才能がなかった俺は、仲間をS級に導き、『花園の批評家(レビュアー)』と呼ばれるようになった。

マボロシ屋

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2章 蕾と花の指揮の違い

14:独占での新規案件受注

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 訓練場でしばらくウィンリィやガウル、ノインと話をした後にクラン長室に戻ろうと向かう。

 その手前――部門長の集まる部屋を抜ける途中、依頼斡旋あっせん・獲得部門長のリクエスから声がかけられえる。

「ノーマさーん、依頼の件、獲得しましたよー」

 仕事が早い、早すぎる! 流石、リクエスだ。
 ギルドの受付、事務仕事を寿退社ことぶきたいしゃした者とは思えないほどの仕事の早さだ。
 創設時に誘った俺の感覚は間違っていなかった。

「ナイスです、リクエスさん! 想定ランクは! 想定踏破日数も!」

頑張がんばっちゃったー。想定ランクはDランクー! 読み通りでしたねー! 想定踏破日数は2~3日ほどだってー。Dランクダンジョンとしては難度高め設定かなー?」

 想定Dランクで踏破日数2~3日……これはまだ日が浅くオーク単一種たんいつしゅか、洞窟どうくつがどの程度か判断が付かず、という事で用心されているって事だろうな。

 初心者の森にそこまで大きな洞窟があったとも聞いていないから、そこまでの大型種は出ないだろうし問題はないだろうが……
 一応、れている事を考えて、気にめておかないといけないな。

「ありがとうございます! そうすると準備に1~2日の猶予ゆうよが欲しいですね」

「そこはすでにお話済みですー! ギルドから1週間以内の調査と踏破依頼ですー! 独占依頼ですよぉー!」

 ふふん、と胸を張り、こぶしをドンッと当ててリクエスは言う。

 流石、リクエス! そこにしびれるあこがれるぅうう!
 2児の母なのが驚きなシゴデキ女だ!

「最高! やっぱリクエスさんしか勝たん! ありがと!」

「……」

 部門統括秘書長のローズは、俺をじっと見ている。反応はない。

「……」

 食料管理部門長のフーディーも、俺をじっと見ている。反応はない。

「……」

 武具防具部門長のアーミンもまた、俺をじっと見ている。反応はない。

 しまった、ここ、部門長がいる場所なのにうっかりめすぎた!
 み、皆、シゴデキ女ですよね! えぇ、誰が一番とかそんな事ないですもんね!

「や、やっぱりこのクランの部門長しか勝たん! いつもありがとうございます!」

 そう告げて、そそくさとクラン長室に入って逃げる事にした。

 クラン長室でコーヒーを入れ、イスに座りながら考える。

 ギルドからの依頼受注は完了した。これだけ早く反応を返して、かつ俺達に依頼する……ほぼダンジョン封鎖ふうさの流れか。今回の依頼の件、後でビッグスさんに感謝を伝えておかないと。
 あ、そう言えば今回の合同パーティーの件、申請しとかないとだし、丁度良いか。

 後は、準備だが……そうだなぁ。アルメリアとフリュウの経験としても良いだろうから、買い出しにつき合わせるか?
 自分の力で対応できるようになるまでは、魔具や道具に頼るのは悪い事ではない。
 そして徐々じょじょに最低限、自分に必要な物とそうでない物を選んでいけるようになれば良いしな。

 それで1~2日中にダンジョン遠征の開始だ!
 それまでに……承認の必要な書類や『花扇』の次の依頼についての指針を作成しておこう。俺が予定外に3日程いなくてもとどこおりなく、『花扇』が動けるようにしとかないとな。

 よし!
 考えがまとまった事だし、一度新規ダンジョンの件は終わりにしてクラン長の業務をしてしまいますか。

 そのまま書類仕事に精を出し、遅くまで仕事をしてしまう。へとへとになりながらも終わらせ、まだクランに残っているであろうローズに声をかける。

「ローズー、いるかなー?」

「はい、なんでしょうか?」

 やっぱり残って仕事してた。
 ローズは各部門長のたばね役だから、一番負担かけてるんだよなぁ……

「こんな遅くまで仕事させて申し訳ないね」

「いえ? 本日の仕事は既に終わっております。ノーマさんがお帰りにならないので、何かあればと待機していただけですよ」

 めっちゃ、ごめんなさい!
 え、俺の作業終わるのを待ってただけなの!?
 もう大分暗いんですけど!!?

「声をかけてくださいよー……そうすれば、そんな事をさせずに済んだのに」

「いいえ、私が好きで残っていただけですので、お気になさらず。ですが、残っていて正解だったようですね。どういった御用でしょうか?」

 仕事大好き人間にだけはならないでくれよ。
 嫌だぞ、未婚みこんのままでとしを重ね、最後に俺のせいで婚期こんきのがしたなんて言われたら……

「なにか?」

 ジロッとした目で見られた。
 アイシャにも言われただろうに、ついつい考えてしまった。

 頭から追い払いながらローズにいう。

「一応、俺が居ない間の『花扇』への依頼割り振りは終わらせておいたよ。今回、『風運ぶ音色』にはウィンリィがいなくなるから休暇きゅうかにしてある。個別でなにか受けるって話が出たらサポートしてあげて欲しい」

「承知しました。それでいつから動き始めますか?」

「早いけど、明日からかな。合同パーティーの申請と事前準備の指導もねて明日はガウル、ノイン、ウィンリィ、アルメリア、フリュウで行動する。両手に花束だな」

「ふふ、抱えきれない程の花束の数ですよ」

 俺が冗談じょうだんめかして言うとローズも乗っかって笑う。
 笑いながら話を続ける。

「想定踏破日数は2~3日って話だけど、もっと短いかもしれないと考えといて欲しいかな。なんせ今回は、外部指導員として3人がBランクだ。Dランクダンジョンには過剰かじょうすぎるくらいだからな……3人の最低ダンジョンランク以下だから実績にならないけどな」

「ですが、何かあればぐに戻ってきてくださいね。新規ダンジョンは誰もまだ足を踏み入れていない訳ですから、奥には何があるかわかりませんし」

 ローズが心配そうに言うが、その辺は俺も対策するつもりだ。
 素直にDランクダンジョン相当でも、俺一人では踏破できないからな。
 孤立、するかは分からないが、それ用の装備はアルメリアとフリュウにも持たせるつもりだ。

「あぁ、無事に戻ってくるさ。心配しないで待っていてくれ、ローズ!」

 ローズにそう伝えて、仕事を終えて部屋を出る。
 宿直しゅくちょくの者に挨拶あいさつを済ませ、夜遅い事もありローズを家に送り終えると俺も自宅に帰った。

 ベッドに寝転がり、目を閉じて考えるのは明日からの事。
 ダンジョン踏破に向けての行動開始、か。

 機会が減ったとはいえ、パーティーでの活動は本当に久々だ。
 あの二人が入ったおかげかもしれない。

 新しいつぼみがクランにもたらしている良い影響に、笑いながら眠りについた。
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