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第0章〜プロローグ〜
第0話。プロローグ
しおりを挟むふと気が付くと、何もない白い空間に俺は立っていた。
少し歩いてみるが、環境になんの変化も見られない。ただ歩くだけなのには飽きてきて、なぜ自分がこんなところにいるのかと、ごく普通の事を考え始めた。
確か今日は、いつも通りお昼ごろ母さんが見舞いに来て、1、2時間俺に話しかけて帰った。その後は少し眠くなり、そのまま寝てしまったはずだ。
となると、ここは夢の中だろうか?
「おーい。そろそろいいかな?」
「っえ?」
突如後ろから声が聞こえ、びっくりして振り返る。そこには、ギリシャ風衣装を身にまとった美しい男性がいた。
明るい茶髪、銀色の瞳。右手には微細な装飾が施された金の長杖を持っている。
「初めまして。私は君が居た世界、アースガルドを管理している上位神の一柱。アーシュリムだ。えーっと、柊悠馬君。
受け入れがたいだろうけど、君は先ほど死んでしまった。厳密に言うと、僕の部下の処理能力が足りなくて、君の存在が神の管理下を離れてしまってね。
気づいた時にはもう手が出せない状態だった。本当にすまない」
「そん、な……しん……」
地球がある世界――アースガルドにおいては、神の力によって肉体に魂が固定されているらしい。つまり、神の手が及ばなくなると死ぬのだ。
「ショックだろうが、私の話を聞いてくれるだろうか?
謝って済む話ではないのはわかっている。特に、幼い頃から病に苦しみ、やりたいことも出来なかった君にはこんな終わり方、とても酷であろう。
そこで、新しい命を贈りたい。別の世界で別の生命として生きることになるが、どうだい?」
別の生き方……か。体が痛むこともなく、歩いただけで息が苦しくなることもない。普通に学校に通い、友達と他愛ない話で盛り上がる。
病院のベッドの上で、幾度となく望み描いては絶望した願い。それが叶うかもしれない。ならば、受け入れこそすれ拒否するなどありえない。
「その……よろしくお願いします」
あまり人と話してこなかった為に言葉足らずではあったが、神はふわりと微笑んで受け入れてくれた。
「わかったよ、ありがとう。転生するにあたって、何か希望はあるかい? 健康体とか種族、家柄、特別なスキルもある程度付与してあげられるよ」
「健康体!? それは是非とも必須で! 絶対! 」
「ふふ……そうだね。君にとって、健康は何ものにも変え難いだろう。
一応補足しておくと、この健康は病や生まれつきの異常は防止してくれるけど、状態異常には無力だから気をつけて。
それから、種族はエルフとか獣人とかファンタジー系小説によくある種族は大体揃ってるよ。スキルは……口で説明するより見た方が早いな」
突然目の前に半透明のウィンドウが開いた。
そこには料理・裁縫・絵画、剣術拳術・槍術・魔法といった技術系。瞬足・剛体・剛力などの身体能力系。そして、恩恵として付与される熟練速度上昇・魔眼・秀才・瞬間記憶……といった、いかにもなスキルがズラリと並んでいた。
「スキルは努力次第で後天的に獲得できるよ。人それぞれ得意不得意があるから一概には言えないけど、練習すれば上手くなる。みたいな感じだね。
恩恵は神が気に入った相手に付与するんだ。だから努力したからといって得られるとは限らない。並外れた努力をしてそれが神の目にとまるとか、良い行いをした。とかで貰える事が多いけど、恩恵を持っている人は少ないよ。
君には申し訳ないことをしてしまったから、特別に1つだけ選ばせてあげよう」
なるほど。スキルはここで取らなくても転生後に獲得できるのか。一方、恩恵はそうもいかない。慎重に選ばねばならないだろう。
とはいえ、悩むな……まずは種族から選ぶか。
ファンタジー種族として名高いエルフ……憧れるけど、魔法は強いが身体能力は低いとかよくある。反対に獣人は身体能力は高いけど魔法が使えない。勿論人間もいるだろうし、ドワーフや精霊、ヴァンパイアなんかもいるんだろうか。
これも決まりそうにないな。
家柄からいこう、家柄!
せっかく健康になれるのだから学校に行きたい。
現代日本なら一般家庭でも普通に通えるが、異世界では果たしてどうだろうか?
想像通りのファンタジー世界なら、小さな村の農家に生まれてしまうと、余程のことがない限り子供は親の手伝いで畑仕事だろう。
となると、ある程度裕福でなければならないな。貴族なら学校には当然通うだろう。けど、階級の上下関係が面倒だなぁ。
「悩んでいるようだね。では、こうしよう。
あちらの世界を管理する上位神のオススメで転生。当然管理神ならあちらの世界に詳しいし、君の事情も伝わってるからいい感じに選んでくれると思うよ。
希望は健康体と、学校に通える程度裕福な家柄……。で、いいかい?」
「っ、え!? 声に出てましたか? 」
健康体は間違いなく言ったが、家柄の方は声に出した覚えはない。
「出てないよ。私はこれでも神だからね。君に意識を向ければ、考えていることも伝わって来るんだ」
「そうなんですね。ではオススメでお願いします」
「了解だよ。流石に赤子から自我があっては色々と不都合があるだろうから、君の意識が目覚めるのは1歳頃にしておこう。早い方が上手く事が進むからね。
あぁ、そうだ。こちらからちょくちょく君の様子を見ている予定だけど、何かあったら教会で祈りを捧げるといい。都合が付けば、私か転生後の世界の管理神と交信できる。
さぁ、そろそろ時間だ、目を閉じて。本当にすまなかったね。せめて次は良い人生を」
「はい。何から何までありがとうございます。精一杯、生きます」
深く息を吐きながら目を閉じると、すぐに視界が白く染まっていき――――。
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