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力技ですよ、だから何?

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 「雨上がりの朝の虹は、とっても綺麗ですね、光里サン!」

 「うん、でも姫姉ちゃんの方がもっとキレイだよ‼︎」

 「あ、ありがとうございます…。」


 何を見せられているんだ、俺は?

 「そういうの、どこで覚えて来たんだ?」

 「えへへ、えっとね、アニメかな?」

 言ってみたかったらしい…。

 昨晩、深夜に雨が降り始め、早朝には止んだみたいだ。


 昔から珍しい事が起こると雨が降ると言うけど、まもちゃんが鬼神の如くお怒りになられた所為かも知れないな?

 その怒りは清らかな乙女、光里のお願いで収まったのでけど…


 「やっぱり覚えてないなぁ?

 いや、北海道に撮影旅行に行ったのは覚えているよ、でも牧場だけで数カ所は見て回ってるからね?」

 だそうだ?


 タカ姉さんの兄、隆史サンが東京にする背景はなんとなくわかったし、同じ次男として同情もしない訳では無いが、やっぱり後半の話しを聞くと、その具合が許容出来ない。

 なんと言うか、そのお胸の大きな婚約者さんが気の毒だ!


 …でも、兄貴長男サンに押し付けたとか言っていたが、バツイチ子持ちだろ?

 大丈夫なのか?


 母さんがタカ姉さんのご実家に連絡を入れたら、近日中に何方かがコチラに来るそうだ?


 ソレならソレで、ソッチで話しを付けてもらおうか?

 もっとも、

 タカ姉さんと愛ちゃんは、ウチのなんで、ソチラの腐った内輪揉めには巻き込まないで下さいね!



 昨晩は図らずもまもちゃんと隆史サンは我が家に、お泊まり頂いた。

 俺たちは学校に、まもちゃんは今日1日フリーらしいので、愛ちゃんのお世話をしながらルナさんと「愛ちゃん撮影会」をするって張り切っている?

 おそらく、隆史サンをこき使いながらだろう?

 頼みますよ、衛

 その駄目兄にカメラマンの何たるかを教えてやって下さいね!


 

 「おはよう、京多。」

 「オウ昴、昨日は悪かったな、色々巻き込んで?」


 「思ってない事を言わなくていい。

 ソレよりあの後、どうなったんだ?」


 「ハイハイ、早速それな。」

 「オゥお前たち、おはようサン、SAN SAN、サンマ定食!」

 朝のルーティンになりつつある天木との掛け合いなんだけど…


 「…いや、朝は鯖の塩焼きだった。」

 「おはようございます、天木さん。

 その鯖、私が焼いたので…」

 「え、えっと、ウチは朝、トースト派なんだ。」

 

 天木のサブい朝の挨拶にマジレスする俺たち?


 本当はスルーしてしまいたいのだけど?

 最近そうもイカなくたってきた?

 「あっ! 天木くん、おはよう!

 何ソレ、新しいネタなの?」

 「ヨゥ、天木! 今日もキレッキレだな!」

 早速、天木を見かけて声をかけてくる生徒たち?

 「…コレだよ、勘弁してくれ?」


 最近、天木は芸能部の「お笑い」担当なのである⁈

 配信している動画に度々「ツッコミ」係として画面の端の方に配置していたのだけど、何故か視聴者からが良く、今では無くてはならない存在になり始めた?

 実際、芸能部の女子達だけだと【汚れ役】が誰一人もいないので、いざと言う時のオチ担当としても重宝されていた。

 奇跡が起こった様だ。

 その影響か最近では、あのつまらないギャグも学園内で受け入れられ始めて来た?



 まぁ全てはウチの「女神サマ」と「天使サマ」のお陰なんだけどね。


 どうやら光里が、

 「天木お兄ちゃんって、面白いよね!」とか、

 姫乃さんが、

 「天木さんのお陰で、笑いが絶えません!」とかね、

 

 そんな感じの事を、クラスのお友達に話したらしい?

 その可愛いインフルエンサーたちのお陰で天木の人気が小等部から徐々に広まっていった様だ。

 まぁあのくらいのギャグだと小学生ウケするのだろうな。

 その影響も有ってか、最近では天木の事を持ち上げる輩が増えてきた?

 朝のも、俺らの「返し文句」込みで一つのネタと見られている様だ?



 俺はバカが移らない様に姫乃さんを直ぐに席につかせると、

 「天木、姫乃さんはまだ本調子じゃないんだ、心臓に負担がかかるといけないから、無闇にギャグを降るな!」

 と、釘をさした?


 「そ、そうか!

 いや、俺とした事が⁈

 今の姫乃サンに、俺の爆笑ネタは危険だな⁈

 すまん、これからは気をつけるわ!」

 同じバカなら、天木の方がマダ紳士的だな?

 女性を労る感情がある分な。




 家にかえると、那由多兄サンが隆史サンとガンの飛ばし合いをしていた。
 
 いや、飛ばしているのは兄貴だけだな?


 何か揉めている様だ?

 頑張れ、兄貴!

 奥さんと娘の為に!



 さて、何を話しているのか、盗み聞きしてみた?


 「だから、ソレはオレじゃない!

 俺は駄菓子屋で怪獣カードしか買わないから、野球カードなんて横取りしないぞ!」

 なぬ、怪獣カード?

 ウチの兄貴は何を熱くなっているのだ?

 「いや、絶対お前だ!

 俺のカケフとタブチ、持ち逃げしたんだ!」

 「だから、野球チップスもラ〇ダースナックも買ってないから、集めもしてないんだ!

 オレ那由多は怪獣一筋で集めていたから!」


 「嘘だ、じゃあキン消しと怪獣消しゴムをトレードしたのは?」


 「消しゴムは集めてないな、ウチは猫が遊んで飲み込みかも知らないから!」



 この二人、何の話をしていやがる?



 アレ、まもちゃんは帰ったのかしら?


 


 「あ、お兄ちゃんおかえりなさい。」

 「うん、ただいま。
 なぁ光里、まもちゃんは?」


 先に家についてる妹に訊ねると?


 「…えっとな、ふふふ。」

 「えっ、何かあった?」

 「咲姉ちゃんが迎えに来て、デートしに行ったの。

 良いなぁ、光里もデートしたいなぁ。」

 またオマセさんな事を。

 もっとも、綺麗なお姉さんがこんなにそばにあると、致し方ないかも知れない。

 光里の教育上あまりよろしくないとも思えないが、どちらかと言うとお兄さん側が問題アリだな。

 「じゃあ、お兄ちゃんとデートすっか?」


 「ダメだよ、お兄ちゃんには姫姉ちゃんがいるでしょ!

 浮気したらイケナイんだよ?」


 本当に可愛い事を言うな、ウチの妹ちゃんは!



 「ならさ~、私が良い男紹介してあげるよ!」

 「あ、ルナちゃん、おかえりー、なになに 誰を紹介してくれるの?」

 「いたんですか、ルナさん?

 光里に変な事、吹き込まないでくださいよ!」


 何処にいたのかと思えば、何かとでも言うのかめかし込んでるルナさん?


 「いやね、コレから弟たちと会って食事するんだけど、ピカりんもどうかなって?

 弟たちと友達になってくれると嬉しいんだけどね。」


 なるほど、そう言う事か?


 「お兄ちゃん、行っても良い?

 光里、ルナちゃんの弟くんたちた友達になりたい!」


 …う~ん、こんな可愛い女の子を見たら、弟くん達一目惚れしないかい?

 「ダメかな、ケイちゃん?」 

 「ハイ、わかりました。

 遅くならない様に気をつけて行って来なさい。」


 




 「光里サンとルナさん、お出掛けになられたのですね。」

 愛ちゃんを抱っこしながら、姫乃さんが台所にやって来た。

 「ちょっと家の中の空気が悪かったですからね、ルナさん気を使ってくれたのかも?」

 「さすがですね、見習わないと。」

 「姫乃さんも立派なですよ、光里のね。」


 …良い雰囲気だな、

 愛ちゃんがいるけど。


 「…あ、あの京多さん?」

 「ん、どうかした?」

 「あ、愛ちゃん、抱っこしてもらえますか?

 ちょっとだけ、お願いします。」


 「え、うん、いいよ。」


 「す、すいません、すぐ戻りますから!」


 …アレ、お花でも摘みに行ったかな?


 ま、まさかまた発作か…って感じではなかったけど、あまり詮索しない方が良いかな?





 
 「初めまして、光里です!」

 駅前通りにあるファミレスでルナさんの弟くんと御対面した光里。

 「ほらほら、お前たちも挨拶なさい。

 あんなに会いたいって言ってたじゃないの!」


 「バッ、バカ姉ちゃん!

 そんな事言ってねーし!」

 即答する活発そうな男の子、恥ずかしがっているのかな?


 「あ、あの、ボク「ケンタ」です。

 えっと、四年生です。」


 「じゃあ「ケンちゃん」だね、光里も四年生だよ、よろしくね!」

 ちょっと気弱そうで、同じ歳なのに小柄なので年下みたいな男の子だ。

 この子が末っ子みたい。


 「初めまして、ヒカリちゃん。

 【西島サイトウ 拓磨タクマ】と言います。

 中学一年でこの二人の兄です。

 日頃から、姉がお世話になってます。」
 
 真面目て礼儀正しい、ちょっと昴お兄さんに感じが似てるかな?

 「ううん、お世話になってるのは光里の方だよ。

 ごめんね、優しいお姉さんを光里が取っちゃったみたいで。」

 「ハッ、こんなガサツな姉ちゃん、別に居なくても困らないし、気にすんなよ!」

 先程の活発な男の子が咄嗟に口を開く?

 強がりかな? ソレとも…

 「コラ、ナマ言うな!

 ピカりん、コイツはエイジ、

 【西島 瑛士エイジ】ね!

 小6で、ちょっと素直じゃないけど根は優しい子だから、仲良くしてやってよ!」

 「エイジ君だね、よろしくね!」



 「お、オゥ…」

 照れてる、可愛いかも?



 こうして五人は楽しいお食事会を…


 「おや、光里ちゃんじゃないか?」

 光里たちが座っているテーブル席の側を通りかかった男性が声をかけてきた?

 「アレ、叔父さま?

 なんでココにいるの?」

 「いや、ウチの弁護士事務所はこの建物の一番上だから、に来るんだよ。」

 何と弁護士で遠い親戚の叔父様だった⁈

 「光里ちゃんこそ…

 おや、そちらのお嬢さんはLUNAサンかな?

 いつもと感じが違うから直ぐにわからなかったよ?」


 「ハハハ、どうも三条センセー、お、お久しぶりですね?

 いや、今日はたちがいるんで、久しぶりにらしい格好でと。」

 二人とも三条家で何度か会っているはずなのに、違うって、どういう事かな?


 「ほらほら、このオジサンはお姉ちゃんが前にお世話になった弁護士の先生なんだ、ご挨拶して!」


 「こんにちはー!」

 「ハハハ、はい、こんにちは。

 みんな元気が良いね。

 じゃあ、人を待たせているから、また今度ね。」



 そう言って、手を振りながら店の奥に行く叔父様。


 「姉ちゃん、なに悪い事したんだ?」

 早速エイジくんが質問してきたが、

 「別に大した事じゃないよ、事務所の移籍の際に、事務所の口座に振り込まれていた姉ちゃんのギャラをネコババされそうになったんで、取り戻してもらったんだよ。」 

 「ルナちゃんも苦労してるんだね?

 良かったら、叔父さまも光里たちと一緒にお食事すればいいのにね?」

 「お仕事の話しなんじゃないかな?

 人を待たせてるって言ってたし?」



 

 このあと、お会計の際にルナ達の食事代を三条弁護士が払ってると聞いてビックリ感謝するのだった。
 
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