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いらっしゃいませ!ようこそ『森の猫さま』へ。
ある日の騒動〜元気な猫たち。
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最初に聞いてみる、貴方もしくは貴女は、ネコ派orイヌ派?
実は、自分は元はイヌ派だったりする。
自宅の床下に野良猫が住み着いて子猫を産み、俺たちに子育てを手伝って欲しいと猫ながら頼られるまではね?
今では嫁さんより猫との付き合いが長い。いや「嫁」の前、幼馴染の期間を足したら五分五分かな?
さて、某日某所の日曜日、とある雑居ビルにて、猫カフェ「森の猫さま」…
『いらっしゃいませ、パパさん!』
店の扉を開けて直ぐに元気な挨拶をされて少しびっくりする。
歳の所為か娘と同じくらいの女の子に声掛けされるのは顔見知りの店員と言えど照れくさい。
『やあ、こんにちは。でもパパさんじゃなくて、この場合はお客様な。』
『あぅ、そうでしたね。
テヘペロですッ!』
この子は娘の後輩だったカナ?
名前が思い出せない、葛飾だか江戸川だか荒川辺りだと思う、
何故かこの娘1人だけメイド服なのだが?
ここ猫カフェだよね? メイド喫茶では無いよね?
『では改めて、
「いらっしゃいませ、お客様! 猫カフェ「森の猫さま」へ、ようこそ!」
で有りますの!』
クドいが、可愛いから許そう?
きっと何か事情が有るんだ……多分。
『はい、コレな。』
『ハイ、年間パスポートのご提示、ありがとうございます♪』
本来なら「俺」には必要ないのに、こういったものが有るよって周りにアピールする為のモノで正直あざとい、
『舞華は、いや店長はいるかい?』
『確か休憩中です、副店長ならいますが何がご用事ですか?』
『大丈夫、ありがとう。』
大した用事も無いのに気になる娘の様子、それが父親なのだ。
でもウザいとか言って嫌われてしまうのも……イヤイヤ。
『どうぞごゆっくり。』
いつも座る場所に腰掛けると猫耳メイドさんはハーブティーを運んでくれた。
『これって、「メイドの愛」が「トッピング」されてたりする?』
『マシマシですっ!追加しますかっ!』
胸の前で「ハートのカタチ」を作り、スタンバイしているけど、
『また今度な。』
何か胃もたれしそうだから断ったよ。
リアルにおじさんなんでね、冷たい牛乳とか、お腹がゴロゴロしたりするし?
あ、メイドさんの後ろ姿がとても残念そうだ。
ここは猫カフェ「森の猫さま」
基本この手のお店はセルフサービスなのだが、自分が膝を悪くして杖をついて歩いてるのを気遣っての事らしい、
ここの娘たちは皆んな優しい子なのだ。
猫も含めて。
まぁ便宜上はともかく、書類の上では、俺店長だし。
しばらくすると猫たちが近づいて来た、
その中に今朝、娘たちと一緒に出勤した我が家の四本足の「愛娘たち」もいる。
『ぴー!』としか聞こえない、
ニャーでは無い、ぴーと鳴くのは足長マンチカンロングヘアー、レッドタビーの「メイ」、ものすごい勢いで自分に向かって走ってきて、そのままジャンプして自分の胸に飛び込んできた。周りで見ていたお客さんから
『いいなぁ~。』とか
『可愛い~。』など声が聞こえてくる。
『いいでしょう~可愛いでしょ~。この子、ウチの子なんですよー!』
って心の中で自慢する。
さらにこの足長マンチカン様のスキンシップは続く?‼︎
『ぴーぴー。』なんと鼻とか唇とか舐めてくるのだ‼︎
『あー、あの猫ちゃん、オジサンにチューしてるよ~。』
親子連れのお客様から楽しげな笑い声が聞こえる。
『ぴー、ぴぴー!』
生後4か月の足長マンチカン様はやりたい放題に甘えて来る、可愛いけど他のお客様にもこの天使の愛らしさを知って頂けなければ!
『ほら、ほかのお友達とも遊んで来なさい。』
名残惜しいが抱きついている子猫のメイちゃんを優しく抱き上げて、こちらをキラキラした目で見ているお子様たちの前にちょこんと着地させた。
『ぴぴー!』
一度こちらを見てからお子様たちに飛び込んで行く、途端に親子連れのお客様から歓声が?!
親御さんは猫と戯れる我が子を激写しまくっている、お子様たちはキャッキャッと喜んでいる。
ooh ooh ooh アレこそは!
彼女こそこの店No.1の人気猫、足長マンチカンのメイちゃん、女の子だ。
『ナ~オ。』
そんな子猫を見守るようにソファの上でほぼ白猫で尻尾と頭の上だけ茶トラのmix老猫、
偶に優しく鳴いては幼い子猫たちに呼びかけてくれるおじいちゃん猫。
もうすぐ18歳の「福ちゃん」は人間の年齢に例えると八十歳超えてるらしい。
常連客からは「フク様」とか「ふく店長」とか呼ばれる人気猫で、
メイちゃんや若い子猫たちは動きが速く、なかなかベストショットが撮れないが、「福」の場合はほとんど動かず寝ているので撮影が容易だ。
まるで日光東照宮の眠り猫、SNSに福ちゃんの寝顔を載せても良いですか?と問い合わせも多い。
高齢猫の為、毎日の出勤は出来ないのでそれが返ってレアな感じが出て、
『フク店長に会えると幸せになれる。』と都市伝説まがいな噂まである。
『フク店長に逢いにきたら猫好きで素敵な彼氏ができました。』とか、
『フク店長にお願いしたら念願の子宝を授かりました。』や、
『諦めていたダイエットが成功しました。』とか、
微笑ましいモノから怪しいモノと、内容は様々なれど噂の真偽は別にしてこの店の人気猫No.2だ。
ちなみにこの子も北代家の猫で過去二十匹近くいた飼い猫の中で一番の長生きだ。
実は子猫の時にコンビニ袋入れられて、
その辺のゴミ捨て場に投げ捨てられて、
何かの拍子に近くの側溝に落ちてしまった様で、
偶々、袋の口を固く縛ってあったので、浮き袋の様にしばらく浮いていた所、
時折、モゾモゾ動くのを不審に思い、つまみ上げた近所の方が保護したそうだ。
保護したものの、飼うことは出来ないので北代家に相談した所、
『いい猫ですね~、ウチで引き取ります。
絶対大事に育てますから、連れて来て下さってありがとうございます。』
即決だった、一目惚れだった、そして幸せだった、
そしてご近所さま、ありがとう!
オレに福ちゃんをくれて!
『チリリーン』
そんな福の隣にくっついている子猫、いや幼女猫、まだ一度も泣いたのを聞いた事が無い、
やっと生後二ヶ月の真っ白な美仔猫「美雪ちゃん」、鈴の付いたピンクの首輪が可愛い。
泣かないから鈴の音がないと居場所が分からない、現在人気急上昇の新人アイドルな猫なのです。
ちなみにこの子は「山王院 華」嬢の愛猫なのだが、
昼間は北代家で過ごす事が多く、北代家の猫達に懐いている。
福にくっ付いて甘えている様はお爺ちゃんと孫娘、ハイジとオンジだ⁉︎
時折、福が尻尾を振り美雪ちゃんはそれに戯れる。
勢い余ってソファから落っこちてしまう孫娘、やれやれっと子猫の首うしろを咥えてソファに戻すお爺ちゃん。
美雪ちゃんも毎日いる訳ではないので、この二匹がお店で一緒にいるところもかなりのレアな光景で、二匹が戯れていると驚かせない、怖がらせない様に遠巻きに撮影会が始まる。
この様子をスマホや携帯の待受にしたところ運気が上がったとかパワースポットの様な人気で、
『片想いだとあきらめていたのに、向こうから告白されました。』とか、
『長年の腰痛が治りました。』とか、
『推しがセンターに…』とか、
『男の娘から告白されて…』とか、
まぁ幸せは人それぞれだからね、自分にとっては当たり前の光景だから。
お客さんもそれぞれ猫とのコミュニケーションを楽しんでいる。
和室ルームでは畳の上、脚を伸ばしているとその膝の上に猫が乗ったり、下りたり。
猫じゃらし型おもちゃで猫と遊んだり、
寝ている猫たちをスマホやデジカメで撮影したり、
何をしても全く猫に相手にされなかったり?
思い思いに猫との時間を過ごしている。
猫たちもそれぞれに過ごしている、気に入った人間を見つけて。
ここには、北代家の猫が数匹と協力頂いている保護猫ボランティア団体から数匹、またペットショップで買い手が付かずに処分されそうになっていた訳あり猫など引き取って大体二十匹ぐらいで、人間同様に出勤シフトを作って店内十数匹ぐらいが接客している。
特定の猫以外は里親さんを常時募集している。
希望者は数日間のトライアルで問題無ければ譲渡する、言ってみれば毎日が猫とのお見合い、譲渡会だ。
正に、猫も杓子もだ!
そんな猫たちの様子を見ていた自分に話しかけてきたお客がいた、
『よぅ、なんだい なんだい、大将もいたのかい?
猫好きは血筋だな。』
ん? 自分はいつから大将になったんだ?
『もう、お父さんたら、失礼じゃない。ごめんなさいね、ケンちゃん』
『お前だって大の男をちゃん付けは無いだろ、なぁ大将。』
なんだ、八百屋のご夫婦だよ。
白髪が増えて最初分からなかったが『ケンちゃん』とか言われてナントカ思い出した。
子供の頃、よく買い物行かされてキャベツとか大根とか重いもの頼まれてた、お使いご苦労様ねってよくオマケしてもらったり、飴チャンもらえたのを覚えている。
『あぁ、いやお久しぶりです。お二人ともお元気そうで、今日はお店はお休みですか?』
『なんだ、知らなかったのかい。今は息子夫婦に任せて、まぁなんだ女房孝行みたいな事してる所さ。』
『また変な事言って!
あのね去年から息子たちと同居を始めたのよ。
店も手伝ってくれるって言うから思い切って改装したの、
そうしたら思っていたより綺麗な感じになって、年寄りは今の店には似合わないからって…。』
『ハンッ!そのうち泣きついて来るさ、それまで休ましてもらうさ。
でな、この前よ、駅前で大将のとこの嬢ちゃんがコレ配っていたから見に来たって訳よ。』
嬢ちゃんって舞華の事かな?
二葉やリリ坊だったら小さい嬢ちゃんって言うよな?
よくアイツが俺の子だって分かったなぁ、自分より嫁さん似、いや若い頃の嫁そのものかも、
あっ、だから分かったのかな?
あっ、くせっ毛だ、唯一の似ているところだし、
心の中で自己完結する。
『舞ちゃんだったかしら?
よく小さい頃は、おばあちゃんと一緒にウチや商店街に買い物に来てくれたの。
いいお嬢さんに成られてお父さんも安心でしょう。』
ハハ…とりあえず愛想笑い、「いいお嬢さん」だってさ?(そりゃそうさ!)
『本当ならウチの孫も一緒に来るはずだったの、でも友だちと約束があるからって。
あの子、犬とか猫とか好きだって聞いてたから…』
『友達が出来たなら、それでいいじゃないか。
前の場所じゃ寂しい思いをしたらしいからなぁ。』
そう言って割り引きクーポン付きチラシを取り出してしげしげ見始めた。
お試し30分無料とか、お試し猫オヤツ券とか先ずは知ってもらう事が大事と100枚程配ってみた。
中々好評でリピーターが着き始めて来ている。
『なぁ大将よぉ、ここに里親募集ってあるんだけども、ここのニャンコを頂けるのかい?』
『あぁ、それですか?』
保護猫ボランティア団体から猫カフェ向きな性格の猫たちを引き取ってきたのは、それが目的だったりする。
人に馴れてもらう為に猫カフェでお客様と触れ合ってもらい、里親希望者を募る。
お店としては一定数の猫スタッフが必要なので新たに保護猫やトライアウト猫を店に迎える事が出来る。
まだ準備中の企画ながら問い合わせは多い、動物主体のテレビ番組の影響だろうか、保護猫の認知度が高いのも理由の一つだ。
またこの雑居ビルの空きスペースや屋上庭園を借りて保護猫譲渡会が出来ないか、ビルのオーナー(親戚)と相談している。
まぁ譲渡会をやる事自体は大賛成だろうな、
ここのオーナーなら、
後は周りへの根回しとか駅前商店街への周知活動かな?
一見好評を得ている様でも周りへの気配りは忘れてはいけない。
『ねぇ、ケンちゃん?』
『はい、ん?オヤオヤ。』
『この猫ちゃんも里親さんを探しているの?』
と、奥さんをの膝の上で甘えてお腹見せてる子は、
『外国の猫ちゃんよね、アメショとか言う種類の?』
『アメリカンショートヘアー、ブラウンクラッシックタビーの「ミコ」、丁度生後半年の女の子です。
ほとんど人見知りしません。
それと、すみません。
その子はウチの子なんで譲渡は出来ません。』
「メイとミコ」そして「美雪」は今、北代家で久しぶりの子猫でとても人懐っこい。
また他の猫たちとも直ぐに仲良くなったので、他の猫もこの子たちにつられて人間と楽しくスキンシップしてくれたら良いと思い連れて来ている。
この目論見は五分五分と言えよう。
あくまで自分のペースで近づいて行く猫もいれば、メイと一緒になってお客様に戯れ付き、人と遊ぶ楽しさや一緒にいる安心感を感じられたら良いと考えている。
そして未だ人見知りして遠くから様子を見ている猫もいる、
『あら、北代さんちの猫ちゃんなのね。
残念ね、こんなに可愛いくて人に馴れてて、こんな猫ちゃんならダイちゃんも喜ぶと思うの。』
まぁこの子たちの人懐っこいのは有る意味で規格外だ。
久しぶりの子猫だから家族全員で愛情マシマシで育てているからだろう。
『もぅ猫を飼うのを決めているなら、今度はお孫さんも一緒にいらっしゃってはどうですか?』
などと言っているそばから別の猫が奥さんに近づいてきて、
『にゃぁ~。』
と近づいて来たのは推定生後三ヶ月の保護猫の『きなこ』だ。
よくメイと遊んでいる仔猫で、きな粉を塗したお餅の様な容姿だと保護士の方が付けた名前だ。
『アナタはウチに来てくれるかしら?猫ちゃん。』
以前飼っていた事でもあるのか、奥さんは喉元を撫でている、きなこはゴロゴロ喉を鳴らしている。
『ご歓談中失礼します、お客様。』
一人の女性スタッフが近づいてきて自分に話しかけてきた、ん?彼女は…
『ご歓談中、大変失礼しました。
実は先日、お客様にご注文いただきました品物が入荷しました、念のためご確認頂いてよろしいでしょうか?
開封しますと返品出来ませんので、』
俺は「猫カフェ」にナニを注文したんだ?
『あぁ~!ソレソレ、楽しみにしてたんだ、分かりました、見せて下さい。』
『ありがとうございます。ご案内いたしますので…』
『あの、こちらの方が譲渡会について詳しく知りたいそうで、お願いします、ナナガミさん。』
『かしこまりました、今、担当の者を寄越しますので暫くお待ち下さい。』
八百屋のご夫婦に軽く挨拶して、自分は女性スタッフに促された形で移動した。
あとは譲渡会担当がうまくやってくれるはずだ。
『…で、何が有ったんだ、ゆかりチャン?』
『ハイ、ご歓談中に申し訳有りませんでした、師匠。
実は十六夜さんが不埒者を捕縛しました。
…それと「ゆかりチャン」はやめて下さい。 モジモジ…は、恥ずかしいデスから。』
ハイハイ、
はぁ~、厄介ごとは猫も食わないだけど。
こうして騒動の幕は開かれるのだよ、娘たち。
この話しは「猫好き」が酵じて、「猫カフェ店長」になった娘と、 それを支えるスタッフ、陰日向に見守るお節介な大人達の話しだ。
あ~ぁ、もっと気楽にやるつもりだったのになぁ~。
実は、自分は元はイヌ派だったりする。
自宅の床下に野良猫が住み着いて子猫を産み、俺たちに子育てを手伝って欲しいと猫ながら頼られるまではね?
今では嫁さんより猫との付き合いが長い。いや「嫁」の前、幼馴染の期間を足したら五分五分かな?
さて、某日某所の日曜日、とある雑居ビルにて、猫カフェ「森の猫さま」…
『いらっしゃいませ、パパさん!』
店の扉を開けて直ぐに元気な挨拶をされて少しびっくりする。
歳の所為か娘と同じくらいの女の子に声掛けされるのは顔見知りの店員と言えど照れくさい。
『やあ、こんにちは。でもパパさんじゃなくて、この場合はお客様な。』
『あぅ、そうでしたね。
テヘペロですッ!』
この子は娘の後輩だったカナ?
名前が思い出せない、葛飾だか江戸川だか荒川辺りだと思う、
何故かこの娘1人だけメイド服なのだが?
ここ猫カフェだよね? メイド喫茶では無いよね?
『では改めて、
「いらっしゃいませ、お客様! 猫カフェ「森の猫さま」へ、ようこそ!」
で有りますの!』
クドいが、可愛いから許そう?
きっと何か事情が有るんだ……多分。
『はい、コレな。』
『ハイ、年間パスポートのご提示、ありがとうございます♪』
本来なら「俺」には必要ないのに、こういったものが有るよって周りにアピールする為のモノで正直あざとい、
『舞華は、いや店長はいるかい?』
『確か休憩中です、副店長ならいますが何がご用事ですか?』
『大丈夫、ありがとう。』
大した用事も無いのに気になる娘の様子、それが父親なのだ。
でもウザいとか言って嫌われてしまうのも……イヤイヤ。
『どうぞごゆっくり。』
いつも座る場所に腰掛けると猫耳メイドさんはハーブティーを運んでくれた。
『これって、「メイドの愛」が「トッピング」されてたりする?』
『マシマシですっ!追加しますかっ!』
胸の前で「ハートのカタチ」を作り、スタンバイしているけど、
『また今度な。』
何か胃もたれしそうだから断ったよ。
リアルにおじさんなんでね、冷たい牛乳とか、お腹がゴロゴロしたりするし?
あ、メイドさんの後ろ姿がとても残念そうだ。
ここは猫カフェ「森の猫さま」
基本この手のお店はセルフサービスなのだが、自分が膝を悪くして杖をついて歩いてるのを気遣っての事らしい、
ここの娘たちは皆んな優しい子なのだ。
猫も含めて。
まぁ便宜上はともかく、書類の上では、俺店長だし。
しばらくすると猫たちが近づいて来た、
その中に今朝、娘たちと一緒に出勤した我が家の四本足の「愛娘たち」もいる。
『ぴー!』としか聞こえない、
ニャーでは無い、ぴーと鳴くのは足長マンチカンロングヘアー、レッドタビーの「メイ」、ものすごい勢いで自分に向かって走ってきて、そのままジャンプして自分の胸に飛び込んできた。周りで見ていたお客さんから
『いいなぁ~。』とか
『可愛い~。』など声が聞こえてくる。
『いいでしょう~可愛いでしょ~。この子、ウチの子なんですよー!』
って心の中で自慢する。
さらにこの足長マンチカン様のスキンシップは続く?‼︎
『ぴーぴー。』なんと鼻とか唇とか舐めてくるのだ‼︎
『あー、あの猫ちゃん、オジサンにチューしてるよ~。』
親子連れのお客様から楽しげな笑い声が聞こえる。
『ぴー、ぴぴー!』
生後4か月の足長マンチカン様はやりたい放題に甘えて来る、可愛いけど他のお客様にもこの天使の愛らしさを知って頂けなければ!
『ほら、ほかのお友達とも遊んで来なさい。』
名残惜しいが抱きついている子猫のメイちゃんを優しく抱き上げて、こちらをキラキラした目で見ているお子様たちの前にちょこんと着地させた。
『ぴぴー!』
一度こちらを見てからお子様たちに飛び込んで行く、途端に親子連れのお客様から歓声が?!
親御さんは猫と戯れる我が子を激写しまくっている、お子様たちはキャッキャッと喜んでいる。
ooh ooh ooh アレこそは!
彼女こそこの店No.1の人気猫、足長マンチカンのメイちゃん、女の子だ。
『ナ~オ。』
そんな子猫を見守るようにソファの上でほぼ白猫で尻尾と頭の上だけ茶トラのmix老猫、
偶に優しく鳴いては幼い子猫たちに呼びかけてくれるおじいちゃん猫。
もうすぐ18歳の「福ちゃん」は人間の年齢に例えると八十歳超えてるらしい。
常連客からは「フク様」とか「ふく店長」とか呼ばれる人気猫で、
メイちゃんや若い子猫たちは動きが速く、なかなかベストショットが撮れないが、「福」の場合はほとんど動かず寝ているので撮影が容易だ。
まるで日光東照宮の眠り猫、SNSに福ちゃんの寝顔を載せても良いですか?と問い合わせも多い。
高齢猫の為、毎日の出勤は出来ないのでそれが返ってレアな感じが出て、
『フク店長に会えると幸せになれる。』と都市伝説まがいな噂まである。
『フク店長に逢いにきたら猫好きで素敵な彼氏ができました。』とか、
『フク店長にお願いしたら念願の子宝を授かりました。』や、
『諦めていたダイエットが成功しました。』とか、
微笑ましいモノから怪しいモノと、内容は様々なれど噂の真偽は別にしてこの店の人気猫No.2だ。
ちなみにこの子も北代家の猫で過去二十匹近くいた飼い猫の中で一番の長生きだ。
実は子猫の時にコンビニ袋入れられて、
その辺のゴミ捨て場に投げ捨てられて、
何かの拍子に近くの側溝に落ちてしまった様で、
偶々、袋の口を固く縛ってあったので、浮き袋の様にしばらく浮いていた所、
時折、モゾモゾ動くのを不審に思い、つまみ上げた近所の方が保護したそうだ。
保護したものの、飼うことは出来ないので北代家に相談した所、
『いい猫ですね~、ウチで引き取ります。
絶対大事に育てますから、連れて来て下さってありがとうございます。』
即決だった、一目惚れだった、そして幸せだった、
そしてご近所さま、ありがとう!
オレに福ちゃんをくれて!
『チリリーン』
そんな福の隣にくっついている子猫、いや幼女猫、まだ一度も泣いたのを聞いた事が無い、
やっと生後二ヶ月の真っ白な美仔猫「美雪ちゃん」、鈴の付いたピンクの首輪が可愛い。
泣かないから鈴の音がないと居場所が分からない、現在人気急上昇の新人アイドルな猫なのです。
ちなみにこの子は「山王院 華」嬢の愛猫なのだが、
昼間は北代家で過ごす事が多く、北代家の猫達に懐いている。
福にくっ付いて甘えている様はお爺ちゃんと孫娘、ハイジとオンジだ⁉︎
時折、福が尻尾を振り美雪ちゃんはそれに戯れる。
勢い余ってソファから落っこちてしまう孫娘、やれやれっと子猫の首うしろを咥えてソファに戻すお爺ちゃん。
美雪ちゃんも毎日いる訳ではないので、この二匹がお店で一緒にいるところもかなりのレアな光景で、二匹が戯れていると驚かせない、怖がらせない様に遠巻きに撮影会が始まる。
この様子をスマホや携帯の待受にしたところ運気が上がったとかパワースポットの様な人気で、
『片想いだとあきらめていたのに、向こうから告白されました。』とか、
『長年の腰痛が治りました。』とか、
『推しがセンターに…』とか、
『男の娘から告白されて…』とか、
まぁ幸せは人それぞれだからね、自分にとっては当たり前の光景だから。
お客さんもそれぞれ猫とのコミュニケーションを楽しんでいる。
和室ルームでは畳の上、脚を伸ばしているとその膝の上に猫が乗ったり、下りたり。
猫じゃらし型おもちゃで猫と遊んだり、
寝ている猫たちをスマホやデジカメで撮影したり、
何をしても全く猫に相手にされなかったり?
思い思いに猫との時間を過ごしている。
猫たちもそれぞれに過ごしている、気に入った人間を見つけて。
ここには、北代家の猫が数匹と協力頂いている保護猫ボランティア団体から数匹、またペットショップで買い手が付かずに処分されそうになっていた訳あり猫など引き取って大体二十匹ぐらいで、人間同様に出勤シフトを作って店内十数匹ぐらいが接客している。
特定の猫以外は里親さんを常時募集している。
希望者は数日間のトライアルで問題無ければ譲渡する、言ってみれば毎日が猫とのお見合い、譲渡会だ。
正に、猫も杓子もだ!
そんな猫たちの様子を見ていた自分に話しかけてきたお客がいた、
『よぅ、なんだい なんだい、大将もいたのかい?
猫好きは血筋だな。』
ん? 自分はいつから大将になったんだ?
『もう、お父さんたら、失礼じゃない。ごめんなさいね、ケンちゃん』
『お前だって大の男をちゃん付けは無いだろ、なぁ大将。』
なんだ、八百屋のご夫婦だよ。
白髪が増えて最初分からなかったが『ケンちゃん』とか言われてナントカ思い出した。
子供の頃、よく買い物行かされてキャベツとか大根とか重いもの頼まれてた、お使いご苦労様ねってよくオマケしてもらったり、飴チャンもらえたのを覚えている。
『あぁ、いやお久しぶりです。お二人ともお元気そうで、今日はお店はお休みですか?』
『なんだ、知らなかったのかい。今は息子夫婦に任せて、まぁなんだ女房孝行みたいな事してる所さ。』
『また変な事言って!
あのね去年から息子たちと同居を始めたのよ。
店も手伝ってくれるって言うから思い切って改装したの、
そうしたら思っていたより綺麗な感じになって、年寄りは今の店には似合わないからって…。』
『ハンッ!そのうち泣きついて来るさ、それまで休ましてもらうさ。
でな、この前よ、駅前で大将のとこの嬢ちゃんがコレ配っていたから見に来たって訳よ。』
嬢ちゃんって舞華の事かな?
二葉やリリ坊だったら小さい嬢ちゃんって言うよな?
よくアイツが俺の子だって分かったなぁ、自分より嫁さん似、いや若い頃の嫁そのものかも、
あっ、だから分かったのかな?
あっ、くせっ毛だ、唯一の似ているところだし、
心の中で自己完結する。
『舞ちゃんだったかしら?
よく小さい頃は、おばあちゃんと一緒にウチや商店街に買い物に来てくれたの。
いいお嬢さんに成られてお父さんも安心でしょう。』
ハハ…とりあえず愛想笑い、「いいお嬢さん」だってさ?(そりゃそうさ!)
『本当ならウチの孫も一緒に来るはずだったの、でも友だちと約束があるからって。
あの子、犬とか猫とか好きだって聞いてたから…』
『友達が出来たなら、それでいいじゃないか。
前の場所じゃ寂しい思いをしたらしいからなぁ。』
そう言って割り引きクーポン付きチラシを取り出してしげしげ見始めた。
お試し30分無料とか、お試し猫オヤツ券とか先ずは知ってもらう事が大事と100枚程配ってみた。
中々好評でリピーターが着き始めて来ている。
『なぁ大将よぉ、ここに里親募集ってあるんだけども、ここのニャンコを頂けるのかい?』
『あぁ、それですか?』
保護猫ボランティア団体から猫カフェ向きな性格の猫たちを引き取ってきたのは、それが目的だったりする。
人に馴れてもらう為に猫カフェでお客様と触れ合ってもらい、里親希望者を募る。
お店としては一定数の猫スタッフが必要なので新たに保護猫やトライアウト猫を店に迎える事が出来る。
まだ準備中の企画ながら問い合わせは多い、動物主体のテレビ番組の影響だろうか、保護猫の認知度が高いのも理由の一つだ。
またこの雑居ビルの空きスペースや屋上庭園を借りて保護猫譲渡会が出来ないか、ビルのオーナー(親戚)と相談している。
まぁ譲渡会をやる事自体は大賛成だろうな、
ここのオーナーなら、
後は周りへの根回しとか駅前商店街への周知活動かな?
一見好評を得ている様でも周りへの気配りは忘れてはいけない。
『ねぇ、ケンちゃん?』
『はい、ん?オヤオヤ。』
『この猫ちゃんも里親さんを探しているの?』
と、奥さんをの膝の上で甘えてお腹見せてる子は、
『外国の猫ちゃんよね、アメショとか言う種類の?』
『アメリカンショートヘアー、ブラウンクラッシックタビーの「ミコ」、丁度生後半年の女の子です。
ほとんど人見知りしません。
それと、すみません。
その子はウチの子なんで譲渡は出来ません。』
「メイとミコ」そして「美雪」は今、北代家で久しぶりの子猫でとても人懐っこい。
また他の猫たちとも直ぐに仲良くなったので、他の猫もこの子たちにつられて人間と楽しくスキンシップしてくれたら良いと思い連れて来ている。
この目論見は五分五分と言えよう。
あくまで自分のペースで近づいて行く猫もいれば、メイと一緒になってお客様に戯れ付き、人と遊ぶ楽しさや一緒にいる安心感を感じられたら良いと考えている。
そして未だ人見知りして遠くから様子を見ている猫もいる、
『あら、北代さんちの猫ちゃんなのね。
残念ね、こんなに可愛いくて人に馴れてて、こんな猫ちゃんならダイちゃんも喜ぶと思うの。』
まぁこの子たちの人懐っこいのは有る意味で規格外だ。
久しぶりの子猫だから家族全員で愛情マシマシで育てているからだろう。
『もぅ猫を飼うのを決めているなら、今度はお孫さんも一緒にいらっしゃってはどうですか?』
などと言っているそばから別の猫が奥さんに近づいてきて、
『にゃぁ~。』
と近づいて来たのは推定生後三ヶ月の保護猫の『きなこ』だ。
よくメイと遊んでいる仔猫で、きな粉を塗したお餅の様な容姿だと保護士の方が付けた名前だ。
『アナタはウチに来てくれるかしら?猫ちゃん。』
以前飼っていた事でもあるのか、奥さんは喉元を撫でている、きなこはゴロゴロ喉を鳴らしている。
『ご歓談中失礼します、お客様。』
一人の女性スタッフが近づいてきて自分に話しかけてきた、ん?彼女は…
『ご歓談中、大変失礼しました。
実は先日、お客様にご注文いただきました品物が入荷しました、念のためご確認頂いてよろしいでしょうか?
開封しますと返品出来ませんので、』
俺は「猫カフェ」にナニを注文したんだ?
『あぁ~!ソレソレ、楽しみにしてたんだ、分かりました、見せて下さい。』
『ありがとうございます。ご案内いたしますので…』
『あの、こちらの方が譲渡会について詳しく知りたいそうで、お願いします、ナナガミさん。』
『かしこまりました、今、担当の者を寄越しますので暫くお待ち下さい。』
八百屋のご夫婦に軽く挨拶して、自分は女性スタッフに促された形で移動した。
あとは譲渡会担当がうまくやってくれるはずだ。
『…で、何が有ったんだ、ゆかりチャン?』
『ハイ、ご歓談中に申し訳有りませんでした、師匠。
実は十六夜さんが不埒者を捕縛しました。
…それと「ゆかりチャン」はやめて下さい。 モジモジ…は、恥ずかしいデスから。』
ハイハイ、
はぁ~、厄介ごとは猫も食わないだけど。
こうして騒動の幕は開かれるのだよ、娘たち。
この話しは「猫好き」が酵じて、「猫カフェ店長」になった娘と、 それを支えるスタッフ、陰日向に見守るお節介な大人達の話しだ。
あ~ぁ、もっと気楽にやるつもりだったのになぁ~。
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※全11話 2万字程度の話です。
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