恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

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第2章 光と陰

第49話 お仕置き

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 キャンプの早朝6時、スクリーンタープの中では、明日奈と怜奈とさくらが朝食の準備をしていた。
 怜奈が羽釜でご飯を炊き、さくらは味噌汁を作り、明日奈は野菜炒めを作った。

「おはようございます」
 そこへ祐希がやって来た。

「祐希くんおはよう」
 明日奈と怜奈が挨拶した。

「祐希さん、おはようございます」
 さくらは祐希と視線を合わせず挨拶を返した。

「何か手伝いますか?」
 祐希が気を利かせて言った。

「それじゃ、祐希くんは目玉焼き焼いてくれる?
 フライパンとターナーはそこ、卵とオリーブオイルはこれ使ってね」

「分かりました」

 祐希が目玉焼きを焼き始めると、明日奈が言った。
「昨日は、あの後、大変だったみたいね」

「あ~、里緒奈さんのことですか?」
 祐希が答えた。

「そう、怜奈ちゃんから内容は聞いたけど……
 里緒奈ちゃん、厳しく叱っておくから許してね」

「はい、分かりました。ありがとうございます」
 祐希が返事すると、何事もなかったかのように、みんなは朝ごはんの準備を続けた。

 やがて、未来と琴葉、朱音、瀬奈の順に起きてきた。
「おはようございます。
 朝ごはんの準備手伝いますね」

 みんなは、食器を並べたり、味噌汁をよそったりと準備を手伝った。
 朝食の準備ができても瑞希と里緒奈は起きてくる気配がなかった。

「怜奈ちゃん、悪いんだけど、瑞希ちゃんと里緒奈ちゃん起こしてきてくれる?」
 明日奈が、怜奈に頼んだ。

「分かりました。叩き起こしてきます」
 怜奈は腕まくりして、キャンピングカーの方へ歩いていった。

 それからしばらくして、瑞希と里緒奈が寝癖がついたまま、タープに姿を現した。
「みんな、おはよ~」
 2人は欠伸しながら挨拶した。

「里緒奈、昨日は飲みすぎたね」
 瑞希が言った。

「ホントだね、頭ガンガンする、完全に二日酔いだわ」
 里緒奈は悪びれた様子もなく、朝食の準備が整った席に座ろうとした。

 それを見かねた明日奈が言った。
「ちょっと、そこの二人、遅く起きてきて、言うことはそれだけ?
 早起きして、朝ごはんの準備してくれた人に感謝の言葉は無いわけ?」
 いつも温厚な明日奈にしては珍しく、激怒げきおこ状態だった。

「あ、ごめんなさい、飲みすぎて頭が働いてなくて……
 みんな、ご飯作ってありがとね」
 里緒奈と瑞希は周りの人に頭を下げた。

「二人とも昨日のことは、覚えてないわけ?」

「あ~、確かに飲みすぎて迷惑かけたかも……」

「それだけじゃないでしょ……里緒奈ちゃん」

「え、他に何かありました?」
 里緒奈は、昨日の自分の失言を覚えていなかった。

「呆れたわね……
 里緒奈ちゃん、シェアハウスに帰ったら、オーナー室へいらっしゃい。
 あなたに、言いたいことがあるから……
 この話はこれでお終い。
 せっかくの温かいごはんが冷めてしまうわ。
 さあ、いただきましょう」

 明日奈の合図で、全員が手を合わせ「いただきます」と言った。
 朝の食卓には、何とも言えない気まずい空気が流れた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 その日の午後、シェアハウスに戻った住人たちは、キャンプの後片付けに追われていた。
 それも一段落したその日の夕方、明日奈が里緒奈をオーナー室へ呼び出した。

「里緒奈です」
 神妙な面持ちで里緒奈がノックすると、中から返事があった。

「はい、どうぞ」

「失礼します」
 里緒奈が中へ入ると、明日奈の隣には祐希が座っていた。

「そこへ掛けて」
 里緒奈は明日奈に促され、向かいの席へ座った。

「今日は、このシェアハウスの管理人として、祐希くんにも同席してもらうから……
 里緒奈、どうして私に呼び出されたか分かる?」

「はい、キャンプで羽目を外して、酔っ払って迷惑掛けたからだと思います」

「確かに、それもあるわ。
 でもあなた……大事なことが分かってないから、こうしてわざわざ来てもらったの……」

「は、はい」
 里緒奈は、小さな声で答えた。

「何が分かってないと思う?」

「……分かりません」

「まず一つ目は、プライバシーの侵害……
 今回の件、怜奈ちゃんから詳しく聞いたけど……
 本人の同意もなく、勝手に他人のプライベートを言いふらしたわよね?
 酔っ払ってたからといって、決して許されることじゃないわ!」

「……その通りです……」

「二つ目。あなた、パワハラが過ぎるわよ。
 祐希くんの先輩だからって、嫌がる彼を無理やりスナックに連れていったりしたわよね。
 それも一度や二度じゃないはずよ」

「……はい」

「三つ目。これが一番呆れたんだけど……セクハラ発言よ。
 祐希くんに『経験ある?』って聞いたり、本人が否定しているのに『しちゃったんでしょ』と決めつけたり……。
 それは立派なセクハラだし、人として一線を越えてるわ!
 しかも、自分が言ったことも覚えてないなんて、言語道断よ!
 それから、一番の問題はお酒よ。あなたね、毎回飲みすぎ!」
 明日奈は畳み掛けるように言った。

「……はい……」
 図星を突かれ、里緒奈は返す言葉もなかった。

「里緒奈ちゃん、あなたもう22歳でしょ。
 もう少し分別ある大人の振る舞いをしなさい!
 祐希くんは、大学の後輩でもあるんでしょ?
 後輩といえども節度を持って接するべきよ。
『親しき中にも礼儀あり』って言葉、知ってるわよね?」

「は、はい……」

「あなたにとっては、お酒の席での『楽しい』出来事かもしれないけど……
 巻き込まれた側にとっては『楽しくない』、ただの後味の悪い嫌な思い出にしかならないの。
 それが分からないようじゃ、いつかお酒で失敗するわよ」
 明日奈の言葉は、鋭い刃物のように里緒奈の心に突き刺さった。

「昔から言うでしょ、『酒は飲んでも飲まれるな』って。
 あなたの酒癖の悪さは、これまでも何度か注意してきたわよね?
 その度に『気をつけます』って言ってたけど、今回は流石にひどすぎるわ。
 これ以上、見過ごすわけにはいかないの」

「……申し訳ありません」
 里緒奈は完全に萎縮し、小さくなっていた。

「年下の後輩たちのこと、もっと尊重してあげなさい。
 先輩としての威厳を見せるのは、お酒の量じゃなくて、気遣いと態度なんだから」

「はい……肝に銘じます」

「今回は厳重注意としておくけど……
 今後、同様の問題を起こしたら……その時は退去してもらうことになるから……
 そのつもりでいてね」

「た、退去ですか!?……」
 シェアハウスを追い出されると聞いて、里緒奈の顔から血の気が引いた。

「そう、退去です」
 明日奈は冷たく言い放った。

「わ、分かりました……
 明日奈さんの言葉を肝に銘じて、問題を起こさないよう気をつけます……」

「分かればよろしい。
 祐希くんや他の住人への謝罪は、後でちゃんとしておくこと。
 話は以上よ、下がっていいわ」

「はい……色々とご迷惑をおかけしました……」
 里緒奈は深々と頭を下げると、重い足取りで部屋を出ていった。
 その背中は、入ってきた時よりも一回りも二回りも小さく見え、完全にうなだれていた。
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