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そう、僕らは誤魔化す事にした。

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 「な、何だと!

 邪神の魔石が消滅しただって⁈」

 アレク兄貴、何でココにいるんだ?

 「うん、メイクゥンからメイメイに乗り換えようとして、身体から出て来たトコロを、この神剣で叩き切ったんだ、そしたらなんか断末魔が聞こえて?」


 「断末魔だって?」

 「うん、「おのれ、もう少しで復活出来るところだったのを~⁈」って、

 そしたら、粉々に砕けて消えていったんだ。」



 俺たちは全て誤魔化して、機人たちの事も内緒にした。

 邪神の魔石をあの森に押し付けた連中に本当のことを教える必要はないと結論を出したからだ。



 あの村で暮らしている人たちは、まだ元の世界に帰る事を諦めていない。

 村で暮らしなかやら、その策を探し研究する者や、自分の素性を隠して情報を収集するモノ、ソレを支援する同士たち。


 なので、俺たちは偽の情報を流す事にした。

 「エルフの里」に潜伏している他国の監視者に!


 邪神の魔石は消滅したと!

 (魔石が消えたのは嘘ではないけど。)

 そう考えてるに至ったのはあの開拓村で、有る人に会ったからだ。

 その人は日本刀を作る刀鍛冶師でもあり、自分たちをこの世界にした者達やそれと敵対する勢力とも組みしないと決め、独自に帰る方法を模索している強い人だった。

 

 元の世界に帰りたい、

 生まれ変わった俺と違って、無慈悲に連れてこられた人達には協力したいと思ったのと、


 友達になった鉄人たちを国同士の勢力抗争に取り込まれたくなかったからだ。




 「ソレで、他には⁈」

 事情を説明しに、町長宅に翌日訪れると、何故かいるアレク兄貴とあの村出身のカイゼルさんが追求してきた。


 「何?

 特にナニも無いぞ?」


 「あの村で「クラナギ」という人物に会わなかったか?」

 「ああ、鍛冶屋の人だろ?

 あったけど挨拶ぐらいしかしてないけど?」

 「あの場所のリーダーと言うか、村長みたいな立ち位置でな。

 お前さんなら話しが合うど思ってな…。」


 やっぱり疑われてるか?


 でも、ココで、

 『邪神の魔石は消滅した!』

 と言う事にしておかないと、後々面倒な事になるし。



 あの開拓村はもうしばらく、

 「魔の森」として皆んなから恐れられて居て貰わんと!


 今後の俺のスローライフの為に…







 「初めまして、蔵薙 剣鋼ケンコウといいます。

 家が墨田区の下町で「洋裁鋏」の鍛治士をしていたんで、自分もいずれは鍛治職を始めるつもりで、ココでは見様見真似でを作ってみたんだ。

 「人斬り包丁」をね⁈」


 「…マグロ包丁で無くてですか?」

 「作り方は同じですね。」


 顔は和かだけど、武人の気の様な物を感じるの様な人だ。

 師匠とは別のタイプの達人だろう。


 「冒険者のタケルです。

 コッチは仲間のカンナ、メイメイ、マーヤです。」

 「マーヤです!

 でね、アッチがで、この子はナイトくん。」


 「マーヤお嬢様の執事、ナイトと申します。」

 さすがに驚いてるな?


「…驚いたよ、あのガラクタだと思っていたロボット達が動いて話している…、どんな魔法を使ったんだい?」





 地下遺跡に駆け込んできたカンナが、会わせたい人が居ると地上に連れ出された。

 なんでも村で知り合った少年のお父さんだそうだ。


 「ボク、シラヌイ。」

 「マーヤだよ!」



 アレ、なんだろう?

 幼子たちが早くも仲良くしている⁈


 
 「子供たちは妻に任せて、ゴゥタムも交えて話しをしないか、タケル殿?」
 

 この村は元々、武力に偏った帝国や権力者から逃げてきた人達が隠れ住んでいる「隠れ里」なのだそうだ。

 そこに珍しい鉱石を求めて入り込んだドワーフや、その美しい容姿の為に奴隷商人に狙われたエルフなど、多種族も集まり出したことで開拓村が出来たそうだが、そこに剛田さん達が建物ごと召喚されたそうだ。


 「タケル殿、お願いが有るのだが、聴いてもらえないだろうか?」

 クラナギさんはあまり表情を変えず、話しを切り出してきた。

 魔の森奥地で隠れ暮らしてきたエルフや、外見が特徴的に美しい種族たちだったが、
 今では王国の奴隷解放令により、「王国内なら安全」と森より町に生活の場を移すエルフが現れ始めた。

 アチラの料理を再現したり、ドワーフたちが作ったモノを販売したりと彼らと一緒に商売を始めて、森の外に作った村で旅人を集めては、様々な情報を集めていただ。

 しかし、各国に潜伏している邪神信奉者も魔石の存在に気付き、魔の森の隠れ里に侵入を試みては、失敗している様だ。


 何か森自体に意志があって、森に入る者を選別している様な?


 「タケル殿はこの場所をどう思う?」

 「どうと言うと?」

 「僕らや、あのロボットたちがこの場所にいるのは偶然なのだろうか?

 僕ら以外にも、この世界に召喚されたり、転生している人たちがいる。

 でも、僕らはこの場所に引き寄せられた?

 ソレには何か意味がなるのでは?

 そう考えたんだ。

 ココに召喚されたころ、程なくして、この場所に逃げて来たダークエルフから、邪神復活を目論む一味が大掛かりな召喚魔術をを行ったと聞いたんだ。

 しかし、術自体は成功し様だが、予定された場所には転移させられなかったそうだ。

 術の発動に必要な魔力を得る為に攫われてきたそのエルフも、秘密を知った以上、始末されてしまうので、必死でこの村まで逃げてきたが、途中で受けた傷が酷くてね…  」

 「亡くなったのですか?」

 「ご存命だよ、ただ魔力は全て奪われてね、右脚は義足になったけどね。」


 そんな状態になるまで、よくこの場所に逃げ延びたな?

 …だから、この森にが有ると?

 「俺に頼みとは?」

 「あのロボット君たちを守ろう、権力者たちから。」

 「王様とか、魔王からですか?」

 「彼等は人命を護る為に創造された鋼の守護神だよ。

 戦争の道具にはしたくない、彼等も同郷の士だ。」

 「…なら、邪神の魔石は俺が叩き斬った事にしましょう、そしたら消えてしまったって事で誤魔化しましょう!

 ソレが一番もっともらしい⁈」


 「邪神復活を目論んでいる奴等はソレで納得しないだろうけど、町長カイゼル辺りはソレで話しを収めてくれるだろう。」

 
 すると、


 「お兄ちゃん、タケル兄ちゃん!」


 「うわ、どうしたマーヤ?」

 「あのね、マジンちゃんがね、「もりのカミサマ」がおはなししたいからきてって、いってるんだって?」


 「はへ?」

 「…森の神…  ま、まさか精霊樹か?」

 クラナギさんが何かに気がついた様だ?
 
 精霊樹?

 おぉ、やっとファンタジーらしくなりそうだ。


 「クラナギさん、ナニが思い当たる事でも?」
 

 「この森の中心部に「世界樹」の枝を挿木して、育てているダークエルフがいるんだ。

 そのエルフが育てている若木の事を「精霊樹」と呼んでいるんだ。」


 「それっぽいですね?」
 
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