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猫を温泉に入れてみた話し。
しおりを挟む「さ、先程は失礼しました!」
若い中居さんが、入り口ではしゃいでいた別の若い中居サンたちを連れて挨拶に来てくれた。
「い、いえ、お気になさらずに!」
何故か天木君が答えるんだけど、
「この度は山王院様のご紹介で当旅館をご利用いただきまして、いたみいります。」
…サンオウイン?
「ハイハイ、学校の後輩からあのチケットを譲って頂いたんです。
まさか、こんなに格式のある旅館だなんて思わなくて、ちょっと緊張してます。」
今度は京多君が答えてくれた。
何処かで聞いた事有るな?
サンオウイン?
後で調べるか?
「いやぁ、良い部屋ですねぇ~、眺めも良いし。
和室って落ち着くなぁ~!」
天木くん、何かカラカラ空回りしてるなぁ?
「早速なんですけど、この子達が落ち着いてきたので、ペット用のお風呂に入れたいんですけど?
若女将、何かコツあります?」
京多君はぶれない、猫の事になるとグイグイ行く。
「ミャ~?」
「ナーオ、ネーオ!」
「キャ~! 可愛い~、親子でお話ししてるのかなぁ~?」
「コレコレ、こっちの仔猫はアメショだから、こっちのチャトランとは親子じゃないよ?」
先程の謝罪も忘れ、猫たちを目の前してついはしゃいでしまう女の子たち。
残念、オウジ君はスコティッシュなんだけどね、本当は?
猫が好きなのか、若くて、可愛い二人の中居サンが、ペット用の露天風呂に案内してくれた。
「飼い主サンも足湯としてご利用いただけますので、どうぞ。」
「ハイハ~イ、喜んで~!」
飼い主では無い天木クンが真っ先に答えて、飼い主の二人は失笑していた?
ペット用の露天風呂はペット同伴用の各部屋にある様で、大型犬、小型犬等、広さや深さが其々違う様だ。
何かのCMで見た猫がタライに乗って温泉でぷかぷか浮いている様な、ふざけたモノで無くてちゃんと浸かれる様に造られていた。
最初は怖々と前足を湯に浸けていたオウジも、豪快に湯舟に飛び込むモンタを見て、同じ様にピチャピチャ遊びだした。
お湯の深さは10~15センチ程なので、二匹が溺れる事もないだろう。
体毛を乾かすペット専用のドライヤーや吸水タオルなどもしっかりと用意されていて、思っていた以上に猫たちは快適そうだった。
京多クンや蒼山クンは、家でも猫たちを入浴させている事もあり、手伝ってくれると言っていた女の子達より手際が良かった。
「凄い素敵です! お兄さん達、手慣れてますね!」
やや小柄だけど、明るい表情の子が二人を尊敬の眼差しで見ている⁈
「猫サンたち、気持ち良さそうにしてましたよ!
生き生きしてました!」
目をキラキラさせて、コレは尊敬の眼差しか?
ソレとも?
「子供の頃からやってるしな、昴もそうだろ?」
「そうかもな、保護した子があまりにも不衛生だと、様子を見て割とすぐにシャンプーとかしちゃうかな?」
へぇ、蒼山クンは保護猫活動家だとは聞いていたけど、トリマーもいけそうだね?
「へぇ、ウチのお姉もトリマーの資格持ってるから、そういう活動にも参加したら猫たち喜ぶかな?」
活発そうな女の子が、モノ凄く興味ある目で二人を見ている。
「もう二人共!
感心してないで、何かお客様のお手伝いなさい!
確かに出る幕はないみたい様だけど?」
若々女将のカミナリが落ちた?
う~ん、確かに若々しくな?
「あの、女性に歳を聞くのは失礼だけど、三人共お幾つかな?」
思い切って聞いてみると
「…あの、まだ中学生なんです、私達。」
それまでハキハキとしていた若女将がおずおずと答えた。
やや顔を赤くして可愛い。
「お、オレ高校生!」
うん、天木クンには聞いて無いよ。
「その歳で女将修行だなんて、凄いね、じゃあソチラのお嬢さんはクラスのお友達かな?」
「す、スゴっ!
お兄さん、もしかして探偵?」
「ただのしがないサラリーマンだよ。」
「で、僕らは高校生、同じクラスで猫好きで…
天木は違うけどね。」
「な、なにを~!
なら、俺も猫を飼うぞ!」
「ダメだ、猫が不幸になるから!」
女の子たちも含め、大爆笑となった。
温泉に入って、毛も綺麗に乾かせて、気持ち良いのか二匹は寝てしまった。
「今のうちに皆んな温泉入ろうか、この旅館自慢の大露天風呂に!」
蒼山クンが提案すると、
「こ、混浴か⁈」
と天木クンが、
「「違いますー!」」
と女の子たちが一斉に答えた。
成る程、京多クンが天木クンをウザがっていた訳が分かってきたよ。
「カズ兄さん、運転して疲れたろ?
行ってきなよ、オレ留守番してるから。」
「いや、京多クンも入ろうよ?
なんなら留守番は…?」
そうか!
「この子たちが目を覚ました時、飼い主どちらか居ないと不安になるだろ?」
「お兄さん、優しい~!
カッコイイ~⁈」
「いや、なら、俺が残る!」
「天木じゃ意味ないだろ?
飼い主でも無ければ、猫慣れして無いし。」
「こっちのお兄さんは、女の子の前でいいカッコしたいだけだよね?
逆にカッコ悪いから、辞めた方が良くない?」
「え~、そりゃないッス!」
「コラ、お客様に失礼な事を言わないの!」
いえ若女将、その通りです。
「じゃあ戻ったら、俺と交代して行ってこいよ。」
「おう、よろしく。」
京多クンと昴クン、いいコンビだ。
僕らはやっと温泉に入る事が出来た。
その間に部屋では?
「あ、あの失礼してもよろしいですか?」
「あ、あれ?
もう中居サンじゃないんだ?」
「今日はもうお手伝い終わりなので、帰る前にお兄さんとお話ししたくて?
ダメですか?」
先程の小柄な女の子が私服に着替えて、猫と京多クンしかいない部屋に訪れていた、
しかもひとりで?
「別に構わないけど?」
「そ、ソレではお邪魔します!」
「ネコちゃん達、よく寝てますね。」
「色々あった子達だからね、温泉の効能がとても効いてるのかもね?」
「色々ですか?」
「そっ。
オウジは腸内ポリープの切除手術、モンタは交通事故の衝撃で、後ろ足を痛めたりと大変だったからね。」
「…そんな大変な目にあったんですか?」
「でも、今は元気だ。
命って奴は結構たくましいんだぜ。」
スゥスゥ寝息を立ててる猫たちをみて、涙ぐんでる女子中学生!
ハンカチが見当たらないので、備え付けの箱ティッシュを渡す。
「す、すいませ~ん、グスン。」
天木ならココで鼻をかむな、必ず。
「何か思い出しちゃったかな?」
「私、小さい頃ずっと原因不明の病気で入院していて、今は元気だけど時々あの頃の辛かった事を思い出して…
でも、負けません!」
何か決意しているみたいだ?
「そうなんだ、
実は俺の親しい人も子供の頃から重い病気で最近まで一度も学校に通えない状態でね、何度も難しい手術を耐えてやっと俺たちと同じ学校に通える様になったんだ。」
「素敵です!
頑張ったんですね、その人!」
自分と同じ様な体験談を聞いて素直に喜んでいる様。
ココで辞めても良かったんだけど。
「けど、この前発作を起こしてしまってね、また手術して入院して、気落ちして、僕らの前から居なくなろうとしたんだ。」
「そ、そんな!」
「そんな時にオウジが似た様な症状で緊急手術になり、その知らせを聞いて戻って来てくれたんだ。
小さな体で病気と戦ったオウジに勇気を分けて貰ったんだと思う…
なんで、今回の温泉旅行はその人に温泉初体験の旅をサプライズプレゼントする為の下調べなんだ。」
「す、凄い素敵ですね!
きっとその人も喜んでくれると思いますよ!」
「そうかな、そうだといいな?
その人、手術痕を見られる事にトラウマがあるみたいで、皆んなとお風呂とかプールとか入らないんだ。
なんで、気分が開放的になる温泉ならって思いついたんだよね、ココならヒメやオウジとも入れるし?」
「ひめ?」
「オウジの未来のお嫁さん。
ヒメの恋人だからオウジって、妹が付けたんだ。」
「ステキですね、妹サン!
私、お友達になりたいデス!
あと、お兄さんのお友達とも?
私、その時も旅館のお手伝いしますから!」
「本当!
なら、妹やその人と一緒に温泉に入ってくれるかな?」
「…えっ、
妹サンとはともかく、お、男の人とは、む、む、無理です~⁈」
「ち、違うよ、その人、姫乃サンは女の子だから!」
「えっ、ええ~⁈
私、てっきり男の人だと思って、ご、ごめんなさい!」
こんな会話があったと後で京多クンがら聞いた…
京多君、多分だけど彼女、京多クンの事、
いや、言わないでおくか。
姫乃との仲が可笑しくなると困るし?
次回、温泉でバッタリに続くかもよ?
応援ありがとうございます!
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