1 / 9
1回目 冒頭一文:「僕はもう行くよ、あの街に」
しおりを挟む
「僕はもう行くよ、あの街に」
その声は、どこか寂しそうな声色だった。
旧市街地、放棄された区画の片隅で。
星の綺麗な日のことだった。
「本当に行かれるんですか?」
「うん、やるべき事があるからね」
きっと危険な事なのだろう。血塗れで用水路を流れてきた時は本当に肝が冷えた。
ありあわせの道具で治療して、二ヶ月半、初めての人間との生活は非常に楽しく、別れるのは名残惜しかった。
「ここなら、他の人もいません、危険もありません、何よりあの忌々しい天井もない。戻ればこの星空も見られません。危険を冒してまで街に行く必要などないでしょう?」
「街には家族も、友人も、仲間もいる。彼等を見捨てて一人だけ安穏と暮らすわけにもいかないよ」
街には人がいて、暮らしていれば関わりもある。それだけの事も、ここで暮らす私には分からなかった。
家族も、友人も、仲間も、私にはいない。唯一、貴方だけだ。なのに貴方は、街に行き、元の生活に戻るというのか。
しかし、そもそも彼は街から来たのだ。私だけのために残ることは出来ないだろう。
「そうですね、では、お元気で」
「あぁ、さよなら」
彼の向けた背に腕を突き込む。血が溢れ、彼は崩れ落ちる。
あぁ、これで。
「ずっと、一緒ですね」
その声は、どこか寂しそうな声色だった。
旧市街地、放棄された区画の片隅で。
星の綺麗な日のことだった。
「本当に行かれるんですか?」
「うん、やるべき事があるからね」
きっと危険な事なのだろう。血塗れで用水路を流れてきた時は本当に肝が冷えた。
ありあわせの道具で治療して、二ヶ月半、初めての人間との生活は非常に楽しく、別れるのは名残惜しかった。
「ここなら、他の人もいません、危険もありません、何よりあの忌々しい天井もない。戻ればこの星空も見られません。危険を冒してまで街に行く必要などないでしょう?」
「街には家族も、友人も、仲間もいる。彼等を見捨てて一人だけ安穏と暮らすわけにもいかないよ」
街には人がいて、暮らしていれば関わりもある。それだけの事も、ここで暮らす私には分からなかった。
家族も、友人も、仲間も、私にはいない。唯一、貴方だけだ。なのに貴方は、街に行き、元の生活に戻るというのか。
しかし、そもそも彼は街から来たのだ。私だけのために残ることは出来ないだろう。
「そうですね、では、お元気で」
「あぁ、さよなら」
彼の向けた背に腕を突き込む。血が溢れ、彼は崩れ落ちる。
あぁ、これで。
「ずっと、一緒ですね」
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる