スマートシステムで異世界革命

小川悟

文字の大きさ
152 / 224
第6章 塩会議

第13話 この世界の現実……

しおりを挟む
ハロルド様から解放されて自分達のテク魔車に戻ると、ミュウとキティがしびれを切らして待っていた。

ミュウ「アタルゥ~、おそいよぉ。町を見に行くやくそくぅ!」
キティ「おそい~!」

「ゴメンなぁ、ハロルド様の話が長くて困ったよぉ。すぐに出発しよう。ゆっくり見るために歩いて行くぞぉ!」

ラナとクレアは苦笑している。それでもすでに準備できているようで、すぐに出発する。

我々のテク魔車にも第7部隊から6人ほど護衛についてきている。彼女たちも簡易装備で一緒についてくるようだ。宿舎に残っている兵士たちに挨拶して出かける。

本当に自分でも子連れの気分になっている。

比較的綺麗な区画を抜けると、大きな通りに出る。たくさんの商人や馬車が行き交い、お店もたくさん並んでいる。エルマイスターとは違った雰囲気だ。

時折嫌な目つきで睨んでくる人がいる。理由は分からないし、何かしてくるわけではないので無視して色々な店を見ながら歩いていく。

ミュウ「すごいのぉ~。人がおおいのぉ~」
キティ「おおいのぉ~」

楽しそうに騒ぐ2人を見ると、自分も楽しくなる。

「私もエルマイスター領以外の町は初めてですわ。本当に全く違うのですね」

ラナも嬉しそうに話す。この世界では旅をするのは簡単ではない。商人か冒険者でもなければ旅など基本的にしないのだろう。

「確かに違いますね。でも……、私はエルマイスター領が一番好きです!」

クレアは同意しながらも、複雑な表情をしている。たしかクレアは王都にも護衛任務で行ったこともあると聞いていた。やはり大変なことがたくさんあったのだろうか?

それに、エルマイスター領とは違い、獣人がほとんどいない。

ミュウ「あっ、オレンだぁ~!」
キティ「オレン? しらないのぉ~」

ミュウが指差し、カティが不思議そうに話す。

オレン? オレンジの実か? いや、あれはミカンに見えるなぁ。

野菜や果物がたくさん並べられたお店に、見覚えのある果物があった。

飴やジュースにしても良いし、健康ドリンクに使っても良い。使い勝手は悪くないので買おうと思った。

「触るんじゃねぇ!」

カティがお店の近くに歩いていき、オレンの実を近くで見ようとしていた。それに気付いた店主と思われる男がミュウに大きな声で怒鳴った。

子供が近寄ったくらいで、その言い方はないだろうと思ってムッとした。しかし、それがこの店の方針なら仕方ない。買うのを止めてキティを連れていこうとすると、店主の奥さんみたいな人が焦った表情で謝る。

「も、申し訳ありません! どうかお許しください!?」

怒鳴った男も少し顔色が悪くなっている。どうしてだろうと後ろを見ると、少し離れてついてきていた護衛が、いつの間にかすぐ後ろに居て、武器に手をかけていた。

しかし、クレアが手で必要ないという仕草をすると、すぐに護衛は離れていく。

「ああ、すまないな。私達はエルマイスター領から来た。我々でも問題ない通りを教えてくれないか?」

「チッ」

怒鳴った男は舌打ちし、それを嗜めるように女性が睨む。そして、声を掛けたクレアに女性が答えてくれた。

「す、少し先を右に曲がると、大丈夫だと思います」

女性は申し訳なさそうにするが、男はまだ早くどこかへ行ってくれという感じで睨んでいる。

「そうか、ありがとう」

クレアは普通に答えると私に目で合図して、教えられた方向に向かおうとする。

私は驚いて泣きそうになっているキティを抱き上げると、キティは胸に顔を押し付けてくる。横でミュウは悲しそうな表情をしていた。

ラナがミュウの手を握り締め一緒に歩き出す。私は歩きながら、これがこの世界の現実なのかと認識するのだった。


   ◇   ◇   ◇   ◇


先程の女性に教えられたとおりに右に曲がると、明らかに雰囲気が変わった。表の綺麗な大通りとは違い、少し汚れている。少し先に店もあるようだ。

これがこの世界の現実なのだろう……。

地球にいた時に、種族や性別による差別をそれほど意識したことはない。たまにニュースやネットで騒いでいるのを見ても、特に気にせず能力や実力で判断すれば良いのではと思った程度だった。

エルマイスター領での女性差別も、深く考えずに能力を正当に評価すべしと思っただけである。

小さなキティを抱きしめながら、気持ちを整理する。

地球だって差別が騒がれたのは、数十年や百年単位で考えると最近だと考えられる。間違いなく差別はあったし、奴隷制度がなくなったのもそれほど昔の話ではない。

この世界の文明レベルは百年単位で、地球より遅れていると私には思える。だとするとこの現実は仕方ないと思うが、それ以上に悲しくなる。

「旦那様、国に法で種族による差別は禁じられています。しかし、現実では先程のことなどよくあることなのです。
客は獣人が出入りするとその店にこなくなる。だから、店は獣人に厳しい対応をするのです」

何となく分かる気がする。結局、そういったことが益々差別につながるのだろう。

悲しいことだが、自分にそれを変えることができるわけでもない。騒いで相手に文句を言っても、何も始まらないだろう。

ただ、その事実が悲しい。

「うん、わかっている……」

そう答えて、余計に悲しくなる。こんな事実を受け入れないといけないことが……。

ミュウも悲しそうな表情をしてラナの手を強く握りしめている。それでも諦めた表情を見せている。同じようなことが過去にもあったのだろう。

私の腕の中に居るキティは、エルマイスターの孤児院で出会っている。エルマイスター領でも多少の差別はあったが、あれほど露骨じゃなかっただろう。

少し歩くと、小さいお店だがオレンの実を売っている店があった。人族の女性が店主らしい雰囲気だが、獣人の女の子が働いている。

店の商品は量や種類は少なく、品質もあまり良くない。それでも3個ほどオレンの実を買った。

私が抱えるキティを気にした様子もなく普通にオレンを売って渡してくれる。

うん、すべての人が差別するわけじゃないんだ!

何となく救われた気がする。

店を離れて少し歩くと、未だに胸に顔を埋めるキティに話しかける。

「キティが初めてオレンを食べる顔がみたいなぁ」

そう話すとキティがおずおずと顔を上げる。

「ほんとぉ?」

店で買い物している時も、キティがオレンのことを気にしていることは気付いていた。

「本当だよ。ほら、お兄ちゃんが剥いてあげよう!」

キティを抱いていたので、剥きにくそうにしていると、キティは肩まで移動してくれる。すぐにオレンを剥き終わると、一房キティに差し出す。

キティは受け取ってくれたが、肩で表情が見えない。

「キティ、そこだと食べる顔が見えないよ?」

そう話すと、キティはすぐに胸元まで下りてきた。キティは手に持つオレンをキラキラとした目で見てる。その顔が微笑ましくて、自分も微笑んでしまう。

「食べてみて」

そう言うと、キティは嬉しそうにオレンの実を口に入れる。

「おいひぃ~!」

キティは頬に両手をあて、満面の笑みで言った。

うん、国や世界など関係ない! 自分の手の届く範囲だけでも差別はなくしたいなぁ。

キティの笑顔を見てそう心に決める。

「キティだけずるい~、ミュウもアタルにむいてほしいのぉ~」

ミュウの分はラナにお願いしたが、嬉しいことを言ってくれる。ラナは少し苦笑している。

「ほれ、ミュウにも上げよう!」

そう言って、一房渡すとミュウはすぐに口に入れた。

「おいひぃ~!」

ミュウもキティと同じリアクションで喜ぶ。

それからは交互にオレンを2人に渡して、同じようなことをオレンがなくなるまで続けるのであった。
しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

処理中です...