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本編
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わたしは聖女クリスタ。二つ名は『白の奇跡』。ロザリア国にある聖道教会本部に所属する対魔族の最高戦力だ。といっても、一日の時間のほとんどは聖徒の戦闘訓練と教義の教授に費やしている。聖徒とは、聖なる守護神アルテナ様の力を使うことを許された信徒だ。その中の頂点に立つ者のみが聖女と呼ばれる。
その日、わたしは教義を終えて聖堂へと向かう途中に急な頭痛に襲われた。わたしはその痛みに耐えられず、側仕えの聖徒の肩を借りて意識を失う。その後目が覚めると、自室のベッドの上だった。
まだ、頭の中はぼんやりとしている。それと、なぜか頭の中を見知らぬ記憶が駆け巡っている。その記憶はわたしとは別人の記憶だ。
記憶の中のわたしは日本人。名前は藤島四季。なに不自由のない生活を送っていたが高校生の頃、子犬を助けようと道路に飛び出し、トラックに轢かれて命を散らす。その後、女神に転生させられ……。
その後の記憶はわたしにつながっていた。どうやらわたしは転生者かもしれない。
藤島四季の記憶を深く探索すると、その中で一つだけ不思議な記憶を見つけた。それは『聖戦伝説~聖女への道~』と呼ばれる物語だ。
物語は、魔族の戦争で最初に焼かれたノドの町の生き残り主人公アナが聖女へと覚醒し、4人のイケメン勇者を引き連れ魔王を倒すというおとぎ話。わたしはこの物語の冒頭に登場するのだが、開戦直後に魔王のスキルにより聖なる力を瘴気に変えられ、その瘴気に飲まれて命を散らすことになる。
まるで、この世界の未来を暗示したかのような物語なのだが……ひどい内容だ。開戦直後に聖女の敗北……それはあってはならないことだ。むしろ、わたしが魔王ごときに負けるはずはない。そもそも聖なる力が瘴気に変わるなどということが本当にありえるのだろうか。
自室で休み、体調を整えたわたしは聖務に復帰する。その後しばらくして、二人の神官服を着たロザリア国の近衛聖徒がわたしを訪ねてきた。二人は、わたしに重要な情報を告げる。それは、戦争開始の報告だった。
どうやら魔王軍がロザリア侵攻を開始したらしい。魔王軍10万の兵はこちらの予測で3日後にロザリアの国境を越境する。ロザリア国も同じく10万の兵を出す予定だが、初動が遅れたため国境付近に集結するのに時間がかかる。なのでわたしに出撃の要請が入った。要は兵がそろうまでの足止め役だ。もちろん殲滅も視野に入れて構わないということだが、どうも嫌な予感がする。
魔王軍との遭遇は3日後、ちょうどその日は白の月が赤い月に重なる日。それは物語の開戦直後の状況と一致するのだ。もしも、あの物語が何かの啓示だとするなら、万が一に備えてなにか対策をしなければならない。
物語の中で魔王は『聖光瘴化陣』というスキルを使用する。それはわたしの聖なる力を瘴気に変えて自滅を誘うものだ。もし、物語通りの展開になるのならば聖なる力で攻撃することはできない。まだ半信半疑だが、これが未来の予言ならことは重大だ。
わたしは、藤島四季としての記憶への疑念を抑え、ゲームの中の物語をアナの視点でより鮮明に思い出し、弱点を補うことにした。
魔王に対して聖なる力は使えない、魔法も効かない、けれど主人公アナは……魔力に属さない炎属性スキル『煉獄の十字架』を手に入れ、魔王を倒すことに成功する。その記憶に準え、後日わたしはスキル『煉獄の十字架』を会得するため、ドラゴン族領内にある煉獄の地下迷宮の踏破に挑んだ。
結果、物語の主人公たちが苦労して攻略した迷宮をわたしは日帰りで攻略した。持ち前の強さと攻略の記憶の成せる技であろう。
無事、スキル『煉獄の十字架』を入手したわたしは、来るべき時に備えた。
魔王軍10万の兵がロザリア国の国境沿いにたどり着く。それを確認したわたしは魔王軍を迎え撃つため先陣を切る。わたしが姿を見せると、魔王自らが魔王軍部隊の中央で姿を現した。本来なら魔王が前線に出ることはあり得ない。よほどの自信があるのだろう。
兵に守られた魔王は呪文を唱え、『聖光瘴化陣』を展開した。戦場の空一面に大きな魔法陣が輝く。その光景は物語と一致する。わたしはこの時、転生前の藤島四季の記憶に感謝した。
魔王軍の進軍に合わせてわたしはスキル『煉獄の十字架』を放った。もちろん、狙いは魔王だ。魔王を中心に炎が上がり、そこから十字を切るように煉獄の炎が走る。炎は魔王軍の軍勢を4つに分断した後、燃え広がり炎の渦と化す。この一撃は魔王軍の約半数と魔王を葬り去った。
魔王を失った残りの兵たちは撤退を開始する。なんともあっけない勝利だ。それでも、こちらは損害が出なかったので良しとしよう。
主人公アナの役割を奪ってしまう形になったが、わたしは今、こうして生きている。『聖戦伝説~聖女への道~』という物語は、町の悲劇やわたしの死を回避するためのものだったと思いたい。
その日、わたしは教義を終えて聖堂へと向かう途中に急な頭痛に襲われた。わたしはその痛みに耐えられず、側仕えの聖徒の肩を借りて意識を失う。その後目が覚めると、自室のベッドの上だった。
まだ、頭の中はぼんやりとしている。それと、なぜか頭の中を見知らぬ記憶が駆け巡っている。その記憶はわたしとは別人の記憶だ。
記憶の中のわたしは日本人。名前は藤島四季。なに不自由のない生活を送っていたが高校生の頃、子犬を助けようと道路に飛び出し、トラックに轢かれて命を散らす。その後、女神に転生させられ……。
その後の記憶はわたしにつながっていた。どうやらわたしは転生者かもしれない。
藤島四季の記憶を深く探索すると、その中で一つだけ不思議な記憶を見つけた。それは『聖戦伝説~聖女への道~』と呼ばれる物語だ。
物語は、魔族の戦争で最初に焼かれたノドの町の生き残り主人公アナが聖女へと覚醒し、4人のイケメン勇者を引き連れ魔王を倒すというおとぎ話。わたしはこの物語の冒頭に登場するのだが、開戦直後に魔王のスキルにより聖なる力を瘴気に変えられ、その瘴気に飲まれて命を散らすことになる。
まるで、この世界の未来を暗示したかのような物語なのだが……ひどい内容だ。開戦直後に聖女の敗北……それはあってはならないことだ。むしろ、わたしが魔王ごときに負けるはずはない。そもそも聖なる力が瘴気に変わるなどということが本当にありえるのだろうか。
自室で休み、体調を整えたわたしは聖務に復帰する。その後しばらくして、二人の神官服を着たロザリア国の近衛聖徒がわたしを訪ねてきた。二人は、わたしに重要な情報を告げる。それは、戦争開始の報告だった。
どうやら魔王軍がロザリア侵攻を開始したらしい。魔王軍10万の兵はこちらの予測で3日後にロザリアの国境を越境する。ロザリア国も同じく10万の兵を出す予定だが、初動が遅れたため国境付近に集結するのに時間がかかる。なのでわたしに出撃の要請が入った。要は兵がそろうまでの足止め役だ。もちろん殲滅も視野に入れて構わないということだが、どうも嫌な予感がする。
魔王軍との遭遇は3日後、ちょうどその日は白の月が赤い月に重なる日。それは物語の開戦直後の状況と一致するのだ。もしも、あの物語が何かの啓示だとするなら、万が一に備えてなにか対策をしなければならない。
物語の中で魔王は『聖光瘴化陣』というスキルを使用する。それはわたしの聖なる力を瘴気に変えて自滅を誘うものだ。もし、物語通りの展開になるのならば聖なる力で攻撃することはできない。まだ半信半疑だが、これが未来の予言ならことは重大だ。
わたしは、藤島四季としての記憶への疑念を抑え、ゲームの中の物語をアナの視点でより鮮明に思い出し、弱点を補うことにした。
魔王に対して聖なる力は使えない、魔法も効かない、けれど主人公アナは……魔力に属さない炎属性スキル『煉獄の十字架』を手に入れ、魔王を倒すことに成功する。その記憶に準え、後日わたしはスキル『煉獄の十字架』を会得するため、ドラゴン族領内にある煉獄の地下迷宮の踏破に挑んだ。
結果、物語の主人公たちが苦労して攻略した迷宮をわたしは日帰りで攻略した。持ち前の強さと攻略の記憶の成せる技であろう。
無事、スキル『煉獄の十字架』を入手したわたしは、来るべき時に備えた。
魔王軍10万の兵がロザリア国の国境沿いにたどり着く。それを確認したわたしは魔王軍を迎え撃つため先陣を切る。わたしが姿を見せると、魔王自らが魔王軍部隊の中央で姿を現した。本来なら魔王が前線に出ることはあり得ない。よほどの自信があるのだろう。
兵に守られた魔王は呪文を唱え、『聖光瘴化陣』を展開した。戦場の空一面に大きな魔法陣が輝く。その光景は物語と一致する。わたしはこの時、転生前の藤島四季の記憶に感謝した。
魔王軍の進軍に合わせてわたしはスキル『煉獄の十字架』を放った。もちろん、狙いは魔王だ。魔王を中心に炎が上がり、そこから十字を切るように煉獄の炎が走る。炎は魔王軍の軍勢を4つに分断した後、燃え広がり炎の渦と化す。この一撃は魔王軍の約半数と魔王を葬り去った。
魔王を失った残りの兵たちは撤退を開始する。なんともあっけない勝利だ。それでも、こちらは損害が出なかったので良しとしよう。
主人公アナの役割を奪ってしまう形になったが、わたしは今、こうして生きている。『聖戦伝説~聖女への道~』という物語は、町の悲劇やわたしの死を回避するためのものだったと思いたい。
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