19 / 138
第2章 依頼をこなそう
第19話 虹色の輝き
しおりを挟む
俺たちは、昨日の残りのおにぎりで朝食を取る。余ったおにぎりは、ケンタ君へのご褒美として、竹筒に入れておいた。
とりあえず、メイデンとファリスには、ソエルが仲間になった事を伝えた。すると、2人は不機嫌な顔をして、ソエルを睨みながら話した。
「デカ乳ソエルが仲間になったっスか。大将の決定なら了解っス」
「タカシ様、私も最強のデカ乳になります! 見捨てないで下さい!」
2人の言葉に、俺はため息をついた。ソエルのデカ乳は、2人にとってはショックだったのだろう。胸を気にするのはわかるが、仲間になったのだから、なるべくなら、仲良くやってほしい。そう思うばかりである。
俺たちは、歩いて山を下り、ふもとで待機してくれていたケンタ君と合流した。
「ご主人様~! 無事でなによりでーす!」
「ああ、ありがとう。それと、お土産だ」
ケンタ君に、おにぎりを渡す。
「あ、ありがとうございます! 一生の宝にします」
「いや、しなくていいから、腐らないうちに早く食え!」
俺は、ケンタ君に無理やりおにぎりを食べさせた。おいしそうに食べている。
ケンタ君の食事が済んでから、俺たちは獣車に乗り込み、ミツユスキーの家へと向かった。
獣車に揺られながら、俺はソエルがくれた手帳の事を思い出した。ジャージのポケットから手帳を出し、目を通してみた。
その手帳には、日記が書かれていた。南方戦役マラーリア討伐後の記録が書かれてある。おいしい米、味噌、醤油の作成の記録。不思議な保存方法の記録。書いてあるのは、この世界で役に立ちそうな事ばかりだった。だが、最後の方に、一つだけ悲しい出来事が書いてあった。
結婚を約束したジュリアの突然の容態の悪化。ジュリアを救うため、北にするドラゴンを捕まえに行ったこと。だが、その先は書かれていなかった。
「なあ、ソエル。どうしてこの先、書かれてないんだ?」
「ああ、それは…………勇者はそこで息絶えたのでーす」
「ああ、そうか……じゃあこのジュリアって人は……」
「お察しのとおりでーす」
その話を聞いていたソエルの表情は、すこし、悲しそうだった。俺は、この話に触れるのやめることにした。
ミツユスキーの家についた。獣車を降り、玄関先へと向かう。家の扉が開き、ミツユスキーが俺たちを出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、ご主人様。その様子だと、薬を入手できたのですね」
「もちろんさ」
俺は、ミツユスキーに薬を手渡した。
「じゃあ、さっそく使ってみます」
「水で溶かして、石化した部分にかけてくださーい」
「もしかして、賢者様ですか? では、そのように……」
ミツユスキーは、桶に水をいれて薬を溶かす。そして、桶をもって娘のミーシャのいる部屋の扉を開けた。ミーシャは車椅子に座り、うつろな目でこちらを見ていた。
「ミーシャ、もう、大丈夫、大丈夫だぞ」
ミーシャは、ミツユスキーの声に、あまり反応していなかった。ミツユスキーは、ミーシャの体に巻いてあるシーツを外し、石化した部分に、水をかけていく。
俺は、少女のすぐ傍で、回復を見届ける事にした。
石化された体にかかった水が、湯気を出し始める。そして、湯気を出しながら、石化した手足は、徐々に肌の色を取り戻し始めた。
ミーシャの絶望した目に、輝きが戻り始める。ふと、石化の解けたミーシャの手の指が、少しだけ動く。
「お父さん、動くよ」
「ああ、当たり前だ、治ったんだよ」
ミーシャは、軽く腕と足を動かす。何の問題もなく、手足は動作していた。
「治ったんだね……治ったんだね……」
「ああ、治ったんだ!」
石化の解けたミーシャは、自分の力で立ち上がり、力のない細い腕で、俺のジャージをしっかりつかんだ。そして、お礼の言葉を投げかけた。
「ありがと……おにいちゃん……ありがと……」
ミーシャは、涙を流しながら、小さな声でお礼を言い続けていた。
俺は今まで、人のために頑張っても、ウザがられてばかりだった。だが、ここでは、そんな俺の気持ちや行動が、まっすぐ反映されている。人からこんなに感謝されたのは、本当に初めてだ。
俺は、照れながら少女の頭を撫でてあげた。本当に良かった。これでミーシャは普通の生活に戻れるだろう。
──俺は……いや、俺たちは、一人の少女を救うことに成功した!
腕のリングは虹色に輝き、任務の達成を祝福する。それはSSSクラス任務を受ける準備が整った事を意味する。俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだ。
とりあえず、メイデンとファリスには、ソエルが仲間になった事を伝えた。すると、2人は不機嫌な顔をして、ソエルを睨みながら話した。
「デカ乳ソエルが仲間になったっスか。大将の決定なら了解っス」
「タカシ様、私も最強のデカ乳になります! 見捨てないで下さい!」
2人の言葉に、俺はため息をついた。ソエルのデカ乳は、2人にとってはショックだったのだろう。胸を気にするのはわかるが、仲間になったのだから、なるべくなら、仲良くやってほしい。そう思うばかりである。
俺たちは、歩いて山を下り、ふもとで待機してくれていたケンタ君と合流した。
「ご主人様~! 無事でなによりでーす!」
「ああ、ありがとう。それと、お土産だ」
ケンタ君に、おにぎりを渡す。
「あ、ありがとうございます! 一生の宝にします」
「いや、しなくていいから、腐らないうちに早く食え!」
俺は、ケンタ君に無理やりおにぎりを食べさせた。おいしそうに食べている。
ケンタ君の食事が済んでから、俺たちは獣車に乗り込み、ミツユスキーの家へと向かった。
獣車に揺られながら、俺はソエルがくれた手帳の事を思い出した。ジャージのポケットから手帳を出し、目を通してみた。
その手帳には、日記が書かれていた。南方戦役マラーリア討伐後の記録が書かれてある。おいしい米、味噌、醤油の作成の記録。不思議な保存方法の記録。書いてあるのは、この世界で役に立ちそうな事ばかりだった。だが、最後の方に、一つだけ悲しい出来事が書いてあった。
結婚を約束したジュリアの突然の容態の悪化。ジュリアを救うため、北にするドラゴンを捕まえに行ったこと。だが、その先は書かれていなかった。
「なあ、ソエル。どうしてこの先、書かれてないんだ?」
「ああ、それは…………勇者はそこで息絶えたのでーす」
「ああ、そうか……じゃあこのジュリアって人は……」
「お察しのとおりでーす」
その話を聞いていたソエルの表情は、すこし、悲しそうだった。俺は、この話に触れるのやめることにした。
ミツユスキーの家についた。獣車を降り、玄関先へと向かう。家の扉が開き、ミツユスキーが俺たちを出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、ご主人様。その様子だと、薬を入手できたのですね」
「もちろんさ」
俺は、ミツユスキーに薬を手渡した。
「じゃあ、さっそく使ってみます」
「水で溶かして、石化した部分にかけてくださーい」
「もしかして、賢者様ですか? では、そのように……」
ミツユスキーは、桶に水をいれて薬を溶かす。そして、桶をもって娘のミーシャのいる部屋の扉を開けた。ミーシャは車椅子に座り、うつろな目でこちらを見ていた。
「ミーシャ、もう、大丈夫、大丈夫だぞ」
ミーシャは、ミツユスキーの声に、あまり反応していなかった。ミツユスキーは、ミーシャの体に巻いてあるシーツを外し、石化した部分に、水をかけていく。
俺は、少女のすぐ傍で、回復を見届ける事にした。
石化された体にかかった水が、湯気を出し始める。そして、湯気を出しながら、石化した手足は、徐々に肌の色を取り戻し始めた。
ミーシャの絶望した目に、輝きが戻り始める。ふと、石化の解けたミーシャの手の指が、少しだけ動く。
「お父さん、動くよ」
「ああ、当たり前だ、治ったんだよ」
ミーシャは、軽く腕と足を動かす。何の問題もなく、手足は動作していた。
「治ったんだね……治ったんだね……」
「ああ、治ったんだ!」
石化の解けたミーシャは、自分の力で立ち上がり、力のない細い腕で、俺のジャージをしっかりつかんだ。そして、お礼の言葉を投げかけた。
「ありがと……おにいちゃん……ありがと……」
ミーシャは、涙を流しながら、小さな声でお礼を言い続けていた。
俺は今まで、人のために頑張っても、ウザがられてばかりだった。だが、ここでは、そんな俺の気持ちや行動が、まっすぐ反映されている。人からこんなに感謝されたのは、本当に初めてだ。
俺は、照れながら少女の頭を撫でてあげた。本当に良かった。これでミーシャは普通の生活に戻れるだろう。
──俺は……いや、俺たちは、一人の少女を救うことに成功した!
腕のリングは虹色に輝き、任務の達成を祝福する。それはSSSクラス任務を受ける準備が整った事を意味する。俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだ。
0
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる