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第3章〜カイン学園編〜
第37話。サラシャ
しおりを挟む日記の表紙に書かれた『あどう るい』という名前。『アドールイ』➡︎『アドル』少し安直のような気もするが、普段はテンション軽めのアドルの事だ。きっとほいほい決めたんだろう。
邪なる神と〇の〇族。
魂を〇け、我〇者〇〇ルが〇印す。
刀に宿っている彼は、邪神を勇者アドルの魂の欠片で封じていると言っていた。
『邪なる神』は、邪神のことで間違いない筈だ。
だが、そのあとの『〇の〇族』についてはわからない。刀アドルの記憶は不完全だ。初めて会った時、邪神以外にも封印しているとかは言っていなかったから、多分知らないんだろう。
『魂を〇け』は、魂を分けだと思う。魂を分けてそれぞれの欠片で封印した。最初は『〇印す』を『しるす』と読んでしまったが、封印の方が自然に感じる。
邪なる神と〇の〇族。
魂を分け、我勇者アドルが封印す。
この解読は、多分高確率で当たっている。謎が少し残ってしまったけど、情報が足りない。
勇者アドルがこれを書いたのは当然、封印する前だろう。彼はどんな気持ちでこの一文を書いたのか。他のページの辛うじて読める部分には、もっと砕けた口調で書かれていた。だが、それとは打って変わって硬い口調。俺に推し量ることなど到底出来ないが、相当の覚悟があったはずだ。
「どうかな、探し物は見つかったかい?」
「えっ……?」
「日記について話してから、君がずっと真剣な顔をしていたからね。読んでいる時も、調べ物をする学生のようだった」
そんな顔をしていたのか。俺とアドルの他に地球から来た人がいたかもしれないと思って、興奮していた自覚はあるけれど。
「そう、ですね。俺にとって重要な文が見つかりました。見せてくれてありがとうございます」
「役に立ったならよかったよ。さて、そろそろ朝食の時間だ。もちろん食べていくだろう?」
「はい! 昨日から気になってたんですけど、カルボナーラ食べたいです」
「わかった、すぐに作るね」
朝のピークだからか、厨房には2人知らない人が働いていた。軽く会釈して挨拶を済ませ、しばらく待って完成した料理を受け取り、席につく。
ミシェルには昨日の夜のうちに、明日の朝は早いと伝えておいたから大丈夫だ。そのうち来るだろう。
「アドルさんに子孫がいる……」
周りに聞かれないよう小さな声で呟く。
あの日記は多分勇者アドルのものだ。だとしたら、テルークは勇者アドルの子孫ということになる。
ダンジョンからカインに戻ってくる魔導列車の中で、刀アドルが『恋愛の先輩』と自称していた。あの時はスルーしてしまったが、突っ込んで聞いた方が良かったか。
英雄色を好むと言うし、探せば他にも勇者の子孫がいるかもしれないな。
「はぁ~~。ご馳走様でした」
考えることが多くて、子供らしからぬため息をついてしまった。刀アドルも急いではいけないと言っていたし、今は頭の片隅に置いておくだけにしよう。
始業時間にはまだまだ早いが、初等部1年A組の教室へ。当然のようにまだ誰もいない……と思いきや、白い翼を持つ先客が窓際の席に座っていた。俺もその隣の席に座りながら話しかける。
「サラシャさん、早いですね」
「殿っ、……エミル様、おはようございますわ。皆さんが居る時に教室に入ると注目されてしまうので、早く来ていたのです」
「エミルでいいですよ。カイン学園に身分差はありません」
「ではエミルさんと。お許しくださいませ……」
「本当に大丈夫なのですが。ところでサラシャさん、なぜカイン学園へ?」
これはずっと気になっていたことだった。留学が普通に認められているとはいえ、神魔国貴族が外国の学園に通うことは多くない。
「お父様の指示ですわ」
ホワイエル侯爵か。なんの意図があってそんなことを。サラシャは目立つのがあまり好きでは無いように思える。天族の翼は居るだけで目立つというのに、わざわざ娘が嫌なことをやらせるような人には思えなかった。
「そうだったんだ」
嫌じゃなかったのか? とも尋ねたいけれど、本心はどうあれ返ってくるのは否定だけだろう。それに、貴族の令嬢は当主に従うもの。拒否権などないのだから聞くこと自体が失礼だ。
「はい」
沈黙が続く。何か話題を探そうとするのだが、彼女と会うのは実に2年ぶり。しかもちょっと気になった程度とはいえ、多分初恋の相手。これが恋というものならだけど。そして今も結構ドキドキしている。
「「あのっ!」」
何を聞くか決まってなかったが、沈黙に耐えられなくて話しかけたら声が被ってしまった。
「……失礼致しましたわ。エミルさんからどうぞ」
「こちらこそ失礼。お先にどうぞ。レディーファーストです」
「では僭越ながら……エミルさんは何故カイン学園をお選びに?」
「1つ目は、他の国を見てみたいと思ったから。2つ目は、この学園は身分差がないからです。城にいると少しそういうのが窮屈に感じてしまって」
父様に入学希望を聞かれた時は1つ目しか言わなかったが、2つ目もあの時たしかに思っていたことだった。口に出せなかっただけで。
でも今は不思議と口に出すことができた。
「それでは……私も皆さんのように話した方が……いいのでしょうか」
そう言う彼女の声は少し震えており、緊張している様子が感じられた。神魔国の貴族と王族の壁は厚い。見るからに深窓の令嬢っぽいサラシャに、いきなりタメ口はハードルが高いだろう。
「無理はしなくて良いですよ」
今まで伏し目がちだった彼女が、顔を上げて俺に目線を合わせ、薄く微笑んだ。
「エミルーー! なんで先行っちゃ……ってサラシャ。何、してたの? 2人で」
「ルーシィ、おはよう。俺は少し用があって早く起きて来たんだけど、そしたらサラシャさんが先に来てたんだ。それで、なんでこの学園に来たのか聞いてた」
「ふぅ~ん、そ。ならいいわ」
教室に入ってきた直後はなんか怖い顔をしていたルーシィだが、俺の説明を聞いてその顔から力を抜く。
ルーシィが教室に来たのを皮切りに、どんどん生徒が入室してきてあっという間に始業時間になった。
「おーし、揃ってるな。選択授業は全員希望通りだ。時間割配ったら今日の授業始めるぞ」
前世では10歳までしか通う事が出来なかった学校。その授業。転生できると聞いた時、真っ先に思い浮かべた、自分が学校に通っている姿。
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「一限は算術からだ。教科書2ページ開け」
俺は、普通の子供だったら絶対に思ったりしないだろうことを考えながら教科書を開いた。
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