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第2章 光と陰
第50話 家庭教師
カフェ・バレンシアに「聖女の天使」がバイトしているという噂は大学中に広まり、店の半分以上が男性客という異常事態へと発展した。
常連の女性客からは苦情が入るようになり、店長である美里ママは何か対策を講じなければならないと思っていた。
そんな矢先、子供が入院したため休んでいたパートの鈴木さんが、明日から出勤できると連絡があった。
男性客の入店を制限しようと考えていたところだったので、美里ママはホッと胸を撫で下ろした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さくらはバイト最終日を迎えた。
予定より数日遅くなったが、さくらのピンチヒッターとしての役目も今日で終わりだ。
「さくらちゃん、1ヶ月間、お疲れ様。
とても助かったわ。ありがとう」
閉店後のホールで美里ママが、さくらの手を握り感謝の言葉を述べた。
「こちらこそ、お役に立てて嬉しいです。
私も色々と新しい経験ができました」
さくらも美里ママに感謝の言葉を伝えた。
美里ママはバッグから封筒を取り出した。
「はいこれ、今月のお給料、頑張ってくれたから、感謝の意味を込めて多めに入れておいたわ」
美里ママが封筒をさくらに渡した。
「あ、ありがとうございます。
中身、見てもいいですか?」
さくらが封筒を開けると、中には1万円札が10枚入っていた。
「え、こんなに!?
いくら何でも、もらい過ぎですよ……」
「いいのいいの……
さくらちゃん、頑張ってくれたし……
そのお陰でお客さんも増えて、売り上げも伸びたんだから……
さくら様々よ」
「い、いいえ、私はできることをしたまでですから……」
「あなたって、謙虚で礼儀正しくて美人だし、本当にいい子ねぇ……
ところで、あなた、これからはどうするの?
バイト辞めたあと、祐希くんの仕事が終わるまで、カウンター席で本を読んで待ってるわけ?」
「はい、そのつもりです」
「そうねぇ……読書も有意義な時間の使い方かもしれないけど……
ねぇ、さくらちゃん……もしよかったら、家庭教師やってみない?」
「え、家庭教師って……誰のですか?」
「うちの結よ。
あの子、店を手伝ってくれるのはいいんだけど、その分勉強の時間が取れなくて……
最近どんどん成績落ちてきてるのよ」
美里ママの話によると、今の結の成績は平均より下らしい。
「あの子、祐希くんと同じ大学に行きたいって言ってるのよ。
でも今の成績じゃ無理だって……担任の先生に言われてるの……
だから、進学塾に行くか、家庭教師を付けないと無理だって……」
「そうなんですか……」
「さくらちゃん、家庭教師って……したことある?」
「いえ、ないです……」
「失礼なこと聞いちゃうけど……
さくらちゃん……高校の時の偏差値はいくつだったの?」
「え~っと、確か最後は67だったと思います」
「ろ、ろくじゅうなな!?
さくらちゃん、あなた頭良いのね……」
「いえ、父が勉強してろって、煩かったものですから」
「ねぇ、さくらちゃん、結の家庭教師、お願いできないかしら……
お月謝弾むから、お願い、この通り」
美里ママは、手を合わせ得意の神頼みのポーズを取った。
結局、さくらは美里ママの押しに負けて、家庭教師を引き受けることとなった。
相談の結果、家庭教師は平日17時から20時までの3時間と決まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
バイトからの帰り道、祐希とさくらは手を繋いで歩いていた。
コンビニを過ぎて暗くなる辺りから、お互いに手を繋ぐのは、今では当たり前のこととなっていた。
それでも、繋いだときのドキドキ感には、なかなか慣れない2人だった。
「そう言えば、さくらさん、結ちゃんの家庭教師するんだってね」
「そうなんですよ、美里ママから頼まれて……どうしても断れなくて」
「あの人、ああ見えて結構押しが強いからね。
それで、さくらさんは、家庭教師ってしたことあるの?」
「ありません……」
「そうなんだ」
「祐希さん、家庭教師って、どうすればいいんですか?」
「そうだなぁ、まず最初は本人の学力がどの程度か、把握するところから始めるのが一般的かな。
後は、得意教科と苦手教科の洗い出しかな……」
「なるほど……」
「結は高2だから、まず中3から高1の基礎がクリアできているか、チェックしてみるのがいいかな……」
「あ~なるほど、それはいいですね」
「その次は、偏差値アップのために、定期テストと模試の成績向上かな」
「そうですよね、偏差値上げるには、毎回のテスト勉強もやらないとですね」
「さくらさん、週5で家庭教師するなら、それ以外の土日の勉強スケジュールも一緒に決めてあげた方がいいかな。
結ちゃん、頭悪くないし、要領もいいから、やればできる子だと思うんだよね」
「確かに、そんな感じしますね」
「ところで、結ちゃんの志望校って、どこなの?」
「美里ママは、祐希さんと同じ大学って言ってましたよ」
「え、そうなんだ。うちの大学かぁ……
どの学部なんだろ」
「さあ、そこまでは聞かなかったです。
今度聞いてみますね……」
「志望校や学部によって、受験に必要な偏差値も変わってくるから、傾向と対策も立てやすいしね」
「祐希さん、家庭教師やってたことあるんですか?」
「いや、ないよ。
僕は家庭教師から教わる側として、過去の自分に置き換えて考えてみただけさ」
さくらは、祐希に相談して良かったと思った。
「なるほど、そういうことでしたか……
祐希さん、アドバイスありがとうございます。
これからも、相談に乗ってくださいね!」
「もちろんだよ」
祐希は微笑むと、さくらの手をギュッと握った。
さくらは、親身に相談に乗ってくれた祐希の優しさが嬉しかった。
常連の女性客からは苦情が入るようになり、店長である美里ママは何か対策を講じなければならないと思っていた。
そんな矢先、子供が入院したため休んでいたパートの鈴木さんが、明日から出勤できると連絡があった。
男性客の入店を制限しようと考えていたところだったので、美里ママはホッと胸を撫で下ろした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さくらはバイト最終日を迎えた。
予定より数日遅くなったが、さくらのピンチヒッターとしての役目も今日で終わりだ。
「さくらちゃん、1ヶ月間、お疲れ様。
とても助かったわ。ありがとう」
閉店後のホールで美里ママが、さくらの手を握り感謝の言葉を述べた。
「こちらこそ、お役に立てて嬉しいです。
私も色々と新しい経験ができました」
さくらも美里ママに感謝の言葉を伝えた。
美里ママはバッグから封筒を取り出した。
「はいこれ、今月のお給料、頑張ってくれたから、感謝の意味を込めて多めに入れておいたわ」
美里ママが封筒をさくらに渡した。
「あ、ありがとうございます。
中身、見てもいいですか?」
さくらが封筒を開けると、中には1万円札が10枚入っていた。
「え、こんなに!?
いくら何でも、もらい過ぎですよ……」
「いいのいいの……
さくらちゃん、頑張ってくれたし……
そのお陰でお客さんも増えて、売り上げも伸びたんだから……
さくら様々よ」
「い、いいえ、私はできることをしたまでですから……」
「あなたって、謙虚で礼儀正しくて美人だし、本当にいい子ねぇ……
ところで、あなた、これからはどうするの?
バイト辞めたあと、祐希くんの仕事が終わるまで、カウンター席で本を読んで待ってるわけ?」
「はい、そのつもりです」
「そうねぇ……読書も有意義な時間の使い方かもしれないけど……
ねぇ、さくらちゃん……もしよかったら、家庭教師やってみない?」
「え、家庭教師って……誰のですか?」
「うちの結よ。
あの子、店を手伝ってくれるのはいいんだけど、その分勉強の時間が取れなくて……
最近どんどん成績落ちてきてるのよ」
美里ママの話によると、今の結の成績は平均より下らしい。
「あの子、祐希くんと同じ大学に行きたいって言ってるのよ。
でも今の成績じゃ無理だって……担任の先生に言われてるの……
だから、進学塾に行くか、家庭教師を付けないと無理だって……」
「そうなんですか……」
「さくらちゃん、家庭教師って……したことある?」
「いえ、ないです……」
「失礼なこと聞いちゃうけど……
さくらちゃん……高校の時の偏差値はいくつだったの?」
「え~っと、確か最後は67だったと思います」
「ろ、ろくじゅうなな!?
さくらちゃん、あなた頭良いのね……」
「いえ、父が勉強してろって、煩かったものですから」
「ねぇ、さくらちゃん、結の家庭教師、お願いできないかしら……
お月謝弾むから、お願い、この通り」
美里ママは、手を合わせ得意の神頼みのポーズを取った。
結局、さくらは美里ママの押しに負けて、家庭教師を引き受けることとなった。
相談の結果、家庭教師は平日17時から20時までの3時間と決まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
バイトからの帰り道、祐希とさくらは手を繋いで歩いていた。
コンビニを過ぎて暗くなる辺りから、お互いに手を繋ぐのは、今では当たり前のこととなっていた。
それでも、繋いだときのドキドキ感には、なかなか慣れない2人だった。
「そう言えば、さくらさん、結ちゃんの家庭教師するんだってね」
「そうなんですよ、美里ママから頼まれて……どうしても断れなくて」
「あの人、ああ見えて結構押しが強いからね。
それで、さくらさんは、家庭教師ってしたことあるの?」
「ありません……」
「そうなんだ」
「祐希さん、家庭教師って、どうすればいいんですか?」
「そうだなぁ、まず最初は本人の学力がどの程度か、把握するところから始めるのが一般的かな。
後は、得意教科と苦手教科の洗い出しかな……」
「なるほど……」
「結は高2だから、まず中3から高1の基礎がクリアできているか、チェックしてみるのがいいかな……」
「あ~なるほど、それはいいですね」
「その次は、偏差値アップのために、定期テストと模試の成績向上かな」
「そうですよね、偏差値上げるには、毎回のテスト勉強もやらないとですね」
「さくらさん、週5で家庭教師するなら、それ以外の土日の勉強スケジュールも一緒に決めてあげた方がいいかな。
結ちゃん、頭悪くないし、要領もいいから、やればできる子だと思うんだよね」
「確かに、そんな感じしますね」
「ところで、結ちゃんの志望校って、どこなの?」
「美里ママは、祐希さんと同じ大学って言ってましたよ」
「え、そうなんだ。うちの大学かぁ……
どの学部なんだろ」
「さあ、そこまでは聞かなかったです。
今度聞いてみますね……」
「志望校や学部によって、受験に必要な偏差値も変わってくるから、傾向と対策も立てやすいしね」
「祐希さん、家庭教師やってたことあるんですか?」
「いや、ないよ。
僕は家庭教師から教わる側として、過去の自分に置き換えて考えてみただけさ」
さくらは、祐希に相談して良かったと思った。
「なるほど、そういうことでしたか……
祐希さん、アドバイスありがとうございます。
これからも、相談に乗ってくださいね!」
「もちろんだよ」
祐希は微笑むと、さくらの手をギュッと握った。
さくらは、親身に相談に乗ってくれた祐希の優しさが嬉しかった。
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