上 下
33 / 58

〇〇は何処に消えたのか? バターは有ったけどね?

しおりを挟む
 そもそも、何で職人がいないのさ?

 鍛治職人、木工職人、パン職人にハガキ職人⁈

 「実のトコロ、この町はのお陰で様々な品物が町に持ち込まれます。
 ですから普段気が付かないだけで、直ぐに大事には成らないのです。

 ですがその反面、今回の様な急に何か有ると、深刻な品不足に落ち入りやすいのデスよ。

 地産地消の考え方が必要なんです。」

 屋台の後片付けをしながら、自分の考えを話すメイメイと、

 「ポーションの材料が有っても、作成するが無い、若しくは正しい手順を知らないから失敗ばかり…ってコトか?」

 オマケでもらったナイフや金物を馬車に仕舞う俺と、

 「ソレとメイメイ姐サンのを名乗るのと、どう関係してるんだ?」

 俺がくれてやった剣を嬉しそうにベタベタ触っているエイジ、さすがに鞘から抜かないのは周りにマーヤたちがいるからだろぅ?

 「アンリ姐さん、この事知ってて、このクエストたんじゃないのか?

 兄貴もそう思うだろ?」


 う~ん、かもしれない?
 不成者をぶん殴ってる方が気が楽だぜ。

 「ねぇねぇ、このまんまるやき、なにが入ってるの?」

 「チーズだよ、あっちの屋台で売ってたから入れてみたの。ちなみに鉄板には植物油じゃなくてバターを使ってみたの。」

 「まわりがサクってして、まんなかがトロってして、おいしーの!」

 カンナママとマーヤのほのぼのトーク、癒されるるぅ~!

 「フフフ、おそらくですが、こんな歪な状況を永く領主サマが放置されてるとは思えません、職人の方々が居なくなられたのは、ここ最近か数年の事だと思いますよ。」

 まぁ普通はそうだろうな、な考えを言ってくれるのアズ姐さん、二人の様子を見て癒されてます。

 アズ姐さんの言う通りだとすると俺たちは余計なコトはしない方が良さそうだ?

 なら、


 「ルーの為にメイメイが穀潰しエルフを教育するしか無いな?」

 その辺が妥当かな?

 「…教育?  私がですか?

 何のデス?」


 「世の中の厳しさとか…

 いや、正しいポーションの作り方とか?」


 「私、弟子は取らない主義なんですが、仕方ないですね?」

 俺が言わずとも、メイメイはそのつもりだった様。






 「アナタ、いい加減にしなさい!

 アナタが作ったポーションなんて、上手くいった「最初の一本」だけですよね‼︎」


 「そんな事ない!

 今では3本に1本は成功してるわ!」

 「アレが成功?

 使ってみないと、失敗か成功かが、わからないモノなんて心配で使えないわ!」

 
 「ソレでも、無いよりマシでしょ!」


 「メイクゥン…

 アナタ、私が死にそうな時に自分が作ったポーションを安心して使える?」

 「あ、当たり前でしょ、馬鹿にしないでよ!」


 「…一刻も早く対処しなければいけない場面で、ポーションを飲まされて、
 ハズレだと分かって次のポーションをって、再度準備している間に手遅れに成るのよ。

 そんなポーション、誰が必要とするの!

 誰が命賭けのクエストに持っていくのよ?


 そんな事もわからない様なら、錬金術師の真似事なんてもうやめなさい!

 ソレともに、死人が出ないとわからないの⁈」


 
 ……えっと、ルーテシアさんちでは、姉妹ケンカの真っ最中です、表まで聞こえますよ?

 
 「どうする、メイメイ?

 俺、兄妹ケンカとかした事ないから、こんな時どうしたらいいか分からん?」

 「私もデス、兄二人は優しいのでイジメられた事も無いですし、ケンカなんて想像も出来ません。」

 うん、メイメイ可愛いからイジメないよ、ソコはお兄ちゃん達と同じ意見だ。

 俺もお兄ちゃんだし?


 「ウチは妹がまだ小さいからな、ケンカ出来そうな前に旅に出たからな。

 俺らも、いつかあんな激しい兄妹ケンカをする日が来るのかな?」

 「どうでしょう?

 …入りましょう、段々聴いてて辛くなりますから!」

 

 皆んなで相談した結果、今回ののメイメイと、用心棒役の俺が、先ず先にルーテシアさん宅に様子を見に行く事になりまして、予想はしていたけどケンカ中でした。


 ふぅ、仕方ない、行くか?

 コンコン!

 「おーい、たのもー!」

 「お、お邪魔します!」


 「は、タケルさん、ソレにメイメイさんも!」


 「きっちりケジメ取りに来たぞ~!」


 うん、俺の方が悪者みたいだ。


 「ルーテシアさん、メイクゥンさん、少しお話しをしませんか?

 このままですと、私はメイクゥンさんを訴える事に成るかもですから。」



 ルーさんは俺たちを別室の応接室に招き入れ、茶菓子を出してくれた。

 俺たち四人、卓を囲んで話し合う事になるのだか、

 「訴えるって、何の事よ⁈」


 早速メイクゥンが逆切れし、喚き散らし、メイメイに噛みつき出した。

 予想通り過ぎて、泣けてくるゼ?


 「…お前サンが「月下のハクメイの孫」だと効果が不安定なポーションを売っていた事だよ、

 何だ、他にもまだ何かあるのか?」

 俺がを込めて彼女を睨み付けると、どうにか黙ってくれた?


 「タケルさん、「威圧」のスキル有ったんですね、加減してあげてください、メイクゥンさんだけでなく、ルーテシアさんもを起こしそうデスよ?」


 「アレ、そんなに?」

 でも、ソレなら?

 「私は、よくおじいちゃんが側で「威圧」スキルを乱用してましたから、自然と耐性が付きましたので。」

 さいですか。



 
 とにかく一度落ち着いて話し合う事になった俺たち、自称錬金術師のエルフだけが不満そうだ?

 コイツ、まだ分かってないな?



 「ひとまず、おじいちゃん月下のハクメイの孫を偽った事は置いておきます。

 メイクゥンさん、アナタはどの様にしてを学んだのですか?」

 「はっ、ヤクガク?

 なにソレ、意味わかんないわ?」

 「オイオイ、薬の知識も無くて、よくポーションなんて作れるな?

 (アレか、買ってきた家電製品を説明書読まずに使って、調子が悪くなるまで説明書見ない、悪い意味で家電慣れした消費者みたいな?

 ソレで壊して、理不尽なクレームつけてくるんだよ!)」

 「ソレは私、だからよ。」

 なんでコイツ、ココでそんなに強気なんだよ⁈

 説明にすらなってないぞ?

 「すいません、妹は全てを学んだんです。

 昔、母がに落ちぶれた錬金術師から預かった書物をに読んで覚えたんです。」


 「やはり、そうでしたか。

 王都の魔法学園や誰かに付いて学んだ訳ではないのですね?」


 「な、何よ!

 ソレがいけないって言うの!」


 「ハイ、いけない事です。」

 「なっ⁈」

 「「」と言う言葉が有ります、私はこの言葉を師匠に教わりました。」


 「ムチノチ…って、何言ってるの?」


 「自分がどれだけ世の中を知らないのかを自覚する事です。

 様々な学問や各国の歴史、美味しい料理の作り方等、ソレら色々な事を自ら知ろうとする意欲とも言えますね?

 まぁそんな感じのコトだと、師匠はおっしゃってました、

 そして、こうもおっしゃってました、

 「知らない事は恥では無い、学べば良いのだから。
 しかし、いつまでも学ばす知らない事を知っている様に振る舞う姿が恥ずべき行為た。」

 そうおっしゃってました。」
 
 「何の事か、わかんないわ!」


 「メイクゥンさん、正しい調合方法で作られていないモノは、時として大変危険なモノになります。
 例えば、生命を奪ってしまう結果に成るのです。」


 「そ、そんなコト有る訳ないでしょ!

 私のポーションが毒だと言うの⁈」

 「ポーションの材料となる薬草の中には、ソレ単体で吸引すると心臓の動きをにする「ニートロ草」と言う薬草が有ります。

 もし、心臓の弱い方が使用しまうと、どう成ると思いますか?」

 「えっ?

 元気になるんじゃないの?

 心臓が弱いんだから、活発に動けるように成るんだから?」

 妹の言葉に息を呑み、黙ってられず口を挟む姉のルーさん。

 「…メイ…アナタ、本当にそう思うのですか?

 私でも想像出来ます。

 心臓の弱っている人にそんな薬を与えたら、心臓が耐え切らすに亡くなるかもしれないわ!」

 「えっ⁈

 そんな、だって心臓の薬なんでしょ?」


 まさかここまでとは?

 「薬も量を超えれば毒にも成るし、毒も使い方によって悪いを殺す薬にも成るのです。

 コレらは、全て正しい知識が有るから行える事です。

 砂一粒程の量で何人、何十人と死に至らしめる毒も有るのです。

 逆に大皿一杯の量を食べてやっと効果が現れる薬草も…

 ソレらを効率よく、正しく調合する事を学び、新しい効能を発明や発見したりするのが、師匠が教えてくれた「薬学」です。」

 「そんな面倒な事…。」

 「その様な方には向いていませんよ、
 薬剤師もも。

 アナタが見た書物が間違っていたのか、アナタの解釈が誤っていたのか、定かでは有りませんが、

 アナタは自分が作ったモノに責任を持てますか?」

 「な、何よ、責任って⁈」


 その時!


 「おい、ルーテシアさんはイルかっ⁈」

 部屋に一人のの冒険者風の男が、駆け込んで来た⁈

 「ダ、ダンカン君⁈

 何が有ったの、その怪我は⁈」


 「俺のコトはイイ!

 ベルが、オレの妹が、大変なんだ!」


 何かあった様だな、俺はメイメイに目配せする。


 「ダンカンさん、落ち着いて下さい、何かあったのか落ち着いて話して下さい。」

 「き、君は誰だ?」

 「私はメイメイ、薬剤師ヤクザイシ薬師クスシです、アナタの傷を見せて下さい。」


 「クスシ…だって?

 なら、すぐ来てくれよ!

 妹が!」


 「ダンカン、ベルがどうしたのよ?」

 「うるせー!
 メイクゥン、お前の所為だ!」


 どうやらエルフ姉妹と親しい冒険者らしいが、どうやら緊急事態らしい?

 俺は応接室出て、広間を見渡すとダンカンの仲間らしき連中が、ボロボロな状態で重なる様に大広間の床の上に力尽き倒れていた。

 「大丈夫か⁈」
 
 一人の男に呼びかけると、

 「お、俺は大丈夫だ、ソレよりベルを、彼女を助けてくれ…」

 その男の背中に背負われてる少女、ダンカンの妹なのか?

 この中で一番顔色が悪い⁈

 「べ、ベル!皆んな!
 何、何が有ったのよ⁈」

 俺の後からメイクゥンが、訳も分からず駆けつける。


 すると、

 「ゴブリンだ、ゴブリンの群れに襲われたんだ…奴等、毒矢を撃ってきた…毒消しのポーションを使ったが、あまり効果が無くて…何とかゴブリンは倒したが…ベルだけは毒の周りが早い様な… 」


 「大丈夫、毒消しなら持ってますから!」


 メイメイがいつのまにか、両手の指の間に複数の試験管を挟み、倒れている冒険者達にその中身を振りかけた!

 「ダンカンさんの症状を見て、毒矢に使われていたのは、「サンダースパイダー」の毒だとわかりました、
 解毒はコレで大丈夫ですが…
 ベルさんだけ、様子が変です、何かご存知ですか?」

 「…う、嘘みたいた…痺れが消えた…
 は、そうだ、ベルは毒消しポーションを飲んだら、急に苦しみ出したんだ!」

 「ポーションって、まさか?」


 「ソイツさ!

 メイクゥンがくれたって言う「特製ポーション」だってベルが話してたぞ!」

 「キャッ!」

 先程の男が近づいて来たメイクゥンを突き飛ばし、言い放った!


 「メイクゥンさん、毒消しポーションの調合方レシピを教えて下さい!

 早く!」


 「あ、あ、あの…」

 「コレです!妹はいつもこの書物を読んでポーションを作ってます!」

 ルーテシアさんは、動揺して使い物にならない妹のかわりに、どうやら彼女の部屋からのレシピ集を取りに行ってくれた様で、メイメイに渡してくれた!


 素早くパラパラと中をめくり、毒消しポーションのレシピを見つけるメイメイ。

 「…まさか⁈

 メイクゥンさん、「スパイシ草」はどのくらい使いましたか?」


 「えっ、スパイシ草…
 よくわからないから入れたわよ?」


 「本来毒消し薬には必要無い薬草です、血流を上げて発汗を促す効能が有ります、彼女の使用したモノにはスパイシ草の成分が濃く入っていたのでしょう、血流が増した事で他の方より毒の周りが早かったと思われます。

 タケルさん、ベルさんを私たちの馬車まで運んで下さい!

 早く!」


 バァンッ!!

 扉を蹴破って現れた俺の嫁!

 「だあいじょうぶ、もう来てるよ、メイメイ!」

 カンナが部屋へ飛び込み、メイメイの調合用の道具が入ったバックを持って来てくれた。


 「男性は部屋を出て!
 カンナさん、アズさん、ルーさんも手伝って下さい!」

 その場でベルの衣服を剥ぐメイメイ⁈

 その顔は鬼神が宿っているみたいに怖い、マジ真剣だ!



 「おーら、お前ら!ウチのメイメイ様のだぁー、表に出るぞ!」





 「もう大丈夫です。あとは皆さん、ゆっくり休んで、体力を回復して下さいね。」


 「天使さま、妹を救ってくれてありがとうございます!」

 「め、女神だ、ネコ耳の女神サマだ…。」
 
 「オレ、オンナはだと思ってたけど、貧乳もなぁ…。」


 
 最後のお前、もう一度毒喰らわすぞ!


 「さすがメイメイ!

 時間も材料もが無く、完璧だな!」

 「人の命がかかっているのです、完璧より最善を優先したまでですよ。」

 少しお疲れ気味なのに、ニコリと笑うメイメイ!

 ソコにいたの男共のハートを鷲掴みした?

 「メイメイ、可愛いー!」

 カンナが思わずメイメイを抱きしめる、お前もお疲れだろ?

 「わ、ワタシも抱きしめてイイですよね!」

 「マーヤも!」

 アズ姐、マーヤが二人に抱き付く!

 優しい空気が流れる中、一人だけ絶望感に押し潰され、その場から姿を消した。
しおりを挟む

処理中です...