転生王子の異世界無双

海凪

文字の大きさ
45 / 50
第3章〜カイン学園編〜

第44話。噴水と時計塔

しおりを挟む
 


「待たせて悪かったな……って、何があった?」

 先生達が来たので、さっきの出来事を報告した。彼らも俺たちと同じように衝撃を受け、固まる。背伸びして目前で手を振り再起動させ、一応遠足のしおりには書いてあるが、今後の行動について確認した。
 倒れた屋台の獣人は他の屋台の獣人達が助けに来てくれたので彼らに任せ、俺達はここに来た本来の目的に戻る。

「リカルド先生。ちょっとひと騒動ありましたが予定は変わりませんよね?  この後は時計塔の見学ですけど」

「そうだな。その前に案内人を紹介するぞ。兎の獣人、ヤビットだ。俺が冒険者やってた頃の知り合いでな。建物の説明とか色々してくれるらしいから引っ張ってきた。聞き逃すなよ」

「あはは、そんなに詳しいわけじゃないんだけどね。せいぜいが道案内と、獣人国民なら誰でも知ってるようなことを教えてあげられる程度さ。よろしく!」

 リカルドに紹介された彼は、白い髪に赤い瞳をしており、頭にこれまた白くて長い兎の耳が生えた若い男性だった。これで髭の生えた筋骨隆々なオジサンとかだったら、誰得だよ!  って感じだけどヤビットは爽やかな顔立ちの細身だから大丈夫だ。

「さて、まずは時計塔だったよね?  行く途中に噴水広場もあるから一緒に説明しようか。ついてきて」

 先生達も含め、僕達35人越えの集団がぞろぞろとついて行く。獣人国は鎖国というほど厳しくはないが、他種族の入国者を拒否している為、獣人だらけ。俺達が珍しいらしく、周囲の視線を集めまくっている。

 駅前の大通りをずっと進んでいくと開けた場所に出た。中央に噴水があるので、ここが噴水広場で間違いないだろう。

「ここが噴水広場さ。以前は恋人達でとても賑わっていた場所なんだけど、今はだいぶ寂しいことになってるね。この噴水へ恋人と手を握りながら貨幣を投げ込めば、一生を添い遂げられると噂なんだよ」

 トレビの泉みたいだな。たしかあれは硬貨を2枚入れると恋人と一緒にいられるんだったけか。写真で見たトレビの泉は海神ネプトゥヌス、豊穣神ケレス、健康神サルスの彫刻があったが、この噴水にはない。

 幼いながらも恋愛感情をもつ生徒がいるのか、少し頬が赤い子もいる。ルーシィはどうなのか気になって隣の彼女を見てみると、何か考え込んだ様子で眉間に皺を寄せて目を閉じていた。

「ルーシィ、どうしたの?  大丈夫?」

「…………」

「ルーシィ?」

「……っ、ごめんなさいね。呼んだかしら?」

「難しい顔してるから心配になって。ベスティエに着いてからずっとそうだったけど、何考えてたの?」

 一度目は無反応だったけど二度目の呼びかけでは反応してくれたルーシィが、俺の耳に口を寄せてこそこそ話をしてきた。

「父様の時代なら奴隷なんて有り得なかったのよ。今でも奴隷なんて貴族達が猛反対するはずなのにおかしいわ。それに街の皆の顔も暗いし……」

 辺りを見渡すと、ルーシィの言う通り皆暗い顔で活気がなく、そもそも出歩いている人達の数が少ない。特に老人と子供に至っては1人も見かけられず、20代~40代の人ばかりだ。

「獣人国も貴族いるんだね。街の皆の顔が暗いのはやっぱりさっきの親衛隊のせいか、政治自体が悪化しているのかだよね」

「王を排出した家は貴族になれるわ。過去に何人排出したかで序列が決まったり、何十代も王が出ないと平民に戻ったりするけど。政治に関してはなんとも言えないわね。これは王も一応参加するけど、基本は貴族院任せだから、王が代替わりしてもそうそう悪い方向には傾かないはずなのよ」

 だとしたら今の状況はなんだ。貴族院は一体何をしているのか。現地人に聞きまわるのが一番手っ取り早いけど、今は集団行動中。やれるとしたら明日の班行動時だろうな。

「そろそろ時計塔へ案内しよう。もう見えてるけど」

 ヤビットが指さした方向に視線を向けると、煉瓦でできた高さ15mくらいの塔が見えた。
 この街はカインと違い住宅と店が混在しているようなのだが、屋台と同じく店も静まり返っている。そもそも開いていないところも多い。

「この時計塔は毎日3時間おきに鳴るのさ。0時、3時、6時って感じにね。リカルド、今日は中に入るんだよね?」

「おう、頼んだ」

 あれの中に入れるのか、凄いな。
 時計が設置された面の逆側に入口があり、そこから中へ。内部は大小様々な歯車が重厚な音を立てながらゆっくりと回転している。壁の内側グルりと回るように備え付けられた階段を登り、上へ行く。

「手すりあるけど気をつけてね。もし、落ちて歯車に挟まったりしたら助からないから。手足がちぎれるくらいならまだいいけど、胴体が押しつぶされながら泣き別れするよ」

「「「ひっ」」」

 それを聞いて一瞬で青ざめた子供達が怯えた声を上げる。かく言う俺もその一人だ。想像してしまった。

「あはは、そんなに怖がらなくても大丈夫さ。壁際に寄って歩いて、目線をずっと前に向けてればいいだけの事さ。それに、落ちそうになったら彼が助けてくれるよ。な、リカルド?」

「当然だ。これでも俺は元Aランク2級の冒険者だからな。それに、生徒を守るのも先生の仕事のうちだ。安心しろ」

 ダンジョンの最下層まで行くような冒険者なら妥当のランクだな。
 それを聞いたみんなは安心できたようで、まだ多少ビクビクしているが普通に階段を上り始めた。一番上に辿り着くと尖った天井が屋根になっていて、壁が吹き抜けになっているデザインだった。頬に感じるそよ風が心地いい。

「この塔は街の中心にあってね。その鐘の音は街の一番端まで届くんだ。そろそろ9時の鐘が鳴るから耳を塞いでおいた方がいいよ」

 首都だけあってこの街は相当広い。その街の端まで届くような音をこんな近くで聞いたら、お耳さんが一大事だ。
 ハーフエルフ特有の少し尖った耳をしっかりと押さえた。ヤビットやルーシィの様な押さえにくい形をした耳はどうやって押さえているんだろう?  気になって見てみたら、2人とも耳をペタンとさせてその上から押さえていた。
 直後、カチッと針が動く音と共に、ゴーンゴーンと低くい音が長く響いた。

「相変わらず渋くていい音だね。さて、そろそろ降りようか。次の見学はお城だからね。っといっても外から見るだけだけど」

 いよいよベスティエの城か。俺が獣人国の見学で結構楽しみにしていた場所。神魔国の城は主に大理石と魔法金属でできていたけど、この国はどうだろうか?  期待に少し足を弾ませながら階段を降りていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...