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第3章 揺れる想い
第76話 交換条件
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カシャッ、カシャッ、カシャッ……
早朝の爽やかな光が差し込む部屋に、スマホのシャッター音が響いた。
「……ん?」
その音に気づいた祐希が重い瞼を開けると、目の前には冷ややかな視線があった。
スマホを握り、腕を組みながら彼を見ていたのは沙織だった。
祐希は慌てて起き上がった。
「さ、沙織……」
「おはようございます、せんぱい……
朝から随分と見せつけてくれますね」
その声を耳にし、さくらが飛び起きた。
瞬時に状況を把握した彼女の顔から血の気が引いた。
祐希と抱き合いながら寝ていた現場を沙織に目撃されたのだ。
「……沙織さん」
「さくらさん、お早うございます。
ぐっすりと眠れたようですね……」
体温が一気に下がるのを感じながら、祐希は冷や汗を流した。
「せんぱい……言い訳はあとで聞きます」
沙織はスマホをポケットにしまうと、2人を交互に睨んで、単刀直入に聞いた。
「先輩、さくらさん。
……エッチしちゃったんですか?」
「し、してないよ!!」
「ち、違います! 誤解です!」
あまりにストレートな問いに、2人は首を横に振り全力で否定した。
「そうですか。じゃあ、なんでこんな状況になってるんですか?
さくらさん、説明してもらえますよね!」
沙織の冷徹な声に、さくらが罰の悪そうな表情で弁明を始めた。
「そ、それは……祐希さんが寝る場所がなくて、困ってたからで、他意はないんです!」
「寝る場所?」
「はい……沙織さんたちが祐希さんの部屋を占領して寝てしまったから……
だから、寝る場所を提供するために、この部屋に来てもらったんです!」
「ふ~ん。なるほど……
部屋に入れた理由は認めましょう。
でも、なんで同じベッドで、しかも抱き合って寝てたんですか?
私のベッドが空いてるなら、別々に寝ればよかったじゃないですか。
これじゃあ、『私たちは関係を持ちました』って言ってるようなものですよ」
沙織の正論に、さくらは言葉を詰まらせた。
「それは違う。
僕とさくらは、沙織が帰ってくるまで別々に寝ていたんだ」
その時、沙織はあることに気づいた。
「あれ?……せんぱい……いつの間にさくらって呼び捨てで呼ぶようになったんですか?
やっぱり一線を越えたっていうことですか?」
「いや……それは……」
「え、なんですか?
私に説明できない理由でもあるんですか?」
「それは、さくらが自分のことを呼び捨てで呼んでほしいっていうから」
「そうです。
未来さんや沙織さんは呼び捨てなのに、私だけさん付けっておかしくないですか?」
さくらは沙織に事情を説明した。
「え? ああ、確かに……
年下なのに『さん付け』は、初対面でもないのに不自然かもですね」
「とにかく、そういうことだ……」
「その件は、分かりました……
だけど、2人が一緒に寝ていたのはどうしてですか?」
「最初、僕はさくらのベッドで、さくらは沙織のベッドで、ちゃんと別々に寝ていたんだ。
でも、沙織が突然部屋に戻ってきたから、さくらがパニックになって、とっさに僕のベッドに潜り込んで来たんだ。
不可抗力でこうなっただけで、やましいことは何もしていない」
そこで祐希は一気に畳み掛けた。
「そもそも、沙織が自分のベッドで寝ていれば、僕は自分の部屋で寝られたし、こんなことにはならなかったはずだ」
「む……」
「百歩譲って、沙織が僕の部屋で寝たことを良しとしても、そのまま朝まで寝ていれば、僕たちは別々のベッドで平和に寝ていたはずだ。
つまり、こうなった元凶は『部屋を奪い』『予期せぬタイミングで帰ってきた』沙織、君にあるんだ!」
「ぐっ……」
祐希の理路整然とした屁理屈に、沙織は言い返すことができず言葉に詰まらせた。
確かに、自分が最初から部屋で寝ていれば、或いはそのまま祐希の部屋で寝ていれば、2人が密着することはなかったかもしれない。
「……はぁ。なるほど……」
沙織は深いため息をつくと、少し呆れたように肩をすくめた。
「元はと言えば、自分の部屋で寝なかった私が悪いと、先輩は言うんですね」
「……まあ、論理的に言えばそうなる」
祐希の正論を論破することができず、沙織はため息をついた。
しかし、沙織は転んでもただでは起きない。
この状況を何とか自分が有利な状況に持っていこうと、彼女は頭をフルに回転させた。
そして、一つの名案を思いついた。
「わかりました。
確かに祐希せんぱいの言うとおりです。
私の過失を認めましょう。
……でも、最後にもう一度だけ確認させて下さい。
ホントに、さくらさんには手は出してないんですね?」
「神に誓って、出してない」
祐希の言葉にさくらは何度も頷いた。
沙織は2人の目をじっと見つめ、そこに嘘がないことを確認すると、納得したように頷いた。
「わかりました。
まあ、こんな写真が未来さんや明日奈さんに見つかったら、大騒ぎになりますからね。
今回のことは、私たち3人の秘密ということにします」
「沙織、助かるよ……」
「沙織さん……
ありがとう」
「ただし、条件があります……」
沙織は一歩踏み出し、祐希の胸に人差し指を突きつけた。
「私はお人好しじゃありません。
私の口を塞ぎたいなら……私とデートしてください、祐希先輩」
「……え?」
「私と2人きりで……
デート費用はすべて先輩持ちでお願いします」
「もし、嫌だと言ったら?」
「その時は、シェアハウスのみんなに、この写真を送ります」
「沙織、お前容赦ないなぁ……
……しょうがない。要求を受け入れよう」
「やった~、交渉成立ですね♪」
沙織はパッと明るい笑顔に戻ると、パンパンと手を叩いて2人を急かした。
「さ、早く自分の部屋に戻ってシャワーを浴びてきてください。
もうすぐ朝食の時間ですよ」
沙織は、上機嫌で祐希を部屋から追い出した。
ドアが閉まると、部屋にはさくらと沙織の2人が残された。
気まずそうに俯くさくらに、沙織は鏡の前で髪を整えながら彼女に宣告した。
「さくらさん、今回は見逃してあげるけど……
そうやすやすと先輩は渡しませんからね」
早朝の爽やかな光が差し込む部屋に、スマホのシャッター音が響いた。
「……ん?」
その音に気づいた祐希が重い瞼を開けると、目の前には冷ややかな視線があった。
スマホを握り、腕を組みながら彼を見ていたのは沙織だった。
祐希は慌てて起き上がった。
「さ、沙織……」
「おはようございます、せんぱい……
朝から随分と見せつけてくれますね」
その声を耳にし、さくらが飛び起きた。
瞬時に状況を把握した彼女の顔から血の気が引いた。
祐希と抱き合いながら寝ていた現場を沙織に目撃されたのだ。
「……沙織さん」
「さくらさん、お早うございます。
ぐっすりと眠れたようですね……」
体温が一気に下がるのを感じながら、祐希は冷や汗を流した。
「せんぱい……言い訳はあとで聞きます」
沙織はスマホをポケットにしまうと、2人を交互に睨んで、単刀直入に聞いた。
「先輩、さくらさん。
……エッチしちゃったんですか?」
「し、してないよ!!」
「ち、違います! 誤解です!」
あまりにストレートな問いに、2人は首を横に振り全力で否定した。
「そうですか。じゃあ、なんでこんな状況になってるんですか?
さくらさん、説明してもらえますよね!」
沙織の冷徹な声に、さくらが罰の悪そうな表情で弁明を始めた。
「そ、それは……祐希さんが寝る場所がなくて、困ってたからで、他意はないんです!」
「寝る場所?」
「はい……沙織さんたちが祐希さんの部屋を占領して寝てしまったから……
だから、寝る場所を提供するために、この部屋に来てもらったんです!」
「ふ~ん。なるほど……
部屋に入れた理由は認めましょう。
でも、なんで同じベッドで、しかも抱き合って寝てたんですか?
私のベッドが空いてるなら、別々に寝ればよかったじゃないですか。
これじゃあ、『私たちは関係を持ちました』って言ってるようなものですよ」
沙織の正論に、さくらは言葉を詰まらせた。
「それは違う。
僕とさくらは、沙織が帰ってくるまで別々に寝ていたんだ」
その時、沙織はあることに気づいた。
「あれ?……せんぱい……いつの間にさくらって呼び捨てで呼ぶようになったんですか?
やっぱり一線を越えたっていうことですか?」
「いや……それは……」
「え、なんですか?
私に説明できない理由でもあるんですか?」
「それは、さくらが自分のことを呼び捨てで呼んでほしいっていうから」
「そうです。
未来さんや沙織さんは呼び捨てなのに、私だけさん付けっておかしくないですか?」
さくらは沙織に事情を説明した。
「え? ああ、確かに……
年下なのに『さん付け』は、初対面でもないのに不自然かもですね」
「とにかく、そういうことだ……」
「その件は、分かりました……
だけど、2人が一緒に寝ていたのはどうしてですか?」
「最初、僕はさくらのベッドで、さくらは沙織のベッドで、ちゃんと別々に寝ていたんだ。
でも、沙織が突然部屋に戻ってきたから、さくらがパニックになって、とっさに僕のベッドに潜り込んで来たんだ。
不可抗力でこうなっただけで、やましいことは何もしていない」
そこで祐希は一気に畳み掛けた。
「そもそも、沙織が自分のベッドで寝ていれば、僕は自分の部屋で寝られたし、こんなことにはならなかったはずだ」
「む……」
「百歩譲って、沙織が僕の部屋で寝たことを良しとしても、そのまま朝まで寝ていれば、僕たちは別々のベッドで平和に寝ていたはずだ。
つまり、こうなった元凶は『部屋を奪い』『予期せぬタイミングで帰ってきた』沙織、君にあるんだ!」
「ぐっ……」
祐希の理路整然とした屁理屈に、沙織は言い返すことができず言葉に詰まらせた。
確かに、自分が最初から部屋で寝ていれば、或いはそのまま祐希の部屋で寝ていれば、2人が密着することはなかったかもしれない。
「……はぁ。なるほど……」
沙織は深いため息をつくと、少し呆れたように肩をすくめた。
「元はと言えば、自分の部屋で寝なかった私が悪いと、先輩は言うんですね」
「……まあ、論理的に言えばそうなる」
祐希の正論を論破することができず、沙織はため息をついた。
しかし、沙織は転んでもただでは起きない。
この状況を何とか自分が有利な状況に持っていこうと、彼女は頭をフルに回転させた。
そして、一つの名案を思いついた。
「わかりました。
確かに祐希せんぱいの言うとおりです。
私の過失を認めましょう。
……でも、最後にもう一度だけ確認させて下さい。
ホントに、さくらさんには手は出してないんですね?」
「神に誓って、出してない」
祐希の言葉にさくらは何度も頷いた。
沙織は2人の目をじっと見つめ、そこに嘘がないことを確認すると、納得したように頷いた。
「わかりました。
まあ、こんな写真が未来さんや明日奈さんに見つかったら、大騒ぎになりますからね。
今回のことは、私たち3人の秘密ということにします」
「沙織、助かるよ……」
「沙織さん……
ありがとう」
「ただし、条件があります……」
沙織は一歩踏み出し、祐希の胸に人差し指を突きつけた。
「私はお人好しじゃありません。
私の口を塞ぎたいなら……私とデートしてください、祐希先輩」
「……え?」
「私と2人きりで……
デート費用はすべて先輩持ちでお願いします」
「もし、嫌だと言ったら?」
「その時は、シェアハウスのみんなに、この写真を送ります」
「沙織、お前容赦ないなぁ……
……しょうがない。要求を受け入れよう」
「やった~、交渉成立ですね♪」
沙織はパッと明るい笑顔に戻ると、パンパンと手を叩いて2人を急かした。
「さ、早く自分の部屋に戻ってシャワーを浴びてきてください。
もうすぐ朝食の時間ですよ」
沙織は、上機嫌で祐希を部屋から追い出した。
ドアが閉まると、部屋にはさくらと沙織の2人が残された。
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