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探偵さんとメイドさんと猫さんと?

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 「奥様、このビルです。」

 「佐々木さん、その地下に駐車場があるそうだから、そこに停めて頂戴。」


 あるスジからこの場所、探偵事務所を紹介された。

 猫絡みの仕事に定評があるそうだ。

 ただし、以前依頼を受けた人物からの紹介状が必要になる。


 今回はとある弁護士からに紹介してもらった。


 地下の駐車場に車を停め、運転手をその場に待たせ、その場所に向かう。


 
 「三条さんからご紹介いただいたのですか?」


 「お待ちしておりました、

 どうぞコチラに。」


 
 指定された場所とは、とある雑居ビルの地下一階。

 その一画にある休業中の店舗?

 その階層の半分程は駐車場で、残りは数軒の店舗の様。

 指定された店舗の隣りは古本屋の様で、ビルの地下だというのに意外とお客の入りが多い。

 そして何故か、その階層には何処から入って来たのか、あっちこっちと猫だらけ?

 各々好きな場所で寝ていたり、ジャれ有って遊んでいる。


 休業中の店舗の前にはコチラの到着を待っていたらしく、一人のが待っていた。

 その中に入ると隣の店舗の在庫だろうか、本や雑誌が積み上げられている。

 「コチラにおかけ下さい、今担当が参りますので。」
 
 パーテーションで区切られ、簡易的に応接スペースを設けられてる様で、そこで待つ様に案内された。
 
 「今、お飲み物をお持ちします、緑茶やハーブティー、コーヒー、お抹茶がありますが如何なさいますか?」


 「そ、それではコーヒーで。」

 「かしこまりました。」


 メイドカフェなのかと思ったら、

 「にゃー?」

 「まぁアナタ、ここにも猫がいるの?」

 「にゃにゃ?」

 「いけませんよ、ニャン太くん。

 お客様はアナタと遊ぶ為に来られたのでは有りません。」


 「にゃん!」

 まるで会話している様で、思わず笑ってしまう。


 「大変失礼しました、お隣りとは中で繋がっているので、よくココでお昼寝しているみたいなのです。」

 「いえ、猫は嫌いではないので、大丈夫ですわ。」

 隣りの古本屋で飼われているのかしら?

 「どうぞ、冷めないうちに。」

 メイドさんが淹れたコーヒーをいただくと、コレは大変美味しい!

 「…美味しい…」

 思わず声が出てしまった。



 「大変お待たせしました。

 ワタクシ、コチラのでお話をお伺いする「櫻井」と申します。」

 現れたのは品の良いお嬢様といった感じの女の子…いや、成人はしているだろうか?

 さくらい…何か運命的な?


 「桜庭 玲子と申します。」


 「サクラバフーズの社長サンですよね?

 ソチラの「マグロチキン味」はウチの子のお気に入りなんですよ。」


 「ソレは光栄です、ではアナタも猫をお飼いなのね?」


 「ハイ、…いけない、依頼内容をご確認しないといけないのに?

 失礼致しました。」


 おっとりタイプのお嬢様の様ね、変な緊張感はなくなった。


 「コチラはの階にあるの分室になります。

 「猫」に関する依頼はコチラでお引き受けします、迷子の猫探しから#飼い主探しまで、猫に関わる事ならお任せ下さい。」

 「お若い様ですが、アナタが探偵サンなのですか?」


 「あら、若く見えますか?

 童顔でこれでも25なんですよ。

 ワタクシは秘書の様なモノで、実働はココの「分室長」ら、専門スタッフが行います。

 それと分室長は私より女の子ですよ。」

 「分室長?」

 「今の時間は、上にある猫カフェでバイト中です。」


 「バイトですか⁈」

 「分室長は大学生でして、多忙なんです。

 デスがご安心下さい、実働スタッフは多数いますので、ご依頼はすでに調査を開始しております。」


 「にですか?」


 「ハイ、ですからご安心下さい。

 一応、依頼のご確認ですが、コチラの資料の猫の事、そのブリーダーさんの事、そしてアナタのご主人との繋がりを調査する…で、お間違い有りませんか?」

 「ええ、間違いありません。」

 京多クンに頼んでヒメの血統書をコピーさせてもらい、それを事前に渡しておいたのだけど?

 ココを紹介してくれた弁護士でもある、京多クンの叔父を通して。

 「この猫さんの事は大体調査は終了してます、現在はブリーダーさんに付いてお調べしている段階です。」


 「もうそこまで⁈」

 依頼したのは昨日の事なのに⁈


 「実は以前、この猫さんの事を調べていた同業者がいまして、当事務所でも多少協力しましたので。

 おそらくソチラの同業者に依頼されたのはご主人だと思われます。」


 て、展開が早すぎる!

 猫専門探偵だからと甘く見ていた!


 「調査完了は近日中に、報酬は… 」

 「ソレなのですが、本当にあんな事で?」


 「ええ、サクラバフーズの高級猫缶を、指定の各保護猫団体に三十缶づつ寄付して下さい。

 但し匿名でお願いします。」


 「匿名ですか、桜庭の名を出さないと言う事ですね。」

 売名行為にならない様にとの配慮、それともこの依頼の事がバレない様に?


 「はい、ご理解が早くて助かります。

 現在までの調査内容はコチラに記録してありますのでお渡しします。」

 何が書類を渡されると思っていたら、何が小さな物を渡された?

 「え、SDカード?」


 「聖華さん、お茶のおかわりと頂き物のお茶菓子を。」


 「かしこまりました、未来お嬢様。」

 やっぱりお嬢様なのね。

 

 



 さて、お客様依頼人がお帰りになられたので、各調査員の様子を見て来ようかしら?



 「ちぃちゃん、いらっしゃるかしら?」

 「ん、なんだ、ミクちゃんか?

 ちぃちゃんなら今日デートするから休むってよ。」


 「…それでおじさまが店番を?
 あっ、元々コチラはおじさまのお店でしたわね。」


 …えっ?

 「あ、あのおじさま、先程とても気になる事をおっしゃっていましたが?」

 とても意外な事だったのて、聞き流してしまった⁈

 「ちぃちゃん、彼氏が出来たんだ。

 歳下の…

 顔色悪いけど、大丈夫かい?」



 仕方ない、バイト中だけど分室長に会ってこよう。
 

 「あら未来さん、いらっしゃっい?

 大丈夫、顔色悪いわよ?」

 「舞華店長、こんにちは!

 ヒナちゃんは?」


 「あら、ヒナちゃんなら今日は探偵のお仕事って、聴いていたのだけど?」

 えっ、そうだったかしら?

 「なら、ゆたか君は?」

 「ゆたかならヒナちゃんの助手って事で一緒に行ってるハズだけど?」



 あ、怪しい!


 「み、皆んなズルいですの!」

 「え!え⁈どうしたの、ミクちやん?」


 

 その二日後、桜庭 玲子の元に調査完了の報告を意味する二枚目のSDカードが届いた。


 届けに来てくれたのは、おっきな虎猫だった…?


 「グルにゃ!」

 彼は颯爽と私の前に現れ、咥えていたカード入り小袋をちょこんと膝の上に置いて行った?


 社長室で仕事の資料に目を通している時にだ!

 「君、何処から入って来たの?」


 しかし、いつの間にか消えてしまった様に居なくなってしまった?



 「もしかして、あの猫も実働スタッフなのかしら?」


 今後の為、猫探偵と専属契約しようかしら?
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