恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

文字の大きさ
26 / 133
第1章 禍福は糾える縄の如し

第23話 モヤモヤの正体

 日曜日の夜7時過ぎ。
 シェアハウス「ヴィーナス・ラウンジ」のリビングは、美味しそうな匂いと賑やかな話し声で満ちていた。
 テーブルの上には、唐揚げ、フライドポテト、焼き鳥、ドーナツといった、各々が持ち寄った料理が並んでいた。
 それに明日奈がスーパーの値引き品を狙って買ってきたという、6人前の寿司とオードブルが豪華に並んでいる。
 ヴィーナス・ラウンジ恒例プチ宴会の始まりだ。

「うまぁ~、これ、めっちゃ美味しい。
 怜奈さん、これどこのですか?」
 朱音が唐揚げを頬張りながら聞いた。

「駅前の商店街にある『唐揚げキング』っていう店よ。
 秘伝のスパイスが人気の秘密らしいわ」
 怜奈が嬉しそうに答えた。

 琴葉は、黙々とフライドポテトを食べながら、時折スマホをチェックしていた。
 明日奈は缶チューハイ片手に、みんなの話ににこやかに相槌を打っている。
 さくらも、その和やかな雰囲気に自然と笑顔になっていた。
 祐希は、まだ風呂に入っているようだ。

 そこへ、2階から未来みくが降りてきた。
 その表情は、お出かけの興奮冷めやらぬといった様子だ。
「わ~、お寿司だ~、美味しそう。
 これ食べていいんですか?」

「どうぞ召し上がれ」
 明日奈がそう言うと、待ってましたとばかりに、未来みくが寿司に手を伸ばした。
「明日奈さん、いただきま~す」
 未来みくは、お寿司が大好物なのだ。

未来みくちゃん、どうだった?
 祐希くんとの映画!」 
 怜奈が未来に興味津々といった様子で聞いた。

「そうそう、詳しく聞かせてよ~!」
 朱音が身を乗り出して聞いた。

「え、それ聞いちゃいますぅ~」
 未来みくは勿体ぶりながら、それでも話したくて仕方ない様子だった。

「うん、聞きたい、聞きたい」
 琴葉も身を乗り出して、聞き耳を立てた。
 それに明日奈も興味津々といった様子で、
「未来ちゃん、聞かせて、聞かせて」と言い出した。

 さくらは、自分だけ会話に参加していないことに気づき、慌てて言葉を続けた。
「未来さん、私も聞きたいです」

「しょうがないなぁ、じゃあ、話しちゃいますね」
 未来は、祐希がこの場にいない今がチャンスだと思った。
「すっごく楽しかったです! 
 映画、めちゃめちゃ感動しちゃって…! 
 それに、ご飯も美味しかったし、祐希兄ちゃん、すっごく優しくて……」
 未来みくは、キラキラと目を輝かせながら話した。

「いいな~、私も見に行きたいなぁ…
 その映画いつまでやってるの」
 琴葉もその映画を見てみたいと思った。

「今月いっぱいだよ」
 未来が嬉しそうに答えた。

「未来ちゃん、映画の後、どこか寄った?」
 今度は、怜奈が聞いた。

「うん、その後ね、 ショッピングにも付き合ってくれて…これ見て!」 
 未来みくは嬉しそうに、スポーツキャップを取り出して見せた。
 人気キャラクターが刺繍された、可愛らしいデザインだ。

「これ、祐希兄ちゃんがプレゼントしてくれたの。
 私が悩んでたら、『今日のお礼に』って買ってくれて…!
 もう、本当に嬉しくて…! 大事にしなきゃ!」
 未来みくは、キャップを胸に抱きしめ、幸せそうに微笑んだ。
 その姿は、恋する乙女そのものだった。

「へぇ~、祐希くん、やるじゃない」 
 明日奈が祐希のスマートさに感心した。

「未来ちゃん、よかったね~」 
 周りのみんなは、温かい言葉をかけた。

 さくらも「よかったね」と笑顔を作ったが、それとは裏腹に心はどんどん沈んでいった。

 午前中から、ずっと胸の中にあったモヤモヤが、未来みくの話を聞くうちに、増幅していくのを感じていた。

(……この感情はなんだろう)
 未来みくが祐希と映画に行って楽しかったのは、良いことなのに……
 祐希が未来みくにプレゼントしたのも、彼らしい優しい行動なのに。

 なぜ、素直に喜べないのか。
 むしろ胸がヒリヒリして、未来みくの話をそれ以上聞きたくなかった。
 頭では理解しているのに、心が拒絶しているのだ。
 未来みくの屈託のない笑顔が、眩しすぎて直視するのが辛かった。

 さくらは相槌を打つのも忘れ、黙り込んでいた。
 目の前のお寿司にも手が伸びず、ただグラスの水滴を指でなぞった。
(私、どうしちゃったんだろう……)
 生まれて初めて感じる、自分でも理解できない不快な感情。
 その正体が分からないまま、さくらは賑やかな輪の中で、一人、戸惑っていた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 月曜日の朝。
 いつものように朝食を済ませ、祐希はさくらと一緒にシェアハウスを出た。
 昨日、未来と映画に行く時から、さくらの様子がおかしいことに、祐希は気づいていた。
 夜のプチ宴会でも、どこか上の空だった。
 今日のさくらは、朝から不機嫌そうだった。
 朝の挨拶も声が小さく、いつもの笑顔もなかった。
 祐希が話しかけても、返事は単調で心ここにあらずといった感じだ。

 シェアハウスから駅までの道を並んで歩く。
 いつもは自然と始まる他愛のない会話が、今日は全く生まれない。
 さくらは俯きながら1歩先を歩き、時折小さなため息をつく。
 その横顔は硬く、祐希を見ようとしない。

 祐希には、さくらが不機嫌な理由が思い当たらなかった。
 この重苦しい空気は、さすがの祐希にも居心地が悪かった。
 状況に耐えきれなくなり、祐希が声をかけた。
「さくらさん、僕、何か気に障るようなこと言ったかな?」

 その言葉に、さくらはゆっくりと足を止めた。
 そして祐希に向き直ると、困ったような表情で言った。
「ごめんなさい……これは、私の問題なんです」

 さくらは自分でも制御不能な感情にモヤモヤしていた。
 その原因が何か分かっている。
 祐希が昨日未来みくと仲良さそうに映画に出かけ、それを彼女が嬉しいそうにみんなに話していたこと。
 そのことを思い出すと、胸の奥がヒリヒリと焼けつくような感覚に襲われるのだ。

 未来みくは大切なシェアハウスの仲間だし、祐希が誰と出かけようと関係ないはずなのに。
 そんな風に思ってしまう自分が、さくらは嫌いだった。
 純粋培養された箱入り娘で、恋などしたことのない彼女にとって、この初めての感情は、あまりに厄介で、理解できないものだった。

「祐希さん…ごめんなさい。
 今日、ホントに調子が悪くて…」
 さくらはそう言うと、俯きながら歩き出した。

 祐希は、それ以上何も聞くことはできず、ただ黙って彼女の1歩後ろを歩いた。
 駅までの道が、いつもよりずっと長く感じられた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?