PK以外に興味なし

えるだ~

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早さ比べか

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 ウスビラ内にある訓練用広場にガイルとトゲが立ち、ミラがそれを見守る。
「ミラさん、自分でやりなよ」
「いやいや、今やあんたの方が強いじゃないの」
「ええ~」
 そんな会話を余所目にガイルは双剣を取り出し、トゲを観察する。
 持っている武器は剣と弓。特別レアな武器という別けではないが、それなりの上物だろう。少なくとも豪快に武器を振り回すタイプじゃないのは確かだ。
「そろそろいいか?」
「はぁ、分かったわよ」
 トゲは剣を構える。剣で打ち合って勝つ自信があるということだろうか。だとしたら背負っている弓矢はブラフの可能性が高い。
「はい、じゃあ始め!」
 ミラが声を上げると同時にガイルが地を蹴り、トゲに接近する。
「うおっ!」
 双剣を振り下ろすが、防がれる。だがこれは様子見の一撃だ。
「〈回転〉」
 ガイルはスキルを発動させて自身を回転させ、それに蹴りをのせてトゲを蹴り飛ばした。腕でガードされたが防御はそこまで高くないらしく、かなり吹っ飛んだ。
「いってて~」
「トゲ~、あいつ中々強いわよ、本気でやらないとぉ」
「分かった分かった、はぁ、あれ疲れるんだけどなぁ」
 するとトゲは剣を下ろし、柄から離した右手を出してパチンと指を鳴らした。すると、
「お、〈サイコキネシス〉」
 矢筒から複数の矢がフワリと浮いて空中に浮遊し始めた。
「さーて終わらせるぞ~」
 そして剣も構える。
(・・・〈サイコキネシス〉とスキルか何かを重ね掛けしてるな・・・さてどうするか)
 ハエ使いの時と同じで、サシで切り合うならばガイルが負けることはない。が、矢が邪魔をしてくるだろう。ハエと違って熱で殺すのも難しそうだ。
「いっくぞぉ!」
 トゲは再び剣を構え、浮遊する矢を連れ接近してきた。
(矢は・・・十五本か)
 矢は回避しても進行方向を変えて背後から突撃してくるため、弾いた方が安全だ。
 そう判断し、ガイルは突撃して来る矢を弾き返しながらトゲ本体の攻撃をかわす。そして反撃したい所だが、矢が邪魔してそれを阻止してくる。実に厄介だ。
「・・・わざわざ付き合う必要もないか」
 ガイルはそう呟くと、後方へ跳び退いてトゲと距離を取った。
「その距離は私の間合いよ!」
 トゲは矢を操作し、離れたガイルへ攻撃する。だが、回避に専念したガイルに純粋な射手でもない者の矢が当たる訳もない。
 ガイルは走り、跳び、弾きながら矢を対処する。そんな事をする理由は明白。燃料切れを待っているのだ。
(〈サイコキネシス〉は燃費の悪い魔法だ。色々重ね掛けしてもそれは変わらない。複数の矢を操る操作技術は尊敬するがな)
 そんなことを考えながらガイルは作業的に矢を捌く。


 攻撃を仕掛けているのはトゲ。相手は回避してばかり。だがトゲにとってこの状況はよろしくない。攻撃は一向に当たらず、MPは減り続ける。MPが切れれば勝つ見込みはない。
「チッ!」
 トゲは剣を構える。接近戦では相手の動きを見て矢を操作しつつ剣を振らなければならず、かなり難易度が高いのだが、奴を殺るにはそれしかないだろう。
 トゲは矢を先行させながらガイルに接近し、総攻撃を仕掛ける。
 十五本の矢がそれぞれ別の方向からガイルに迫るが、奴は身体を器用に動かして剣を振り、矢を避け、弾いた。が、今回はそれだけでは終わらない。トゲが剣を振り下した。
 ガイルはトゲの一撃を剣で受け止める。攻撃は防がれたが、足は止まった。すかさず矢がガイルへ攻撃を仕掛ける。
 迫り来る矢を見たガイルは自分の片足を地面に叩き付けた。そして、
「〈炎柱〉!」
 ガイルがそう唱えると、彼を中心にして炎の柱が天へ向かって立ち上った。トゲの矢は炎で止めることはできない。だが、
「あちちっ!」
 プレイヤーであるトゲは別だ。トゲは炎の炎上ダメージに怯んでガイルから離れ、その際に操作が鈍って矢はあらぬ方向へ飛んで行ってしまった。
「しまった···!」
 火柱が消えてガイルが現れ、余裕そうにトゲを見る。
「終わりか?」
「・・・いや!」
 トゲが再び指を鳴らす。するとトゲのポーチが開き、中から投擲用ナイフが複数飛び出した。その数二十。
「これで終わらせる」
「そうか?なら来いよ」
 ガイルは双剣を構えてトゲを誘うように手をクイクイッと動かす。
 そしてトゲは大地を蹴ってガイルに迫った。
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