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親の苦労を知り、悪党の上前を刎ねる。
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困った。
朝からカンナの機嫌が悪い⁈
おかしい、何でだ?
昨晩、ゴルドーさんに晩飯をご馳走になり、旅の初日だから早く休もうと、早々に休んだのだけど。
宿が、混んでいて二人部屋しか無かったので、カンナには悪いが仕方なく相部屋に泊まった。
この事はカンナも、
「そうだね、仕方ないよね!」
と、快諾してくれたのに?
本当に、昨晩は何もしてないのに、何であんなに機嫌が悪いのか⁈
頭の中のおっさんが、
「こう言うのをツンデレと言うんだ。」とか言ってる?
多分、違うな?
女性の事は女性に聞こうと、
ギルドに顔を出して、早速アンリさんの窓口でオレ達に向いてそうなクエストを探してもらう。
するとアンリさんの方から、
「彼女、ご機嫌悪いけど、何か有ったの?」
俺は素直に話すと、
「タケル君は少しお馬鹿サンなのかもね?」
と、クスクス笑われてしまった?
「えっと、コレなんか良いと思うわ、二人とも小さな子供の面倒なんて、見れないかしら?」
村では子供たちに乗馬を教えたり、収穫祭で売れる薬草を森へ皆んなで取りに行ったりなど、楽しくやっていたし、
旅に出る直前まで妹の面倒も見ていたから問題無いけど?
「孤児院の世話係が過労で倒れたのよ。
臨時のお世話係をお願いしたいの。」
「ハイ!それヤります!やらせて下さい!」
カンナは子供の面倒を見るのは得意だ!
妹が産まれてからも、ウチにちょくちょくモニカの様子を見に来ては、
「モニカちゃんは可愛いな、私の事はお姉ちゃんって呼んでね!」
とか言って、抱きしめたり面倒を見たりしていた。
きっとカンナが機嫌を直してくれると思い、孤児院のクエストを受けることにした。
油断していたわ。
タケルってば、強引に私との結婚…結局は婚約で話しはまとまったけど?
グイグイ来るから、てっきり昨夜もそうなるモノだと期待しちゃったじゃない⁈
そうよ、そうなのよ!
アレは草食系男子とか、私に魅力が無いとかじゃ無い!
肝心なコト、あのバカは知らないのよ!
何よ!
私一人ドキドキして、今か今かとベッドで待ってたのに、サッサと熟睡してるし⁈
何の為の二人部屋なのよ!
信じられない、全くお子様なんだから♡
「お~いカンナ?」
「…何よ、朴念仁?」
「ん? アンリさんが、俺たちに是非お願いしたいクエストが有るんだそうだ。」
「そう、アン姉さんが?
で、どんなクエストなの?」
「孤児院で子供たちの面倒を見てくれるかってさ?」
「…そんなクエストも有るのね?
じゃ、早く行こう、子供たちが待っているんでしょ?」
孤児院は町の外れにあった。
院とは名ばかりで俺が住んでた村の家より小さい様な古びれた一軒家だ。
「ごめん下さ~い、冒険者ギルドから来ました~!」
立て付けの悪い扉を開けて中から顔色の悪い年配の女性が現れた。
おそらく、ここの職員だと思うけど?
「ありがとうございます、貴方方を待っていました。」
世話係が体調を崩したとは聞いていたけど、他にも職員はいないのか?
「あ、あの、他の職員の方はいないのですか?」
他に居るのは、モニカより一つが二つ歳上の幼児が三人、奥のゆりかごに狭い中二人の赤ん坊がいた。
「何だ、コレ、おかしいだろ⁈」
頭の中のオッさんが叫んだ、俺もそう思う。
「よーし、皆んな!お姉ちゃんが、美味しいモノ作ってあげるから、その間コノお兄ちゃんと遊んであげてね!」
カンナが直ぐに気が付き、俺に子供たちを任せて、おそらく一人しか居ない世話係サンを奥の部屋で休ませた。
同時に赤ん坊の様子を見て、ミルクの用意をしたかったらしいが、
「ガーくん、お使いお願い!」
と表にいたガーヴィンにアンリさん宛ての手紙を持たせてギルドに使いに走らせた!
小1時間でミルクやら、食材やらを運んで来たガーヴィン。
「お兄ちゃん、だ~れ?
なんてなまえ?」
「おう、お兄ちゃんは「タケル」って言うんだゼ!」
よく見ると何か薄汚れている服、不衛生だと病気になりかねない?
食事はちゃんと取れているのか?
幸い皆んな元気そうだけど、確か子供たちは六人と聞いていた。
赤ん坊が二人に幼児が三人、そして九つの子が一人と聞いていたのだが。
「ねぇねぇ、あのお姉ちゃんはなんておなまえ?」
「あのお姉ちゃんは「カンナ」だ、怒ると怖いから、良い子にしてろよ!」
「ぼく、いい子だよ!」
「わたしも~!」
「ハ~イ!」
途中からお使いから戻って来たガーヴィンも交えて、遊び倒した。
俺たちは追いかけっこをしたり、戻って来たガーヴィンに子供たちを乗せたり、子供たちが疲れてお昼寝するまで遊び倒した。
院の中を確認させてもらうと案の定、風呂が壊れていた。
(有るには、有ったんだな。)
「酷いモノね、この家あちこち痛みがひどくて、修繕が必要だと思うのだけど、領主サマがお金を出してくれないそうよ?」
世話係の世話を終えたカンナが、昼食が出来たと呼びに来たのだが、
「ココって「院」って感じじゃないだろ、詳しくは俺も知らないけど、コレはただの「家」だ、それもかなりオンボロのな。」
「世話係の人、マーヤさんって言うんだけど、ココの運営費が足りないって、増額をお願いしたら…。」
断られたか、信じられないな?
「あの領主の爺ちゃんがそんな事するとは思えないな?」
「そ、そうよね!あの領主のおじいちゃんがこんな可愛い子たちに酷い暮らしなんてさせないと思うの!」
この町も確か俺たちの村と同じ領主が治めている。
村の収穫祭にも農夫の格好をして参加してくれる優しい爺さんだ。
俺たちを孫の様に可愛いがってくれたあの人が、親のいない子供たちにこんな粗末な場所で生活させるモノなのか?
「コレはもしかしたら、アンリさんに乗せられたかもしれないな?」
「え、どう言うコト?」
「つまりは、このクエストはこの町に腰を据えて挑まないといけないってコトだよ。」
まず手始めに風呂を直す事にした。
今日は少し遅くなってしまった!
きっと皆んな待っている。
今日は親方が、売り物にならない「肉の切れ端」、向かいの商店の奥さんが「クズ野菜」をくれたので、コレで皆んなやマーヤおばさんに少しは美味しいモノを作ってあげられそうだ!
ギルドには魔獣の解体がくる。
肉屋のマンセ親方はギルドから依頼されて、魔獣の解体を引き受けている。
その際にそのまま魔獣の肉を引き取ったりする事もある。
魔獣はまだ無理だけど、野鼠や兎ぐらいなら、自分も解体出来る様になった。
マーヤおばさんが具合が悪いと誰かに聞いた親方たちが普段より多く売れ残りをくれた。
ボクは良い人の所で働けて良かった。
何と言っても、給金以外に食材が手に入るのは本当に助かるから。
他の子たちはどうなんだろう?
院のそばまで来るとなんだろう、良い匂いがする?
ん?
院の前に立派な馬がいる?
大きくて、全身黒くて、立て髪は火の様に真っ赤で、でも瞳はとても澄んでいて優しそう。
「ブルルル~。」
「やぁ、君は何処から来たの? もしかしてお客様の馬かな?」
誰か来ている?
まさか領主様⁈
すると勢いよく扉が開いて、
「おかえりなさい、アナタが「キャロ」ね?
私はカンナ、疲れたでしょ?
もうすぐお夕食が出来るから、先にお風呂に入ってね!」
ちがったみたいだけど?
「え、えっと、誰ですか?」
「あ、キャロ、おかえりなさ~い!」
「あのねあのね、カンナお姉ちゃんのゴハン、とっ~~~てもおいしいんだよ!」
「おふろ、なおったの、きもちよかったの!」
「え、え、皆んな、どうゆうコト?」
何が何だかわからないけど、優しいそうなお姉さんが皆んなに食事を作ってくれたのは何となく分かったけど?
「タケル、ちょっと皆んなをお願い!
キャロ、ちょっと血の匂いが残ってるから、やっぱり先にお風呂にしましょうか?」
一番年下のケンツを肩車しているお兄さんは誰⁈
「分かった、ごゆっくり。」
「え⁈ あ、あのボク困りマス!」
お姉さんが、グイグイとボクをお風呂場まで連れて行くと、有無を言わさず、ハダカにされてしまった!
「キャッ、見ないでください!」
「見ないと、ちゃんと洗えないでしょ?
ね! キャロルちゃん!」
「え?」
「もう何も心配しなくて大丈夫だからね!」
お姉さんにはバレていたんだ、ボクが本当は「女の子」だって事に…。
しばらくして、この辺りの領主である「オリオン子爵」の誕生日を祝う宴が王都の別宅で行われた。
甥であるアレク男爵の計らいらしい。
王都で公務が有る時に使っている別宅。
普段は王都に住んでいる同じく甥のハルク準男爵が管理しているのだけど、何やら急用が出来てしまい今は席を外していた。
別宅の庭園に立食形式で飲食を振る舞っているのは、当の子爵が堅苦しい席が嫌いだからと半ば無礼講な形にしている。
多くの家臣や使用人はもちろんの事、
取引のある商人や町の有力者、領地内の各村長らも招かれ、
祝いの宴は大いに賑わっている。
主賓の子爵も特別に誂えた男爵からの贈り物でもある椅子に身体を預けて、宴の様子を和かに眺めていた。
子爵の両の膝には孫だろうか、上等な仕立ての服を着た幼子が一人づつちょこんと座っており、その内男の子が子爵の白い顎ひげを面白そうに触りだした。
「ほっほっほ。爺の髭がそんなにお気に召したかな?」
そう言うと、その男の子の頭を愛おしく撫でていた。
その様子を見て、来賓たちは子爵が上機嫌だと思い、誕生日の祝いの言葉を次々に述べに行く。
子爵の側にはもう一人幼子と、もう少し歳上で身内の宴席に着るより、王宮の舞踏会で纏うドレスの様な装いの少女が恥ずかしそうに俯きながら控えていた。
こんな歳のお孫さんが子爵にいたとは聞いていない、親類縁者が子供好きの子爵の為に自らの子供でも側に行かせたか?
息子同然の男爵、準男爵もまだ結婚していないのでお二人の子供では無いと思うが?
噂では商人のフリをして、とある農村の収穫祭に訪れて村の子供たちの輪に入り、年甲斐もなく踊っていたなどと有りもしない噂を流された事もあった。
おそらくは子爵に取り潰された悪徳な元商人が流した噂だろうか、王都では禁止されている「奴隷商人」だと思うが?
当の本人があまり気にしていない、恥とも思っていないのだろう。
一人一人、準に祝いの言葉を述べに子爵の前に出てくる。
嬉しそうに聴いている子爵だが、側にいる少女の手を優しく繋いで、時折り話しかけていた。
「まぁ本当に仲がよろしくて、お孫さまなのかしら?」
「もしかして「養女」にされるとか?」
「男爵たちの若い婚約者候補かもな?」
何やら勝手な事を言い出す者もチラチラ出てきた?
そんな中、ある男が子爵に祝いの言葉を述べに前に現れた。
子爵の土地や建物の管理の一部を任されている「オールドック」と言う男だ。
親の代から仕えているので、男爵たちとも顔馴染みの男だ。
数年前から先代から「管理人」を受け継ぎ、他のも色々手広く商売をしている。
「子爵様、お誕生日おめでとうございます。
このオールドック、この日を迎えられる事、誠に嬉しく思います。」
大柄で特徴あるやや濁声の所為か、粗暴に思われがちで子供からは怖がられてしまう様だ?
子爵の隣りいた少女が身を固くして、椅子の後ろに隠れてしまった。
「ほっほっほ、オールドックよ、領地の管理、ご苦労であるな。
年寄りの道楽で、辺境の地に「大農場」を作るワシの夢を支えてくれているのは、お前達の様な忠義者のお陰だ。
わしは本当に果報者だのう。」
和かに話す老子爵。
「そう言って下さるだけで、このオールドック、喜びで身震いする想いです!」
すると子爵は膝の上の子達を下ろし、少女に何か話しかけた。
「子爵様のお孫さまですか?
誠に利発そうで可愛らしいお子達でございますな、お隣のお嬢様もいずれは社交界の華、いや宝石となるでしょう!」
ここぞとばかりに褒め称える、少しでも子爵の心象をよくして、もっと多くの物件や土地の管理を任せてほしい、そんな思惑だ。
「ほう、そう思うか、オールドックよ?」
「は、はい、もちろんでございます。」
子爵の声の様子が変わった事にオールドックはもちろん、他の者も気付いた。
「他のお子達も利発そうで愛らしく、流石は子爵さまのお孫様ですなぁ。」
とにかく子供を褒めておけば機嫌が良いだろうと、言葉を繋ぐオールドック。
「この子たちは儂の様な「耄碌爺い」なんぞの孫ではない、残念な事だがな。」
「あ、あのソレはどう言う…?」
「オールドック、お前の友人「ジョニック」なら若い冒険者見習いが成敗したぞ。」
その瞬間、オールドックは血の気が引く様に顔色が変わった。
「…この…人です。」
すると少女が小声で子爵に告げる、身を震わせ今にも消えそう声で。
しかし、子爵はソレを決して聞き逃さなかった。
「すまんのぅ、こんな惨い事を頼んで。
許しておくれ、キャロルや。」
子爵が男爵たちに何か目配せする。
「オールドック、ちょっと話しが有る。」
左からハルク準男爵が、
「既にお前の屋敷にもウチの私兵が踏み込んでいる頃さ。」
右からアレク男爵が取り押さえた。
「な、何をするのですか!私は何も知らない、やってませんよ!」
『その人がお父さんとお母さんを殺したんです!』
宴席は鎮まりかえる。
目にいっぱいの涙を溜めて、少女がオールドックを睨んでいる。
「な、なんだ、お前は⁈
し、知らん!知らんぞ、お前の事など!
子爵さま!信じて下さい!」
「黙らっしゃっい!
アレク、ハルク、さっさと連れて行きなさい!」
「アンリさ~ん、包み隠さず教えて下さ~い!」
「タケル君、先ずは馬から降りてくれるかしら?」
俺はガーヴィンに跨ったままで、冒険者ギルドの扉を蹴り開けて、アンリさんのいるカウンターに駆け寄った!
「まぁ、綺麗の瞳のお馬さんね、なんてお名前?」
とか言って、誤魔化されないゼ!
なのに、ガーヴィンの奴はアンリさんに褒められたのがわかったのか、彼女に首を垂れているし?
「アン姉さん、ごめんなさい! でも私もあの子たちをほって置けないの!」
カンナがキャロルから話しを聞いて、あの村で育ったオレたちは幾つかの矛盾に気がついた。
「何かしてくれるとは思ったけど、コレは予想外だわ。」
とにかく場所を変えて、本当の事情を説明するアンリさん。
「実のところ、管理人のオールドックには黒いウワサが有るの。
アナタたちなら、もしかして真相を突き止められるカモって思って孤児院のクエストを依頼したの。
きっとあの子たちの事、放って置けないかなって?」
「へっへへ、お察しの通り乗せられてヤルよ。」
「キャロルちゃんにあんな辛い思い、続けさせないから!」
「えっ?キャロルちゃん?」
「なんだ、アンリさんなら気付いていると思っていたのに?
キャロは男の子の振りをしていた女の子だからな!」
「えっ?どういうこと?」
「ソレを話すには、ハルク兄さんを呼ばないといけないかも?
アンリさん、大至急王都のお偉いさんに連絡してもらえますか?
王都在住のAランク冒険者、「二枚目のハルク」って人に!
多分、貴族だから?」
キョトンとしているアンリさん、タケル君なら直接管理人に抗議するかと思えば?
ソレにハルクさんって誰?
頭の中のオッさんが、
「ああ、あの「スケさん」か⁈」
って一人納得している?
誰だよ、スケさんって?
「よし、何とか逃げられたぞ!」
別室に閉じ込められた際に、諦めて絶望している振りをして、見張りが油断した隙を見て逃げ出した。
裏口の側に止まっていた荷馬車に隠れて、上手い事町の外まで出る事が出来た。
自分も馬鹿では無い!
こんなヤバい事、いつまでも王都で続けてはいられない、今日の席で管理物件を増やしてもらえない様ならそろそろ見切りをつけて帝都に高跳びするつもりでいた!
既に残して置いてはマズいものは処分してある。
金目のモノも町の外にある、ジョニックすら知らない隠れ家に移してある。
屋敷に居るのは、なにも知らない使用人だけ。
明日は彼等が待っていた給金の支払い日だったか、まぁ諦めてくれ。
親から引き継いだ屋敷も既に売買契約が終了して来週明け渡し、金も既に受け取っている。
帝都には色々とコネを作ったおいたので、また奴隷商人でも始めるか?
その為に見栄えの良い子供をアチラの貴族に都合したのだ!
更に税として納められた特産品を誤魔化して帝都の貴族に流していたのだ!
ミスリルの様に優れた刀剣や絹より美しい織り物など。
しかも帝都のある権力者に賄賂として送っていたので、何とか帝都に着きさえすればどうとでもなる!
荷馬車が上手い事、町から出て何処かの村に戻って行く様だ、充分町から離れたら、この馬車を奪って隠れ家の有る森まで行こう!
そもそも、親父が悪いのだ!
こんなに早く死んじまって!
オレは帝都でそれなりに上手くのし上がっていたのに!
わずかばかりの遺産についつい欲を出したのが間違いだった、いつの間か俺が死んだ親父の後を継ぐ事になっていたのだ。
こうなったらら出来るだけ美味い汁を吸ってから、帝都に舞い戻るつもりで荒稼ぎしたのだが、潮時だったのだろう?
しかし、あの小娘は誰だ?
女のガキは高く売れるから、初めのウチに売り払ったハズだが?
オレがあのガキの親を殺した?
そんなの有るとすればあの一度だけだ。
ジョニックに誘われて、あの村に向かう移民共の場車を襲った時に!
最近、「収穫祭」が話題になり景気が良くなって人手が足らず、移住者を募っていたあの村だ。
いや、収穫祭を始める様になる前にも町に買い出しに行った帰りの荷馬車を襲った事も有ったな?
あれは俺が親父に勘当されて、町を出る事になった腹いせで、ジョニックに誘われて盗賊の真似をした時か?
アレがキッカケで収穫祭を始める事になったとか聞いた様な?
なら、俺に、感謝しろ!
オールドックは知らない、今の自分と同じ様に荷馬車の荷物に紛れ、木箱の底に息を殺して隠れていた少女が自分の悪業を隙間から見ていた事を、
そして、少女を木箱の底に隠し、見つかっても男の子の振りを続ける様に言い残した両親の事。
どちらも子の事を思い、残したモノなのに?
そんな事を考えていると、いつの間か、馬車が止まっていたことに驚く⁈
「ココは何処だ!」
隠れ家のある森の様にも見えるが、馬車には手綱を持つ人も馬さえもいない⁈
何が起こっているのか、わからない?
「忘れたのかよ、ココはな、お前たちがナリフの父ちゃんたちを殺した場所だよ!」
そこには月明かりに照らされ、愛刀を握る若い冒険者がいた。
朝からカンナの機嫌が悪い⁈
おかしい、何でだ?
昨晩、ゴルドーさんに晩飯をご馳走になり、旅の初日だから早く休もうと、早々に休んだのだけど。
宿が、混んでいて二人部屋しか無かったので、カンナには悪いが仕方なく相部屋に泊まった。
この事はカンナも、
「そうだね、仕方ないよね!」
と、快諾してくれたのに?
本当に、昨晩は何もしてないのに、何であんなに機嫌が悪いのか⁈
頭の中のおっさんが、
「こう言うのをツンデレと言うんだ。」とか言ってる?
多分、違うな?
女性の事は女性に聞こうと、
ギルドに顔を出して、早速アンリさんの窓口でオレ達に向いてそうなクエストを探してもらう。
するとアンリさんの方から、
「彼女、ご機嫌悪いけど、何か有ったの?」
俺は素直に話すと、
「タケル君は少しお馬鹿サンなのかもね?」
と、クスクス笑われてしまった?
「えっと、コレなんか良いと思うわ、二人とも小さな子供の面倒なんて、見れないかしら?」
村では子供たちに乗馬を教えたり、収穫祭で売れる薬草を森へ皆んなで取りに行ったりなど、楽しくやっていたし、
旅に出る直前まで妹の面倒も見ていたから問題無いけど?
「孤児院の世話係が過労で倒れたのよ。
臨時のお世話係をお願いしたいの。」
「ハイ!それヤります!やらせて下さい!」
カンナは子供の面倒を見るのは得意だ!
妹が産まれてからも、ウチにちょくちょくモニカの様子を見に来ては、
「モニカちゃんは可愛いな、私の事はお姉ちゃんって呼んでね!」
とか言って、抱きしめたり面倒を見たりしていた。
きっとカンナが機嫌を直してくれると思い、孤児院のクエストを受けることにした。
油断していたわ。
タケルってば、強引に私との結婚…結局は婚約で話しはまとまったけど?
グイグイ来るから、てっきり昨夜もそうなるモノだと期待しちゃったじゃない⁈
そうよ、そうなのよ!
アレは草食系男子とか、私に魅力が無いとかじゃ無い!
肝心なコト、あのバカは知らないのよ!
何よ!
私一人ドキドキして、今か今かとベッドで待ってたのに、サッサと熟睡してるし⁈
何の為の二人部屋なのよ!
信じられない、全くお子様なんだから♡
「お~いカンナ?」
「…何よ、朴念仁?」
「ん? アンリさんが、俺たちに是非お願いしたいクエストが有るんだそうだ。」
「そう、アン姉さんが?
で、どんなクエストなの?」
「孤児院で子供たちの面倒を見てくれるかってさ?」
「…そんなクエストも有るのね?
じゃ、早く行こう、子供たちが待っているんでしょ?」
孤児院は町の外れにあった。
院とは名ばかりで俺が住んでた村の家より小さい様な古びれた一軒家だ。
「ごめん下さ~い、冒険者ギルドから来ました~!」
立て付けの悪い扉を開けて中から顔色の悪い年配の女性が現れた。
おそらく、ここの職員だと思うけど?
「ありがとうございます、貴方方を待っていました。」
世話係が体調を崩したとは聞いていたけど、他にも職員はいないのか?
「あ、あの、他の職員の方はいないのですか?」
他に居るのは、モニカより一つが二つ歳上の幼児が三人、奥のゆりかごに狭い中二人の赤ん坊がいた。
「何だ、コレ、おかしいだろ⁈」
頭の中のオッさんが叫んだ、俺もそう思う。
「よーし、皆んな!お姉ちゃんが、美味しいモノ作ってあげるから、その間コノお兄ちゃんと遊んであげてね!」
カンナが直ぐに気が付き、俺に子供たちを任せて、おそらく一人しか居ない世話係サンを奥の部屋で休ませた。
同時に赤ん坊の様子を見て、ミルクの用意をしたかったらしいが、
「ガーくん、お使いお願い!」
と表にいたガーヴィンにアンリさん宛ての手紙を持たせてギルドに使いに走らせた!
小1時間でミルクやら、食材やらを運んで来たガーヴィン。
「お兄ちゃん、だ~れ?
なんてなまえ?」
「おう、お兄ちゃんは「タケル」って言うんだゼ!」
よく見ると何か薄汚れている服、不衛生だと病気になりかねない?
食事はちゃんと取れているのか?
幸い皆んな元気そうだけど、確か子供たちは六人と聞いていた。
赤ん坊が二人に幼児が三人、そして九つの子が一人と聞いていたのだが。
「ねぇねぇ、あのお姉ちゃんはなんておなまえ?」
「あのお姉ちゃんは「カンナ」だ、怒ると怖いから、良い子にしてろよ!」
「ぼく、いい子だよ!」
「わたしも~!」
「ハ~イ!」
途中からお使いから戻って来たガーヴィンも交えて、遊び倒した。
俺たちは追いかけっこをしたり、戻って来たガーヴィンに子供たちを乗せたり、子供たちが疲れてお昼寝するまで遊び倒した。
院の中を確認させてもらうと案の定、風呂が壊れていた。
(有るには、有ったんだな。)
「酷いモノね、この家あちこち痛みがひどくて、修繕が必要だと思うのだけど、領主サマがお金を出してくれないそうよ?」
世話係の世話を終えたカンナが、昼食が出来たと呼びに来たのだが、
「ココって「院」って感じじゃないだろ、詳しくは俺も知らないけど、コレはただの「家」だ、それもかなりオンボロのな。」
「世話係の人、マーヤさんって言うんだけど、ココの運営費が足りないって、増額をお願いしたら…。」
断られたか、信じられないな?
「あの領主の爺ちゃんがそんな事するとは思えないな?」
「そ、そうよね!あの領主のおじいちゃんがこんな可愛い子たちに酷い暮らしなんてさせないと思うの!」
この町も確か俺たちの村と同じ領主が治めている。
村の収穫祭にも農夫の格好をして参加してくれる優しい爺さんだ。
俺たちを孫の様に可愛いがってくれたあの人が、親のいない子供たちにこんな粗末な場所で生活させるモノなのか?
「コレはもしかしたら、アンリさんに乗せられたかもしれないな?」
「え、どう言うコト?」
「つまりは、このクエストはこの町に腰を据えて挑まないといけないってコトだよ。」
まず手始めに風呂を直す事にした。
今日は少し遅くなってしまった!
きっと皆んな待っている。
今日は親方が、売り物にならない「肉の切れ端」、向かいの商店の奥さんが「クズ野菜」をくれたので、コレで皆んなやマーヤおばさんに少しは美味しいモノを作ってあげられそうだ!
ギルドには魔獣の解体がくる。
肉屋のマンセ親方はギルドから依頼されて、魔獣の解体を引き受けている。
その際にそのまま魔獣の肉を引き取ったりする事もある。
魔獣はまだ無理だけど、野鼠や兎ぐらいなら、自分も解体出来る様になった。
マーヤおばさんが具合が悪いと誰かに聞いた親方たちが普段より多く売れ残りをくれた。
ボクは良い人の所で働けて良かった。
何と言っても、給金以外に食材が手に入るのは本当に助かるから。
他の子たちはどうなんだろう?
院のそばまで来るとなんだろう、良い匂いがする?
ん?
院の前に立派な馬がいる?
大きくて、全身黒くて、立て髪は火の様に真っ赤で、でも瞳はとても澄んでいて優しそう。
「ブルルル~。」
「やぁ、君は何処から来たの? もしかしてお客様の馬かな?」
誰か来ている?
まさか領主様⁈
すると勢いよく扉が開いて、
「おかえりなさい、アナタが「キャロ」ね?
私はカンナ、疲れたでしょ?
もうすぐお夕食が出来るから、先にお風呂に入ってね!」
ちがったみたいだけど?
「え、えっと、誰ですか?」
「あ、キャロ、おかえりなさ~い!」
「あのねあのね、カンナお姉ちゃんのゴハン、とっ~~~てもおいしいんだよ!」
「おふろ、なおったの、きもちよかったの!」
「え、え、皆んな、どうゆうコト?」
何が何だかわからないけど、優しいそうなお姉さんが皆んなに食事を作ってくれたのは何となく分かったけど?
「タケル、ちょっと皆んなをお願い!
キャロ、ちょっと血の匂いが残ってるから、やっぱり先にお風呂にしましょうか?」
一番年下のケンツを肩車しているお兄さんは誰⁈
「分かった、ごゆっくり。」
「え⁈ あ、あのボク困りマス!」
お姉さんが、グイグイとボクをお風呂場まで連れて行くと、有無を言わさず、ハダカにされてしまった!
「キャッ、見ないでください!」
「見ないと、ちゃんと洗えないでしょ?
ね! キャロルちゃん!」
「え?」
「もう何も心配しなくて大丈夫だからね!」
お姉さんにはバレていたんだ、ボクが本当は「女の子」だって事に…。
しばらくして、この辺りの領主である「オリオン子爵」の誕生日を祝う宴が王都の別宅で行われた。
甥であるアレク男爵の計らいらしい。
王都で公務が有る時に使っている別宅。
普段は王都に住んでいる同じく甥のハルク準男爵が管理しているのだけど、何やら急用が出来てしまい今は席を外していた。
別宅の庭園に立食形式で飲食を振る舞っているのは、当の子爵が堅苦しい席が嫌いだからと半ば無礼講な形にしている。
多くの家臣や使用人はもちろんの事、
取引のある商人や町の有力者、領地内の各村長らも招かれ、
祝いの宴は大いに賑わっている。
主賓の子爵も特別に誂えた男爵からの贈り物でもある椅子に身体を預けて、宴の様子を和かに眺めていた。
子爵の両の膝には孫だろうか、上等な仕立ての服を着た幼子が一人づつちょこんと座っており、その内男の子が子爵の白い顎ひげを面白そうに触りだした。
「ほっほっほ。爺の髭がそんなにお気に召したかな?」
そう言うと、その男の子の頭を愛おしく撫でていた。
その様子を見て、来賓たちは子爵が上機嫌だと思い、誕生日の祝いの言葉を次々に述べに行く。
子爵の側にはもう一人幼子と、もう少し歳上で身内の宴席に着るより、王宮の舞踏会で纏うドレスの様な装いの少女が恥ずかしそうに俯きながら控えていた。
こんな歳のお孫さんが子爵にいたとは聞いていない、親類縁者が子供好きの子爵の為に自らの子供でも側に行かせたか?
息子同然の男爵、準男爵もまだ結婚していないのでお二人の子供では無いと思うが?
噂では商人のフリをして、とある農村の収穫祭に訪れて村の子供たちの輪に入り、年甲斐もなく踊っていたなどと有りもしない噂を流された事もあった。
おそらくは子爵に取り潰された悪徳な元商人が流した噂だろうか、王都では禁止されている「奴隷商人」だと思うが?
当の本人があまり気にしていない、恥とも思っていないのだろう。
一人一人、準に祝いの言葉を述べに子爵の前に出てくる。
嬉しそうに聴いている子爵だが、側にいる少女の手を優しく繋いで、時折り話しかけていた。
「まぁ本当に仲がよろしくて、お孫さまなのかしら?」
「もしかして「養女」にされるとか?」
「男爵たちの若い婚約者候補かもな?」
何やら勝手な事を言い出す者もチラチラ出てきた?
そんな中、ある男が子爵に祝いの言葉を述べに前に現れた。
子爵の土地や建物の管理の一部を任されている「オールドック」と言う男だ。
親の代から仕えているので、男爵たちとも顔馴染みの男だ。
数年前から先代から「管理人」を受け継ぎ、他のも色々手広く商売をしている。
「子爵様、お誕生日おめでとうございます。
このオールドック、この日を迎えられる事、誠に嬉しく思います。」
大柄で特徴あるやや濁声の所為か、粗暴に思われがちで子供からは怖がられてしまう様だ?
子爵の隣りいた少女が身を固くして、椅子の後ろに隠れてしまった。
「ほっほっほ、オールドックよ、領地の管理、ご苦労であるな。
年寄りの道楽で、辺境の地に「大農場」を作るワシの夢を支えてくれているのは、お前達の様な忠義者のお陰だ。
わしは本当に果報者だのう。」
和かに話す老子爵。
「そう言って下さるだけで、このオールドック、喜びで身震いする想いです!」
すると子爵は膝の上の子達を下ろし、少女に何か話しかけた。
「子爵様のお孫さまですか?
誠に利発そうで可愛らしいお子達でございますな、お隣のお嬢様もいずれは社交界の華、いや宝石となるでしょう!」
ここぞとばかりに褒め称える、少しでも子爵の心象をよくして、もっと多くの物件や土地の管理を任せてほしい、そんな思惑だ。
「ほう、そう思うか、オールドックよ?」
「は、はい、もちろんでございます。」
子爵の声の様子が変わった事にオールドックはもちろん、他の者も気付いた。
「他のお子達も利発そうで愛らしく、流石は子爵さまのお孫様ですなぁ。」
とにかく子供を褒めておけば機嫌が良いだろうと、言葉を繋ぐオールドック。
「この子たちは儂の様な「耄碌爺い」なんぞの孫ではない、残念な事だがな。」
「あ、あのソレはどう言う…?」
「オールドック、お前の友人「ジョニック」なら若い冒険者見習いが成敗したぞ。」
その瞬間、オールドックは血の気が引く様に顔色が変わった。
「…この…人です。」
すると少女が小声で子爵に告げる、身を震わせ今にも消えそう声で。
しかし、子爵はソレを決して聞き逃さなかった。
「すまんのぅ、こんな惨い事を頼んで。
許しておくれ、キャロルや。」
子爵が男爵たちに何か目配せする。
「オールドック、ちょっと話しが有る。」
左からハルク準男爵が、
「既にお前の屋敷にもウチの私兵が踏み込んでいる頃さ。」
右からアレク男爵が取り押さえた。
「な、何をするのですか!私は何も知らない、やってませんよ!」
『その人がお父さんとお母さんを殺したんです!』
宴席は鎮まりかえる。
目にいっぱいの涙を溜めて、少女がオールドックを睨んでいる。
「な、なんだ、お前は⁈
し、知らん!知らんぞ、お前の事など!
子爵さま!信じて下さい!」
「黙らっしゃっい!
アレク、ハルク、さっさと連れて行きなさい!」
「アンリさ~ん、包み隠さず教えて下さ~い!」
「タケル君、先ずは馬から降りてくれるかしら?」
俺はガーヴィンに跨ったままで、冒険者ギルドの扉を蹴り開けて、アンリさんのいるカウンターに駆け寄った!
「まぁ、綺麗の瞳のお馬さんね、なんてお名前?」
とか言って、誤魔化されないゼ!
なのに、ガーヴィンの奴はアンリさんに褒められたのがわかったのか、彼女に首を垂れているし?
「アン姉さん、ごめんなさい! でも私もあの子たちをほって置けないの!」
カンナがキャロルから話しを聞いて、あの村で育ったオレたちは幾つかの矛盾に気がついた。
「何かしてくれるとは思ったけど、コレは予想外だわ。」
とにかく場所を変えて、本当の事情を説明するアンリさん。
「実のところ、管理人のオールドックには黒いウワサが有るの。
アナタたちなら、もしかして真相を突き止められるカモって思って孤児院のクエストを依頼したの。
きっとあの子たちの事、放って置けないかなって?」
「へっへへ、お察しの通り乗せられてヤルよ。」
「キャロルちゃんにあんな辛い思い、続けさせないから!」
「えっ?キャロルちゃん?」
「なんだ、アンリさんなら気付いていると思っていたのに?
キャロは男の子の振りをしていた女の子だからな!」
「えっ?どういうこと?」
「ソレを話すには、ハルク兄さんを呼ばないといけないかも?
アンリさん、大至急王都のお偉いさんに連絡してもらえますか?
王都在住のAランク冒険者、「二枚目のハルク」って人に!
多分、貴族だから?」
キョトンとしているアンリさん、タケル君なら直接管理人に抗議するかと思えば?
ソレにハルクさんって誰?
頭の中のオッさんが、
「ああ、あの「スケさん」か⁈」
って一人納得している?
誰だよ、スケさんって?
「よし、何とか逃げられたぞ!」
別室に閉じ込められた際に、諦めて絶望している振りをして、見張りが油断した隙を見て逃げ出した。
裏口の側に止まっていた荷馬車に隠れて、上手い事町の外まで出る事が出来た。
自分も馬鹿では無い!
こんなヤバい事、いつまでも王都で続けてはいられない、今日の席で管理物件を増やしてもらえない様ならそろそろ見切りをつけて帝都に高跳びするつもりでいた!
既に残して置いてはマズいものは処分してある。
金目のモノも町の外にある、ジョニックすら知らない隠れ家に移してある。
屋敷に居るのは、なにも知らない使用人だけ。
明日は彼等が待っていた給金の支払い日だったか、まぁ諦めてくれ。
親から引き継いだ屋敷も既に売買契約が終了して来週明け渡し、金も既に受け取っている。
帝都には色々とコネを作ったおいたので、また奴隷商人でも始めるか?
その為に見栄えの良い子供をアチラの貴族に都合したのだ!
更に税として納められた特産品を誤魔化して帝都の貴族に流していたのだ!
ミスリルの様に優れた刀剣や絹より美しい織り物など。
しかも帝都のある権力者に賄賂として送っていたので、何とか帝都に着きさえすればどうとでもなる!
荷馬車が上手い事、町から出て何処かの村に戻って行く様だ、充分町から離れたら、この馬車を奪って隠れ家の有る森まで行こう!
そもそも、親父が悪いのだ!
こんなに早く死んじまって!
オレは帝都でそれなりに上手くのし上がっていたのに!
わずかばかりの遺産についつい欲を出したのが間違いだった、いつの間か俺が死んだ親父の後を継ぐ事になっていたのだ。
こうなったらら出来るだけ美味い汁を吸ってから、帝都に舞い戻るつもりで荒稼ぎしたのだが、潮時だったのだろう?
しかし、あの小娘は誰だ?
女のガキは高く売れるから、初めのウチに売り払ったハズだが?
オレがあのガキの親を殺した?
そんなの有るとすればあの一度だけだ。
ジョニックに誘われて、あの村に向かう移民共の場車を襲った時に!
最近、「収穫祭」が話題になり景気が良くなって人手が足らず、移住者を募っていたあの村だ。
いや、収穫祭を始める様になる前にも町に買い出しに行った帰りの荷馬車を襲った事も有ったな?
あれは俺が親父に勘当されて、町を出る事になった腹いせで、ジョニックに誘われて盗賊の真似をした時か?
アレがキッカケで収穫祭を始める事になったとか聞いた様な?
なら、俺に、感謝しろ!
オールドックは知らない、今の自分と同じ様に荷馬車の荷物に紛れ、木箱の底に息を殺して隠れていた少女が自分の悪業を隙間から見ていた事を、
そして、少女を木箱の底に隠し、見つかっても男の子の振りを続ける様に言い残した両親の事。
どちらも子の事を思い、残したモノなのに?
そんな事を考えていると、いつの間か、馬車が止まっていたことに驚く⁈
「ココは何処だ!」
隠れ家のある森の様にも見えるが、馬車には手綱を持つ人も馬さえもいない⁈
何が起こっているのか、わからない?
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そこには月明かりに照らされ、愛刀を握る若い冒険者がいた。
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