恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

文字の大きさ
34 / 133
第2章 光と陰

第31話 祐希兄ちゃん(2)

 未来みくと琴葉は、カフェ・バレンシアを出て、シェアハウスへの道をゆっくりと歩き始めた。
 未来みくは、祐希の呼び方のことで頭がいっぱいだった。
「祐希兄ちゃんのこと、これからなんて呼べばいいんだろ……」

 呼び方を『祐希さん』に変えたら、なぜ急に呼び方を変えたのか、祐希は疑問に思うだろう。
 その疑問に、何と答えれば良いのか、未来は答えを見つけられなかった。

「ん~、でも年上だから『祐希さん』が一番自然じゃない?」

「やっぱりそうだよぇ。
 でも、呼びにくさは変わりないかなぁ」

 その時、琴葉が前方を指差してこう言った。
「ねぇ未来、あれ祐希さんじゃない?」

「えっ、どこ?」
 未来が、目を凝らして見ると、50mほど先を歩いているのは確かに祐希だった。
「今日はバイト休みのはずなのに……」

「あの隣の女の人、誰だろ……」

「あれ、さくらちゃんじゃない?」
 琴葉が見つけたのは、映画帰りの祐希とさくらだった。
 しかも2人ともお洒落して、いかにもデート帰りといった感じだ。

「……さくらちゃんと一緒なの?」

「なんか、いい雰囲気だよ」
 琴葉に言われるまでもなく、未来もそう感じた。

「……でもなんで?」
 未来みくには、状況が理解できなかった。

 当の祐希とさくらは話に夢中で、後ろを振り返る様子もなく、仲良く歩いていた。
 琴葉のバイト先のコンビニを過ぎて、暗くなる辺りで、祐希とさくらは手を繋いだ。

「えっ、手、繋いだよ」

「ホントだ、手繋いじゃった」

「私だって、まだ繋いだことないのに……」
 未来みくは、2人が手を繋いでいることがショックだった。

「祐希さんて、さくらちゃんのボディガードだよね。
 いつの間に、あんなに親密になったんだろ……
 未来、負けてるよ。
 頑張らないと、あの2人付き合っちゃうかもよ」

「えっ、私、どうしたらいいの?」

「未来、まずは『祐希兄ちゃん』ていう呼び方、めるべきよ」

「分かった、私頑張るね!
 琴葉、ありがとう」
 突然のライバル出現に未来みくは焦った。
 自分を妹ではなく、一人の女性として認識させて、祐希を振り向かせないと。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 未来みくと琴葉は、シェアハウスへ帰った。
 そして部屋で着替えて2人でラウンジへ行くと、いつものようにプチ宴会が始まっていた。

 その場にいたのは明日奈、怜奈、朱音、さくらの4人だった。
 祐希はお風呂に入ったらしい。
 今日もみんなが持ち寄った惣菜と、明日奈がデリバリーで取り寄せたピザが並んでいた。

「未来ちゃん、琴葉ちゃんお帰りなさい。
 ピザあるけど、食べる?」

「ありがとうございます。
 でも、今日は食べてきたので、飲み物だけにしておきます」
 2人は丁重に断った。

「ねぇ、さくらちゃん、祐希くんと映画行ったんでしょ。
 映画、面白かった?」
 明日奈がさくらに聞いた。

「はい、面白かったです。
 それに、とても感動的な映画でした」
 さくらは、映画のあらすじを感情を込めて話した。

「へ~、その映画見てみたいわね」

「はい、ぜひ見に行ってください」

 未来は、明日奈の言葉で、さくらと祐希が映画に行ったことを知った。
 (なんでさくらちゃんが、映画に行ったの?
 私が祐希兄ちゃんと映画に行ったから?
 さくらちゃんも映画見たかったのかな?)

 先週の日曜日、自分が祐希と映画に行って楽しかったことをみんなに話して、舞い上がっていたことを思い出した。
 きっと、それを聞いたさくらも映画が見たくなったのだろう、と未来は思った。

 そういえば、彼女はストーカーに狙われているから、一人で行けなかったんだ。
 だから、祐希兄ちゃんに映画に連れていってもらったのね。

 未来は一人で納得した。
 でも、なんで手を繋いだのだろう。
 未来は、その点だけが納得いかなかった。

「今日はバンドの練習で疲れたから、部屋で横になります」
 未来は、早々に自分の部屋へ引き上げた。
 本当は、さくらの幸せそうな顔を見ているのがつらかったからだ。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 自分の部屋でベッドに寝転がり未来は考えた。
 さくらが祐希と手を繋いでいた。
 どう見ても祐希とさくらの距離が近づいている証拠だ。
 私も負けていられない。
 今できることをして、少しでもさくらに追いつかないと……

 まずは呼び方を「祐希さん」に変えると、本人に伝えなければ……
 おそらく、なぜ呼び方を変えるのか、理由を聞かれるだろう。
 その時、なんと答える?

 何かうまい理由はないか……
 未来は必死で考えて、ある口実を思いついた。
 そこにさりげなく、本当の理由を混ぜる。
 自分を妹としてではなく、一人の女性として見てほしいからだと……

 そう言ったら、祐希はなんと言うだろう。
 未来が祐希に想いを寄せていることはバレるだろう。
 でも、想いを伝えなきゃ、そこから先へは進めない。
 未来は祐希に、このことを伝える覚悟を決めた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 午後10時半、ラウンジの照明は消え、他の住人は自分の部屋へ戻っていた。
 未来は意を決して、祐希の部屋のドアをノックした。

 するとすぐに返事があり、ドアが開いて中から祐希が顔を見せた。
「未来、こんな時間にどうした?」

「あの、ちょっとだけ時間あるかな」

「いいけど、何の話?」

「えっとね、大事な話なの、中に入れてもらってもいい?」

「うん、いいよ。じゃあ中へ入って」
 祐希は未来を部屋へ招き入れた。

「未来、そこに座って」
 祐希は、窓際のソファを指し示した。

 未来がソファに座ると祐希は向かいの席に座った。
「それで、大事な話って何?」
 祐希にそう言われて、未来は心臓が飛び出そうなほど緊張した。

「あ、あのね、な、名前の呼び方を変えたいなって思ったの…」

「名前の呼び方?」

「うん、そうなの。
 私、今まで『祐希兄ちゃん』って呼んできたけど、これからは他の人と同じように『祐希さん』って呼ぼうかなって思ってね……」

「へ~、そうなんだ。
 でも、なんで急に呼び方を変えようと思ったの?」

 予想通りの質問に、未来は顔を真っ赤にして、考えてきた答えを言った。

「わ、私、もう19歳でしょ。
 だから、今さら『兄ちゃん』もないかなって思ったの。
 それに私、幼馴染だけど、本当の妹じゃないから、これからは一人の女子として見てほしいの。
 今の呼び方だと、本当の妹のあかりちゃんにも悪いしね…」
 未来は自分が考えた通りに説明できたと、内心ホッとしていた。

 未来の言葉を黙って聞いていた祐希は、しばらくの沈黙の後、こう言った。
「なるほどね、呼び方を変える理由は分かったよ。
 でも未来みく、そう簡単に呼び方変えられるのか?」

「うん、もう口癖になってるから……少し時間は掛かると思うけどね」

「了解、それじゃ僕も未来から『祐希さん』て呼ばれるの、慣れなきゃな」

「そうだよ、祐希兄ちゃん……」

「未来、言った傍からもう言ってるじゃん」

「へへ、ホントだね。
 でも私、頑張って呼び方変えるからね……祐希さん」
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?