険者ギルドに持っていくと1束で銅貨1枚です」
「えっ、そんなに安いの?」
「孤児院の者はその金額しか貰えません。他の人だと1束で最低でも銅貨3枚は貰えます」
「なんで孤児院の者だと安くなるの?」
「その……孤児は税を払わないし、人の税で生きてるから………そう言われたことがあります」
思わずクレアさんを見る。クレアさんは無言で首を横に振る。よくわからないということか?
冒険者ギルドはラノベにあるような公平な組織じゃないのかと残念に思う。
「でも、ご領主様から、薬草を買い取ると連絡がありました。1束銅貨5枚で買い取ってくれるそうです」
シアと呼ばれていた少女は嬉しそうに話す。
アタルは少し考えて提案する。
「ついでにこのシュガの実も採取してくれないかな?」
アタルはシュガの実をストレージから出して見せる。
「えっ、……すみません。ご領主様の依頼があるので……」
あぁ、突然お願いしするのはダメなのかぁ。
すると横からクレアさんが話をしてくれる。
「薬草採取の依頼は、彼からご領主のハロルド様に依頼されたものだ。依頼元は同じなので安心してシュガの実も採取して欲しい」
シアは少し考えてから返事する。
「それは良いですが、シュガの実は食べられませんよ?」
「食べるわけじゃないよ。少し調べたいことがあるだけだ。きちんと買い取るから頼むよ」
「はぁ~、分かりました。じゃあ採取しておきます」
「よろしくね~」
そういうと川に向かう。子供達から離れるとクレアさんが話しかけてきた。
「孤児院はハロルド様がお金を出して運営しています。
しかしお金を出すだけでは良くないからと、最低限の費用しか出さないと聞いたことがあります。
まさか私も周りの大人が、孤児たちを食い物にしているとは知りませんでした。
たぶんハロルド様も気が付いていないと思います」
複雑な思いを胸に採取に向かうのだった。
寝惚けて変なことを話したりしなければ、こんな感じで目を覚ますのも悪くないと思う。
昨日のメイドさんはお休みかな?
メイドさんはもうすぐ朝食になると伝えると部屋を出て行った。スマートシステムで時間を確認すると7時14分だった。
昨日と全く同じ時間だ。メイドさんマジで凄い!
ベッドから起き上がり自分に洗浄《ウォッシュ》を使う。口にも洗浄《ウォッシュ》を使う。
コップに昨晩の失敗アプルポーションを少し入れ飲む。やはり効果は劇的で目が覚め非常に体が軽くなる。
これは確実に朝のローテーションに確定だな。
すぐにメイドさんが朝食に呼びに来たので食堂に行く。朝食もハロルド様とレベッカ夫人、アリスお嬢様にシャルとミュウも一緒に食べる。スープとサンドイッチが出たが相変わらず味はイマイチだ。
「アタルは今日どうするのじゃ?」
「今日は周辺で薬草など採取できる場所を見てこようと考えています」
「そうか、ならクレアに護衛を頼んでおこう」
「少し見てくるだけなので、護衛はいなくても大丈夫ですよ?」
「何を言っておる! 門の出入りには検査もある。我が家の客人に護衛もなく送り出せるわけなかろう?」
「あ~、確かに……」
そのとおりだと反省して部屋に戻る。
暫くするとメイドさんが呼びに来てロビーに行くと、クレアさんとカルアさんが来てくれていた。
挨拶して、薬草などを安全に採取できるところを相談すると、東門から出た所にある草原がお勧めと聞き見に行くことにした。
来た時に通ったのは西門だったらしく、あと南門があるようだが、そこを出て道なりに1時間ほど行くと迷宮があるらしい。
東門を出ると確かに草原が広がっている。道は斜め左に続いておりその先には農村があるとクレアさんが教えてくれた。
取り敢えず門から真っすぐと草原の中へ入っていく。
暫くは踏み荒らされたのか採取できそうな物は無かった。途中から普通に草花は生えていたがヒール草は無い。
更に進んでいくと、水量の少ない川に出てしまった。ここまでに採取できたのはヒール草2本とシュガの実が少しだった。
「あまりヒール草は無いんですね?」
「この辺は比較的安全なので、住人も採りに来ますし新人の冒険者も採取に来ます。仕方ありませんね」
あ~、そういうことかと納得してしまう。
すると頭の中に警告音が響く。すぐに地図《マップ》を確認すると、右の川沿いの辺りに魔物がいるようだ。
視線をそちらに向けると、見覚えのある半透明の楕円形の姿が見える。よく見ると砂地がある場所に何匹も居るみたいだ。
ゆっくりとそちらに歩いて行く。綺麗な砂地をみて考える。
確かガラスの材料って川にある砂だったような? ネットで確認できれば!
そんな風に考えながら、スマートシステムの画面を出すと叡智アプリにインターネットが追加されていた。
えっ、いつの間に!
「アタル様! 何かありましたか?」
アタルがスマートシステムを見て固まっているので、クレアさんが何かあったのか心配して声を掛けてきた。
もちろん護衛のふたりにはスマートシステムの画面は見えていない。
「すみません。考え事をしていたので。少し待ってもらえますか?」
「「わかりました。」」
叡智アプリのインターネットを開くと、見慣れたインターネットの検索サイトが表示される。
すぐにガラス製造を検索する。ガラスは珪砂、ソーダ灰、石灰があればできるようだ。
川辺の砂であれば、錬金アプリで珪砂(石英)は抽出できると思うが、それ以外の入手については自力では難しそうである。
ハロルド様に相談してみよう!
でも、急ぐ必要はないと考え直す。
ガラスはポーション容器の為に、必要だと考えていたが、スライム溶液で既にポーション容器が完成しているので急ぐ必要はない。
「すみません。あのスライムを倒してスライム溶液を採取したいのですが、良いですか?」
クレアさん達は不思議そうな表情をしたが頷いてくれた。
3人で砂地になっている水辺に下りて行く。スライムは本当にゆっくり動くだけで特に逃げたりもしなかった。
私はスライムに近づくと核を狙って微魔弾を撃つ。
前の時と同じく、核の潰れたスライムは、重力の重みで潰れたように平らにデローンと伸びたが、中の体液は漏れてこない。
最終的には、8匹のスライムを採取できた。
「ありがとうございます」
ふたりを見ると砂地で足元が濡れていた。
アタルはふたりに近づくと、順番に洗浄《ウォッシュ》を使用する。ふたりは気持ちよさそうな表情を見せる。
「アタル様、洗浄《ウォッシュ》を使って頂いたことは嬉しいのですが、外であまり使われないほうが宜しいかと思います」
クレアさんの指摘に、アタルは生活魔法ぐらいでと不思議に思う。
「洗浄《ウォッシュ》は生活魔法ですよね? 何か問題があるのでしょうか?」
「確かに洗浄は生活魔法です。ですが洗浄が使える者はあまり居りません。使える者でも、服や装備まで一緒にできる者となると、更に少なくなります。それに連続で使うとなると魔力が多い者でないとできません」
「そうなんですか? でもアリスお嬢様は普通にお願いしてきましたけど?」
「辺境伯様のお屋敷にいるメイドは、非常に優秀な者が多くいます。普段からそのような環境にいるアリスお嬢様だから、普通にお願いしたと思います」
なるほど~。
「全く知りませんでした。いや~、本当に気を付けないとダメですねぇ。ちなみにクレアさんは使えますか?」
「私は使えません。騎士団に入ると水生成までは皆練習するのですが、洗浄まで使える者は隊にはいません」
「それは驚きですね。女性には必須のスキルだと思うのですがねぇ」
「確かに私もそうは思うのですが…。街中で洗浄を商売にしている者もいます。確か銀貨3枚します。その者達も1回使うと魔力が回復するまで暫く休憩するようです」
商売になるほどなのかぁ。
あれっ、銀貨3枚という事は3000円!?
「そうなんですねぇ。気を付けるようにします。でも周りに人が居ない時は遠慮なく声を掛けてください」
「本当ですか!」
「カルア!」
「あっ、すみません!」
やはり女性は嬉しいようだ。カルアさんの表情を見て思わず笑ってしまう。
アタル達は再び採取作業を開始した。川を南方向に下りながら草原を歩いて行く。
しかし、相変わらず採取は捗らず、シュガの実ぐらいしか採取できなかった。
少しすると前方に複数の人影が見えてくる。10人ぐらいは居るようだが、体格は小さく子供のような感じがする。
もう少し近づくと、やはり子供のようだ。こちらに背を向け、横に1列に並んで地面から採取しているようだ。
「もしかして彼らが採取し終えた所を、我々は歩いて来た感じですかねぇ?」
そう言いながらふたりを見ると苦笑していた。
子供達も我々に気付いたのか採取を止めて1か所に集まり出した。よく見るとアリスお嬢様より幼い少女が殆どで半分近くは獣人に見える。凄く我々を警戒しているようだ。
少し体格の良い獣人の男子が2人と人族の少女が皆の前に出てくる。
話ができそうな距離に近づいたので話しかけようとしたら、先に向こうの獣人の男子に声を掛けられる。
「なんか用かよ!」
いきなり喧嘩腰なのぉ!
「いや~、今日初めてこの辺りに薬草とか採取に来たんだけど、全然採れなくてね。
それで探しながら進んでいたら、君達が採取しているようだったから。もし良かったら、この辺りのことを教えてくれないか?」
声を掛けてきた獣人の男子が、不満そうに我々に話しかけようとしたのを、少女が手で抑えて話しかけてくる。
「あ、あの何を教えれば?」
「何を採取しているのか、どれくらい採取できるのか教えてくれないかな?」
少女は少し考えると、他の子達が集まっている所に行き、バレーボールぐらいの随分くたびれた袋を持って戻って来た。
「これは私が朝から採取したものです」
そう言って袋を開いて、中を見せてくれる。
「おー、やっぱりヒール草が採れるのか。10本で束にしているのかぁ。でも朝からだと少ないのかな?」
中を確認しながら独り言のように話す。
休息所の近くでは1時間ぐらいで、この束だと5、6束は採取できていた。袋の中には1束と束にしていないヒール草が4本ほど入っていた。今は午前10時過ぎぐらいだが朝から数時間はあると考えると少ないと思った。
「私達は毎日採りに来てるし、他にも採りに来る人はいるので、これくらいでも採れていると思います。川を渡れば沢山採れます。ただあっちは魔物が多いので」
ふむふむ、なるほどなぁ。
「こっちに魔物はいないんだ。川向こうはどんな魔物がいるの?」
「こっちにも蹴りウサギやスライムはいますが、襲われることは滅多にないので。向こうは角ウサギが良く襲ってきます。本当にたまにフォレストウルフが出てくると聞いたことがあります」
「そうなんだ……ウサギはともかくウルフも出るのかぁ」
「なんだよ、おっちゃんいい年してウルフが怖いのか!」
「タウロ!」
「な、なんだよシア?」
「失礼なこと言わないの!アンタだってこの前、角ウサギに襲われて泣いたって聞いたよ!」
「なっ!キジェンのアニキが話したのか! 内緒にすると言ったのに」
アタルは「おっちゃん」と呼ばれたことに凄くショックを受けていた。
地球では仕事関係の付き合いがほとんどで、おじさん扱いされたことは人生で初めてだったのである。
よく考えてみると彼らから見ると「おっちゃん」と呼ばれても仕方ないと思う。しかし、
「アタル様、大丈夫ですか?」
クレアさんが放心した様子の自分を見て心配して声を掛けてくる。
「い、いや大丈夫だよ。これまで『おっちゃん』と呼ばれたことが無かったので…」
『『『そこっ!』』』
周りの皆は思わず心の中で突っ込んだ。
「アタル様、彼らから見れば仕方がないかと」
クレアさん、そんなことは理解できています。しかし、
「ではクレアさんも『おばさん』と呼ばれて仕方ないと?」
クレアさんの目が光って背後に炎が燃え上って見えた。
「何言っているんだよ! そっちの2人はお姉さんに決まっているだろ」
タウロがそう言うと、クレアさんの背後の炎は消え、どや顔に表情が変わる。カルアさんもニヤニヤ笑っている。
あれほど綺麗だと思っていたクレアさんが少し憎らしくなってきた。
そのとき神の言葉を聞く。
「タウロ! アタルお兄ちゃんに失礼だよ!」
頭の中に『お兄ちゃん』が何度もリピート再生される。
街中で自分にケモナー属性があることを気付いたが、ここで妹属性まであることに気付いてしまった。確かに妹の美優が可愛くて仕方なかった。幸い異世界もの定番のロリ属性は無いようだ。
何とか冷静になり話を聞いてみる。
「薬草は売るんだよね?いくらで売れるの?」
「冒険者ギルドに持っていくと1束で銅貨1枚です」
「えっ、そんなに安いの?」
「孤児院の者はその金額しか貰えません。他の人だと1束で最低でも銅貨3枚は貰えます」
「なんで孤児院の者だと安くなるの?」
「その……孤児は税を払わないし、人の税で生きてるから………そう言われたことがあります」
思わずクレアさんを見る。クレアさんは無言で首を横に振る。よくわからないということか?
冒険者ギルドはラノベにあるような公平な組織じゃないのかと残念に思う。
「でも、ご領主様から、薬草を買い取ると連絡がありました。1束銅貨5枚で買い取ってくれるそうです」
シアと呼ばれていた少女は嬉しそうに話す。
アタルは少し考えて提案する。
「ついでにこのシュガの実も採取してくれないかな?」
アタルはシュガの実をストレージから出して見せる。
「えっ、……すみません。ご領主様の依頼があるので……」
あぁ、突然お願いしするのはダメなのかぁ。
すると横からクレアさんが話をしてくれる。
「薬草採取の依頼は、彼からご領主のハロルド様に依頼されたものだ。依頼元は同じなので安心してシュガの実も採取して欲しい」
シアは少し考えてから返事する。
「それは良いですが、シュガの実は食べられませんよ?」
「食べるわけじゃないよ。少し調べたいことがあるだけだ。きちんと買い取るから頼むよ」
「はぁ~、分かりました。じゃあ採取しておきます」
「よろしくね~」
そういうと川に向かう。子供達から離れるとクレアさんが話しかけてきた。
「孤児院はハロルド様がお金を出して運営しています。
しかしお金を出すだけでは良くないからと、最低限の費用しか出さないと聞いたことがあります。
まさか私も周りの大人が、孤児たちを食い物にしているとは知りませんでした。
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気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
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ファンタジー
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