転生王子の異世界無双

海凪

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第2章〜冒険者編〜

第21話。ダンジョン突入

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「暗いわね……」

「明かり出すから、ちょっと待ってて。こういう時に、光魔法ってホントに便利だよね」

 20段ほどの階段を降りてきた俺達。ダンジョンの広めの通路は薄暗く、壁がほんのり光っている程度の光源しかない。
 視界確保の為、光属性魔法の魔力玉を2つ出した。1つは俺達の近く。もう1つは道の先に。俺は魔法剣士なので、距離が離れれば、離れるほど魔力消費が増えていくが、この程度なら全く問題はない。

「これでどうかな?  だいぶ明るくなったと思うんだけど、もっといる?」

「いい感じよ!  これだけ明るいならいらないわね」

 光源を確保し、何度か曲がって先へ進んでいく。すると、早速このダンジョン初遭遇の魔物が。

「ア……?  アァ、ア……」

「きゃーーーーーー!!!」

「っうわ!?  耳元で叫ばないでよ!  ビックリしたぁぁ……って、ルーシィ。まさか……」

「な、ななな、なんで最初からスケルトンソルジャーなんて出てくるのよぉ……!」

 俺達の前に現れたのは、スケルトンソルジャー。魔力によって骨だけで動き、剣で切り付けてくる魔物だ。中には骨に、乾いた筋肉の欠片が、こびり付いていたりするやつもいる。今回のはソレだ。正直グロい。というか、怖い。
 ルーシィはお化け系統が苦手なようで、ブルブル震えている。俺も得意ではない為、勝手に足が動き、後ろに進み始めてしまった。別に苦手な訳でもないのだが、恐怖というのは伝染するものだ。

 だが、ここはダンジョン。下層に行くにつれ、どんどん魔物が強くなる。こんな序盤で立ち止まってなどいられない。
 下がった足を引き戻し、一歩前に出る。

「ルーシィ。俺が仕掛ける。何かあったらフォローして!土刃どじん砕破さいは―!」

 ――――バッコーン――

「え?  案外あっけないな。なんでこんなのが、さっきまで怖かったんだろ」

 破壊力……つまり、打ち壊す特性を持った土刃で、左下から右上へ、解体ナイフで切り払ったのだが。スケルトンソルジャーが脆いのか、土刃の相性がいいのか、簡単に倒せてしまった。砕けたスケルトンソルジャーは粉になり、その場には彼?  彼女?  が所持していた、所々錆の浮いた剣が残る。

「エミル、怖くないの?」

「うーん、なんだろ?  あんな禍々しい雰囲気出してて、骨に筋肉ついてて、変な呻き声出してたら、誰でも怖いと思うよ。けど、倒せちゃうならあんまり怖くないよね……みたいな?」

「な~にそれ。はぁ、なんかあたしも大丈夫な気がしてきたわ」

 左腰に左手を当てて、右手をフラフラさせるルーシィ。本当にもう恐怖はないようだ。
 俺は床に落ちた剣に歩み寄り、拾う。

「鉄製か、微妙だなぁ。まぁ、第一層なんて序盤中の序盤だし、仕方ないか」

 鉄は魔力伝導が悪い。が、贅沢も言っていられないだろう。剣を装備しているだけで、剣技スキルの補正が入るし、ナイフで戦闘するよりマシだ。

「鞘はないし、無限収納イベントリに入れると咄嗟に使えないから、やっぱり手持ちだよね」

無限収納イベントリ!?  エミルそんなの持ってたの!?」

「駅の街で、食糧の買い込みした時に使ってたよ?  あ、ルーシィは買い食いに夢中だったね、そういえば」

「悪かったわね!」

 というか、買った食材がどこに消えているのか、今まで疑問を持たなかったのだろうか?  案外、ルーシィってどこか抜けてるのかもしれない。

「よし、先に進もうか」

「そうね」

 それから歩く事5分。今度は2体同時に出てきた。

「今度は、あたしがやるわ」

「1人で大丈夫?  1体俺がやろうか?」

「大丈夫よ!  任せときなさい!」

 目を閉じて集中し、全身にを漲らせるルーシィ。襲いかかってくる、スケルトンソルジャー。

 剣がルーシィに届かんとしたとき、ルーシィが目を開いた。手前に来た方に掌底を叩き込み、1体目を撃沈。少し遅れてやってきた2体目には、回し蹴りをお見舞いして、通路の壁に叩きつけた。
 実に鮮やかな手並みだ。

「ルーシィって、強いんだね!  ……あれ?  なんでこんなに強いのに、誘拐犯に捕まってたの?」

「あぁそれは、ずっと逃げ……な、なんでもない!」

「ごめん、聞いちゃダメだった?」

「別にいいわ。で?  剣は取り替えるの?」

 床に落ちている剣に目を向けるが、今持っている剣と変わらず錆が浮いており、取り替えても余り変わらないだろう。

「性能的には変わらなそうだし、そのままでいいかなぁ。変えるとしたら、次の層に降りてからかも」

「そ。じゃあ、ガンガン進むわよ~!」

 ルーシィもスケルトンソルジャーを倒したことで、ちゃんと倒せることに安堵したのかもしれない。
 その足取りは軽く、少し弾んでいる。さっき、お化けを見た女の子みたいに震えていた彼女は、もうどこにもいない。








 その後も、順調に進んできた俺達。あれから合計30体程遭遇したが、やはりどれも似たような剣しか持っていなかった。ちなみに、人間とは会っていない。
 そして、下層に続く階段に辿り着く。

「これが、下層に続く階段みたいだね。俺が先に進むから、付いてきて。後方の警戒をお願い」

「わかったわ!」

 一層へ降りる階段と同じく、これまた20段ほどの階段を降りきったその時、右横から剣が飛び出てきた。
 常は半径5mとはいえ、気配察知を発動している俺に、不意打ちは効かない。落ち着いてその剣を弾き、土刃で骨を打ち砕く。

「エミル!?  大丈夫?」

「うん、全然平気だよ。一層はそんなことなかったけど、二層だからかな?  骨を砕く時の感触が、すこし硬かった」

「まぁ、当然よね。下層に行くにつれて、魔物は強くなるんだから。剣はどうなの?」

「あんまり変わらないけど、若干錆が薄いから変えておこうかな」

 剣を取り替えて、先へ進む。階段脇には1体のみだったが、今度は3体一気に来た。一層には同時出現は2体までだったので、やはり難易度が少し上がっている。

「ルーシィ、やる?」

「おまかせするわ」

「じゃあ、俺がやるね。3体だと、飛斬ひざん使った方が楽だけど……土刃どじん―飛斬―!」

 やはり剣の性能が悪く、少ししか攻撃に魔力を乗せられなかった。いつもより、ずっと小さくて細い飛斬が放たれ、スケルトンソルジャーに罅を入れたが、砕くには至らない。

「もう1回、飛斬!」

 罅の入った場所を狙って、寸分違わず飛斬を打ち込み、今度は破壊することに成功した。

「やったわね!」

「だね!  けど、スケルトンソルジャー3体に、飛斬2回はちょっとアレだよね。でもまぁ、それももう少し下層へ行くまでの辛抱だけど」

「それじゃあ、いっそのこと走らない?」

「そうだね、ここら辺の魔物には苦戦しないし。気配察知を広げて、予め敵を見つけておけば、接敵即斬できるから」

「決まりね!」

 軽く走り出し数分進むと、今度は4体の反応が。

「ルーシィ!  次の角を曲がったら、4体いる!  俺が右の2体を引き受けるから、ルーシィは左の2体をお願い!」

「了解よ!」

 角を曲がり、それぞれ攻撃を加える。余り減速せず、すれ違いざまに砕いて通り過ぎた。






 どんどん進み、やがて十層のボス部屋前に到着。最後の方はなんかもう、競走みたいになってた~~なんて言えない……。
 なんとか錆び付いていない、鉄の剣も入手できた。

「予想はしてたけど。やっぱり十層にあるんだね、ボス部屋。さて、何が出るか……っと、その前に何か食べてから行く?」

「そうね、少しお腹がすいたかも」

「じゃあ食べよっか、無限収納イベントリの中身は時間が止まるわけじゃないから、もう冷めてるけど、スープでいいよね?  火属性魔法で温められるし」

「そうね、小腹に丁度いいわ」

 無限収納袋の口を開き、駅の街の露店で購入しておいた野菜スープを取り出し、火属性魔力玉を当てて、温める。湯気の出てきた頃合で、ルーシィに渡す。

「ありがと。ふぅー、ふぅー……あつっ!」

 「ごめん、温めすぎたかな。もしかして、狐なのに猫舌?」

 「なわけないでしょ!  あー、美味しいわ!」

 「顔真っ赤だよ。ほら、貸して。少し冷ますから」

 「本当は大丈夫なのよ?  けど、あなたがどうしてもって言うなら、冷まさせてあげるわ!」

 「はいはい、どうもありがとうございます~。冷まさせてください~」

 そういったあとに、初めて会った時も、こんな風にツンデレやり取りしたなぁ……と思い出して、口元に笑みが浮かんでしまった。

 「何笑ってるのよ?」

 「いや、ルーシィって最初会った時、凄いツンツンしてたでしょ?  今はちょっと優しくなったなぁ、と」

 思えば、俺が落ち込んだ時から、少し態度が軟化した気がする。

 「何言ってるのよ?  気のせいでしょ?」

 「そうかなぁ~?」

 「何よ、その生暖かい目はーー!」

 「それこそ、気のせいじゃ、ない?……くくっ」

 「笑うんじゃない、わよ……ぷっ」

 そうして、ボス部屋前で、束の間の穏やかな時間は過ぎる――――。




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