恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

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第3章 揺れる想い

第63話 ピロートーク

 激しい情事の余韻が、部屋を官能的な空気で包み込んでいた。
 乱れたシーツの上で、祐希は明日奈の豊かな胸に顔を埋めている。
 彼女はそんな彼を優しく包み込み、愛おしそうに髪を指で梳いていた。

「ねえ、祐希……
 聞いてもいい?」
 明日奈が甘えた声で言った。

「ん、何を?」

「さくらちゃんと未来ちゃん……
 どっちが本命なの?」

「えっ、今、それ聞くの?」

「だってぇ……義姉あねとしては、義弟おとうとの恋愛事情を把握しておきたいじゃない……」

「ホントにそれだけ?」

「ホントよ、どっちが好きなのか気になるじゃない……ね、お義姉ねえさんに教えて……」
 明日奈は懇願するような目で祐希を見た。

「わ……分かったよ……正直に言うよ」
 祐希は慎重に言葉を選びながら、明日奈の要望に応えた。

「さくらさんは、シェアハウスで会う前に、偶然駅で見かけて、一目惚れしたんだ」

「あ~、それ分かるわぁ。
 さくらちゃんって、『可愛い』と『綺麗』と『可憐』と『清楚』を足して4で割ったようなビジュアルだから、絶対目を引くよね」

「確かに、その表現がピッタリだと思う……
 だから、さくらさんが本命なのは間違いないかな……」

「じゃあ、未来ちゃんのことは、どう思ってるわけ?」 
 
「未来とは、シェアハウスで運命的に再会した時に、見違えるほど綺麗になったと思ったけど、幼馴染みを超えるような恋愛感情は無くて……でも……」

「でも?」

「この前、ライブの後、2次会でスナック茜に行ったでしょ……
 実はあの後、未来に告白されたんだ」

「へ~、未来ちゃん、ずいぶんと思い切ったわねぇ」

「未来は……自分をただの幼馴染みじゃなく、一人の女性として見てほしいって言ったんだ」

「なるほど……異性として見てほしいって、はっきり言われた訳か……」

「そんなこと言われたら、嫌でも女性として意識するでしょ……」

「確かにねぇ……
 それで、本命のさくらちゃんとは、何も進展ないの?」

「この前のキャンプで……キスしたよ……」

「え! キスしたの?
 青春してるわねぇ……」

「あの夜、さくらさんと2人で湖岸まで星を見に行ったんだ……
 満天の星空で、すごくいい雰囲気になって……
 星を見てるさくらさんが、あまりにも綺麗だったから……
 その横顔に見とれてたら、彼女が目を閉じたので、思わず、キスしちゃったんだ……」

「祐希、意外と大胆なのね。
 ……で、告白したの?」

「その時は、キスしたことに舞い上がって、頭が真っ白になっちゃって……」

「時機を逸したわけね……」

「そう……
 それにタープに戻ったら……もうそれどころじゃなくて……」

「あ~、里緒奈ちゃんの暴露事件ね」

「ホント、あの時は修羅場だったよ。
 僕と未来がラブホテルに入るのを、瑞希さんが見てたらしくて……
 それを里緒奈さんが酔った勢いで、暴露しちゃうから大変だったよ」

「その話、怜奈ちゃんから聞いたけど……
 最悪のタイミングだったわね……」

「その時はパニック寸前だったけど、とにかく全力で否定したよ」

「まあ、それしかないわよね。
 ……そこで認めたら、さくらちゃんとの関係が終わっちゃうもんね」

「間違いなくそうだよね。
 そしたら、未来が物凄い剣幕で里緒奈さんに食ってかかって……
『私が具合悪くなったから、祐希に頼んでホテルで横になってただけ!
 やましいことは何もしてない』って言い張って……」

「……必死にかばってくれたのね」

「うん、その場はそれで収まったけど……
 でも、さくらさんとのキスの一件は、うやむやになったまま、今に至るって感じかな」

「なるほどね、そんなことがあったんだ…」

「でも、未来ちゃんとラブホで何もなかった訳じゃないでしょ?」

 図星を突かれ、祐希は言葉に詰まった。

「明日奈には隠しごとできないなぁ……
 実は未来が僕をホテルに誘ったのは仮病だったんだ」

「え、仮病?」

「そう、具合が悪くて歩けないから、ホテルで横になりたいって言うこと自体が嘘だったんだ……」

「あ~、それ、男を連れ込む時の常套手段よ……
 祐希、まんまと引っかかったのね」

「でも、その時は本当に具合悪そうに見えて、ホテルに入って未来がベッドに横になったら、寝息を立てて本当に寝始めたんだ……」

「ライブの疲れが出て、ホントに寝ちゃったのかもね」

「僕はすることがなくなったから、時間潰しに風呂に入ったんだ」

「なるほど、自然な流れね」

「そして湯船に漬かって、マッタリしてたら、未来が急に風呂に入ってきて、少し寝たら具合良くなったから、お礼に背中を流して上げるって言われたんだ」

「それは計画的犯行ね」

「多分そうだと思う。
 それで体を洗ってもらって僕が風呂から出ようとしたら、『私の初めてをあげるから彼女にして』って迫ってきたんだ」

「それはまた、随分と強引な手を使ったわねぇ……」

「……でも、さくらさんが好きな気持ちの方が強かったから、未来には『彼女にできない』って断ったよ」

「未来ちゃん、ショックだったでしょうね……」

「……その時に、未来を好きだという気持ちも確かにあるって伝えたんだ」

「ふふ、誠実なのか不誠実なのか、わからない答えね」
 明日奈は苦笑した。

「それで、未来ちゃんは諦めたの?」

「僕と付き合うのは諦めてくれて……」

「そうなの……でも、ずいぶんと聞き分けいいんじゃない。
 それで終わるはずないわよね……」
 明日奈の洞察力は鋭かった。

「さすがは明日奈、何でもお見通しだね」

「私も女だから、未来ちゃんの気持ちは痛いほど分かるわ。
 それで未来ちゃんになんて言われたの?」

「未来は『もうすぐ二十歳になるから、初めては好きな人としたい』って……
 そして『一生のお願いだから、私の初めてを貰ってほしい』って言われて……」

「なるほどね……
 それで、その願いを叶えてあげたんだ……
 そこまで言われれば、もう断れないよね」

「そう、もし断ったら、未来とシェアハウスで会うのが辛くなると思ったから……」

「祐希も罪な男ねぇ……」
 明日奈は微笑みながら、祐希の頬を指でつついた。

「さくらさんが好きだと言う自分の気持ちに嘘はつきたくない……
 でも、未来の一途な想いも無駄にしたくない……
 どっちつかずで、最低だよね、僕」

 祐希が吐露した苦しい胸の内を、明日奈は優しく抱き寄せて包み込んだ。

「最低なんかじゃないわよ。
 ……だって、そんなこと言ったら、今祐希とこうしている私も似たようなものじゃない?」

 明日奈の言う通りだった。
 義弟おとうとの恋を応援すべき義姉あねという立場にありながら、月に一度、自らの欲求を満たすために身体を重ねる、セフレのような関係を続けているのだから。

 明日奈は回した腕に力を込め、互いの体温を分け合うように強く密着した。

「若いんだから、悩みながら進めばいいのよ……でも……」

「でも?」

「もう、その話はお終い」
 明日奈は手を伸ばし、ベッドサイドランプの灯りを消した。

「今はただ、私を満たして……ね?」
 暗闇の中、窓の外に広がる街明かりが、2人の重なり合う輪郭を鮮明に浮かび上がらせた。

 祐希は頷くと明日奈を抱き寄せ、情熱的に唇を重ねた。
 煌びやかな夜景を背に、一つに重なり合った2人のシルエットが、お互いを求め激しく揺れ動いた。
 祐希と明日奈の熱い夜は、深夜遅くまで続いた。
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