PK以外に興味なし

えるだ~

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スポナーPK

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「ギャッ!?」「グワッ!」「ウッソ!?」「グウェッ!」「ギャー!」「ブホッ!」「エェッ?!」「一人に何やって!」「はやっ!」「捕まえっ!」「ウギャッ!」
 そんな叫び声と血を飛び散らせながら死神は敵拠点を進んでいた。
(骨のある奴いねぇな)
 大型クランと呼ばれていても、結局は寄せ集めのようで、大半の敵プレイヤーは60レベルもないであろう奴等ばかりだ。
 そして廊下の最後の一人に飛び蹴りをし、そのまま廊下の扉をぶち破った。
「ん?」
 廊下の先にあったのは開けた部屋。小さめの体育館ぐらいある。
 そして白いローブを着た男が一人立っていた。顔には大きな御札が貼ってある。まるでキョンシー。
「お前等ほどの愚か者を見たのは久しぶりだ」
「愚か者じゃねぇよ、こちとらチャンピオンを連れてるんだぞ」
「関係ない。こちらは五十人だぞ」
「あ、そう」
(向こうは百人近くまとめ上げてるリーダーだがな)
「・・・話は終わりだ。殺す」
「殺ってみろよ!」
 死神がキョンシー目掛けて走り出す。スキルを使ってもいいが、スキルには回数制限がある。この後何が出てくるか分からない以上乱用は控えるべきだ。
「やはり近接アタッカーか。楽勝だな!」
 キョンシーが手をパンッと叩く。すると彼の近くの床が光り、そこから浮き上がってくるようにして魔物が現れた。
 一体はムキムキでゴリラのような体格をしたゾンビ。そして細い木を人型にしたかのような木人、そして浮遊する盾のような可愛らしい魔物だ。
「召喚士か」
 召喚士はその場でMPを消費して魔物を呼び出すクラス。レベルは全て決まって50レベルで、それ以上レベルの高い魔物は呼び出せないが、安定して強い魔物を呼び出せるのが強味だ。
「グォオオ!」
 ゾンビがその巨拳を死神に振り下ろす。
「バカだな!」
 死神のブレードがゾンビの拳を切りつけ、ダメージを与えた。
 死神のクラス、殺人鬼リッパーは、人の肉体を持つ対象に大きくダメージを与えることのできるクラスだ。対人に関しては強いが普通の魔物へのダメージにバフはなく、ゴーレムや幽霊系の魔物なんかには逆に与えるダメージが減るという特徴を持つ。
 故に今死神が警戒しているのは、木人と盾魔物だ。あれに与えられるダメージは低くなってしまう。
「グラロロッ」
 木人が細い腕を床に突き刺す。すると、
「下かっ!」
 床をカチ割って鋭い根のような木人の手が死神を襲ったが、死神はそれを避ける。ほぼ経験則による動きだ。
「グォオ!」
 そしてまたゾンビが殴り掛かって来る。
 死神は側転するようにしてゾンビのパンチを回避し、逆立ちになった状態で体を横回転させてゾンビの顔面を思い切り蹴った。
「ブグゥッ!」
 ゾンビが怯む。今の内に攻撃を仕掛けようとしたが木人の腕が伸びて来て、死神の腕に絡み付いた。
「!」
「グオッ!」
 体勢を戻したゾンビが拳を振り下ろす。
「〈切断〉!」
 木人の手を切り落とし、ゾンビの一撃を何とか避ける。
「危ね」
「ハハハッ!ジリ貧だなぁ!」
「どうかな?」
 死神は木人の腕を確認する。あいつの腕を再度伸ばすには、一度縮み切る必要がある。
 縮み切っていないのを確認すると、全力でゾンビに向かって走り出す。
 ゾンビは腕を水平に振って凪払おうとしたが、死神はジャンプしてそれを回避する。
「〈衝撃波〉」
 そしてスキルを斜め上後方に発動し、ゾンビの背後を取る。次にゾンビ背中にドロップキックをするようにして両足を押し当てる。
「〈衝撃波〉」
  そして今度は足裏から衝撃波を放つ。スキル+蹴りのパワーが合わさり、死神がすごい速度で水平に跳んでいった。
「んんっ!?」
 一瞬にしてキョンシーとの距離が縮まり、死神のブレードが奴を襲う。
 が、ガキンッと金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。盾魔物が死神の刃を防御したのだ。が、
「〈切断〉!」
 盾魔物の体が両断される。目の前にいるのはキョンシーだけ。死神は体を捻り、キョンシーの顔面に回し蹴りを喰らわせた。
「ぶぐっ!?」
 魔術師系は基本物理戦に弱い。こいつも例外ではないらしく、蹴り一発で吹っ飛んでいった。
 ドチャッと床に激突し、しばらく滑ってようやく止まったキョンシーは、頬を押さえながらゆっくり立ち上がった。実際には痛くないのだが。
 それと同時に召喚されていた魔物達がパラパラと砂のようになって消えていった。
 これも召喚士の弱点。召喚した魔物は、本体がある程度のダメージを受けると消滅してしまうのだ。
「ハハ・・・中々やるねぇ・・・」
 キョンシーが顔の御札を剥がす。
「まぁ、負けるのはつまらないからな。これを使わせて貰う」
 そしてその御札を床に叩き付けた。どうやらアイテムだったようだ。
 そしてもう一度手を叩く。先程よりも力強く。
「いでよ───」
 そしてそれが召喚された。
「───魔羅蛾まらが!」
 現れたのは巨大な人間と蛾を融合させたかのような醜悪な見た目の魔物だった。
「上位の召喚士でなければ呼び出せない高位モンスター!そしてこいつの能力は!」
「!」
 部屋が徐々に黒くなっていく。いや、
「腐って来てるのか」
 どうやら周囲の物を少しずつ腐らせるスキルを常時発動しているようだ。
「さっさと終わらせなきゃならないってことだな」
 魔羅蛾が動き、手を変な形に構える。そして腐食効果のある黒い斬撃を無数に放った。
 死神は斬撃同士の隙間見極め、上手くそこを通って攻撃を避ける。
「さぁ!さっさと死──」
「〈縮地〉!」
 死神が一気に魔羅蛾に接近する。すると彼の右腕から血がブクブクと溢れ出す。そしてその血を纏った拳を魔羅蛾に叩き付けた。
「〈螺旋血拳らせんけっけん〉!」
 拳にのった血が螺旋状に広がり、魔羅蛾の胴体を貫いた。
 身体に風穴の空いた魔羅蛾はズシンと倒れ、バラバラと消えていった。
「・・・はぁ?」
「やっぱりいざって時にも超火力が出せるのは血術の良いところだな。HPは減っちまうが」
 死神が回復薬を自分にバシャバシャ掛けて回復しながら呟いた。
 死属性に分類される血術ちじゅつは、基本的に自身の体力を削りながら高火力を叩き出せるスキルないし魔法だ。かなりギャンブルな能力のため、好んで使用する者はエンジョイ勢か、攻撃を回避できる自信のある猛者だけだ。
「う、嘘だろ」
「残念だったな。お前はもうMP残ってないだろ?潔く死んでくれ」
「ク、クソ!」
 キョンシーが逃げようと走り出し、部屋の出口の鍵を開けて出ていった。
「お、開けてくれたラッキー」
 死神は歩きながらキョンシーを追った。
 
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