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にわ

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「とりあえず、お兄ちゃん。離して?」

未だに、抱きついたままの兄にそう言う。

洋服なんて、もう涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。

「華ああぁー!本当にもう大丈夫なのか?今から病院に行って検査してもらおう?もう、お兄ちゃん心配で心配で空手の稽古から飛び出して来ちゃったよー!ほら、明日は高校の入学式だ。だから、病院で検査入院しよ?高校なんて、行かなくていいよ。お兄ちゃんが、養ってあげるから。だから、お兄ちゃんの華でいて?」

「お兄ちゃん、気持ち悪い。」

気持ち悪すぎだろぉぉぉぉ!
なに、お兄ちゃんの華でいてって。

気持ち悪すぎて吐きそうなんだけど!
顔は、かっこいいのに本当喋んないで欲しい!
キモいから、めっちゃキモいから!

兄の頭に、拳をストレートにいれ離れる。

「華ー!ちっちゃい頃の華は、どこ行ったの!お兄ちゃん、お兄ちゃんって抱きついてきたあのかわいい華はああぁ!あっでも、今でもじゅうーーーーぶんかわいいからね!あと、もっとお兄ちゃんを殴って?」

いや、昔の話でしょ?
てか、最後のは聞きたくなかった!
限りなくゼロに近いお兄ちゃんに対するなにかがいま、ゼロになったよ!

とりあえず、泣きそうです。


神様、このバカ兄をどうにかしてください。

「華ああぁ!無視しないで~!お兄ちゃんにかまって~!」

そう言って抱きついてくるお兄ちゃんから、逃げるために私は、走り出す。

いや、本当に怖いからね!
想像してみて?
泣き叫びながら、高3の男子が追いかけてくるんだよ?

無理でしょ?怖いでしょ?やばくない、もう警察に電話してもいいくらいにやばいし、キモいし怖いから!


長い廊下の向こうから歩いてきている母に気づき、母の背中に回り込む。

母に気づいた兄は、キモい顔から真っ青な顔になる。

背中からでも、分かる母のオーラ。
あっ、お母さん、怒ってるわ。

ドンマイ、お兄ちゃん。

心では、そう思いながらも、にやける顔を止められない私を攻めないで欲しい。


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