PK以外に興味なし

えるだ~

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神の世界

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 胴体から切り裂かれ、真っ二つとなったイグルは地面にボトリと落ちた。
「がっ!ぐっ!ぐぅうっ!」
 超速回復は止まっている。体は再生しない。だがイグルは両手を地面につき、立ち上がろうとした。
「しぶとい野郎だ」
 ジャックはトドメと言わんばかりにイグルの心臓を『赫』で突き刺した。
「がっ!ぐっ!ぐっ!おわっ!終わらないぞぉ!終わらない!絶対!絶対にお前を殺してやる!殺してやるぞ!」
「・・・カッコ悪いねぇ。親の仇じゃあるまいに。たかがゲームだ。俺に敗けた事を受け入れて、楽しめばよかったものを」
「クソッ!クソがっ!クソクソクソォッ!」
「そこまでです」
 聞き覚えのある声が響く。
 振り返るとそこにいたのはスーツの男。運営だ。
「・・・なんで死なないのかと思ったら」
 イグルが消えないのは、あいつが何かしたからのようだ。
「左様でございます。・・・さて、イグルことイーグルバン様、あなたはこのゲームに置いて重大なレギュレーション違反を犯しました。詳しい処分は後々決める事となるでしょうが、この件は既に警察に相談済みです。恐らくもうすぐあなたの自宅に警官が来るでしょう」
「なっ!?」
 運営はニコッと微笑み、話を続ける。
「まぁ取り敢えず、あなたは永久追放ですので」
「あーあ、普通にゲームとして遊んでれば良かったってのに」
「全くです」
「な、な!な!なん!何だとっ!俺が!この!このゲームに幾ら金を使ってやったと!ふ、ふざけるな!客は!客は神様だろうが!」
 すると運営は地に寝そべるイグルの頭を踏みつけた。
「えぇ、ですから。他の神様のご迷惑になりますのでね♪」
 運営が手を使ってスッとジャックの方を差す。
「ふざけるなぁぁああああ、あ、ぁぁあ、アァ」
 イグルの体がカチカチと固まり始める。
「ァアア!アァ!ア、ア、ァアァ、ガッ!」
 そしてバキッと音を立て、バラバラに砕けて無くなってしまった。
 運営はクルッとジャックの方へ振り返る。
「それでは引き続き、楽しいゲームプレイをお楽しみ下さい」
 運営は微笑みながらパラパラと光になって消えて行った。
「・・・怖い奴」
 ジャックがそんなことを呟いていると、
「おーい!」
 遠くからそんな声が聞こえてくる。
「・・・はぁ」
 あの喧しい奴等だと、ジャックはため息を付き、今一度大きく息を吸う。
 そして振り返る。
「おいジャーック!」
 トゲ、リコ、ミラ、テイラ、コノハ、あと、
「ん?おい何だその後ろの軍団は!」
「『ニホンバレ』のメンバーですよ。それより終わったんですか?結界の中からゾンビの大群が見えたので急いで結界を割って来たんですが・・・」
 皆は辺りを見渡すが、砕け、割れ、焼け焦げた草原が広がるだけだ。
「もう殺ったみたいね」
「あぁ」
「えっと、じゃあ、私達の・・・勝ちですか?」
「・・・まぁ、一応な」
 それを聞き、一同顔を見合わせる。そして、
「やったぁああああああああ!!!」
「うぉっ!?」
 皆が飛び上がり、叫んだ。ジャックはその声に驚いたようだが。
「勝った!?勝ったの!?相手は何百もいたのに!やったぁああ!」
「俺達の勝利だなリーダー!」
「あなた達は大したことしてないような」
「えー、なんだよぉ!」
「やった!皆で打ち上げでもしたい気分よ!」
 皆やいのやいのと嬉しがる。
「・・・ハハッ、お前等ホントににぎやかだな」
 その瞬間、全員の動きが止まる。
「・・・あ?」
「ジャックが笑ったぁ!!?」
「は?」
「ジャック今笑った!?笑ったわよね!」
「いや笑うぐらいするだろ」
「てっきり人生で笑ったことのない人間かと!」
「んな訳あるか」
「長い付き合いの私ですら初めて見たわ」
「ハハハッ!今日は良いものが一杯見れるな!」
「何なんだお前等・・・」
 一頻ひとしきり騒いだ後、場が静かになるとジャックは「やれやれ」などと言いながら歩き始めた。
「ん、ジャックどこ行くの?」
「・・・言う必要あるか?」
「あー、もう私でもあなたが何考えてるか分かるようになりましたよ」
「というかほぼ一択」
「・・・俺達も暇だし行くか?」
「ダイビさんにもお礼言わなきゃですね」
「あ、確かに」
「・・・一応答え合わせしましょ。・・・ジャック、どこ行くの?」
「決まってるだろ?PKだよ」
「ハハ」
 全員が苦笑いを浮かべる。
「ホント懲りないねぇ」
「もうちょっと控えたらぁ?」
 などと言いつつ、皆笑いながらジャックの後に着いて行った。



 ゴッドワールド。
 全世界、その後のゲーム達に多大な影響を及ぼし、様々な歴史を生み出した神ゲー。
 これはそんなゲームで遊ぶ一人のプレイヤーの、ちょっとした物語の一部である。
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