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人違い
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彼女は暗闇の中に立っていた。
そこは見覚えがある場所だ。
見覚えがある景色だ。
見覚えがある天気だ。
そして、身に覚えがある、静かさだ。
雨の音。その音以外聞こえないくらい大きな。ほかの全ての音をかき消すほど大きな。暗い。昼間なのに暖かな陽の光が入ってこない。分厚く黒い雲で覆われた空。
怖い。何かが起こる。怖い。何かは起こった。怖い。息を潜めなければ。怖い。手が震える。血の気が引いて全身が冷たい。それなのに冷や汗が出る。
怖い寒い冷たい熱い
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
真っ暗だ。嫌だ。
寒い。嫌だ。怖い。
誰か───
その時、彼女の右手がポウっと柔らかく温かな光をはなった。彼女は涙が今にも零れそうな目を驚いたように見開いた。その拍子にポロリと一筋涙が頬を伝う。
それを拭うように頬にも温かな光は広がり、それに安心したように彼女は目を伏せた。
ー・ー・ー・ー
ふと目を覚ますと、橙色の光が優しく入る部屋に時折紙をめくる音だけが静かに響いていた。
ここはどこだっただろうか。たしか、私は……
「フレイアさん?」
フレイアの微かな身動ぎの音に気づいたのか、ベッドの傍らに置かれた椅子に座っていた人物は優しくフレイアに声をかけた。
落ち着く声だ。聞き慣れた、少女にしては低めの、少年にしては高めの声。
起きたばかりだからか、逆光ゆえか、視界が少し霞んでよく見えない。頭もぼんやりする。
ミルクティー色の、髪。ふんわりとした、中性的な声。
「……おりびあ?」
だからか、フレイアはここに入るはずのない少女の名前を思わず口にしていた。
「え……」
目の前の人影が困惑したように固まったのをぼんやりと見つめて、やがてフレイアは覚醒した。
「……………………アーサー、殿」
よく見たら、よく見なくても、目の前にいるのはアーサーだった。
何故オリビアだと思ったのか自分でも分からず、人違いに恥ずかしくなってフレイアは頬を真っ赤に染める。
目の前にいるのはミルクティー色のふわふわの髪をした可愛い友人ではなく、蜂蜜色のどちらかといえばサラサラとした髪の毛の、頼りになる団長補佐官のアーサーだ。
「あ……えーっと、」
「…………すまない、アーサー殿………………」
恥ずかしさから両手で顔を覆ってしまったフレイアを見て、困惑しながらもアーサーは顔に笑みをはりつけた。
「いえ、大丈夫ですよ。水でもいかがですか?」
「いただきます……」
恥ずかしさがおさまらないのか両手で未だ顔を隠したままこもった声でフレイアは答える。
そんな彼女を混乱から戻ってきたアーサーは優しげな瞳で見つめた。
サイドテーブルに用意されていた水差しからコップに水を注ぎ、それを体を起こしたフレイアに手渡すと、礼を言って彼女はそれを一気に飲み干した。アーサーは空になったコップを受け取り、もう一度水を注いでから彼女に渡すと、次はゆっくりと水を飲み、半分くらい減ったところで口からコップを離した。
「本当に申し訳ない、アーサー殿を女性と間違えるとは……」
「いえ、大丈夫ですから」
アーサーがフレイアからコップを受け取りサイドテーブルに置くと、フレイアは頭を下げた。
「本当に、どうして間違えたのか……こんなにも貴方と彼女は違うのに……」
「…………そういうこともありますよ。良く見えていなかったようですし」
「そうか……そうだな……」
アーサーは気落ちするフレイアを慰めようと彼女の背に手を伸ばして、やめる。
そんな彼に気付かずにフレイアは頭を上げた。
「アーサー殿、今回の件ではとても世話になった。ありがとう」
「いえ、とんでもない」
「あなたがここまで運んでくれたと聞いた。本当に感謝している。よかったら今度お礼をさせてくれ」
「いえいえいえいえ、そんな、当然のことをしたまでですから」
アーサーが体の前でブンブンと手を振るのを眺めながらフレイアは少し微笑んだ。頭痛は治まっている。
「よかったら、だが、今度一緒に食事でもどうだ?勿論、私の奢りだ」
「……是非。でも、僕にも半分出させてくださいね」
「そんなことはさせないよ。私が世話になったのだから」
「………………」
「………………」
どちらも譲らないというようにじっとお互いを見つめ合う。
医務室につかの間の沈黙が落ちる。
「ふふっ」
先に笑みを漏らしたのはどちらだろうか。気付けば互いの顔に笑みが溢れていた。
「ふふふ、はは、ははは!」
「あはははは!」
なぜ自分たちが笑っているのかすらよく分からないが、なんだか笑えてくる。どうしてこんなことで言い合っているのか。
「ふふ、では、お言葉に甘えてご馳走になりますね」
「ああ、是非とも。どこに行きたい?」
「……あなたのおすすめの食堂に」
「承知した」
アーサーは嬉しそうに微笑んだ。
その顔は友である彼女にとても似ているようで、似ていない。ふと彼女の笑顔が頭の片隅にかすめるが、今は彼の心からの笑みが嬉しかった。
「では、次の休みに」
共に食事に行く約束を取り付けた頃にはもう日は沈んでおり、外は暗くなっていた。
そろそろアーサーも寮に戻る頃合いだろう。話が一段落したところでアーサーに帰りを促そうとした時、扉が音を立てて開き、フィオナが入ってきた。
「あら、起きたのね。よかったわ」
「フィオナ殿」
キビキビとフレイアに近付くフィオナを見てアーサーは彼女に場所を譲った。
フィオナは先程までアーサーがいたフレイアにほど近い位置に来ると彼女の額に手を当て、熱を測る。
「うん、大丈夫そうね。体調はどう?」
「問題ない」
「本当に?」
「ああ。頭痛も吐き気も引いた」
フィオナがじっとフレイアを見つめる。
「ん。嘘じゃなさそうね。一応今日はここに泊まって療養することをお勧めするわ。どうする?」
「じゃあ、そうしようかな。フィオナ殿が勧めるならそうした方がいいってことはもう何回も学んだからな」
「そうね、そうしなさい。私は横の仮眠室にいるから何かあったらいつでも呼びなさい」
「ああ。ありがとう」
スタスタとベッドから離れていくフィオナの後ろ姿を見送っていると、急に振り返った。
「ああ、アーサー補佐官。熱がひいたとはいえ彼女はまだ病人。無理をさせてはいけませんよ」
「はい、すみません」
「いや、アーサー殿が謝ることじゃない。気にしないでくれ」
すかさずフレイアがアーサーを庇うと、やれやれといった表情でフィオナはカーテンで閉ざされた空間から出ていった。きっと残りの仕事をするのだろう。それをフレイアが見届け、アーサーに視線を戻すと、アーサーも少しベッドから離れ、フレイアに微笑む。
「それではフレイアさん、お大事になさってください。私はこれで失礼します」
「ああ、今日は本当にありがとう。気を付けて帰ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
一礼して去っていくアーサーをベッドの上から見送ってから、フレイアは体をベッドへと預けた。
あの時の夢を見ていたはずだった。
忘れもしない、忘れることなどできない、恐ろしく、悍ましく、そして憎らしい、かつての夢。
雨の日は必ずと言っていいほど奴は夢の中に現れて、フレイアの記憶を掘り起こす。そして同時に恐怖と憎悪を植え付け、瞬く間に消えていく。
でも今日は。
右手を見る。あたたかい光だった。心が安らぎ、穏やかになる。恐怖も憎悪もあの光に包まれた瞬間、どこかに消え去った。目を覚ました時、目の前にいた彼。彼は手を握ってはいなかったけれど、右手には優しい温もりが残っていた。
倒れる寸前に見た、焦った顔。起きた時に見た、安心したような顔。破顔した顔。優しい顔。他に彼はどんな顔をするのだろうか。今まで多くを話したつもりで何も彼のことを知らなかったのではないか。頭の中に浮かんでは消えていく彼の表情。可愛い友人とどこか似ていて、似ていない。
温かな彼との食事に思いを馳せながら、フレイアはゆるやかに瞼を閉じた。
そこは見覚えがある場所だ。
見覚えがある景色だ。
見覚えがある天気だ。
そして、身に覚えがある、静かさだ。
雨の音。その音以外聞こえないくらい大きな。ほかの全ての音をかき消すほど大きな。暗い。昼間なのに暖かな陽の光が入ってこない。分厚く黒い雲で覆われた空。
怖い。何かが起こる。怖い。何かは起こった。怖い。息を潜めなければ。怖い。手が震える。血の気が引いて全身が冷たい。それなのに冷や汗が出る。
怖い寒い冷たい熱い
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
真っ暗だ。嫌だ。
寒い。嫌だ。怖い。
誰か───
その時、彼女の右手がポウっと柔らかく温かな光をはなった。彼女は涙が今にも零れそうな目を驚いたように見開いた。その拍子にポロリと一筋涙が頬を伝う。
それを拭うように頬にも温かな光は広がり、それに安心したように彼女は目を伏せた。
ー・ー・ー・ー
ふと目を覚ますと、橙色の光が優しく入る部屋に時折紙をめくる音だけが静かに響いていた。
ここはどこだっただろうか。たしか、私は……
「フレイアさん?」
フレイアの微かな身動ぎの音に気づいたのか、ベッドの傍らに置かれた椅子に座っていた人物は優しくフレイアに声をかけた。
落ち着く声だ。聞き慣れた、少女にしては低めの、少年にしては高めの声。
起きたばかりだからか、逆光ゆえか、視界が少し霞んでよく見えない。頭もぼんやりする。
ミルクティー色の、髪。ふんわりとした、中性的な声。
「……おりびあ?」
だからか、フレイアはここに入るはずのない少女の名前を思わず口にしていた。
「え……」
目の前の人影が困惑したように固まったのをぼんやりと見つめて、やがてフレイアは覚醒した。
「……………………アーサー、殿」
よく見たら、よく見なくても、目の前にいるのはアーサーだった。
何故オリビアだと思ったのか自分でも分からず、人違いに恥ずかしくなってフレイアは頬を真っ赤に染める。
目の前にいるのはミルクティー色のふわふわの髪をした可愛い友人ではなく、蜂蜜色のどちらかといえばサラサラとした髪の毛の、頼りになる団長補佐官のアーサーだ。
「あ……えーっと、」
「…………すまない、アーサー殿………………」
恥ずかしさから両手で顔を覆ってしまったフレイアを見て、困惑しながらもアーサーは顔に笑みをはりつけた。
「いえ、大丈夫ですよ。水でもいかがですか?」
「いただきます……」
恥ずかしさがおさまらないのか両手で未だ顔を隠したままこもった声でフレイアは答える。
そんな彼女を混乱から戻ってきたアーサーは優しげな瞳で見つめた。
サイドテーブルに用意されていた水差しからコップに水を注ぎ、それを体を起こしたフレイアに手渡すと、礼を言って彼女はそれを一気に飲み干した。アーサーは空になったコップを受け取り、もう一度水を注いでから彼女に渡すと、次はゆっくりと水を飲み、半分くらい減ったところで口からコップを離した。
「本当に申し訳ない、アーサー殿を女性と間違えるとは……」
「いえ、大丈夫ですから」
アーサーがフレイアからコップを受け取りサイドテーブルに置くと、フレイアは頭を下げた。
「本当に、どうして間違えたのか……こんなにも貴方と彼女は違うのに……」
「…………そういうこともありますよ。良く見えていなかったようですし」
「そうか……そうだな……」
アーサーは気落ちするフレイアを慰めようと彼女の背に手を伸ばして、やめる。
そんな彼に気付かずにフレイアは頭を上げた。
「アーサー殿、今回の件ではとても世話になった。ありがとう」
「いえ、とんでもない」
「あなたがここまで運んでくれたと聞いた。本当に感謝している。よかったら今度お礼をさせてくれ」
「いえいえいえいえ、そんな、当然のことをしたまでですから」
アーサーが体の前でブンブンと手を振るのを眺めながらフレイアは少し微笑んだ。頭痛は治まっている。
「よかったら、だが、今度一緒に食事でもどうだ?勿論、私の奢りだ」
「……是非。でも、僕にも半分出させてくださいね」
「そんなことはさせないよ。私が世話になったのだから」
「………………」
「………………」
どちらも譲らないというようにじっとお互いを見つめ合う。
医務室につかの間の沈黙が落ちる。
「ふふっ」
先に笑みを漏らしたのはどちらだろうか。気付けば互いの顔に笑みが溢れていた。
「ふふふ、はは、ははは!」
「あはははは!」
なぜ自分たちが笑っているのかすらよく分からないが、なんだか笑えてくる。どうしてこんなことで言い合っているのか。
「ふふ、では、お言葉に甘えてご馳走になりますね」
「ああ、是非とも。どこに行きたい?」
「……あなたのおすすめの食堂に」
「承知した」
アーサーは嬉しそうに微笑んだ。
その顔は友である彼女にとても似ているようで、似ていない。ふと彼女の笑顔が頭の片隅にかすめるが、今は彼の心からの笑みが嬉しかった。
「では、次の休みに」
共に食事に行く約束を取り付けた頃にはもう日は沈んでおり、外は暗くなっていた。
そろそろアーサーも寮に戻る頃合いだろう。話が一段落したところでアーサーに帰りを促そうとした時、扉が音を立てて開き、フィオナが入ってきた。
「あら、起きたのね。よかったわ」
「フィオナ殿」
キビキビとフレイアに近付くフィオナを見てアーサーは彼女に場所を譲った。
フィオナは先程までアーサーがいたフレイアにほど近い位置に来ると彼女の額に手を当て、熱を測る。
「うん、大丈夫そうね。体調はどう?」
「問題ない」
「本当に?」
「ああ。頭痛も吐き気も引いた」
フィオナがじっとフレイアを見つめる。
「ん。嘘じゃなさそうね。一応今日はここに泊まって療養することをお勧めするわ。どうする?」
「じゃあ、そうしようかな。フィオナ殿が勧めるならそうした方がいいってことはもう何回も学んだからな」
「そうね、そうしなさい。私は横の仮眠室にいるから何かあったらいつでも呼びなさい」
「ああ。ありがとう」
スタスタとベッドから離れていくフィオナの後ろ姿を見送っていると、急に振り返った。
「ああ、アーサー補佐官。熱がひいたとはいえ彼女はまだ病人。無理をさせてはいけませんよ」
「はい、すみません」
「いや、アーサー殿が謝ることじゃない。気にしないでくれ」
すかさずフレイアがアーサーを庇うと、やれやれといった表情でフィオナはカーテンで閉ざされた空間から出ていった。きっと残りの仕事をするのだろう。それをフレイアが見届け、アーサーに視線を戻すと、アーサーも少しベッドから離れ、フレイアに微笑む。
「それではフレイアさん、お大事になさってください。私はこれで失礼します」
「ああ、今日は本当にありがとう。気を付けて帰ってくれ」
「はい、ありがとうございます」
一礼して去っていくアーサーをベッドの上から見送ってから、フレイアは体をベッドへと預けた。
あの時の夢を見ていたはずだった。
忘れもしない、忘れることなどできない、恐ろしく、悍ましく、そして憎らしい、かつての夢。
雨の日は必ずと言っていいほど奴は夢の中に現れて、フレイアの記憶を掘り起こす。そして同時に恐怖と憎悪を植え付け、瞬く間に消えていく。
でも今日は。
右手を見る。あたたかい光だった。心が安らぎ、穏やかになる。恐怖も憎悪もあの光に包まれた瞬間、どこかに消え去った。目を覚ました時、目の前にいた彼。彼は手を握ってはいなかったけれど、右手には優しい温もりが残っていた。
倒れる寸前に見た、焦った顔。起きた時に見た、安心したような顔。破顔した顔。優しい顔。他に彼はどんな顔をするのだろうか。今まで多くを話したつもりで何も彼のことを知らなかったのではないか。頭の中に浮かんでは消えていく彼の表情。可愛い友人とどこか似ていて、似ていない。
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