痛みの底で 誰も興味のない私の戦記

母

　母は過干渉で、距離を置いても一生懸命に私を母の思う正しい道へと戻そうとする。
　私は不安や恐怖に弱く、母が手を差し伸べてくると頼ってしまっていた。そんな訳で私たちは離れられずにいた。
　私は私で子供の頃から母に苦労をかけてばかりで、母に大変なお金を使わせ、それをドブに捨ててきた、母を不幸にしてしまったと責め苛みに囚われていた。
うつ病が酷く、私は勝手に母の生い立ちから今日に至るまでを嘆き悲しみ、母には幸せな日は無かったのかと考え始めた。

　母は3人兄弟の末っ子で、兄と姉がいる。祖父母は兄を大事にし、高価なものを買い与えたが、その浪費癖により母が高校生のときに破産してしまった。祖父母は離婚したが、祖父が脳梗塞に倒れ面倒を見る為に祖父と二人暮らしをした。
　母は高校の学費をアルバイトをして稼いだ。卒業後は短大へ進み、編集社に就職。お見合いで自営業の男性を希望して父と結婚。好きだった仕事を辞めるよう迫られ退職した。
　父の家は二世帯住宅で、姑と義姉にいじめられた。父の家は建設業を営んでおり、後継ぎを期待されたが何年も子供ができなかった。
　
　父は母を思いやらず、ゴルフや夜遊びばかりしていた。出産時もゴルフ場にいた。家事も一切やらなかった。
　そんな父はなぜかパニック障害だったそうで、母は父を連れ精神科に行っていたそうだ。病状が落ち着いたということで、私たちが3歳の頃に両親は離婚した。

　母子寮に引っ越した。私はそれを旅行だと思っていた。
　4畳半くらいの部屋で、トイレは和式。お風呂は寮の敷地内にあるシャワーだけ。机は無くカラーボックスでごはんを食べた。母はお弁当屋で働いた。