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第四話 スマホの力
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目の前に広がったのは、荒れた低地に広がるように配置されたゴブリンの群れだった。
群れは、放射状に列を成している。その中央に指揮官らしい大きめのゴブリンロードが陣取っていた。
さらに驚くべきことに、ただのゴブリン風情が、皆、皮鎧、盾、短剣を装備しているのだ。
さっき襲ってきたゴブリンとは明らかに別口だ。こんなのと戦闘になったら、無事では済まない。大方、さっきのゴブリンたちは、このゴブリンの群れに便乗して村を襲いに来たゴブリンに違いない。
「これ……を……」
母は念を押すように、プレートをかざし、力尽きた。
「母……さん……」
僕は、つらい気持ちを抑え、母の持っていたプレートに触れた。
その瞬間、聞いたことのないような金属音と、立っていられないほどのめまいが襲ってきた。
「なんだこれ……頭の中に何かが入ってくる……」
その何かは、懐かしくもあり、そして悔しく、希望のないもの。そして、大量の知識だった。
少しずつ、頭の中に刻まれてくるピースのような情報の塊。それが埋まるにつれ、僕の中で何かが変わり始めた。
「これは……記憶……」
──今、はっきりと思い出した。
これは、転生前の記憶。僕は一度死んだ。そして、女神に会い、この世界へとやってきた。そして、このプレートは──スマホだ。
僕は、母から受け取ったスマホの電源を入れた。
スマホは勝手に喋りだす。
『ウェイクアップ──初期設定確認──ワールドデータダウンロード中』
「まさか、これが……異世界スマホ……!?」
スマホは、ダウンロード中の表示のままだ。
「スマホ! まだダウンロードは終わらないのか?」
『現在、ワールドデーターをダウンロード中。しばらくお待ちください』
「……時間はどのぐらい待てば……」
『30分程度で全ての機能を解放します』
──30分じゃ遅すぎる。
もうゴブリンの群れは行軍準備に入っている。このまま奴らが進めば、家までもつぶされてしまう。家には父が大事に育てた家畜、母が大事に育てた作物、そして、僕の思い出が詰まっている。方法がなければ、全てをあきらめ、逃亡するしかない。だが、それは最後の手段だ。
「今すぐ、あのゴブリンの軍勢を追い払うことはできないのか?」
『現在、アプリを起動することはできません。ですが、その条件を満たす方法が一つだけあります』
「一つだけ?」
『バックアップモードを並行して、このスマホを複製します。複製が終わると、これと同じものが出現しますので、複製された本体を、攻撃対象に向けて投げてください。なお、本体の複製は一時間に一度しか作成できませんのでご注意ください』
「投げる?」
気が付くと、もう片方の手にスマホが出現していた。
「これを投げればいいんだね」
『思い切り遠くに投げてください』
「わかった。せえのっ」
僕は力いっぱい複製スマホを放り投げた。
『クローン端末をオーバークロック。冷却システムダウン。セーフティー解除、及び、データ保護自爆機能起動』
「!?」
投げたスマホは、ゴブリンの群れの中へ入ったと同時に激しい熱と光を放ち、その後大きな音とともに大爆発を起こした。
群れは、放射状に列を成している。その中央に指揮官らしい大きめのゴブリンロードが陣取っていた。
さらに驚くべきことに、ただのゴブリン風情が、皆、皮鎧、盾、短剣を装備しているのだ。
さっき襲ってきたゴブリンとは明らかに別口だ。こんなのと戦闘になったら、無事では済まない。大方、さっきのゴブリンたちは、このゴブリンの群れに便乗して村を襲いに来たゴブリンに違いない。
「これ……を……」
母は念を押すように、プレートをかざし、力尽きた。
「母……さん……」
僕は、つらい気持ちを抑え、母の持っていたプレートに触れた。
その瞬間、聞いたことのないような金属音と、立っていられないほどのめまいが襲ってきた。
「なんだこれ……頭の中に何かが入ってくる……」
その何かは、懐かしくもあり、そして悔しく、希望のないもの。そして、大量の知識だった。
少しずつ、頭の中に刻まれてくるピースのような情報の塊。それが埋まるにつれ、僕の中で何かが変わり始めた。
「これは……記憶……」
──今、はっきりと思い出した。
これは、転生前の記憶。僕は一度死んだ。そして、女神に会い、この世界へとやってきた。そして、このプレートは──スマホだ。
僕は、母から受け取ったスマホの電源を入れた。
スマホは勝手に喋りだす。
『ウェイクアップ──初期設定確認──ワールドデータダウンロード中』
「まさか、これが……異世界スマホ……!?」
スマホは、ダウンロード中の表示のままだ。
「スマホ! まだダウンロードは終わらないのか?」
『現在、ワールドデーターをダウンロード中。しばらくお待ちください』
「……時間はどのぐらい待てば……」
『30分程度で全ての機能を解放します』
──30分じゃ遅すぎる。
もうゴブリンの群れは行軍準備に入っている。このまま奴らが進めば、家までもつぶされてしまう。家には父が大事に育てた家畜、母が大事に育てた作物、そして、僕の思い出が詰まっている。方法がなければ、全てをあきらめ、逃亡するしかない。だが、それは最後の手段だ。
「今すぐ、あのゴブリンの軍勢を追い払うことはできないのか?」
『現在、アプリを起動することはできません。ですが、その条件を満たす方法が一つだけあります』
「一つだけ?」
『バックアップモードを並行して、このスマホを複製します。複製が終わると、これと同じものが出現しますので、複製された本体を、攻撃対象に向けて投げてください。なお、本体の複製は一時間に一度しか作成できませんのでご注意ください』
「投げる?」
気が付くと、もう片方の手にスマホが出現していた。
「これを投げればいいんだね」
『思い切り遠くに投げてください』
「わかった。せえのっ」
僕は力いっぱい複製スマホを放り投げた。
『クローン端末をオーバークロック。冷却システムダウン。セーフティー解除、及び、データ保護自爆機能起動』
「!?」
投げたスマホは、ゴブリンの群れの中へ入ったと同時に激しい熱と光を放ち、その後大きな音とともに大爆発を起こした。
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