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第三話
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餅人間たちがうごめく街を走り抜ける。餅人間はまるでゾンビのように動いているので、近づかなければそれほど脅威ではなかった。
走り疲れた俺は、ゆっくりと歩き始める。気が付くと、そこは商店街だった。商店街の全ての店のシャッターは閉まっていた。そして、ものすごく静かだった。
ここの人間は、全員餅人間にされてしまったのだろうか。いいや、考えすぎだ。まだ、寝ているのかもしれない。きっと俺の考えすぎだ。ここの町の人たちは大丈夫……。
──その時だった。
突然、商店街の店のシャッターが開いた。開店の時間なのだろうか、次々とシャッターが開く。
ここは大丈夫そうだ。まだ、餅人間に侵食されてはいなようだ。早く、餅人間のことを知らせなくては。
そう考えた俺は、シャッターの開いた肉屋の店に飛び込んだ。だが……そこに肉屋の店員はいなかった。
目の前に現れたのは────餅人間だった。
「うわああああああああああああ!」
駄目だ! ここも侵食されている!
すぐに俺は店を出た。だが、他の店から続々と餅人間が蟻のように出てくる。そして、俺の周囲を埋め尽くしていく。逃げ場はない。
「俺も、餅になればいいのか……」
俺は両膝を突き、抵抗するのをやめた。
「これが、宇宙人の仕業なら、何のために餅にするんだ。まさか、食うのか? 焼いて食うのか?」
ふと、視界にミカンが転がっているのが見えた。
「正月飾りだ。ミカンを乗せてやるよ!」
それは最後の抵抗だった。俺はミカンを拾い、思い切り餅人間に投げつけた。投げつけたミカンは餅に取り込まれ、吸収されていく。
だが、次の瞬間、ミカンを吸収した餅人間の体は粉状になり吹っ飛んだ。そして……人間の姿に戻ったのだ!
「こ……これは……」戻った人間は、魚屋の店主だった。
「ああ、なんだったんだいったい……ああ、こんなにいやがるのか! 餅のお化け共!」
「まさか、餅人間はミカンで撃退できるのか……!?」
まだ、わからない。偶然かもしれない。だが、この状況をどうにかするためには、もうそれにかけるしかない。
俺はとっさに今の状況を魚屋の店主に伝えた。
「ミカンです! 餅に、ミカンをぶつけてください!」
「何? ミカン? そういえば、正月用のミカンがまだ残っていたな」
「は、早く!」
魚屋の店主は、段ボールごとミカンを持ってきた。
俺は魚屋の持ってきたミカンを握り、餅人間めがけて投げつけた。すると、先ほどと同じように、ミカンをぶつけられた商店街の餅人間は、人間の姿を取り戻していく。
「これではっきりした。餅人間の弱点は、ミカンだ!」
商店街の人たちは救われた。
俺は、八百屋でミカンを一袋もらい、妹や家族を解放する。妹は、SNSに餅人間の弱点を書き込んだ。そのおかげが、徐々に町は餅人間から解放されていったのだった。
そして、餅の宇宙人の弱点がミカンだということを知った政府は、戦闘機を飛ばし、未確認飛行物体の巨大鏡餅に対してミカン爆撃を行った。もちろん、鏡餅は粉々に吹っ飛んだ。
こうして人類は、餅の脅威から解放されたのだった。
ミカンよ、ありがとう。そして、あけましておめでとう!
今年も良い年になりますように!
走り疲れた俺は、ゆっくりと歩き始める。気が付くと、そこは商店街だった。商店街の全ての店のシャッターは閉まっていた。そして、ものすごく静かだった。
ここの人間は、全員餅人間にされてしまったのだろうか。いいや、考えすぎだ。まだ、寝ているのかもしれない。きっと俺の考えすぎだ。ここの町の人たちは大丈夫……。
──その時だった。
突然、商店街の店のシャッターが開いた。開店の時間なのだろうか、次々とシャッターが開く。
ここは大丈夫そうだ。まだ、餅人間に侵食されてはいなようだ。早く、餅人間のことを知らせなくては。
そう考えた俺は、シャッターの開いた肉屋の店に飛び込んだ。だが……そこに肉屋の店員はいなかった。
目の前に現れたのは────餅人間だった。
「うわああああああああああああ!」
駄目だ! ここも侵食されている!
すぐに俺は店を出た。だが、他の店から続々と餅人間が蟻のように出てくる。そして、俺の周囲を埋め尽くしていく。逃げ場はない。
「俺も、餅になればいいのか……」
俺は両膝を突き、抵抗するのをやめた。
「これが、宇宙人の仕業なら、何のために餅にするんだ。まさか、食うのか? 焼いて食うのか?」
ふと、視界にミカンが転がっているのが見えた。
「正月飾りだ。ミカンを乗せてやるよ!」
それは最後の抵抗だった。俺はミカンを拾い、思い切り餅人間に投げつけた。投げつけたミカンは餅に取り込まれ、吸収されていく。
だが、次の瞬間、ミカンを吸収した餅人間の体は粉状になり吹っ飛んだ。そして……人間の姿に戻ったのだ!
「こ……これは……」戻った人間は、魚屋の店主だった。
「ああ、なんだったんだいったい……ああ、こんなにいやがるのか! 餅のお化け共!」
「まさか、餅人間はミカンで撃退できるのか……!?」
まだ、わからない。偶然かもしれない。だが、この状況をどうにかするためには、もうそれにかけるしかない。
俺はとっさに今の状況を魚屋の店主に伝えた。
「ミカンです! 餅に、ミカンをぶつけてください!」
「何? ミカン? そういえば、正月用のミカンがまだ残っていたな」
「は、早く!」
魚屋の店主は、段ボールごとミカンを持ってきた。
俺は魚屋の持ってきたミカンを握り、餅人間めがけて投げつけた。すると、先ほどと同じように、ミカンをぶつけられた商店街の餅人間は、人間の姿を取り戻していく。
「これではっきりした。餅人間の弱点は、ミカンだ!」
商店街の人たちは救われた。
俺は、八百屋でミカンを一袋もらい、妹や家族を解放する。妹は、SNSに餅人間の弱点を書き込んだ。そのおかげが、徐々に町は餅人間から解放されていったのだった。
そして、餅の宇宙人の弱点がミカンだということを知った政府は、戦闘機を飛ばし、未確認飛行物体の巨大鏡餅に対してミカン爆撃を行った。もちろん、鏡餅は粉々に吹っ飛んだ。
こうして人類は、餅の脅威から解放されたのだった。
ミカンよ、ありがとう。そして、あけましておめでとう!
今年も良い年になりますように!
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感想ありがとうございます!
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感想ありがとうございます!
SFホラーコメディーみたいな感じで読んでもらえるとうれしいです!
感想ありがとうございます!
餅ネタで書いてみました!