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第15章 アプロンティア王国編
第203話 クーデター(中編)
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傷心のリアンナ王女と一緒に迎賓館に戻ると、オレはすぐにソランスター国王へ電話した。
早朝にも拘わらずクラウス国王は、すぐに電話に出てくれた。
「陛下、朝早くに申し訳ございません」
「いや、そんなことは気にせんで良い。
カイト殿、リリアンから概略は聞いた。
しかし、たいへんな事になったのう…」
「はい、リアンナ王女と、レオニウス国王には、第1報をお伝えしました。
レオニウス国王は、派兵を即断下さいました」
「おぉ、そうか、派兵を決断されたか…
しかし、リアンナ王女は気落ちしておるであろう。
今はどうすることも出来んからのう…」
「そのことですが、私に腹案がございます」
「なんじゃ、カイト殿、申してみよ」
「はい、陛下は私の飛行船が持つステルスモードをご存知ですね」
「おお、確か、外から見えなくなる機能じゃったのう」
「はい、その通りで御座います。
そのステルスモードのまま、フォマロート王国の王都エルサレーナまで飛び、上空から兵の配置や軍の情報を探ろうと思っております。
そして機を窺って、王宮内に降り立ち、王族の救出を試みようかと思っておるのです」
「カイト殿、上空からの情報収集はともかく、王族の救出は危険すぎるぞ」
「その通りでございます。
ですので、機を窺ってと申したのでございます」
「う~ん、まあカイト殿じゃから、勝算のないことはせぬと思うが、アリエスとジェスティーナの悲しむ顔は見たくないからのう。
くれぐれも慎重に事を運ぶのじゃぞ」
「ありがとうございます。
陛下のお言葉、心に刻みまする」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日はオレ史上、最も忙しい一日となった。
まず、フローラの部屋で一緒に寝ているアリエスとジェスティーナをメイド長のソニアに呼びに行かせた。
王女2人とその護衛4人が戻ってきたところで、オレの同行者全員にフォマロート王国で反乱軍によるクーデターが勃発したこと、ゴラン帝国の兵が同国内に進軍中であることを話した。
その後、クリスタリア王宮から、ライアス王太子とフローラ王女の婚礼の儀は状況が落ち着くまで無期限延期と正式な通知があった。
オレたちは、婚礼の儀に出席することを主目的に、遥々アプロンティア王国まで来たわけであるが、それが延期となり、滞在理由がなくなった訳だ。
すぐに帰国しても良いのだが、流石にそういう訳には行くまい。
レオニウス国王に逐次情報を伝えると言った手前もあるし、リアンナ王女を放おって帰る訳にも行かない。
それに同盟国なのだから、クラウス国王の手前、協力しなければならないのだ。
しばらくして、リアンナ王女がオレの部屋を訪ねてきた。
「伯爵、お願いがあります。
私を飛行船に乗せて、エルサレーナまで連れて行って欲しいのです」
リアンナ王女は、悲壮感漂う顔でオレに言った。
リアンナは、何を考えているのだろう。
自分1人で救出に向かうとでも言うのだろうか?
「実は、私もエルサレーナまで飛んで情報収集しようかと考えていたところです。
今の状況では、王宮内に着陸するのは無理だと思います。
それでも宜しければお連れしますが、2つほど条件があります」
「その条件とは、なんですか?」
「1つは、飛行船に乗ってからここに戻るまでは、船長である私の指揮下に入り、命に従って頂くこと。
2つ目は、無茶は行動は控えること。
場合によっては、エルサレーナは悲惨な状況にあることも想定されますが、そのような場合も取り乱さず、落ち着いて行動することです」
「分かりました、その条件を飲みましょう」
「宜しい、それでは一度レオニウス国王に、報告してから飛行船で偵察に出発しましょう」
オレは、偵察に出かける人員の選抜を行った。
王女2人の護衛としてフェリンとアンジェリーナを残し、ステラ、セレスティーナ、リリアーナ、レイフェリアの4人を連れて行くことにした。
一方、リアンナ王女は護衛の女性3人と女性文官を1名同行させることにしていた。
その間に、フォマロート王国に潜入している諜報グループ(SGU011)から連絡があった。
王都内では、反乱軍の兵士と王国軍の兵士の間で戦闘が発生し、王国軍内に於いても全てが反乱に加わっている訳ではないこと。
反乱軍の首謀者は、第2歩兵師団のサルーテ将軍で、子飼いの兵士8千名を指揮し、王宮を急襲したこと。
反乱には、ロズベルグ公爵の私兵2千名も加わっており、フォマロート国内の反乱勢力は合計1万人に及ぶとの情報がもたらされた。
別の諜報グループ(SGU027)からも、驚くべき報告がなされた。
市内には既にゴラン帝国軍の兵士がおり、反乱軍の兵士と連携しているとの事だ。
それが事実だとすれば、何らかの手段により、反乱軍が帝国軍兵士を手引し、密かにフォマロート王国内に引き入れたことになる。
オレの話を聞いたリアンナ王女は苦々しそうに言った
「まさか、ロズベルグ公爵とサルーテ将軍が裏切り者だったとは…
陛下が、あれだけ目を掛けていたのに…」
オレたちは、午前10時頃クリスタリア王宮まで飛行船で飛んで、再びレオニウス国王に謁見した。
国王は王国軍4万を本日中にフォマロート国境へ向けて出発させること、総司令官にライアス王太子を、副総司令官に第2王子のジュリアスを任命したことをオレに伝えた。
もちろん、彼らは形式上の総司令官に過ぎず、実際の指揮はそれぞれの司令官(将軍)が担うのである。
オレは国王にフォマロート王国の王都エルサレーナの状況を伝えた。
サルーテ将軍とロズベルグ公爵の2名が反乱に加わっていること、反乱軍が帝国軍兵士を手引し、密かにフォマロート王国内に引き入れていたことを説明した。
その上で、これから飛行船に乗り、王都エルサレーナの上空まで飛び偵察活動を行うこと、それにリアンナ王女を同行させることを伝えた。
「なるほど、飛行船で偵察とは、考えも付かんな。
もし席に余裕があるなら、我が家臣も乗せては貰えぬだろうか?」
「はい、それでしたら6名までであれば、搭乗可能でございます」
「おお、そうか、それでは早速人選するから、しばし待たれよ」
国王はそう言うと、側近に数人の名前を伝え、呼びに行かせた。
聞くと大臣2名と王国近衛軍兵士のようだ。
「陛下、飛行船にお乗りいただくに当り、一つだけ条件があるのですが、宜しいでしょうか?」
「伯爵、何なりと申されよ」
「条件とは、飛行船に乗ってから戻るまでの間、船長である私の指揮下に入り、不合理な命令で無い限り従うと云うことです。
そうでなければ統制が取れませんので、はっきりさせて置きたいのです」
「シュテリオンベルグ伯爵の申すことは、至極最な考えだ。
家臣には、そのように申し付けておくので、心配不要じゃ」
「陛下、ありがとうございます」
それから暫くして、飛行船に乗る者が集合した。
同行するのは、外務大臣のライゼン子爵と軍務大臣のシュトラーゼ伯爵の2名。
彼らとは歓迎の宴で挨拶しており、既に面識がある。
あとは近衛軍のアムラー少佐と精鋭兵士3名であった。
オレたちは簡単な自己紹介を済ませ、飛行船に乗り込んだ。
早朝にも拘わらずクラウス国王は、すぐに電話に出てくれた。
「陛下、朝早くに申し訳ございません」
「いや、そんなことは気にせんで良い。
カイト殿、リリアンから概略は聞いた。
しかし、たいへんな事になったのう…」
「はい、リアンナ王女と、レオニウス国王には、第1報をお伝えしました。
レオニウス国王は、派兵を即断下さいました」
「おぉ、そうか、派兵を決断されたか…
しかし、リアンナ王女は気落ちしておるであろう。
今はどうすることも出来んからのう…」
「そのことですが、私に腹案がございます」
「なんじゃ、カイト殿、申してみよ」
「はい、陛下は私の飛行船が持つステルスモードをご存知ですね」
「おお、確か、外から見えなくなる機能じゃったのう」
「はい、その通りで御座います。
そのステルスモードのまま、フォマロート王国の王都エルサレーナまで飛び、上空から兵の配置や軍の情報を探ろうと思っております。
そして機を窺って、王宮内に降り立ち、王族の救出を試みようかと思っておるのです」
「カイト殿、上空からの情報収集はともかく、王族の救出は危険すぎるぞ」
「その通りでございます。
ですので、機を窺ってと申したのでございます」
「う~ん、まあカイト殿じゃから、勝算のないことはせぬと思うが、アリエスとジェスティーナの悲しむ顔は見たくないからのう。
くれぐれも慎重に事を運ぶのじゃぞ」
「ありがとうございます。
陛下のお言葉、心に刻みまする」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その日はオレ史上、最も忙しい一日となった。
まず、フローラの部屋で一緒に寝ているアリエスとジェスティーナをメイド長のソニアに呼びに行かせた。
王女2人とその護衛4人が戻ってきたところで、オレの同行者全員にフォマロート王国で反乱軍によるクーデターが勃発したこと、ゴラン帝国の兵が同国内に進軍中であることを話した。
その後、クリスタリア王宮から、ライアス王太子とフローラ王女の婚礼の儀は状況が落ち着くまで無期限延期と正式な通知があった。
オレたちは、婚礼の儀に出席することを主目的に、遥々アプロンティア王国まで来たわけであるが、それが延期となり、滞在理由がなくなった訳だ。
すぐに帰国しても良いのだが、流石にそういう訳には行くまい。
レオニウス国王に逐次情報を伝えると言った手前もあるし、リアンナ王女を放おって帰る訳にも行かない。
それに同盟国なのだから、クラウス国王の手前、協力しなければならないのだ。
しばらくして、リアンナ王女がオレの部屋を訪ねてきた。
「伯爵、お願いがあります。
私を飛行船に乗せて、エルサレーナまで連れて行って欲しいのです」
リアンナ王女は、悲壮感漂う顔でオレに言った。
リアンナは、何を考えているのだろう。
自分1人で救出に向かうとでも言うのだろうか?
「実は、私もエルサレーナまで飛んで情報収集しようかと考えていたところです。
今の状況では、王宮内に着陸するのは無理だと思います。
それでも宜しければお連れしますが、2つほど条件があります」
「その条件とは、なんですか?」
「1つは、飛行船に乗ってからここに戻るまでは、船長である私の指揮下に入り、命に従って頂くこと。
2つ目は、無茶は行動は控えること。
場合によっては、エルサレーナは悲惨な状況にあることも想定されますが、そのような場合も取り乱さず、落ち着いて行動することです」
「分かりました、その条件を飲みましょう」
「宜しい、それでは一度レオニウス国王に、報告してから飛行船で偵察に出発しましょう」
オレは、偵察に出かける人員の選抜を行った。
王女2人の護衛としてフェリンとアンジェリーナを残し、ステラ、セレスティーナ、リリアーナ、レイフェリアの4人を連れて行くことにした。
一方、リアンナ王女は護衛の女性3人と女性文官を1名同行させることにしていた。
その間に、フォマロート王国に潜入している諜報グループ(SGU011)から連絡があった。
王都内では、反乱軍の兵士と王国軍の兵士の間で戦闘が発生し、王国軍内に於いても全てが反乱に加わっている訳ではないこと。
反乱軍の首謀者は、第2歩兵師団のサルーテ将軍で、子飼いの兵士8千名を指揮し、王宮を急襲したこと。
反乱には、ロズベルグ公爵の私兵2千名も加わっており、フォマロート国内の反乱勢力は合計1万人に及ぶとの情報がもたらされた。
別の諜報グループ(SGU027)からも、驚くべき報告がなされた。
市内には既にゴラン帝国軍の兵士がおり、反乱軍の兵士と連携しているとの事だ。
それが事実だとすれば、何らかの手段により、反乱軍が帝国軍兵士を手引し、密かにフォマロート王国内に引き入れたことになる。
オレの話を聞いたリアンナ王女は苦々しそうに言った
「まさか、ロズベルグ公爵とサルーテ将軍が裏切り者だったとは…
陛下が、あれだけ目を掛けていたのに…」
オレたちは、午前10時頃クリスタリア王宮まで飛行船で飛んで、再びレオニウス国王に謁見した。
国王は王国軍4万を本日中にフォマロート国境へ向けて出発させること、総司令官にライアス王太子を、副総司令官に第2王子のジュリアスを任命したことをオレに伝えた。
もちろん、彼らは形式上の総司令官に過ぎず、実際の指揮はそれぞれの司令官(将軍)が担うのである。
オレは国王にフォマロート王国の王都エルサレーナの状況を伝えた。
サルーテ将軍とロズベルグ公爵の2名が反乱に加わっていること、反乱軍が帝国軍兵士を手引し、密かにフォマロート王国内に引き入れていたことを説明した。
その上で、これから飛行船に乗り、王都エルサレーナの上空まで飛び偵察活動を行うこと、それにリアンナ王女を同行させることを伝えた。
「なるほど、飛行船で偵察とは、考えも付かんな。
もし席に余裕があるなら、我が家臣も乗せては貰えぬだろうか?」
「はい、それでしたら6名までであれば、搭乗可能でございます」
「おお、そうか、それでは早速人選するから、しばし待たれよ」
国王はそう言うと、側近に数人の名前を伝え、呼びに行かせた。
聞くと大臣2名と王国近衛軍兵士のようだ。
「陛下、飛行船にお乗りいただくに当り、一つだけ条件があるのですが、宜しいでしょうか?」
「伯爵、何なりと申されよ」
「条件とは、飛行船に乗ってから戻るまでの間、船長である私の指揮下に入り、不合理な命令で無い限り従うと云うことです。
そうでなければ統制が取れませんので、はっきりさせて置きたいのです」
「シュテリオンベルグ伯爵の申すことは、至極最な考えだ。
家臣には、そのように申し付けておくので、心配不要じゃ」
「陛下、ありがとうございます」
それから暫くして、飛行船に乗る者が集合した。
同行するのは、外務大臣のライゼン子爵と軍務大臣のシュトラーゼ伯爵の2名。
彼らとは歓迎の宴で挨拶しており、既に面識がある。
あとは近衛軍のアムラー少佐と精鋭兵士3名であった。
オレたちは簡単な自己紹介を済ませ、飛行船に乗り込んだ。
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