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まるっと参上、グシャって解決?

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 「いらっしゃ~い、美味しい「ニクマン」だよー!」

 「安くてもよく効くポーションも有りますよー!」


 今日も同じ場所で屋台を出してるカンナとメイメイと子供達。


 しかもそこに新たな売り子がいた。


 「お姉ちゃん、ニクマン揚がったよ!」

 「ハイ、わかりましたわ、エイジ君。

 ハイ、揚げニクマンお待ちのお客さま、お待たせしましたの!」


 昨晩、のタイミングをカンナから叩き込まれたエイジがタケルに代わって「揚げ饅頭」の調理を担当し、「蒸し饅頭」も他の子たちが調理と袋入れを担当していた。

 生まれてこの方、料理をした事の無いアズは他の幼い子たちと呼び込みをしていた。


 父親の傷が癒えた事で心配事が減り、子供たちと楽しく屋台のをしている?


 既に大勢のお客が列を成して、自分の番を待っているのだ。
 
 

 「なんでい、今日は又綺麗なお姉ちゃんがいるじゃないか?」

 「あれ、どっかで見た事ある様な、誰だっけ?」


 ちなみに子供達、とくに女の子には可愛らしいエプロンを着用してもらい、お嬢様にも普段カンナが使っているエプロンを貸してあげた。


 タケルは屋台にはいなかった。




 屋台は一応、メイメイとカンナが側にいてしていた。

 あくまで念の為ね?
 

 今日も早くから並んで待っているお客さんたち。

 何気に面白い現象が起きていた。

 「お嬢ちゃん、オレは蒸しマンを8個だ!」

 「かしこまりました、揚げ肉饅頭も宜しかったら?」

 「いや、オレは蒸しマン派だから!」

 「私には揚げマンを五個くださいな。」

 「お嬢ちゃん、俺も揚げマン推しな!十個くれ!」



 そう、どうやら「揚げ饅頭派」と「蒸し饅頭派」って具合で、見事に別れた様だ。
 一応両方買ってくれる人もいるが、どうやら家族の分などらしく、どちらかが多い買い方をするお客さんがほとんどみたい。
 

 何かムーブメントを作ったかも?



 「アズ姉~、揚げマン十個、揚がったよー!」

 揚げ物担当の男の子が呼びかけて来た。
 
 「ハ、ハイ!
 では次にお待ちのお客さま、お待たせしました!」


 アズ姉…デスって、うふふ。

 何かしら、この屋台のお手伝いがとっても楽しいですわ!

 しかも、一度に小さな弟と妹が出来た様で、胸の奥が何やらムズムズくすぐったいですの!


 特別躾に厳しい家庭ではないけど、兄弟や姉妹がいない自分にはすべて初めての体験だ!


 「お姉ちゃん、つかれた?かわる?」

 子供たちの中で一番幼い女の子「マーヤちゃん」が私の事を心配してくれて、天使の様な愛らしさで駆け寄ってくれた。

 「ありがとうございます、私は大丈夫ですわ。」

 こんなに良い子が父母と引き離され、同じ境遇の子たちと身を寄せ合って暮らしていたなんて!


 「こんなの間違ってますわ。」

 「お姉ちゃん、ご注文間違えちゃったら、お客さんにごめんなさいしないとダメよ!」

 「そうですわね。お教えくださってありがとうございますの。」


 先程、カンナさんが他のお子さんをこうしていましたわね?


 「教えて頂きありがとうの「ギュ~ッ」デスわ!」

 余りの愛おしさに「マーヤちゃん」を抱き締めてしまいましたの!

 「キャッ!お姉ちゃん、くすぐったいよー?」

 


 お父様が探していたのは、この子たちの親御さん、おそらくは奴隷として労働させられてるハズ、

 ただし、日の当たる様な場所では無いだろう。

 危険な鉱山での労働ならまだマシ、違法な魔法研究の実験台など
まだでは行なっているらしい。

 そんな所に落とされる前に助けないと!

 ジャンパニーの隠し倉庫なるモノを探していたのだが?


 町の表通りにある大きな商店では無く、表に出せないの商売の為の場所を。



 タケル殿が言うには、又ジャンパニーの手下が屋台に因縁を付けにくるだろうと?


 その時がチャンスとおっしゃってましたが、何をするつもりなのかしら?


 「オゥオゥ! また性懲りも無く、で商売しやがって!」


 先日、タケル殿に軽く飛ばされた男達が更に仲間を連れて来た。

 今回は剛腕な男たちが数人いる、女子供相手に随分と用意周到だな?

 「何ですか、アナタたちは!」

 「あん?

 なんだ~、お前は?」

 「カンナさんたちがココにお店を開くのは、町長であるワタクシの父が認めているのです!

 ソレにこれだけの町の皆さんが楽しみしているのですよ!

 無法で理不尽な事はおやめなさい!」

 「はぁ、何言ってんだ?

 今日は昨日みたいにいかないぜ!

 兄貴、頼みますよ!」


 タケル殿がいない時、この場はワタクシが守らなくては!

 先程まで明るく笑っていた子供たちが怯えている!

 町の人も何か様子が変だ!


 この人達が町を怯えさせている原因なのか?


 許せない!

 ココはワタクシが…って、アララ?


 「か、帰れ!
 このクズヤロー!」

 「ガキやお姉ちゃん達を怖がらせてんじゃねーよ!」

 肉饅頭を購入する為に並んで待っていた冒険者らしき男性達がその辺の石やゴミ等を、一味に投げつけた。


 「そうだ、そうだ!ヤクザモノはココから出ていけー!」

 他の町の人も賛同して、次々と小石を拾って一味に投げつけた!

 「うわ!何だ、テメーら!」

 「今まで、見て見ぬ振りしてやがってクセに!」


 町の皆さんが立ち上がってくれた!

 正義はワタクシたちに有ります!


 「うむ、少し痛い目を見せてやるか!」

 屈強そうな用心棒の一人が、大剣を抜いて構えた!


 「来なさい!」

 ワタクシの剣とがどこまで通用するか分かりませんが、タケル殿が不在の今、ワタクシがっ!


 「いや、無理だよ。には。」

 
 「えっ?」


 側でカンナさんの声が聞こえたかと思うと、
 次にワタクシの目に映ったのは、
 軽々とワタクシの頭上を飛び越えて、
 両の腕に握る白銀の双剣はまるで翼の如く、

 正に上空から獲物を襲う孤高のグリフィンの様に、

 舞い降りるカンナさんの剣が、その男のを最も容易く細切れにした⁈


 「な、なーに~⁇」

 慌てる用心棒やジャンパニーの手下たち!


 「一応、私もラグル師匠に剣の手解きはされているのよ、

 こんな女子供にで手を出そうとしている奴らなんてに成らないわ。」

 す、素敵デス!

 カンナさんお強いのですね!


 「や、やるじゃねぇか?

 でも、この人数を一度に相手出来るのかよ、姉ちゃんよ?」


 「この人数って、立っているの、あとアンタたちしかいないわよ?」


 「え、えエェー⁇」

 「他の方々はメイメイの痺れ薬で既に昇天してます。」


 確かに?

 残りの男たちがピクピクっとケイレンして、路上にひっくり返っていた?

 「な、なーに~⁈
 いつの間にそんなコトに!」

 「アナタ方が、天高く舞い上がるカンナさんを見上げた瞬間にこので仕留めました!」

 なんでもタケル殿がメイメイさん用に作った至近距離用の武器だそうだ!

 「な、なんて汚い真似しやがるんだ!このインチキ屋台が!

 し、痺れ薬とか普通使わないぞ!」


 「アナタ方の様な非道な行いをする人と善悪の論議をするつもりは有りません。

 卑怯と言えばアナタ方こそ、借用書を偽造して、利息を多く書き換えたりしているらしいではないですか?」


 「な、知らねーぞ!

 そんなコトする訳ないだろ?」


 「議論する気は有りませんと言いましたよ、あとはカンナさん、お願いします。」


 「よーし、わかったよ!

 この人たち、ギッタギタのグッチャグチャのメッタメタにして下げる!」

 「…揚げないのですね?」


 「ナニ訳わかんねー事言ってんだよ!」

 そう言うと、それまで握っていた破壊された大剣の残り部分を、カンナに向かって投げつけた!

 カンナにして見れば、簡単に避けられるのだが、後ろには子供たちや肉饅頭を買いに来てくれた町の人たちがいる。

 ドヤ顔の男に、

 「別に問題無いけど。」

 と、言い捨てると、飛んで来た物体をハエでも追い払う様に落とし、その瞬間にはもうその場に居なかった。

 「また、上だなッ⁈」


 「あ、兄貴!下だっ!」
 
 「ナニっ⁈」


 その声に反応し、下を見ると同時に拳を突き下ろす!

 確かに居た様だが、

 「コッチよ!」

 後ろから声がした時には、後頭部を蹴り飛ばされていた。



 すべては本当に一瞬で終わった、もうレベルが違う。

 「弱過ぎよ!」


 もう1人の男は町の人に囲まれて、怯えて腰を抜かしていた。



 実はカンナも、タケル程ではないが、かなり強い!

 タケルと一緒にいる為にラグル師匠に稽古をつけてもらっていたから。


 町の人にも手伝ってもらい、倒れている男たちを縛り上げておく。


 「ち、チクショー!はなせ!

 こんな事してタダじゃ済まないぞ!」

 「後で後悔さしても遅いからな!」

 「済まないのも、遅いのも、アンタ達だと思うよ?」

 カンナは縛られて、地べたに転がされていても悪態をつく男の一人に剣を向けた。


 「へ、へへ、お、脅しても無駄だぞ!」


 「その、綺麗ね?
 のじゃ無いでしょ?」


 「持ち主に返しなさい、そうしたら許してあげるわ。」

 おや、首飾り、何処かで…


 そう、モノをマーヤちゃんがしてますわ⁈


 するとあの首飾りの本来の持ち主は⁈


 いま、怖くてワタクシにギュッとしがみついているマーヤちゃんはその事に気づいていない様?


 「し、知らねーよ!どっかで野垂れしてんだろうよ!」


 ⁈


 「そう、ならあの世で詫びて来なさい…

 もっとも、天国に行った人にこれから地獄に行くが会えるとも思えないけど?」



  そう言いながら、カンナさんは剣先をと男の首筋に突き当てた。


 「わー⁈わ、分かった!

 やめろ!やめてくれ!

 いや、やめてくださーいっ!」


 「うっさいわね、何にもわかんないわよ?

 いいから、とっとと死になさい。」


 「教える!居場所を教える!」


 「もうタケルが突き止めたから、言わなくていいから…」



 「か、カンナさん!

 殺してはダメです!

 この人たちは自警団に突き出しますから!」


 正直、その自警団にも内通者がいるかも知れないけど…

 「分かったわ、がそう言うなら。

 ソレにそろそろが届いている頃だし。」



 

 町から少し離れた森の中に、その昔使っていたらしいの跡地が有った。


 かなり昔、伝染病患者を隔離する為に使われたとかで、当時は満足な治療が出来ず、ポーションも効かない為、死者共々感染者を閉じ込めて焼き殺したと言われている、現在はもう残骸を残して朽ち果ててはいるが、実は地下に異教徒をさせる為の地下牢やが有るのだか、


 なんと奴隷として売りに出す人達はココに閉じ込められていたのだ!

 不吉な歴史と病で亡くなった人や閉じ込められて焼き殺された人の幽霊が出るなどの噂から町の人は誰一人としてここには近づかない。

 ソレを利用したのだ。


 ソレを知らず、近くを立ち寄った旅人や行く場所の無い浮浪者などがココに近づけは、幽霊の仕業にして、近くの湖に投げ込んで殺している。


 ジャンパニーとは相当、残忍な性格らしい?


 昨晩襲撃に来た一人が、ココに逃げ込んだのは追跡していたので間違いない。


 さて、何処から潜入するか?

 教会跡の下から、微かだが人の気配は感知出来る。

 生かさず殺さずっと言うことなのか?


 救出は急いだ方がよさそうだな。



 「プルルーン!」

 どうやらガーヴィンが秘密の入り口を見つけてくれた様だ。


 朽ち果てかけた墓石…の様に見せかけているが、ここだけ周りの石と違って、苔が生えていない。

 「当たりだな!」

 墓石をずらすと、把手が隠してあり、ソレを掴んで持ち上げると下に続く階段が有った!

 ガーヴィンは入れないし、オレ一人では不測の事態に対応出来ないかも?

 「ガーヴィン、誰か呼んで来てくれるか?」

 俺まで離れて、その隙に逃げられても困るしな。

 「ブフッ!」

 そう言うと、ハヤテの如く走っていった!

 一応、簡単に事情を記した手紙も持たせた。

 コレで良い。

 後は親玉がいるのかわかれば、ココに居てくれれば何だけど?





 「実は、ならず者を雇っているジャンパニーなのですが、どうやら何処かに身を隠している様でして…」

 昨晩、襲撃者たちを蹴散らした後で町長が話してくれた。

 町長が信頼している人物が、ヤツの屋敷や、経営している酒場や娼館を探ってくれたのだが、ジャンパニー本人の姿が見つからないそうだ。

 の予想通りなら、そう遠くには行けないハズだそうだか?

 もしかするとあの夜襲は、町長さんのの効果が消えた事に気づいて、息の根を止める為に向けられたモノだと思う。


 「先ずは囚われている人達を助けるか。」

 もしかしたら、あの子たちのパパやママがいるかもしれない。

 ひとまずはダミーの墓石を元に戻して、隠れてしばらく様子を見るごとにした。

 「それにしても、本当淋しい所だな?」

 「そうかな、お前に見えて無いだけで居て賑やかだぞ、幽霊の人とか?」

 「そうなのか……って、じゃないか!

 何でいるかな⁈」


 だ、誰?

 「ココからガーヴィンが飛び出して行ったから、様子を見に来たんだ。

 タケル、久しぶりだね!」
 

 突然、タケルの背後に現れたのは、カンナ同様の青年エメルド?

 「…、頼んだジャン⁈

 何でにいる?

 あと、その姿は?」


 艶やかで、少し毛先にが有るけど、風になびくサラサラな髪はその瞳と同じ色で、よくわからないが町中を歩くだけで、若い女が目を奪われるくらいの美男子だ。

 服装も冒険者風だけどかなりだ?

 ソレが何故いきなり…

 もしかしたらとはか心配した事は有るけど?

 「何だ、から見てたのか?

 町から来た訳では無いんだな。」


 「うん、ココに着いたんだ、からね!

 ソレはそうとタケル、地下牢にられている、早く助けた方がいい。

 何人か、生命が危険な状態だよ?」


 「ソレ、早く言ってくれ!」

 ガーヴィンが応援を連れてくるのを待っていたが、ソレどころでは無い様だ。

 ジャンパニーを逃がす事になるかもだが、人命優先だ!

 「仕方ないか!
 突入だっ!
 手伝ってくれ!」

 「もちろん、僕はその為に来たんだからね!」

 

 そんな事が昨晩有って、タケルはまだの徹夜の救出活動が相当堪えたらしく、明け方過ぎに戻ってきた直後に爆睡している。


 そんなタケルを町長宅まで連れ帰って来てくれたのは、幼馴染のドラゴン竜族、何故か人間の姿をしているエメルドだった。


 救出した人たちはかなり衰弱しており、本当に奴隷商品として売るつもりだったのかも怪しい状況で、身元を確認出来る所まではまだ進んでいないらしい。

 なので、この事はまだには未だ伝えていなかった。


 ただ、偽造する前の借金の証文が発見され、これでジャンパニーが不法に金を取り立てていた事が証明できそうだ。



 「しかも、ココに書かれているが本当なら大変な事です!」
 

 タケルたちが持ち帰った借用書を見て、町長さんが驚いている⁈


 「この事を様にお知らせしないと!」


 「じゃあ、ボクが伝えて来るよ!」


 そう言うと、はドラゴンの姿に戻り、町長さんからの手紙も預かって、に飛んで行った!

 あとはどうなるかはわからないけど、もしかしたらあの子達の親御さんは助けてもらえるかもしれない!

 ガーヴィンが向かった先はこの町の冒険者ギルド、割と遅い時間ではあったけど、私たちの事が話題になっていて、その私たちにしている雄々しき駿馬が蹄で扉を蹴り開けたのだ!

 ガーヴィンの事を覚えていたが直ぐに駆け寄り、咥えていたタケルからの手紙を見て、教会跡地まで応援をよこしてくれたのだ。


 事情を聞いて駆け付けてくれた漢たちや女性冒険者が跡地にテントで急場の救護所を作り、囚われていた人達を次々運び出して行った。

 運び出された人からや回復魔法が使える者が治療を試みる。


 宛ら、野戦病院だ!


 この事はギルド長を通して、領主に直ぐ様報告しなければ!


 町外れとは言え、ここまで大騒ぎなら、さすがにジャンパニーの一味も嫌がらせには来ないだろうと予想していたのに?

 お間抜けにも程があるぞ?

 どうやら「ホウ報告レン連絡ソウ相談」が出来て無いようだね。


 ソレとも、コレは囮か?


 このドサクサに当人は既に逃げているとか?



 「…まっ、いっか。

 私じゃ、いくら考えてわかんないから、  ねっ!」


「ぐはぁっ!」


 男のおケツを蹴り飛ばすと、町の自警団に引き渡した。


 「さあ、肉饅頭の販売を再開しましょう!


 ワァーっと歓声が聞こえる!

 ソレは悪党を退治した事にか、美味いモンが食べられる事での歓声なのか…



 まぁ、どちらでも良いけどね?
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