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再会
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改めて見ると、桜の木から降りてきた彼女は言葉を失ってしまう程に綺麗だ。
日本では見られない少し青みを帯びた銀色の髪は雪の様な輝きを見せる。二つに結っている髪は彼女の動きに合わせて左右へと揺れる。
顔はとても小顔で、少しつりあがった吸い込まれるような菫色の瞳、少し不機嫌そうにも見える真っ直ぐな口。小さめの鼻。とても綺麗な人だと思った。背景にある桜が彼女の綺麗さをさらに引き立てていて、息を呑む事しか出来ない。
「なんだか……助けられてしまったみたいね」
彼女は僕に向かってそう声を掛けてくる。少し高めの優しい声。僕を怪しんでいる様な、それでいてこちらを安心させる様な声色。
「ごめんなさいね。どうしても話の通じない方だったからお金だけ払ったのに、何故か怒りだしたから逃げてきたのよ」
見慣れない服装だ。見る限りゴムの様な見た目をしているけれど、彼女がスカートに付いた桜の花びらを払う時は布のように靡いている。見ようによっては黒いワンピースの制服にも見えるし、何処かの女学校の人かもしれない。
「……ちょっと?」
「え?」
「え? じゃないわよ。話しかけてるのだから、返事ぐらいしてくれてもいいじゃない」
「あ、うん。ごめん……」
「ところで、ここは何処なの? 姉さんから頼まれたから家を出て散歩しているんだけど、見事に道に迷っているのよね」
引っ越してきたばかりなのかな……? でも、この商店街を抜ければ直ぐに大通りに出るし、裏道に入れば家の立ち並ぶ通りに出る。その右から三番目は僕の家だ。
「えっと……向こうに出れば見覚えのある道があるんじゃないかな……? 大通りだから」
「あらそうなの?」
「う、うん。じゃあその……気を付け――」
「ちょっと待ちなさい」
「あ、あれ?」
急いでこの場から離れようとしていた僕は、彼女に服の裾を掴まれて動けなくなった。細い腕なのに足一歩を踏み出せなくなる程の力がある。
そういえばさっき逃げる時も随分足が速かったし、僕が店主と話している間に戻ってきて桜の木に登った事を考えるととても運動神経が良さそうだ。
仕方なく足を止めて彼女を振り返る。凄く近い距離に彼女の顔がある。目を細めて、まるで僕を吟味している様だ。
「恩返しをさせなさい」
「お、恩返し? 僕別に何もしてないよ」
「店主を追い返してくれたじゃない。そうね……この姿になったとはいえ、まだ魔王幹部位なら余裕で倒せると思うわ」
「……ま、魔王……何?」
「魔王幹部よ魔王幹部。ヘルスライムとかマーべライオンとかの事よ」
「あ、あー……」
とても綺麗な子だっただけに、こういう痛い子だったと分かった時は悲しくなる。とはいえ、それを表情に出す訳にはいかないので顔を伏せて適当に話を合わせることにした。
「ま、まるで勇者みたいだね」
「だって勇者だったもの。でも最後の戦いで敗れて閉まったのよね。気が付いたらこの世界に家族と飛ばされていたのよ」
余程痛い子なのか、それとも設定を完璧に練り上げているのか、彼女の表情は本気だった。
日本では見られない少し青みを帯びた銀色の髪は雪の様な輝きを見せる。二つに結っている髪は彼女の動きに合わせて左右へと揺れる。
顔はとても小顔で、少しつりあがった吸い込まれるような菫色の瞳、少し不機嫌そうにも見える真っ直ぐな口。小さめの鼻。とても綺麗な人だと思った。背景にある桜が彼女の綺麗さをさらに引き立てていて、息を呑む事しか出来ない。
「なんだか……助けられてしまったみたいね」
彼女は僕に向かってそう声を掛けてくる。少し高めの優しい声。僕を怪しんでいる様な、それでいてこちらを安心させる様な声色。
「ごめんなさいね。どうしても話の通じない方だったからお金だけ払ったのに、何故か怒りだしたから逃げてきたのよ」
見慣れない服装だ。見る限りゴムの様な見た目をしているけれど、彼女がスカートに付いた桜の花びらを払う時は布のように靡いている。見ようによっては黒いワンピースの制服にも見えるし、何処かの女学校の人かもしれない。
「……ちょっと?」
「え?」
「え? じゃないわよ。話しかけてるのだから、返事ぐらいしてくれてもいいじゃない」
「あ、うん。ごめん……」
「ところで、ここは何処なの? 姉さんから頼まれたから家を出て散歩しているんだけど、見事に道に迷っているのよね」
引っ越してきたばかりなのかな……? でも、この商店街を抜ければ直ぐに大通りに出るし、裏道に入れば家の立ち並ぶ通りに出る。その右から三番目は僕の家だ。
「えっと……向こうに出れば見覚えのある道があるんじゃないかな……? 大通りだから」
「あらそうなの?」
「う、うん。じゃあその……気を付け――」
「ちょっと待ちなさい」
「あ、あれ?」
急いでこの場から離れようとしていた僕は、彼女に服の裾を掴まれて動けなくなった。細い腕なのに足一歩を踏み出せなくなる程の力がある。
そういえばさっき逃げる時も随分足が速かったし、僕が店主と話している間に戻ってきて桜の木に登った事を考えるととても運動神経が良さそうだ。
仕方なく足を止めて彼女を振り返る。凄く近い距離に彼女の顔がある。目を細めて、まるで僕を吟味している様だ。
「恩返しをさせなさい」
「お、恩返し? 僕別に何もしてないよ」
「店主を追い返してくれたじゃない。そうね……この姿になったとはいえ、まだ魔王幹部位なら余裕で倒せると思うわ」
「……ま、魔王……何?」
「魔王幹部よ魔王幹部。ヘルスライムとかマーべライオンとかの事よ」
「あ、あー……」
とても綺麗な子だっただけに、こういう痛い子だったと分かった時は悲しくなる。とはいえ、それを表情に出す訳にはいかないので顔を伏せて適当に話を合わせることにした。
「ま、まるで勇者みたいだね」
「だって勇者だったもの。でも最後の戦いで敗れて閉まったのよね。気が付いたらこの世界に家族と飛ばされていたのよ」
余程痛い子なのか、それとも設定を完璧に練り上げているのか、彼女の表情は本気だった。
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