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第5章 目的を達成しよう

遺跡

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 俺は、揺れる獣車の中で目を覚ました。
 皆は、すでに目を覚ましていた。起こさずにいてくれたのは、寝ている俺に気を使っての事のだろう。朝の挨拶を軽く交わして、周囲の様子をうかがう。

 窓の外は、吹雪で5メートル先が見えない。
「吹雪か……」俺は、獣車の窓を開け、ケンタ君に付近の様子を聞いた。「何か変わった事はないか?」

「今の所大丈夫でーす」
「そうか」
 そして、俺はそっと窓をしめた。本当に、この方向で合っているのか……心配は尽きなかった。

 丁度、腹が空いた頃だ。突然獣車が激しく揺れた。そして、何か引きずったような音がして、獣車はブレーキをかけたように速度を落とした。

「どうした! ケンタ君!」
 俺は、もう一度窓を開け、ケンタ君に声を上げた。

「前に突然遺跡のようなものが現れたでーす。雪も突然やみましたー」
「なんだって?」
 辺りを見回すと、晴れ間が広がっていた。さっきまでの吹雪はどこへ行ってしまったのだろうか……。

 俺達は、周囲を警戒して獣車を降りる。
 すると、目の前に石と氷で作られた巨大な遺跡が姿を現していた……。

「異様ナ魔力ノ気配ガスルデース」
 ソエルは、長い耳を震わせながら、何かを感じ取っていた。

 遺跡の中央には上る階段があり、その先に入口があった。
「魔女のアジトはここのような気がしてきたぞ!」俺は、皆と一緒に注意深くその階段を上った。
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