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第6章 塩会議
第35話 動き出す
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商業ギルドのギルドマスター達が商業ギルドに到着して中に入ると、すぐに受付の職員が近づいてきた。
いつものことだと思ったが、深刻な顔で職員は話す。
「グランドマスターが来られています。すぐに会議室に行ってください!」
職員は他には聞こえないように話しているが、顔は切迫していた。ギルドマスター達も顔色を変える。ネストルの相手で疲れていたが、すぐに4人は会議室に向かった。
会議室ではグランドマスターのオルアットとグラスニカの副ギルドマスターが一緒に、何か書類を見ながら話していた。
ノックしてギルドマスター達が部屋に入ると、オルアットが冷酷な表情で4人を見て言った。
「とりあえず座って、ヤドラス子爵のことを報告してや!」
「「「はい」」」
4人は緊張した表情になり副ギルドマスターのキラノが見たことのない表情で席に座った。
緊張しながらもヤドラス支部のギルドマスターが報告する。
「ネストル殿の話では、今年は大きく塩の値段を上げるようです。なんでも伯爵位に就くために資金が必要と言ってました」
「私はこれ以上の値上げを止めるように指示したはずだ! 向こうの都合だけ聞いてきたのか。どんな説得をしたねん!」
オルアットは冷酷な表情で4人に尋ねる。
「こ、これ以上の値上げはまずいと説得しました。調査や隣国への苦情に繋がると説明したのです。しかし、ゼノキア侯爵に庇ってもらえたから大丈夫だと申されまして……」
エイブル支部のギルドマスターが説得した内容を具体的に説明する。
「それで?」
オルアットは続きを話すように尋ねる。
「いや、あの、そう言われたら説得する材料がなく……」
オルアットは答えを聞いて信じられないといった顔になる。
「えっ、それで終わりなの!? そんなん誰でも知っとるやないか。ゼノキア侯爵が証拠をつかんでやら、さすがに塩が高すぎるさかい国が動き出したやら、言いようはあるやろ!」
オルアットがそう話すと4人は驚きの表情を見せる。そしてグラスニカ支部のギルドマスターが話した。
「そのような情報は私共には来ておりません。いつの情報でしょうか!?」
オルアットは更に驚いてから、溜息をつくと答える。
「ふぅ~、そんな情報やら知らへん! 商人ならそれらしゅう噂があるやら上手う言いようはあるやろ!」
4人は驚きながらも落ち込む。その程度のブラフは商人なら当然やる。商人ギルドのギルドマスターである自分達もよく使う手であった。ネストルのご機嫌を取ることばかり考えて忘れていたのである。
「まあええわ」
オルアットの許しが出て4人はホッとすたのだった。
「本格的な塩会議の準備を始めるわ。あんた達は取り敢えず着替えてきてくれへんかな」
オルアットが副ギルドマスターに目で合図すると、警備職員が4人のギルドマスター達を連れて行く。彼らは戸惑っていたが反抗できるわけもなく連れて行かれていった。
◇ ◇ ◇ ◇
オルアットは塩会議の最中にギルドマスター達を解任するのは、得策ではないと考えていた。しかし、ギルドマスター達のあまりにも情けない対応に、内心では怒りに震えていた。
(こいつらほんまに必要か?)
相手の言いなりになるギルドマスターなど、ただの商業ギルドの職員だとしても役立たずだと言えるだろう。
(商業ギルド全体の見直しが必要やなぁ……)
それに塩会議についても波乱が起きる気がしていた。すでにエルマイスターで塩の値下げと、販売量が制限解除されているとの報告を受けていたからだ。
塩会議の前にそんなことができるということは、何かしら塩を手に入れる方法が見つかった可能性が高いと考えていたのだ。
まったく何の対策も交渉もヤドラス家としていないことに落胆したオルアットだが、逆にそれで良かったのではないかと考え始める。
変にヤドラス側に肩入れした状況になっている訳ではない。商業ギルドは塩会議が終わってから、それぞれの領主と本格的に交渉を始めるのである。
すでにギルドマスター達のギルドカードは停止して、公に解任していないだけで、実質的にギルドマスターとしての権限はない。個人的に金銭の出し入れもできないし、家族カードさえ停止している。
彼らと入れ違いで、各支部に家族の確保と代理のギルドマスターを派遣してある。王都から一緒に連れてきた職員を派遣したのである。
(彼らの個人資産を差し押さえと、他に不正があらへんか調査させなね!)
◇ ◇ ◇ ◇
ギルドマスター達は戸惑っていた。まるで監視するように警備職員がついていて、案内されたのは商業ギルド内の臨時宿泊施設であった。
簡易ベッドがあるだけの個室に、すでに自分の荷物が運ばれていたのだ。それでも急いで旅装から着替えると、警備職員に前後を挟まれて会議室に戻る。移動中にお互いに目を合わせるが、話をしようとすると警備職員に急ぐように言われて会話もできなかった。
会議室に入ると、グラスニカ支部のギルドマスターがオルアットに尋ねる。
「い、一度家に帰って、家族に戻った報告をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はあ、そんな時間あるはずあらへんやろ。塩会議が始まってるのにそんな呑気な事をしてる時間はあらへん! 塩会議が終わってその対応が終わるまでは帰られへんで」
オルアットの返事にグラスニカ支部のギルドマスターだけでなく、他の支部のギルドマスターまで顔色が変わる。彼らは値上げを阻止できなかったことが、それほどの大問題だったのかと勘違いしたのだ。
彼らは必死で今からでもネストルの説得に向かいたい気持ちだったが、塩会議はすでに始まっているだろう。この状況では自分達の失態として降格などの処分が出るのではないかと考えたのだ。
「それと今後はそれぞれの領主と交渉しても、勝手に約束して帰ってくるんちゃうで」
明らかにオルアットが自分達を信用していないことに気が付いた。そして、何とか塩会議後の領主との取引で名誉挽回しようと考えるのであった。
しかし、そんな勘違いしている間にも物事は進んでいた。何と商業ギルドにネストルが尋ねてきたのである。
ネストルが向こうから尋ねてくるのも驚きだが、それ以上に塩会議がどうなったのか気になった。これほど早く尋ねてくるということは、塩会議が終わったとも思えなかったのだ。
予想外の展開にギルドマスター達は戸惑い混乱した。しかし、オルアットはやはり塩会議で何かあったと考えていた。
「あんた達は私の後ろに立って勝手に発言せえへんようにしてちょうだい!」
ネストルに会いに応接室に向かう前にオルアットはギルドマスター達に釘を刺す。ギルドマスター達は頷くしかできなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
その頃、神像区画の入口にデジテル司教たちが到着していた。最初は危険地区で獣人ばかりで不安に思っていたデジテル司教だったが、現地に到着して驚いていた。
危険な建物などひとつもなく、それどころか領都でもこれほど整備された地区はないと思える町並みだったのだ。そして確かに獣人は多いが、特に人族に警戒する雰囲気もなく、普通に町の人族も忙しそうに動き回っている。
「聞いた話と違いますなぁ。これで獣人が居なければ、素晴らしい地区じゃありませんか?」
デジテル司教に話しかけてきたのは、クレイマン司教と一緒にグラスニカに来た聖騎士団のイスタであった。彼は聖騎士団の副団長で、クレイマン司教の護衛隊長でもある。
「これなら汚物を排除して、この地区ごと教会の管理下にした方が良いかもしれませんねぇ」
イスタは訝し気に教会の集団を見てくる獣人たちを、ゴミでも見るような目で見ながら話した。
デジテル司教は聖騎士団の噂を思い出していた。教会の都合の悪い相手を武力で排除しているのが聖騎士団で、彼らは教会の権威を利用して武力を行使することに喜びを感じている狂信者だ。教会の考えを無視する村を殲滅したとの噂もあるほどだ。
ただ、ここはグラスニカの領都で更に領主が管理する地区である。やり過ぎれば非常にまずいのだ。デジテル司教はイスタの目に宿る狂気に怯えながら、彼に注意する。
「ここは領主が管理する地区です。その事を考えて行動をお願いします」
デジテル司教の注意を聞いてイスタは、司教を馬鹿にしたような視線を向けながら答えた。
「わかっていますよ。ですがゴミ掃除は問題ないでしょ?」
イスタの発言にデジテル司教は不安を感じながらも、それ以上は何も言わなかった。聖騎士団の副団長が相手では、文句を言おうものなら自分の立場が危うくなるからだ。
無難に神像を持ちだせればと願いながら、デジテル司教たちは神像地区に足を踏み入れるのであった。
いつものことだと思ったが、深刻な顔で職員は話す。
「グランドマスターが来られています。すぐに会議室に行ってください!」
職員は他には聞こえないように話しているが、顔は切迫していた。ギルドマスター達も顔色を変える。ネストルの相手で疲れていたが、すぐに4人は会議室に向かった。
会議室ではグランドマスターのオルアットとグラスニカの副ギルドマスターが一緒に、何か書類を見ながら話していた。
ノックしてギルドマスター達が部屋に入ると、オルアットが冷酷な表情で4人を見て言った。
「とりあえず座って、ヤドラス子爵のことを報告してや!」
「「「はい」」」
4人は緊張した表情になり副ギルドマスターのキラノが見たことのない表情で席に座った。
緊張しながらもヤドラス支部のギルドマスターが報告する。
「ネストル殿の話では、今年は大きく塩の値段を上げるようです。なんでも伯爵位に就くために資金が必要と言ってました」
「私はこれ以上の値上げを止めるように指示したはずだ! 向こうの都合だけ聞いてきたのか。どんな説得をしたねん!」
オルアットは冷酷な表情で4人に尋ねる。
「こ、これ以上の値上げはまずいと説得しました。調査や隣国への苦情に繋がると説明したのです。しかし、ゼノキア侯爵に庇ってもらえたから大丈夫だと申されまして……」
エイブル支部のギルドマスターが説得した内容を具体的に説明する。
「それで?」
オルアットは続きを話すように尋ねる。
「いや、あの、そう言われたら説得する材料がなく……」
オルアットは答えを聞いて信じられないといった顔になる。
「えっ、それで終わりなの!? そんなん誰でも知っとるやないか。ゼノキア侯爵が証拠をつかんでやら、さすがに塩が高すぎるさかい国が動き出したやら、言いようはあるやろ!」
オルアットがそう話すと4人は驚きの表情を見せる。そしてグラスニカ支部のギルドマスターが話した。
「そのような情報は私共には来ておりません。いつの情報でしょうか!?」
オルアットは更に驚いてから、溜息をつくと答える。
「ふぅ~、そんな情報やら知らへん! 商人ならそれらしゅう噂があるやら上手う言いようはあるやろ!」
4人は驚きながらも落ち込む。その程度のブラフは商人なら当然やる。商人ギルドのギルドマスターである自分達もよく使う手であった。ネストルのご機嫌を取ることばかり考えて忘れていたのである。
「まあええわ」
オルアットの許しが出て4人はホッとすたのだった。
「本格的な塩会議の準備を始めるわ。あんた達は取り敢えず着替えてきてくれへんかな」
オルアットが副ギルドマスターに目で合図すると、警備職員が4人のギルドマスター達を連れて行く。彼らは戸惑っていたが反抗できるわけもなく連れて行かれていった。
◇ ◇ ◇ ◇
オルアットは塩会議の最中にギルドマスター達を解任するのは、得策ではないと考えていた。しかし、ギルドマスター達のあまりにも情けない対応に、内心では怒りに震えていた。
(こいつらほんまに必要か?)
相手の言いなりになるギルドマスターなど、ただの商業ギルドの職員だとしても役立たずだと言えるだろう。
(商業ギルド全体の見直しが必要やなぁ……)
それに塩会議についても波乱が起きる気がしていた。すでにエルマイスターで塩の値下げと、販売量が制限解除されているとの報告を受けていたからだ。
塩会議の前にそんなことができるということは、何かしら塩を手に入れる方法が見つかった可能性が高いと考えていたのだ。
まったく何の対策も交渉もヤドラス家としていないことに落胆したオルアットだが、逆にそれで良かったのではないかと考え始める。
変にヤドラス側に肩入れした状況になっている訳ではない。商業ギルドは塩会議が終わってから、それぞれの領主と本格的に交渉を始めるのである。
すでにギルドマスター達のギルドカードは停止して、公に解任していないだけで、実質的にギルドマスターとしての権限はない。個人的に金銭の出し入れもできないし、家族カードさえ停止している。
彼らと入れ違いで、各支部に家族の確保と代理のギルドマスターを派遣してある。王都から一緒に連れてきた職員を派遣したのである。
(彼らの個人資産を差し押さえと、他に不正があらへんか調査させなね!)
◇ ◇ ◇ ◇
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簡易ベッドがあるだけの個室に、すでに自分の荷物が運ばれていたのだ。それでも急いで旅装から着替えると、警備職員に前後を挟まれて会議室に戻る。移動中にお互いに目を合わせるが、話をしようとすると警備職員に急ぐように言われて会話もできなかった。
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彼らは必死で今からでもネストルの説得に向かいたい気持ちだったが、塩会議はすでに始まっているだろう。この状況では自分達の失態として降格などの処分が出るのではないかと考えたのだ。
「それと今後はそれぞれの領主と交渉しても、勝手に約束して帰ってくるんちゃうで」
明らかにオルアットが自分達を信用していないことに気が付いた。そして、何とか塩会議後の領主との取引で名誉挽回しようと考えるのであった。
しかし、そんな勘違いしている間にも物事は進んでいた。何と商業ギルドにネストルが尋ねてきたのである。
ネストルが向こうから尋ねてくるのも驚きだが、それ以上に塩会議がどうなったのか気になった。これほど早く尋ねてくるということは、塩会議が終わったとも思えなかったのだ。
予想外の展開にギルドマスター達は戸惑い混乱した。しかし、オルアットはやはり塩会議で何かあったと考えていた。
「あんた達は私の後ろに立って勝手に発言せえへんようにしてちょうだい!」
ネストルに会いに応接室に向かう前にオルアットはギルドマスター達に釘を刺す。ギルドマスター達は頷くしかできなかった。
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危険な建物などひとつもなく、それどころか領都でもこれほど整備された地区はないと思える町並みだったのだ。そして確かに獣人は多いが、特に人族に警戒する雰囲気もなく、普通に町の人族も忙しそうに動き回っている。
「聞いた話と違いますなぁ。これで獣人が居なければ、素晴らしい地区じゃありませんか?」
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「これなら汚物を排除して、この地区ごと教会の管理下にした方が良いかもしれませんねぇ」
イスタは訝し気に教会の集団を見てくる獣人たちを、ゴミでも見るような目で見ながら話した。
デジテル司教は聖騎士団の噂を思い出していた。教会の都合の悪い相手を武力で排除しているのが聖騎士団で、彼らは教会の権威を利用して武力を行使することに喜びを感じている狂信者だ。教会の考えを無視する村を殲滅したとの噂もあるほどだ。
ただ、ここはグラスニカの領都で更に領主が管理する地区である。やり過ぎれば非常にまずいのだ。デジテル司教はイスタの目に宿る狂気に怯えながら、彼に注意する。
「ここは領主が管理する地区です。その事を考えて行動をお願いします」
デジテル司教の注意を聞いてイスタは、司教を馬鹿にしたような視線を向けながら答えた。
「わかっていますよ。ですがゴミ掃除は問題ないでしょ?」
イスタの発言にデジテル司教は不安を感じながらも、それ以上は何も言わなかった。聖騎士団の副団長が相手では、文句を言おうものなら自分の立場が危うくなるからだ。
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