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第2章〜冒険者編〜
第14話。初依頼-報告-
しおりを挟む翌朝。
顔に朝日が当たり、眩しくて目を覚ます。昨日は女将さんに抱えられたまま、寝てしまったんだっけか。体は7歳でも前世を足したら、22歳。顔が羞恥心で真っ赤になったのが、自分でもわかる。
そういえば、魔力はどのくらい回復しただろうか。回復具合を探る為、自分の内側に意識を向ける。すると、50%程度回復している事が判明した。それと、何故かそれ以上回復しないことも。恐らくだが、ルミナスに吸収されている可能性が高い。[力がなくて消えそう]と言っていたし、可能性は十分ある。
そう考えた時、一瞬ルミナスが入ってきた胸のあたりが少しだけ暖かく感じられた。
これは、ルミナスが肯定しているのだろうか? 直接声を頭に響かせることすらできないほど弱っているのかもしれない。俺の魔力で回復しているのなら、何時間後か、何日後か。はたまた何年後かはわからないけど、直接声を聞くことができるかもしれない。マナの集合体である低位精霊や妖精とは違い、大精霊は実体を持つと言われているし。
ベッドから起き上がり、昨日出来なかったウォッシャーで体を清めて着替え、1階に降りる。
「おはようございます、女将さん。昨日はありがとうございまし。すみません、寝てしまって」
「あぁ、おはよう。いいんだよ、そんなこと気にしないで。もっと頼ってきな!」
「頼ってきな!」
「ふふ、ありがとうございます。リアちゃんも」
女将さんの[頼ってきな!]を復唱した、可愛い可愛いリアちゃんの頭を優しく撫でた。
はぁ~、癒される。
「朝食は食べていくかい?」
「勿論です!」
「了解。座って待ってな」
初日と同じように、リアが水を持ってきてくれる。昨日の朝食は卵スープとライ麦パンだった。今日はなんだろう?
「お待ちどうさま! 今日の朝はオニオングラタンスープとロールパンだ! お馴染みダンジョン食材、フラッシュオニオンの玉ねぎを使ってる。美味いよ!」
「頂きます!!!」
器ごとオーブンか何かで温められたのか、めちゃくちゃ熱いので、火傷に気をつけて口に入れる。途端に広がる、玉ねぎの甘み。ロールパンのバターの香り。最高だ。今回もあっという間に食べ終わる。
「ご馳走様でした」
「相変わらず早いね。お粗末さま」
食べ終わった食器は、リアが片付けてくれた。小さいのになんて働き者なんだろう。きっと将来は、いいお嫁さんになるだろうな。同年代の筈なのに、思考は兄のそれである。
あ、雑貨屋の場所を聞いておこうかな。
「女将さん、近くに雑貨屋さんはないですか? レターセットが欲しいんですけど」
「レターセット……それならレイリー姉妹の店がいいんじゃないかい? あそこは最近出来たばかりなんだけど、センスのいい品揃えだって人気なんだよ。行くならここを出て右、1本目を右に曲がってすぐ、左側に見えてくるよ。」
「ありがとうございます。それでは行ってきます」
「気をつけて行ってくるんだよ」
「気をつけてね! 行ってらっしゃ~い!」
宿屋を出て右、右、左側を進み、雑貨屋に到着。
「うっわぁ、入りづらい」
目の前の店は、確かにセンスがいいのだろう。女性目線で考えれば。男性にとっては物凄く入りづらい店構えだ。ちょっとファンシーすぎる。
入ろうか別の店を探すか悩んでうろうろしていると、お店の中から人が出てきた。
「あらん? 随分と可愛い子じゃな~ぃ! 飾り付けたくなっちゃうわん! このレイリー雑貨店に用があるんでしょん? お入りなさいなぁ~」
濃! キャラ濃! びっくりだよ!
レイリー姉妹って名前から勝手に細身の美人系想像してたら派手にぶち壊されたよ! まさか、男性だなんて……。いや、オカマに差別意識とかは一切ないけど。ま、まて。まてまてまて。姉妹ってことはまさか――――。
「あら兄さん? お客様? まぁ、可愛らしいお嬢さん。レイリー雑貨店で何かお探し物かしら?」
レイリー兄の衝撃で固まっていたら、レイリー妹が出てきた。よかった。妹は女性のようだ。
……性別間違われたけど。オカマの兄を持つ妹に、性別間違われると、普通に間違われた時とは違い、なんだか気分が複雑である。
「もうアイシャ! 姉さんと呼んでと言ってるでしょう! 何度言っても呼んでくれないんだから」
「だって、兄さんは兄さんだもの。服装や話し方が変わっても、ずっと私の大切な兄さんよ」
「この子ったら……可愛いんだから!」
「ふふ、兄さんだってかっこいいわよ」
「あの、そろそろいいですか……」
「つい夢中になってしまって。ごめんなさいね。えっと、何をお求めかしら?」
「兄と母に送る手紙を書きたくて。綺麗な装飾が施されたレターセットはありますか? それと、俺はちゃんとした男の子です」
「男の子!? ハーフエルフって皆こんなに可愛いのかしら? それは是非食べ……ん、んっん! えっと、レターセットよね? それならこちらに沢山おいてあるわよ。好きなのを選んで頂戴。凝った装飾のは左側の方においてあるわ」
是非食べ……? アイシャの綺麗な口から物騒な言葉が聞こえたが、ここはスルーするのが1番だろう。
案内された場所にはレターセットの種類が30程あり、非常に悩んだ末、2つを手に取りレジへ。
「んん! いいチョイスじゃないの~! 派手すぎず、かといって質素でもない。素敵よ!」
「ありがとうございます。これ、お代です」
センスを褒められたのは嬉しいが、これくらい俺が出来て当然なのである。
貴族のやり取りでは、権威と財力を示す為に豪華なパーティを開く。その際、現在の流行や貴族それぞれの会話から、その人物の趣味を割り出して、話を合わせたりする。なので、そういうセンスが磨かれていなければ、貴族と話が合わずに、支持を得られなかったりするのだ。
だから、そういうのは俺の得意分野である。
手紙を無限収納の袋に入れ、冒険者ギルドに向かった。
「エイミーさん、おはようございます。今日はルークさんに、早く来てほしいと言われてたんですけど」
「おはよう、エミル君。彼も5分前くらいに来て、ギルドマスタールームで待ってるわ。行ってあげて」
「了解です、行ってきます」
3階のギルマス部屋の前まで移動し、ノックする。
「エミルか? 入れ」
「失礼します」
「早速だが、昨日の報告を始めてくれ。ルークは口下手だから、エミル、頼んだ」
「え、僕ですか? わかりました。
地下室に降りる前、ルークさんは1階に。俺は地下室の2手に分かれました。地下室で2人を気絶させ、ハーフエルフ達を地上へ逃がしたあと、上から1人手練が降りてきたので応戦。その後ルークさんが1階を殲滅して俺たち地下室戦闘に合流。一次はこれなら倒せるとおもっていたのですが、ブラックホールのような闇から手が出てきて。その手に邪魔されて、組織の首領と思われる男を逃がしてしまいました。
報告は以上です」
「そうか。お疲れさん。
多分そのブラックホールはワープゲートっつう、時空属性魔法だろうな。首領を逃がしたのは痛手だが、それが相手なら仕方ない」
「時空魔法!? あの伝説のっ? 一体何故……」
時空魔法とは、天族の聖属性魔法のように、使える者が限られる。6属性複合魔法で生み出せない属性は一般的に、6属性魔法と区別して、特殊属性魔法と呼ばれる。特殊属性魔法は6属性魔法とは違い、習得可能な人が明確に分けられる。
それは、習得可能な血筋かそうでないか、だ。
だが、時空魔法の血筋は、800程前に終わった2000年続いていたらしい、長い種族間戦争期に絶えた、と言われている。
時空魔法の使い手である種族クロノシスは当時、人間・エルフ・魔族・天族と並び、趨勢を競い合う種族だったらしい。今現在、繁栄してかなりの数が居るそれら種族と、争える程度には数が居たはずなのである。
だが、彼等の痕跡はある大規模な戦いがあった日に、ふつりと消息が途絶えている。戦争期の歴史から不自然に消えた、謎の多い種族なのである。
「まさか、クロノシスの生き残りでしょうか?」
「だとしたら、終戦から800年経って、今更出てきた事が不可解でならねぇ。戦争終わってすぐ出てきていれば、周囲の目はあろうが希少種族として保護されていた筈だが……」
「確かに、なぜ今なのでしょう?」
「あぁ~、考えたってわかんねぇ! 次だ次! 昨日助けた連中がお前らに礼を言いたいんだとよ。聞いてやってくれや。ベティ、呼んでこい」
「かしこまりました」
ハーフエルフ達は元々待機していたのだろうか? ハーフエルフが8人。獣人で8歳くらいの女の子が、ベティと共にすぐに入室してきた。
気配察知の、やけに弱い魔力反応は獣人だったのか。あの時は確認している余裕もなかったし。
……魔力反応? 獣人に? どういうことだ?
獣人は魔力を持たない種族である。だから、昨日感じていた魔力反応の正体が、獣人なのはおかしい。
俺が違和感に困惑していると、既に俺達の名前を聞いていたのか、代表らしき1人が最初から名前を呼んで話しかけてくる。
「エミルさん、ルークさん。助けてくれて本当にありがとうございました。あの薄暗い部屋で、自分達が何時、殺されてもおかしくない不安。気が狂いそうになる中、身を寄せあって耐えていたときに差し込んだ光。この御恩は忘れません。私共は皆カイン在住ですので、困ったときは声をかけて下さい。何時でもお手伝いします」
「……ん、無事でよかった……」
「昨日は、最後まで一緒に居られなくてすみません。無事に待機部隊と合流出来たようで、よかったです。その時は、頼らせて頂きます」
「はい、是非に。本当にありがとうございました。それでは私達はこれで」
話を終え、全員が、ぞろぞろとドアから出ていく。
彼等を見送り、ギルマスに向き直ろうとする直前、肩の服を軽く引っ張られ、そちらに顔を向ける。
「っえ!?」
「私、エミルと一緒にいるわ!」
「はぁ!?」
獣人の少女がそこに居た。というか、目の前に顔があってそこで叫ばれた。
「君、さっき部屋を出ていったよね? どうやってここに……」
「そんなの幻覚魔法に決まってるでしょ」
待て。ちょっと待ってくれ。理解が追いつかない。魔力を持たないはずの獣人が魔法? 俺と一緒に居たい? 勘弁してくれ。
行く先々で予想外のことが起こり、それに振り回される俺はもう、トラブル体質なのかもしれない。
その事実に思い当たり、気が遠くなった。
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