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第1章 禍福は糾える縄の如し
第14話 スナック茜(1)
カラオケは午後10時過ぎにお開きとなった。
「さぁ、3次会行くよ~、祐希くんは強制参加ね」
「え~、もう勘弁して下さいよ~。
お金、そんなに持ってないし…」
祐希は何とかして3次会から逃れたかったが、右腕を里緒奈、左腕を瑞希、背後を怜奈がガッチリと固められ、もはや逃れる術はなかった。
「だいじょうぶ、大丈夫。
お姉さんたちのおごりだからぁ」
「祐希くん、さくらちゃんの事は心配いらないから、お姉さん達とゆっくり飲んでいらっしゃい」
明日奈にそう言われてしまっては、もはや退路を断たれたも同然だ。
結局、さくらを含む5人は明日奈が引率し、シェアハウスへ帰ることとなった。
祐希は年上3人に引っ張られ、駅前通りの路地裏にあるネオン街へと連れて行かれた。
派手なネオンが輝く店の名前は「スナック茜」だった。
鰻の寝床のような細長い店内には、常連客と思しき男が1人で酒を飲んでいるだけで、他に客は居なかった。
店に入ると瑞希と里緒奈が声を揃えて言った。
「茜ママぁ~、活きのいい男子連れてきたよ~」
すると店の奥にいたママと思しき人物が、こちらへやってきた。
「瑞希ちゃん、里緒奈ちゃん、ありがとね。
あらまぁ、いい男じゃない、この子、私のタイプよ」
茜ママと呼ばれたのは、ゴリラのように筋肉隆々のニューハーフであった。
「ママの茜です、お名前聞いてもいいかしら?」
祐希は顔を引きつらせながら、茜ママに挨拶した。
「し、篠宮祐希です、よろしくお願いします」
「あら~、祐希くんっていうの、いい名前ねぇ~」
その間に瑞希と里緒奈は店の奥へと消えた。
「祐希くんと怜奈ちゃん、お飲み物、何にする?」
「私はハイボールもらおっかなぁ」
怜奈は上機嫌で答えた。
「僕もハイボール、お願いします」
「分かったわ、ちょっと待っててね」
茜ママはウインクすると、目の前に背の高いグラスを二つ置いた。
そして、グラスを氷で満たすとカランと小気味よい音がした。
ママは棚からスコッチウイスキーのボトルを取り出し、メジャーカップで計るとグラスに注いだ。
そしてバースプーンで氷を数回かき混ぜ、冷えたソーダを氷に当てないようにそっと注いだ。
最後に軽く一度ステアし、搾ったレモンを添えてできあがりだ。
「はい、お待ち…
スナック茜《あかね》特製ハイボールよ」
2つのグラスがコースターの上に置かれた。
琥珀色の液体の中で、きめ細やかな泡が静かに立ち上がっている。
「さすがは、茜ママね」
怜奈が嬉しそうにグラスを手に取った。
「見事な手さばきですね」
祐希がママの無駄のない動きを褒めた。
「あら嬉しい、何かサービスしちゃおうかしら」
茜ママは、褒められてまんざらでもない様子だ。
「祐希くん、茜ママ、元バーテンダーなのよ」
「え~、そうなんですか?
道理で手際がよいはずです」
「ふふん、茜ママ、こう見えて只者じゃないのよ…」
怜奈が意味深なことを言った。
祐希は、その言葉の意味を、少し後から知ることになる。
その時、カウンターの奥の扉が開き、店の制服に着替えた里緒奈と瑞希が現れた。
それは肩から伸びる細いストラップがセクシーな、ワインレッドのショートドレスだった。
里緒奈と瑞希がバイトしていると言っていたのはこの店だったのか…
今日は、新規客として祐希を店に連れてきたということらしい。
「お待たせ、祐希くん。
どう、この制服、そそられるでしょ?」
里緒奈が祐希の前でポーズを取った。
「あ~、は、はい、とてもよく似合ってます」
里緒奈が着ているドレスは、胸元が大きく開いており、Gカップの巨乳が激しく自己主張し、祐希は目のやり場に困った。
「あら、祐希くんのその反応、可愛いわねぇ、ひょっとしてまだ童貞?」
祐希の仕草に茜ママが反応した。
「え? そ、そうですけど…それがなにか?」
祐希は茜ママの言葉にタジタジだった。
「そうなんだ、それじゃ誰か筆おろししてあげなきゃね。
さすがにあたしじゃ祐希くんも嫌でしょ」
「ねぇ、里緒奈ちゃん、瑞希ちゃん、祐希くん童貞なんだって、筆おろししてあげたらぁ」
「祐希くん、あたしで良ければ、いつでも筆おろししてあげるよ♡」
そう言って里緒奈が笑った。
「あ、いえ、だ、大丈夫です。
そういうのは、自分のタイミングで決めたいので…」
里緒奈の言葉がホントなのか冗談なのか分からないが、祐希は丁重にお断りした。
「祐希くん、可愛い~。
私のペットにしたいくらい」
そう言ったのは、お天気お姉さんの怜奈だった。
「祐希くん、気をつけなきゃダメよ。
このお姉さんたち、冗談っぽく言ってるけど結構本気だからね…」
茜ママが祐希に忠告した。
「何言ってるのママ、本気なわけないでしょ、冗談よ、ジョーダン」
里緒奈と瑞希は笑っていたが、目だけは笑っていなかった。
怜奈が祐希に言った。
「そう言えばさぁ、ここだけの話なんだけどぉ…
明日奈さん、最初からあなたをあの部屋に住まわせたかったんじゃないかしら…」
「あ~、それ、あたしも思ったぁ。
あの0号室、1年以上ず~っと空き部屋だったもんね」
里緒奈がそう言うと、怜奈も深くうなずいた。
「そうそう、入居希望者がいても0号室は、先約があるって明日奈さん断ってたもんね」
瑞希も同意見のようだ。
「もしかしたら、祐希くんが星城大学に進学するの分かってたんじゃないかしら」
「え、その話、ホントですか?」
確かに星城大学が第1志望だと言うことを兄の大希にも話したし、明日奈にも話したかもしれない。
そしてインフルエンザのせいで入学が1年遅れたので、僕に話すタイミングを失ったとも考えられる。
「さぁ、3次会行くよ~、祐希くんは強制参加ね」
「え~、もう勘弁して下さいよ~。
お金、そんなに持ってないし…」
祐希は何とかして3次会から逃れたかったが、右腕を里緒奈、左腕を瑞希、背後を怜奈がガッチリと固められ、もはや逃れる術はなかった。
「だいじょうぶ、大丈夫。
お姉さんたちのおごりだからぁ」
「祐希くん、さくらちゃんの事は心配いらないから、お姉さん達とゆっくり飲んでいらっしゃい」
明日奈にそう言われてしまっては、もはや退路を断たれたも同然だ。
結局、さくらを含む5人は明日奈が引率し、シェアハウスへ帰ることとなった。
祐希は年上3人に引っ張られ、駅前通りの路地裏にあるネオン街へと連れて行かれた。
派手なネオンが輝く店の名前は「スナック茜」だった。
鰻の寝床のような細長い店内には、常連客と思しき男が1人で酒を飲んでいるだけで、他に客は居なかった。
店に入ると瑞希と里緒奈が声を揃えて言った。
「茜ママぁ~、活きのいい男子連れてきたよ~」
すると店の奥にいたママと思しき人物が、こちらへやってきた。
「瑞希ちゃん、里緒奈ちゃん、ありがとね。
あらまぁ、いい男じゃない、この子、私のタイプよ」
茜ママと呼ばれたのは、ゴリラのように筋肉隆々のニューハーフであった。
「ママの茜です、お名前聞いてもいいかしら?」
祐希は顔を引きつらせながら、茜ママに挨拶した。
「し、篠宮祐希です、よろしくお願いします」
「あら~、祐希くんっていうの、いい名前ねぇ~」
その間に瑞希と里緒奈は店の奥へと消えた。
「祐希くんと怜奈ちゃん、お飲み物、何にする?」
「私はハイボールもらおっかなぁ」
怜奈は上機嫌で答えた。
「僕もハイボール、お願いします」
「分かったわ、ちょっと待っててね」
茜ママはウインクすると、目の前に背の高いグラスを二つ置いた。
そして、グラスを氷で満たすとカランと小気味よい音がした。
ママは棚からスコッチウイスキーのボトルを取り出し、メジャーカップで計るとグラスに注いだ。
そしてバースプーンで氷を数回かき混ぜ、冷えたソーダを氷に当てないようにそっと注いだ。
最後に軽く一度ステアし、搾ったレモンを添えてできあがりだ。
「はい、お待ち…
スナック茜《あかね》特製ハイボールよ」
2つのグラスがコースターの上に置かれた。
琥珀色の液体の中で、きめ細やかな泡が静かに立ち上がっている。
「さすがは、茜ママね」
怜奈が嬉しそうにグラスを手に取った。
「見事な手さばきですね」
祐希がママの無駄のない動きを褒めた。
「あら嬉しい、何かサービスしちゃおうかしら」
茜ママは、褒められてまんざらでもない様子だ。
「祐希くん、茜ママ、元バーテンダーなのよ」
「え~、そうなんですか?
道理で手際がよいはずです」
「ふふん、茜ママ、こう見えて只者じゃないのよ…」
怜奈が意味深なことを言った。
祐希は、その言葉の意味を、少し後から知ることになる。
その時、カウンターの奥の扉が開き、店の制服に着替えた里緒奈と瑞希が現れた。
それは肩から伸びる細いストラップがセクシーな、ワインレッドのショートドレスだった。
里緒奈と瑞希がバイトしていると言っていたのはこの店だったのか…
今日は、新規客として祐希を店に連れてきたということらしい。
「お待たせ、祐希くん。
どう、この制服、そそられるでしょ?」
里緒奈が祐希の前でポーズを取った。
「あ~、は、はい、とてもよく似合ってます」
里緒奈が着ているドレスは、胸元が大きく開いており、Gカップの巨乳が激しく自己主張し、祐希は目のやり場に困った。
「あら、祐希くんのその反応、可愛いわねぇ、ひょっとしてまだ童貞?」
祐希の仕草に茜ママが反応した。
「え? そ、そうですけど…それがなにか?」
祐希は茜ママの言葉にタジタジだった。
「そうなんだ、それじゃ誰か筆おろししてあげなきゃね。
さすがにあたしじゃ祐希くんも嫌でしょ」
「ねぇ、里緒奈ちゃん、瑞希ちゃん、祐希くん童貞なんだって、筆おろししてあげたらぁ」
「祐希くん、あたしで良ければ、いつでも筆おろししてあげるよ♡」
そう言って里緒奈が笑った。
「あ、いえ、だ、大丈夫です。
そういうのは、自分のタイミングで決めたいので…」
里緒奈の言葉がホントなのか冗談なのか分からないが、祐希は丁重にお断りした。
「祐希くん、可愛い~。
私のペットにしたいくらい」
そう言ったのは、お天気お姉さんの怜奈だった。
「祐希くん、気をつけなきゃダメよ。
このお姉さんたち、冗談っぽく言ってるけど結構本気だからね…」
茜ママが祐希に忠告した。
「何言ってるのママ、本気なわけないでしょ、冗談よ、ジョーダン」
里緒奈と瑞希は笑っていたが、目だけは笑っていなかった。
怜奈が祐希に言った。
「そう言えばさぁ、ここだけの話なんだけどぉ…
明日奈さん、最初からあなたをあの部屋に住まわせたかったんじゃないかしら…」
「あ~、それ、あたしも思ったぁ。
あの0号室、1年以上ず~っと空き部屋だったもんね」
里緒奈がそう言うと、怜奈も深くうなずいた。
「そうそう、入居希望者がいても0号室は、先約があるって明日奈さん断ってたもんね」
瑞希も同意見のようだ。
「もしかしたら、祐希くんが星城大学に進学するの分かってたんじゃないかしら」
「え、その話、ホントですか?」
確かに星城大学が第1志望だと言うことを兄の大希にも話したし、明日奈にも話したかもしれない。
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