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ソレはお互い、突然だけど?
しおりを挟むマンチカン
四肢が短い猫の事を指す。
突然変異で産まれたのだが、品種として残す為に、同じく四肢が短い個体たちを交配させた事で、体質的に弱い子が産まれやすい。
そもそも四肢が短い事はかなり強めの「劣性因子」で有り、劣性因子同士を交配させた事で、さらに強い因子が現れて、短命で内臓疾患や重度の障害を持って産まれる確率が高い。
中には「近親婚」と知っていて繁殖させている悪質なブリーダーもいたそうだ。
現在、純血統を守る為に常識として、脚の長い個体と短い個体のマンチカンを交配して劣性因子が濃く成るのを防いでいるそうだ。
またマンチカンは多産な猫の中でも出産率が大変低い。
普通の猫の出産でも4~6匹産まれることが多いのに対して、マンチカンは1~2匹だそうだ。
しかし、必ずしも脚の短い個体が産まれるとは限らない、普通の外見ので健康な子だって産まれてくるのだ!
(ウチのヒメみたいに!)
その為か、外見の可愛らしさに加えて、その希少性からも販売価格が高い。
結果的に、脚の短い子猫はマンチカンとして高額で販売されるが、マンチカンが産んだ脚の長い子猫はソレなりの値段で販売される。
コレはマンチカンにだけの話しではなく、他の品種の犬猫も同様なケースでその値段で売れなければ、徐々に値下げされていき、ソレでも売れなければ、
臨床試験や実験動物として専門業者に引き取られるケースもある。
保健所が野良猫や野良犬をさっ処分するより、有る意味残酷かも知れない。
データを取る為にすぐに殺さず、薬品を投与して苦しませるのだから…
中には、
「人様のお役に立って死ねるのだから幸せだろう。」
と言う人もいる。
ペットショップで働くのが夢だった人が、念願叶って有名ペットショップで働きだしたが、
二年程で退職したそうだ。
値下げされた動物を複数購入した後で、もう助けられないと諦めて…
「そんな事、本当に有るのですか⁈」
「知人のオジサン(作者)から聞いたので多分本当ですが、恐らくかなり古い記憶も有ると思うので、今もそうなのか定かでは有りません。
逆に姫乃さんのご両親の方がお詳しいと思いますよ。
何と言っても、ペットフードの国内シェアNo.ワンの会社の社長さんと、自称ベテランブリーダーなんですから。」
寝付けないと言うので、リビングのソファに座り、二人で猫たちと戯れながら、コムで体毛をすいてあげている姫乃サンと俺。
割と普通に会話をしていた。
まぁ、姉やその友達、妹との会話で女性と話す事に慣れが有るとは言え、この状況は少し気恥ずかしいかも?
もしかしたら、俺とはあんな事をしたので、口を聞いてもくれないカモと心配していたが、今こうして普通に話している。
目の前で父親の顔面を殴ったのだ、相当驚かせたハズだし?
しかし、母親の玲子さんからは、
『ウチの娘、姫乃をこの家でしばらくの間、預かってもらえないかしら?』
と、お願いされてしまった。
とんでもない事になった?
でも、父に俺をたらしこめ的な事を言われて、傷ついたかも知れない姫乃サン。
あの時、姫乃サンは信じられないといった表情をしていた。
あのバカお父様も何か意地になって、俺を気に入ったフリで手懐けようとしたに違いない。
玲子さんがお袋と知り合いで無かったら、また別の展開だったかも知れない。
何か複雑な「家庭の事情」が有るのだろうか?
実の母の外見が自分より歳下に見えて、超マザコンだとか?
昔、超デブで幼馴染に復讐する為に仰天チェンジしたとか?
何処の家庭でもそんな事情、幾らでも有るよな?
「そういえば、姫乃サンのお家では、何かペットがいるのですか?」
「…そう思いますよね?
でもいないんです、猫も犬も、金魚すら。」
最後の金魚は何かエピソードがある様な?
「でも、好きでしょ、猫とか?」
「何故、そう思われます?」
「昨日、リビングで光里に猫たちを紹介されてる時、姫乃サンの目…」
「私の目…が何か?」
「星が宿ったみたいにキラキラしてましたから。」
「わ、私そんなに浮かてましたか⁈」
「浮かれてましたよ、他に何も見えてないみたいに。」
「そ、ソレはきっとヒカリちゃんのお陰です。
歳下の子と話したのは、初めてだったから嬉しくて‼︎
私、末っ子なので。
…お姉ちゃんって、呼ばれて嬉しかったんだと思います。
きっと…そうです。」
おや、猫では無く妹にときめいてましたか?
でも、始めて会った時からは想像出来ないくらい明るい表情だ。
もしやウチに預けようと母親の玲子さんが頼んできたのは、コレを期待しての事だったのかも?
「確かに浮かれてましたね、
父や兄たちの目を気にしない事が、こんなに気が楽に成るなんて…
別に父や兄が嫌いな訳では無いのです。
でも…でもね…」
想いが溢れて来たのか、姫乃さんが泣き出してしまった!
「え、えっと?
泣きたい時は我慢しないで泣いちゃって下さい。
光里や姉たちには黙ってますから。」
「ミャ~?」
「あ、アラ?
オウジ君、あの…ありがとうございます。」
オウジが姫乃サンの頬を舐めた。
まるで涙を拭う様に。
コイツめ、未だ子猫なのに男前だな⁈
それとも、何か美味しい味でもするのか?
すると、
姫乃サンはオウジや膝の上でゴロゴロ言っているヒメを優しくそっと降ろすと、立ち上がって俺の正面に立った。
「…姫乃サン?」
何が始まるのだ?
「京多サンに見て欲しいモノが有るの…、
見て…」
そう言ってブラウスのボタンを外し始めた姫乃サン⁇
「ちょ、ちょと待ってよ!
姫乃さん!」
駄目だ、姫乃サン!
ココはリビングで、いくら夜だからって、誰か来るかも?
いや、そうで無くて!
俺達、まだそんな関係になるには未だ早いよ!
「京多サンお願い、ちゃんと見て!」
俺は両手で目を覆っていたが、姫乃サンの言葉を聞き、手を下ろした。
良い雰囲気にはなっていたかもだが…
違っていた。
白くて綺麗な肌だ…
なので尚更目立ってしまうモノ、
大きな手術痕が幾つも有る。
「私、傷モノなの、商品価値が無いんだって…」
商品だと?
誰か言った⁈
バカ親父か?
ソレとも兄貴か?
ウチの兄貴なら絶対言わんぞ!
いや、そうではなくて?
「…姫乃サン、綺麗だよ、
でも風邪ひくといけないから、もう閉まってくれないかな?
俺も男なので、女の子のそんな姿見たら、
その、エッチな気持ちになってしまうので
…お願いだから…」
なんかヘタレな俺、仕方ないだろ!
「綺麗?
本当にそう思いますか、
こんな傷だらけのカラダを見て?」
姫乃サンはまだ泣いている、顔は優しく微笑んでいるのに…
「ソレは気にならない…
事は無いけど、でも嫌悪感は無いよ。
ソレは姫乃サンが懸命に生きようとした証みないなモノだし、
姫乃サンが綺麗な事には変わりないから。」
ん?
コレは口説いてる事になるのか?
「本当、本当にそう思う?
…なら、私をもらってくれる?」
「お、俺で良ければ?」
そう言うしかないよな、この場合?
「うん、アナタが良いの!」
「うわっ!」
そのまま姫乃サンがソファに腰掛けている俺に飛びついて来た‼︎
まるでヒメかジャンプして俺に飛び付いてくる様に?
そして勢い付いて、そのままソファごと倒れてしまった俺たち!
けっこう大きい音をたててしまった?
「な、なに、何の音!」
仕事場兼自室のお袋、
光里や姉さん、また泊まり来ていたルナさん。
皆んなリビングにやって来た!
「け~い~たぁ~、お前なんて事しているのだぁ~⁈」
姉と母がめっちゃ怖い顔をしている、さすが親子だね、
怒りのオーラがそっくりだよ?
「もうケイちゃんたら、我慢出来ないなら相談してくれれば良かったのに!」
ルナさん、何も言わないでくれ!
余計にややこしくなるから?
「姫姉ちゃんとお兄ちゃん、なにしてるの?」
光里、そのまま素直に育っておくれ。
俺は抱きついてる姫乃さんの細い肩を掴んで、
「責任は取るから!」
と、叫んでいた?
アレ?
応援ありがとうございます!
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