スマートシステムで異世界革命

小川悟

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第6章 塩会議

第6話 意外と優秀?パート2

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ヤドラス配下の裏ギルド職員は肩で息をしながらタルボットに声を掛けた。

「お前は……」

「ヤドラス様より伝言が御座います。内密にお話がしたのですが?」

裏ギルド職員は呼吸を整えて丁寧にお願いする。

「おい、俺は出発の準備を確認してくる。早く合流してくれよ!」

キルティは話が長くなりそうだと思い、すぐに出発できるように準備に走りだした。

「あっ、おい!」

タルボットは作戦を中止しようと考えていたので、キルティを止めようとした。しかし、キルティは聞こえていたはずなのに、そのまま走り去ってしまった。

「チッ」

タルボットは舌打ちをすると裏ギルド職員に向かって話し始める。

「この忙しいタイミングで、ヤドラスからどんな伝言だ?」

タルボットは少し不満そうに尋ねた。

「実は……」

裏ギルド職員はヤドラスからの伝言を話した。

「なるほど……、馬車も新しいのか……?」

タルボットは話を聞いて、ウマーレムと教えられた馬ゴーレムばかり気になって、馬車まで確認していなかったことに気付いた。

良い情報だと思ったが、内心でヤドラスに嵌められたと思っていた。
作戦を中止しようと考えていたが、ここで中止すればヤドラスの指示に従ったことになるからだ。

「はい、ここで失敗すれば、冒険者ギルドにも大きな痛手になると思います。慎重に情報を集めてから実行したほうが、よろしいのではありませんか?」

タルボットは考えてから答える。

「いや、作戦は実行する!」

「ほ、本当ですか!? 万が一にも失敗したら!」

裏ギルド職員は驚いて大きな声を出す。やはりこの人は戦闘能力が高いだけだと思った。しかし、タルボットは意外に落ち着いていた。

「おい、大きな声を出すな!」

「す、すみません。ですが……」

「まあ話を聞け。確かに相手の戦力が不確かなことは間違いない。本来なら作戦を延期して情報を集めてから対処するべきだと俺も思う」

「なら!?」

「だが、相手の戦力をどうやって調査するんだ?」

「それは……」

「戦闘してみないと、わからないだろ?」

「では、そのためにも戦闘を? ですが失敗したら……」

「大丈夫だよ。奴《キルティ》と契約したわけじゃないし、証拠は何も残していない。自白しようとも証拠がなければどうにでもなる!」

裏ギルド職員はその非情な決断に息を飲む。

「それに、ヤドラスは失敗することも考えて、お前に結果を見て報告しろとでもいったんだろ?」

「……は、はい」

「だったら失敗したこともヤドラスは考えているさ。いずれにせよ混乱は起きるはずだからな」

裏ギルド職員はヤドラスの変貌にも驚いていた。そして普段から力頼みで何も考えていなそうなタルボットが、これほど状況や先行きを見通していることに驚いていた。王都のサブマスターになるには、やはり力だけではないと考えるのであった。

そしてタルボットもヤドラスのことを侮っていたと考えていた。
他人任せでいい加減な仕事しかできず、冒険者本部からきたこと以外はなんの取り柄もない男だと思っていたのである。

「それにキルティはあれでも実力はS級冒険者と言えるほどの実力がある。手下もそれなりの戦力で、襲撃は得意な連中だ。作戦が成功するかもしれないだろ」

「………」

裏ギルド職員もここまで説明されると反論などできるはずなかった。タルボットと一緒に作戦の経緯を見届けることになるのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


アタルはテク魔車の中で落ち込んでいた。村に早く到着したのは良かったが、村に見どころなどなさそうだったのだ。

地球の道の駅ほどでもなくても、もう少し栄えていると思っていたのである。
村はただの農村で申し訳程度の宿が数軒あるだけだった。物を売っている店も地元向けの店しかなかったのだ。

ラナ「旦那様、どうされたのですか?」
ミュウ「なんか元気な~い!」
キティ「元気な~い!」

「いやぁ、ここまで村に何もないとは思わなくてね。せめて旅行客を相手に、屋台なんかで名物を売っているかと思ったんだけどね」

「このグラスニカ領の農村は小麦の生産がほとんどです。小麦はグラスニカの領主様が一度買い上げてから販売されますから、名物などありません。
それに旅行客はほとんどがエルマイスター領に行く商人になります。数も多くありませんし、この村で買い物する商人はほとんどいないと思います」

クレアは何度もこの村に来て、事情を知っているのだろう。でも、もう少し……。

うん、いつかはこの世界的『道の駅』を造ろう!

そんなことを秘かに決心して、子供たちとテク魔車内で遊ぶことにするのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


タルボットたちはすぐに村を出発して、予定していた襲撃地点とは少し違う場所まで移動していた。

「おい、なんでここまで戻ってきたんだ。ここは野営には向かないだろ?」

キルティの質問にタルボットが答える。

「あのウマーレムを見ただろ。前の襲撃予定の場所だと騎馬に有利になる。それにウマーレムの能力が分からないから、逃げられる可能性もあるだろう」

最初の襲撃予定場所は一気に取り囲んで襲撃できる場所で、野営するにも便利な地点だった。

今いる場所も襲撃には向いていたが、野営する場所が少なく馬車を隠すのが困難だったのである。

「……確かにそうだな」

キルティも納得したようだ。

「これから道を通れないように準備するぞ。グラスニカ領都から商人が来る可能性は低いはずだ。塩会議があるのにエルマイスター領に行く商人はいないだろ。それに村側からはエルマイスター一行以外はグラスニカに向かっていないから大丈夫だ」

タルボットはグラスニカ領の冒険者ギルドで、護衛依頼の確認もしていた。

「おいおい、そんな面倒なことをするのか。ウマーレムという予想外はあったが、俺達の戦力ならそれほど警戒しなくても大丈夫じゃねえか?」

キルティや他の手下たちも面倒臭そうな表情をしている。

「分かっているのか? 今回の標的は国の大貴族なんだぞ! 一人でも逃がせばグラスニカ領の兵士たちがすぐに行動を始めることになる。証拠を残せば追い詰められるのは我々だぞ」

タルボットの話にキルティ達も表情を変える。
何となくうまく計画が進んでいると思っていたが、襲撃後のことをそれほど考えていなかったのである。

「全員を皆殺しにすれば、お宝の回収も余裕でできる。証拠の隠滅や襲撃の発覚事態が隠蔽できる。そうなれば安心してこの場を離れられるから、安心して報酬やお宝を楽しめることになるんだ!」

「確かにそうだな。お宝もたくさん手に入りそうだし、そのためには相手を殲滅しないとな!」

キルティはタルボットの話に同意する。

「いいか? この場所は片側をウマーレムが通れない程度の崖になっている。そして反対側は小さいが川になっている。道さえ塞いで後ろ側に戦力を集めれば、相手は逃げることはできないはずだ。ちょうど川の影響で道が曲がっているから、道を塞いでも相手はギリギリまで気付かないはずだ。
相手が止まったところに矢を射かけて、最低でも半分を倒すか手傷を負わせれば確実に仕留められるはずだ!」

手下たちも報酬が高くなり浮ついていたが、真剣な表情に変わっていた。

「おい! 面倒だがすぐに道を塞ぐ作業に入るぞ!」

キルティ達が作業に向かうと裏ギルド職員がタルボットに話しかける。

「作戦を聞くかぎり、上手くいきそうな感じがしますね?」

「ああ、作戦が上手くいくようにしているからな。だが不確定要素が多すぎるのが不安なだけだ。失敗したことも想定しないとギルドが困ったことになるからな」

「そうですね……」

「だから我々は明日の朝、少し手前に反対岸の渡れる場所がある。そこから反対岸にある丘まで移動するぞ。丘は少し離れていて襲撃するこの場所の全体が見える。
失敗しそうになったら即座に撤収する。わかったな!」

「はい!」

予想以上に先まで考えていることに驚きながらも、裏ギルド職員の男はタルボットが頼りになると考えるのであった。
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