恋愛経験ゼロの俺が、一目惚れした天使にストーカーと勘違いされた挙句、男女比1対9のハーレム・シェアハウスで一緒に住むことになった話

永遠光(とわのひかり)

文字の大きさ
89 / 147
第3章 揺れる想い

第86話 祐希の帰省

 8月中旬、お盆の真っ只中、祐希は新千歳空港に到着した。
 到着ゲートからロビーへ出ると、明るい元気な声が祐希の名を呼んだ。

「ゆうきにいちゃ~ん!」

 その声の方に振り向いた瞬間、ふわりと甘い香りと共に、妹が飛び込んできた。

「わっ……!あかり、危ないって」

「お兄ちゃん!会いたかったよ~!」

 祐希の胸に顔を埋めて甘えているのは、妹のあかりだった。
 
 彼女は、祐希の母校に通う高校3年生だ。
 栗色のロングヘアに愛らしい顔立ち、ぱっちりとした大きな瞳。
 スタイルも抜群で、アイドルと言われても信じてしまうほどの美少女だ。

「こらあかり、祐希が困ってるだろ」

「あらあら、あかりは相変わらずお兄ちゃん子ねえ」

 苦笑しながら歩いてきたのは、父の篠宮幸希こうきと、母の祐子ゆうこだった。

「父さん、母さん、ただいま。
 わざわざ迎えに来てくれてありがとう」

「いいってことよ。祐希の帰省は久しぶりだからな」

 再会の挨拶もそこそこに、父が腕時計を見た。

「11時か……少し早いが、お昼食べてくか?」

「そうね。祐希、何が食べたい?」

「う~ん……やっぱりラーメンかな」

「よし、お昼はラーメンにしよう」

 祐希たちは空港内にある函館ラーメンの名店へ向かった。
 観光客で混み始めた店の一角に、空いているテーブルを見つけて席につくと塩ラーメンを注文した。
 透明でコクのある昆布ベースの塩スープと中細ストレート麺が特徴で篠宮家全員のお気に入りだ。

「それで、大学はどうなんだ?
 ちゃんと単位は取れてるのか?」

 父が水を飲みながら祐希に聞いた。

「うん、前期の単位は全部取れたと思うよ」

「さすがはお兄ちゃん」

 祐希の隣に座ったあかりが、ニコニコ笑いながら目を輝かせた。
 運ばれてきた熱々のラーメンを啜りながら、祐希たちはシェアハウスの話や、アルバイト先の様子など、他愛もない話に花を咲かせた。
 
 家族の温かさと、本場のラーメンの味わいに、祐希は「北海道へ帰ってきた」と実感した。

 空港を出て車で1時間ほど走ると、札幌市内にある祐希の実家に着いた。

 荷解きを終えてベッドに倒れ込むと、旅の疲れが出たのか、いつの間にか眠ってしまった。
 ふと目を覚ますと、窓の外はすでに夕方だった。

「今日の夕飯は寿司にしたぞ」

 出かけていた父が戻ってきてダイニングテーブルの上に置いたのは、地元で人気の回転寿司『根室北まる』のテイクアウト寿司だった。
 プラスチック容器を開けると、豪華な寿司が所狭しと並んでいた。

「うわあ、すご~い!
 ホタテにイクラにウニだよ!」

 あかりが歓声を上げ、母がサッポロクラシックの500ミリ缶とグラスを運んできた。

「じゃあ、祐希の帰省に乾杯」

 父の音頭でグラスを合わせ、久しぶりの家族団欒が始まった。
 祐希は好物のホタテを口に放り込んだ。
 肉厚で甘みが強く、シャリの握り具合も絶妙だ。

「やっぱり北海道の回転寿司はレベルが違うな……
 神奈川のスーパーの寿司とは別格だよ」

「そりゃそうさ……
 魚介類は北海道が一番だ」

 父は満足そうにビールを煽り、母もニコニコと祐希たちの食べっぷりを見守っている。
 しばらく地元の味を堪能した後、話題は東京でのシェアハウスでの生活へと移っていった。

「それにしても……男1人に女9人の共同生活か。
 何度聞いてもすごい環境だな」

 父は少し心配そうに言った。

「明日奈さんには、迷惑掛けてないだろうな?
 お世話になりっぱなしじゃ、義理の姉とはいえ申し訳ないからな……」

 両親の中で、明日奈は「亡き夫の弟を住まわせてくれる、慈愛深い未亡人」という認識だ。
 まさか、その明日奈と身体に関係があるとは口が裂けても言えない。

「大丈夫、居候してるわけじゃないよ……
 明日奈さんから『管理人』の仕事を任されてるんだ」

「ほう、管理人か」

「共有部の修理修繕とか設備の点検もしてるし、力仕事は僕の担当なんだ」

 母が感心したように頷いた。

「勉強も大事だけど、責任ある仕事を任されてるというのは良いことね」

「住人のみんなとも上手くやってるよ。
 みんな個性的だけど、いい人たちだし」

 祐希が胸を張って答えると、両親は表情を緩めた。
 息子が責任感を持って生活していることに安心したようだ。

 横でサーモンを頬張っていたあかりが、不意に箸を止めて祐希に聞いた。

「ねえお兄ちゃん、さくらさんとは、その後どうなったの?」
  月の言葉に祐希は少し驚いたが、自分にとって、今一番重要なことは家族に隠さずに話しておくべきだろうと思った。

あかりが言ってるのは、シェアハウスに住んでる、早乙女さくらさんのことだよ」

「へえ、可愛い名前じゃないか」

「彼女、聖晶学園女子大学の一年生なんだけど、頻繁にストーカー被害に遭っててさ。
 明日奈さんに頼まれて、僕が大学の行き帰り、毎日ボディガードしてるんだ」

「あら……それは大変ねえ」

 母が心配そうな表情を浮かべる横で、あかりがスマホの画面を両親に向けた。

「お母さん見て見て!
 これ、さくらさんと私が一緒に撮った写真!
 すっごく可愛いでしょ?
 まるで天使みたいに清楚な美少女なんだよ!」

 月《あかり》は、星城大学のオープンキャンパスに行ったときに、カフェ・バレンシアでさくらと一緒に撮った写真を見せた。
 
 月《あかり》は、純粋にさくらの容姿や性格の良さを称賛していた。

「……実は僕、さくらに『好きだ』って告白したんだ」

「えっ、お前がか!?」
「あら、まあ……」

 父と母が同時に声を上げた。
 祐希は鼓動が早くなるのを感じながら、先を続けた。

「そしたら、彼女も好きですって言ってくれて……」

「おおっ!やったじゃないか祐希!」

「まあ、素敵!両想いってことじゃない!」

 両親は、祐希の言葉に色めき立った。

「いや、でもまだ正式に交際を始めたわけじゃないんだ……」

「どういうことだ?」

「彼女のお父さん、高校の音楽教師なんだけど、すごく厳格な人らしくて……
 交際するには、彼女のお父さんから許可をもらわなきゃいけないそうで……
 だから今は、許可待ちの状態なんだ」

「なんか、いかにも頑固親父っていう感じだな。
 だが、筋を通すのは大事だ。頑張れよ」

 父は苦笑しつつも応援してくれた。
 そんな中、あかりが、グラスの縁を指でなぞりながら呟いた。

「……ふ~ん。許可待ちってことは、まだ付き合ってないのか」

 その声には、どこか安堵の響きと、焦りの感情が混じっているように聞こえた。
 あかりは、すぐに笑顔を作ったが、その奥にある感情までは読み取れなかった。

 楽しい夕食がお開きになり、それぞれが自分の時間を過ごした。
 久しぶりに実家の風呂にゆっくり入り、旅の疲れを癒やした。
 風呂から上がり、祐希は2年前まで使っていた自分の部屋に向かった。
 本棚には当時の参考書がそのまま残っており、懐かしさがこみ上げてくる。

「あの頃と変わってないな……」
 ベッドに潜り、スマホを取り出すとチャットアプリ『LINKリンク』でメッセージを確認した。

 その時、ノックの音がして、静かにドアが開いた。

「……お兄ちゃん、起きてる?」

 入ってきたのは、パジャマ姿のあかりだった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

洗脳機械で理想のヒロインを作ったら、俺の人生が変わりすぎた

里奈使徒
キャラ文芸
 白石翔太は、いじめから逃れるため禁断の選択をした。  財閥令嬢に自作小説のヒロインの記憶を移植し、自分への愛情を植え付けたのだ。  計画は完璧に成功し、絶世の美女は彼を慕うようになる。  しかし、彼女の愛情が深くなるほど、翔太の罪悪感も膨らんでいく。  これは愛なのか、それとも支配なのか?  偽りの記憶から生まれた感情に真実はあるのか?  マッチポンプ(自作自演)の愛に苦悩する少年の、複雑な心理を描く現代ファンタジー。 「愛されたい」という願いが引き起こした、予想外の結末とは——

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。