恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

文字の大きさ
13 / 81
第1章 禍福は糾える縄の如し

第10話 被害届

しおりを挟む
 翌朝8時過ぎ、祐希はさくらに付き添って駅前交番へ行った。

 朝の忙しい時間帯にもかかわらず、若い警察官がさくらの話を真剣に聞いてくれた。
 名札には「倉橋」とあった。
「なるほど、ここ最近毎週のようにストーカー被害に遭われているのですね」

「はい、そうです」
 さくらが小声で答えた。

「後を付けられたのは、どこからどこまでですか?」

「柏琳台駅からシェアハウスまでです」

「どれくらい距離がありますか?」

「徒歩で8分ほどなので、700mくらいだと思います」

「今まで何回くらい後を付けられましたか?」

「昨日で7回目です」

「昨夜は具体的にどんな被害に遭われましたか?」
 警官の質問を聞き、昨日のことがフラッシュバックしたようで、さくらの顔から血の気が引くのが分かった。

「あの…、後ろから腕を掴まれたそうです」
 さくらが、答えられない様子だったので、祐希が代わりに答えた

「なるほど…、腕を掴まれたと…」
 倉橋巡査は調書に書き込むと祐希の方を向いた。

「失礼ですが、あなたは被害者の彼氏さんですか?」
 倉橋巡査が祐希に向かって聞いた。

「い、いえ、違います。
 同じシェアハウスの住人です」

「なるほど…そうですか…
 最近、柏琳台駅前では、痴漢や変質者の出没情報が多くなっていますので、十分気をつけて下さい」

「そ、そうなんですか?」
 祐希は、倉橋巡査の言葉に驚いた。

「だから彼女をしっかりガードしてあげて下さいね」

「はい、分かりました」
 祐希は、「彼女」という言葉に少しドキッとした。

 倉橋巡査は被害届を受理し、夕方以降、駅からシェアハウスまでのパトロールを強化すると約束してくれた。

「良かった…。これで少し安心できるね」

「はい、祐希さんのおかげです。本当にありがとうございます」
 さくらは、ようやく笑顔を取り戻した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 祐希とさくらの通う大学は、シェアハウスから徒歩→電車→徒歩で、片道約40分かかる。

 祐希が通う大学と、さくらが通う大学は、隣同士の位置関係にあるのでシェアハウスからの距離はほぼ同じ。
 なので通学路が同じ祐希は、さくらのボディガードとして適役なのだ。

 今日のさくらの服装は白のブラウスにレモンイエローのプリーツスカートだった。

 祐希は周りに気を配りながら慎重に歩いた。
 距離を置かず、さくらもそれに続く。
 傍目から見れば、彼女をエスコートする彼氏にしか見えないだろう。

 2人とも、お互いを意識しながら無言で歩く。
 共通の話題がないのが、何とも気まずい。
 数日前に同居人となったばかりで、お互いのことをよく知らないのだ。
 それに2人とも異性との交際経験がないから尚更だ。

 祐希は、当たり障りのない話題をさくらに振ってみた。
「さくらさんの出身地はどこ?」

「生まれも育ちも秋田です」
 さくらが生粋の秋田美人であることに祐希は納得した。

「大学で何を専攻しているの?」

「わ、私はピアノを専攻しています」
 さくらは、聖晶学園女子大学1年で音楽学科のピアノ専攻コースだと言う。

「へ~、じゃあピアノ上手なんだね…」

「はい、母がピアノ講師なので、物心つく頃にはもう弾いてました」

 父親は高校の音楽教師、母親は自宅でピアノ教室を開いているという音楽一家の一人娘に生まれ、幼い頃から厳しく躾けられた。

 4歳からピアノとバレエを習い始め、バレエは高校2年で止めてしまったが、ピアノはライフワークにしたいと、さくらは考えていた。

 地元で有名な中高一貫教育の女子校に入学し、自宅→学校→バレエ→自宅でピアノという生活を6年間続けた。
 純粋培養された折り紙付きの箱入り娘という訳だ。

 さくらには、今年喜寿を迎えた優しい祖母がいる。
 さくらを目に入れても痛くないほど可愛がり、さくらも優しいお祖母ちゃんが大好きだ。

 進路を決める際、さくらはピアノ科のある聖晶学園女子大学へ進学し、独り暮らしを始めたいと両親に話した。
 母親は賛成してくれたが、父親は独り暮らしなどもっての外と強硬に反対した。

 その時、さくらの味方となり、父親を説得してくれたのは、祖母であった。
 頑固な父親も祖母に理詰めで説得され、徐々に態度を軟化させた。
 最後には5つの条件を満たすなら、独り暮らしを認めると言ってくれた。

 その条件とは、次のような内容であった。
 ①女子寮または女性専用住宅へ入居すること
 ②ピアノの練習が可能な防音室があること
 ③勉学に励み、必ず大学を卒業すること
 ④年3回(正月・GW・夏休み)帰省すること
 ⑤週に一度は実家に電話すること
 一番の難題は、防音室付きの女性専用住宅の確保だった。
 さくらと母親で大学近郊の物件を、しらみ潰しに探した結果、あるシェアハウスが見つかった。

 女性オーナーとの面接が必須で、管理人を含む入居者全員が女性、防音設備完備のピアノレッスン室もある。
 それがヴィーナス・ラウンジだったこと。
 そこまで聞いて、祐希はようやく彼女がこのシェアハウスに住むことになった経緯を理解した。

「俺も、少し自分の話をしていいかな」
 祐希は自分のことをゆっくりと話し始めた。

「出身は札幌、父親は会社員で、母親はスーパーでパートをしてる、ごく普通の家庭だよ」
 祐希は微笑むと、静かに言葉を続けた。
「兄弟は、兄がいたんだ。明日奈さんの旦那さんになるはずだった人。
 でも…4年前に交通事故で亡くなって、だから今は高校3年生の妹だけなんだ」

 そして自分は星城大学情報工学部2年であること。
 サークルは旅行研究会に所属していることを話した。
「祐希さんって、旅行がお好きなんですか?」

「うん、年に2~3回は旅行に行くよ。
 海外にも3回ほど行ったことあるし」

「え~、いいなぁ、私も旅行してみたいです」
 さくらは、小さい頃に家族旅行した経験しかないそうだ。

 そんな話をしながら、大学に着く頃には普通に会話できるくらいに、打ち解けていた。

 さくらとは帰りも一緒に帰るので、携帯番号を交換し、お互いにLINEの友達に登録した。

「じゃあ、3時半にここで待ってるね」

「はい、祐希さん、帰りもよろしくお願いします」
 2人は聖晶学園女子大学の正門前で分かれ、それぞれの大学に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

普段高校生ゲーム実況者として活動している俺だが、最近仲良くなりつつあるVTuberが3人とも幼馴染だった件について。

水鳥川倫理
青春
主人公、目黒碧(めぐろあお)は、学校では始業時間になっても現れない遅刻常習犯でありながら、テストでは常に学年トップの高得点を叩き出す「何とも言えないクズ」として教師たちから扱いにくい存在とされている。しかし、彼には誰にも明かせない二つの大きな秘密があった。 一つ目の秘密は、碧が顔を隠し、声を変えて活動する登録者数158万人を誇るカリスマゲーム実況者「椎崎(しいざき)」であること。配信中の彼は、圧倒的なゲームスキルと軽妙なトークでファンを熱狂させ、学校での「クズ」な自分とは真逆の「カリスマ」として存在していた。 二つ目の秘密は、彼が三人の超絶可愛い幼馴染に囲まれて育ったこと。彼らは全員が同じ誕生日で、血の繋がりにも似た特別な絆で結ばれている。 習志野七瀬(ならしのななせ): 陽光のような明るい笑顔が魅力のツンデレ少女。碧には強い独占欲を見せる。 幕張椎名(まくはりしいな): 誰もが息をのむ美貌を持つ生徒会副会長で、完璧な優等生。碧への愛情は深く、重いメンヘラ気質を秘めている。 検見川浜美波(けみがわはまみなみ): クールな外見ながら、碧の前では甘えん坊になるヤンデレ気質の少女。 だが、碧が知らない三重目の秘密として、この三人の幼馴染たちもまた、それぞれが人気VTuberとして活動していたのだ。 七瀬は元気いっぱいのVTuber「神志名鈴香」。 椎名は知的な毒舌VTuber「神楽坂遥」。 美波はクールで真摯なVTuber「雲雀川美桜」。 学校では周囲の視線を気にしながらも、家では遠慮なく甘え、碧の作った料理を囲む四人。彼らは、互いがカリスマ実況者、あるいは人気VTuberという四重の秘密を知らないまま、最も親密で甘い日常を謳歌している。 幼馴染たちは碧の「椎崎」としての姿を尊敬し、美波に至っては碧の声が「椎崎」の声に似ていると感づき始める。この甘くも危険な関係は、一つの些細なきっかけで秘密が交錯した時、一体どのような結末を迎えるのだろうか。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

俺をフッた幼馴染が、トップアイドルになって「もう一度やり直したい」と言ってきた

夏見ナイ
恋愛
平凡な大学生・藤堂蓮には忘れられない過去がある。高校時代、告白した幼馴染の星宮瑠奈に「アイドルになるから」とこっ酷くフラれたことだ。 数年後、瑠奈は国民的アイドル『LUNA』として輝いていた。遠い世界の住人になった彼女との再会なんて、あるはずもなかった――そう、変装した彼女が俺の前に現れ、「もう一度やり直したい」と泣きつくまでは。 トップアイドルの立場を使い強引に迫る元幼馴染と、過去の傷。揺れ動く俺の日常を照らしてくれたのは、俺の才能を信じてくれる後輩・朝霧陽葵の存在だった。 俺をフッた幼馴染か、俺を支える後輩か。過去の清算と未来の選択を描く、ほろ苦くも甘い、逆転ラブコメディ、開幕。

処理中です...