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龍族の聖人エメ、現る?

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 「こんな状態になるまで、働かされていたのか⁈」


 「だって、アイツらが!

 …だから昨日、客の一人が食べると元気に成るって、あの食べ物ニクマンを見るにみかねて、差し入れでくれたんだよ。

 確かに疲れが吹っ飛んだし、同じ屋台で安いけどポーションに効き目が有るを売ってるって聞いて…

 だから、見張りがいなくなったから…だから!」

 途中、泣きながら話す娘の肩に手を置き、

 「君を責めてるのでは無いから、泣かないでくれ。

 その様子では、他にも居るのだろう?

 無理に働かされたり、ほったらかしにサれてる病人が?」

 「う、うん、稼ぎが悪いって、しばらくメシを抜かれて…助けられる?」


 「もちろんだ!」

 娼館の地下室には、もう客を取らせるには向かない程、酷い病人が数人放置、いやされていた。



 「な、何だ、お前は?」

 「うるさい、邪魔だ。

 退け、そこで寝てろ!」


 に見張りをやっていた男を物理的に沈黙させて、次々と病気の娼婦たちの治療を始めるエメ。

 エメが手をかざすだけで、壊死しかかっていた様な青白い肌に、赤みが刺してくる。

 「コレでよし、次は隣りか?」

 「え、わかるの?」

 「ああ、病魔の気配ならばな。」


 この人は神さまのお使いかも知れない?

 彼女、「ビアンカ」はそう思った。

 既に妹分の娘たち二人も助けてもらっている。

 ソレどころか、自分も諦めていた者たちまで、不思議なチカラで救ってくれている。


 遂には、別の娼館の病人や人まで治療を始めると言い出した⁈


 


 「…で、今日はその時に知り合った女の子と別の場所娼館に治療に行ったよ。

 でね、今エメってば、町の皆んなから「聖人さま」って呼ばれてるんだよ!」

 「…セイジンサマ?」

 「そ、すごいでしょ!」

 何故かドヤ顔のカンナ?

 エメの奴、ソレで良いのか?

 知らないぞ?




 
 「ビアンカ、次の場所に行く前に食事にしないかい?
 キミ疲れただろう?」

 「は、ハイ!

 あっ、い、いいえ!

 まだまだ平気です、エメ様!」

 ぐぅ~~…
 
「ち、違うんです、こ、コレは…その…は、恥ずかしい…。」

「ハハハ、無理は良くない、市でニクマンでも食べよう。

 ん、別の食べ物でも構わないか?」

 「い、いいえ、ニクマン最高デス!

 ニクマン以外無いデス!」



 あの日から、この人エメ様の側にいて、色々手伝わさせてもらっている。

 
 同じ娼館の子を助けてくれたにこの身体を差し出すだった…

 のに⁈

 「…うむ、「お礼はワタシ」とは、どういう言葉だ?
 我はまだ子供だから、よくわからないのだ。」   


 …子供って、歳でも無いのにが娼婦で有る事を気が付かないをしてくれてる違いない。

 なので、こうして助手として尽くしているのだけど、


 「ソレにしても、ジャンパニーというモノは相当なだな、病人や怪我人を働かさても理は少ないというのに。」


 時々、よくわからない事を言うのも、きっとその事を誤魔化してくれているのだろう。


 「…手を出してくれても、かまわないのに…?」


 「ん、ナニを出すって?

 あぁ、お金なら我が出すから、安心して食べていいぞ。

 町長からの代金、カンナからをもらったんだ。」


 「ち、違ぅってば!」

 つい、素にもどってしまうビアンカ。

 まるで、何も知らないウブだったあの頃の様に…



 「…って、こんな感じみたいだよ?」

 「うーむ、エメの奴はまだドラゴンの尺度で言うと子供らしいからな?

 見かけはオレと同じ歳くらいの人間の男に見える様に化けてるだけだからな。

 …でも、絶対分かってるぞ、お礼の意味?」

 「だよね、でもソコがエメらしいじゃない?

 なんかホッとするわ。」





 なんかのんびりとした感じだけど、肝心な事はまだ解決していないのだ。

 「おお、タケルさん、目が覚めたのですね!」


 町長さんが嬉しそうに部屋に入ってきた。

 「すいません、どうやら大変な寝坊をしていた様で?」


 俺は町長さんと今回の事やから聞いた事など、情報の擦り合わせをした。

 俺が寝ている間に町長さんやエメが行っていた事を確認したかったから。


 「何ですって!

 あの教会の悲劇にそんなが!」

 「ハイ、エメの奴聖人さまから聞いたので、間違いないかと。」

 「そうですか、聖人サマはの声をお聞きになれるのですね?

 そのお陰で、捕まっていた人が見つけられたと。」

 言うまでも無く、地下から救出した人たちも、エメの力で命を取り留めて回復に向かってる。

 ただ、まだ詳しい話しを聞ける状態ではないので、実際にジャンパニーの居所などの情報は聞けていない、またこの人たちの中にはマーヤちゃんのご両親はいなかった様だ。

 最悪もしかすると、すでにされているか、されているかも?

 必要なモノを手に入れたら、サッサと出発する予定が、随分長い滞在になりそうだ?

 さて、問題はココの領主様に事の次第が伝わっているかだ?


 万が一を考えて、エメに子爵のジィちゃんとその縁繋がりの公爵様に手紙を届けてもらった。


 ココに来る前に立ち寄った町までは、オリオン子爵領だったので多少強引な手も打てた。

 だけど、この町は「ドリンガー領」なんだそうで、けっこう面倒な事になり…


 アレ、町長さん、たしかサマって言ってたような?
 


 まっ、いっか?

 俺の勘違いだ、きっと。





 それから数日は平和な日が続いていたんだけど、突然にこの町の領主、ドリンガー伯爵が私兵団二十人程引き連れてやって来たのだ!

 ジャンパニーと一緒に。





 「いらっしゃいませー、美味しいニクマンだよー!」

 今日も子供たちが、ニクマンの屋台で元気に明るく商売をしている。

 「よく効くポーションいらんかねー!」

 調理は子供たちがすっかり覚えたので、タケルはメイメイが作ったポーションを売っていた。

 町長さんに町に滞在して欲しいと頼まれた。

 そろそろが来る頃だからと?


 返事かぁ、

 おじいちゃん子爵サマに出した手紙お願いは、キャロルちゃん同様に後見人になって欲しい子供たちがいる事、チカラになって欲しいと書いた。

 事情を知れば必ずチカラになってくれる!

 おじいちゃんならエメとも顔見知りだし、たしかとも仲良しだって聞いてる。

 町長さんの立場も考えて、上手くやってくれると信じているけど?

 ココの領主サマってどんな人?




 「おおーい、大変だぁー!

 領主サマがを引き連れて攻めてきたぞー⁈」

 随分と大袈裟に騒いでいるなぁ、本当なの?



 
 
 それから小一時間、領主ドリンガー伯爵は私兵の騎馬隊を従えて、この町の中央区、市が開かれている場所に近い大広場に陣取っていた。

 町をぐるりと守る防壁の門番も、領主のお貴族サマには逆らえず、門を開けて、一団を入れてしまったのだ。



 馬上から一人の私兵が何やら書状を読み上げる。

 「只今この時より、この町の町長はコレまでのにより、商人ジャンパニーとし、前町長は負傷した事により、町長の業務を続ける事、困難で有ると考慮し、その任を解き心静かに療養を進める事成り!

 これは領主ドリンガー伯爵サマの御達しである!」


 はぁ~ん?


 何言ってんだ?

 


 
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