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第3章〜カイン学園編〜
第30話。入学試験-開始-
しおりを挟む今日はカイン学園初等部の試験日当日。
スキル確認をしたいのだが、アドルに禁止されていた。それを見ると、自分の成長を感じてモチベーションは上がるけど、同時に安心して成長が鈍ることがあるそう。
どれだけ成長出来ているかはわからないけど、体の魔力伝導は確実に良くなってる。初見でバラバラにされたアドルの攻撃だって、なんとか躱せるようになってきた。
それと、刀を無限収納袋にしまっていても聞こうと思えばアドルの声を聞くことができるようになった。何度もアドルの心の世界に行くことで、繋がりが強くなったからだそうだ。だが、俺以外にアドルの声が聞こえないのは変わらなかった。
「ん……」
「あ、ルーシィ起きた? おはよう」
「はよ……あー、とうとう来ちゃったわ。試験日」
「あはは、頑張ろうね。さぁ、早く支度しないと間に合わなくなっちゃうよ!」
お互いに背を向けて着替える。その後水魔法で顔を洗って食堂で朝食を摂り、試験会場である学園へ。
人間国ヒシュリム首都カインの中心には、王族が住む城がある。その外側に政治を行う建物が複数建ち並び、その更に外側に貴族の屋敷が密集している。ここまでが貴族街と呼ばれるエリアだ。
貴族街を囲むように学園や研究所、商店等が乱立する学商街。一般市民が多く住む都民街があり、都民街の裏路地を進んでいくとスラム街を見かける。
学商街の中でも貴族街にほど近いカイン学園に到着したのだが、城ほどではないけど学校の枠組みに入れるとしたら、めちゃめちゃデカかかった。普段は固く閉ざされているのだろうが、今は開いているオシャレな柵扉から中に入ると、大勢の子供が居た。
そこに紛れてしばらく待っていると、試験官らしき人が拡声魔道具を使って話し出した。
「現時点で集まっている受験者だが、だいたい600人くらいだな。言っておくが、合格できるのはこの中の5%にも満たないと思っておけ! この試験で命の保証は出来ない。覚悟のない者は帰れ!」
そう言われて、ざっと50人程が出ていった。カイン学園は受験料がいらない珍しい学校だし、力試し感覚で来た子供も多いのだろう。
「よし、では今残っている受験者、互いに潰しあえ。生き残り戦だ。ただし、殺さないように細心の注意を払えよ。気絶したやつは自動的に移動するから気にするな。始め!!!」
なんて試験内容だ。7歳そこらの子供同士で潰し合い? 普通の子供は丁度いい手加減なんてわからない。魔族の頑丈さならいざ知らず、人間の子供なんて低級魔法でも軽く吹っ飛ぶ。それに、気絶したら移動って、どういうことだ?
「ルーシィ! 俺から離れないでね!」
「こっちのセリフよ! くるわ!」
近くに居た男の子が、持っていた剣で切りかかってきたのだが……遅い。異常に遅い。まるでスローモーションのようで、目を瞑っていても躱せそうだ。鈍い剣を殴って弾き、男の子を突き飛ばした。
そしたら、5m程他の子供を巻き込みながら吹っ飛んでしまった。
「え? 俺、なにこれ……」
「エミルっ? ちょっと何してるのよ! 相手は人間の子なのよ!?」
♢♢♢♢♢
エミルは本当の意味で自覚していなかった。シュメフィール最強である魔族がどれだけ強いのかを。そして、その中で自分がどれだけ異常なのかを。
稽古の師匠は神魔国でもトップを争う強さをもつアッシュ。そして、鍛錬仲間は神魔国近衛騎士団員。
エミルの中で、そもそも強いの基準が世界一般常識的におかしいのである。
アッシュ、ありえないくらい強い。自分、すごく強い。騎士団員とルーシィ、強い。神魔国民、他種族よりは結構強い。
これを人間目線で見るとどうなるか。
神魔国民、すごく強い。騎士団員とルーシィ、ありえないくらい強い。アッシュやエミルなんて別次元。
エミルが人間の子供と相対して戦うのはこれが初めて。デーミンや初依頼で戦ったことはあるが、彼らは列記とした大人だ。比べる対象として間違っている。そして、アドルの訓練で飛躍的に身体能力や技術が向上した。それが今のこの結果だ。
♢♢♢♢♢
俺は自分が思っていたよりずっと強くなっていたのかもしれない。アドル様々だ。
俺が突き飛ばしてしまった男の子と、それに巻き込まれた子供数人が光って消えた。自動的に移動とはこれのことだろうか。
「エミル、アドルに鍛えられ始めてから1回もこっちで戦闘してないでしょ? 危ないからあなたは攻撃禁止よ!」
「うっ……わかった」
今の状態では受験者を死なせてしまうかもしれない。大人しくルーシィの言葉に従った。
それからは、攻撃をひたすら避けて時間が経つのを待った。受験者が50人くらいまで減った頃、試験官の声が響く。
「そこまで! 残った受験者、次は筆記試験だ。ついてこい」
内装はかなりオシャレな感じで、掃除が行き届いた校舎の廊下をゾロゾロ歩いていく。今日は試験日として休校にでもなっているのか、生徒は見かけない。
大学講義室のような段々になっているではなく、平面の床にそれぞれ机が離れて置かれた教室に入る。
「各自適当に座れ。テスト用紙を配るが記名を忘れるな」
ルーシィと隣の席につき、配られたテスト用紙を伏せたまま置く。
「始め!」
合図で受験者が一斉に問題用紙を裏返した。俺もざっと全体を確認していく。前世の小学校卒業レベルの問題がズラリと並んでいる。さすがはヒシュリムナンバーワン、カイン学園初等部のテストだ。いい感じに化け物じみている。
一番最後の問題だけやたらと難しいということもなく、普通に解いてミスがないか確認して終わり。
かかった時間は30分程だろうか? 時計がないのでわからないが、多分それくらいである。
「やめ。一番後ろの受験者、答案を集めてこい」
ルーシィの結果が物凄く気になるが、勝手に会話できる雰囲気ではない。
「揃ってるな。それじゃ、次は実技試験だ」
実技試験はさっきやったのではなかったのか? もしかして、さっきのは振るいにかけただけか。あんな方法ではちゃんとした実力なんて測れないので、妥当かもしれないけれど。
実技試験で何かとんでもないことをやらかしてしまわないか、非常に恐ろしい。魔法試験なんてあったら完全にアウト。なんとか会場を破壊しない方法を考えながら、試験官について行く俺だった。
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