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第2章〜冒険者編〜
第10話。初依頼-潜入-
しおりを挟む「あらエミル君、いい時間に来たわね。話は聞いてるわ、こっちへ来てちょうだい。まだ名乗ってなかったわね。私は2年前からカイン支部で受付嬢をやってる、エイミー・イーゼルよ。よろしくね」
「おはようございます。エイミーさんですね。こちらこそよろしくお願いします」
昼の2時間程前にギルドに向かうと、昨日親切にしてくれた受付嬢さんが来た。エイミーさんと言うらしい。臙脂色の髪に橙の瞳が、それぞれのパーツがコンパクトな……つまり小顔に収まっている。
「ギルドマスター、エミル君です。入りますよ」
扉の向こうから短い返事を聞き、部屋に入る。
そこにはギルマスの他に、背の高い痩躯の若い男性が居た。今回の作戦に参加する冒険者だろうか?
「おうエミル、よく来たな。まぁ座れや。早速だが、コイツはルーク・イーグレット。人攫い役で参加するBランク冒険者だ」
「……よろしく……」
「よろしくお願いします?」
「ちっと人見知りでな。口数少ねぇし、普段は常にフード被ってっから、顔も割れてねぇ。ランクも高いし、まさに今回の作戦にはうってつけの人物だ。」
「頑張る……」
「おう、頑張ってくれ。俺も近くで待機してるから。
作戦の確認をするぞ。まず、人攫いに化けたルークがエミルを連れて建物に入る。この時、エミルは気絶したフリをしとけよ。首尾よく地下まで入れたら、一気に始めろ。ルークが見張りを気絶させたら、エミルが行方不明者を連れ、土魔法で地上まで上がって来い。その間、ルークは見張りと殿(しんがり)だ。何かトラブルがあったら臨機応変に対応してくれ。作戦続行不能レベルの問題が起きたら、全て忘れてとにかく生きて戻ることだけ考えろ。以上だ。」
一気に言いきったウォーレンはお茶を口に含んだ。
生きて帰る事だけ考えろ。つまり、自分以外は見捨てろ、って事か。思うところはあるけど、否定はしない。それもまた、1つの正解だ。
「なにか質問は? 無いなら早速移動するが」
「ない……」
「えっと、質問じゃないんですけど、俺の持ち物と装備品を預かって貰えませんか? 流石に持っていけないし、宿屋において置くのも不安で。お願いします」
「お易い御用だ。寄越しな。カイン一安全な場所、ギルド金庫に入れといてやるぜ。ベティ、頼んだ」
「はい、入れておきます」
「んじゃ出発するぞ。付いてこい」
ヒシュリム首都は広い。付いていくこと30分。人気のない路地裏で漸く足を止めたウォーレンが、振り返る。
「よし。ここいらで変装するぞ。エミルは幻覚魔法を解除してこれの中に入ってくれ。すまんがちょっと狭いぞ。ルークはコイツを着て、エミルが入った袋を担げ。奴らの潜伏場所は頭に入ってるな?」
「……うん」
「よし。準備はいいな? 行ってこい。くれぐれも慎重に、気をつけろよ」
「「了解」」
袋に入ったままルークに背負われ5分程揺られる。
「暗き光の中で」
「……主を讃えよ」
「さすれば?」
「道は開かれん……」
「入れ」
合言葉だろうか? 門番とルークが交互に問答を交わす。
[暗き光の中で主を讃えよ。さすれば道は開かれん]
なんかどこかで聞いたことあるような気がするんだけど、思い出せない……。気のせいかも?
直接見ることは出来ないが、常時発動させている気配察知スキルを使用して、様子を探る。今は範囲をいつもより拡大させるか……。たった10m程度では殆どわからない。気配察知スキルの使用魔力を増やすと、一気に感覚が広がった。多分50mくらいはいける。
ドアの外に1人、部屋に8人。地下室の入口に1人。地下室に、ハーフエルフと思われる魔力反応が8。人間と思われる弱めの反応が3。
「おい、中身を見せろ」
「….…これだ」
予め指示された通り、気絶したフリをする。袋の口が開かれ、俺の頭が外に出る。
「へっ、上玉じゃねぇか。よくやった。休んでていいぞ。酒でも飲んでけ」
早速、作戦変更を余儀なくされそうだ。地下室に2人で入れればよかったが、ここで不自然な反応は出来ない。
俺に触れているルークの手に、若干力が入った。その手を袋の内側から、他の人にバレないよう、そっと押し返す。大丈夫、と言うように。幸い、ルークさんはそれをちゃんと受け取ってくれたのか、俺から離れた。
男に担がれた俺は、地下室への階段を降っていく。
地下室に入り近づいた為、より鮮明に感じられるようになった気配察知で周囲の情報を探る。部屋の奥に9人が固まって座っている。行方不明者は8人のはずだが、1人は随分と魔力が小さい。ハーフエルフではなさそうだ。
敵は、入口階段付近に立っている男と、俺を肩に担いでいる男の2人だけのようだ。うん、これならやれそうだ。始めよう。
身体強化を魔力全開で発動。体術スキルを利用し、俺を担いでいる男の首を捉えて、頸動脈の血流を遮断し、昏倒させる。まず、1人目。
いきなりの自体に一瞬反応が遅れたもう1人が、
剣を抜いて俺に切りかかってくる。目と右掌に魔力を集中。動体視力と手の硬度を上昇させ、迫り来る剣の腹を叩いて砕く。すぐに体勢を立て直して、半ばから折れた剣で横凪を放ってくるが、しゃがんで交わす。腕を振り切ってガラ空きになった懐に滑り込み、顎めがけて裏拳を叩き込んで気絶させる。
もちろん、頭が爆散したりしないように、全力で手加減したが。2人目も終了。時間がない為、急いで行方不明者の元に駆け寄る。
「冒険者ギルドの者です。助けに来ました。歩けますか? 時間がありません。急いで」
「歩けますが、上には組織の構成員が」
「上は仲間が足止めしています。俺たちはこっち」
壁に手を当て、土属性の魔力を干渉させる。硬い土質なのか、なかなか抵抗が強い。使う魔力を増やして、ゴリ押し気味に壁を変形させ、地上へと続く階段を作る。思ったより魔力を持っていかれたが、最大値の数%にも満たない。問題はないだろう。
地中を弄った為、地震に似た軽い揺れが起きた。気づかれるのも時間の問題だ。急がなければ。
「急いでこの階段を登ってください! 地上に続いています。外に出たらまとまって行動、近くに待機している筈の、ギルド員を探してください。さぁ早く!」
「ありがとう……気をつけて坊や。ここには桁違いに強いのが一人いるわ」
「多分、剛体スキル持ちだ」
それだけ告げて、彼らは階段を登っていった。
それを確認した俺は、ルークの援護をする為、地下室から建物内に戻る階段を登――――
――ビュッ――
「――っ!」
階段の上から俺めがけて投げ込まれた、投擲用小型ナイフを慌てて避ける。
「うおぉおぉらぁぁぁぁ!」
「ぐっ」
ナイフの次は凶悪な顔付きをした男が、落ちるように階段を超スピードで降りてきた。バックステップが間に合わず、地下室の端、俺が作った階段まで飛ばされる。
もし、男が俺の相手よりハーフエルフ達を追う事を優先したら、まずい。手を当てて隙を見せる訳にはいかないので、足を通して地面に魔力を通し、階段を崩落させた。
「頭の回るガキじゃねぇか」
「そりゃどーも。あなたみたいな人に褒められたところで、嬉しくないですけどね」
「はっ! 言ってくれんじゃねーの。だがなぁ、お前さんよぅ、無手でどうするつもりなんだ? まさか素手でこの俺様に勝てるとでも思ってるのか?」
剣さえあれば、かすり傷一つ負わずにこの場を切り抜けられる自信はあるが、流石に素手は無理だ。
さっき2人目を倒した時に砕いた剣なら、まだ辛うじて使えそうだが、少し距離がある。取ろうとしても凶悪顔の男に邪魔されるだろう。
仕方なく全身と目に魔力を集中させ、空手の構えをとる。見たところ、男はかなりの剣の使い手だ。ここは避けに徹した方がいいな。剣を砕く余裕は与えてくれないだろうし。
「ほう……抗うってのか。いいぜぇ、散々いたぶってやるよぉ!」
そこからは、動体視力を強化していなければ目にも留まらぬであろう、斬撃や突きが連続して繰り出される。俺は避けに手一杯だし、男は俺に攻撃を当てられない。完全に膠着状態だ。
これは、先に加勢が入った方が勝つな。ルークが早く来てくれることを願うしかない。
「あっ……え?」
突然足の力が抜けて倒れ込んでしまう。よく見ると、右足の脹脛に針が刺さっていた。
――――まさかっ!
「どうやら、神様は俺に味方したらしいなぁ?」
「くっ……」
頸動脈を絞めて気絶させた方が、目覚めていたようだ。まさか暗器使いだったとは。目に入る武器を持っていなかったので非戦闘員と思い込んでいた。
針を抜いたが、感覚が戻らない。毒でも塗られていたのか? 健康スキルEXは病気や体調不良には滅法強いが、毒などの状態異常には無力だ。 足の回復にかなりの魔力を注ぎ込んでいるが、完全に動けるようになるまであと1分はかかりそうだ。
「勝負あり、だなぁ? じゃあ死んでもらうぜぇ」
男が手に持った剣を振り上げ、元々凶悪な顔を更に凶悪に歪めて、振り下ろした。
紅い紅い、鮮血の華が咲く。
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